menu

(公社)日本柔道整復師会第51回東海学術大会岐阜大会 開催

2016/11/10

平成28年11月6日(日)、ウインクあいち(愛知県名古屋市)において「公益社団法人日本柔道整復師会第51回東海学術大会岐阜大会」が開催された。

(公社)日本柔道整復師会会長主催者として登壇した、(公社)日本柔道整復師会の工藤鉄男会長は〝当会は、技術ならびに資質の向上のために全国11地区にて学術大会を開催している。会員だけではなく、学生の方にも多数参加していただき将来の柔道整復について一緒に勉強していただく。業界はご承知の通り、大変な混乱の最中にある。かつて優秀な職業として繁栄してきた柔道整復だが、昨年末から反社会的勢力に悪用される事件が起きている。業界内にもお金儲けのために不正を働くような施術者が出てきてしまっているのも事実だ。そこで当会は、しっかりとした教育改革と抜本的な制度改革を行政に要請している〟として、現在取り組んでいるカリキュラム改正や柔道整復療養費の在り方の見直し等について説明した。また〝日本のみならず世界にも柔道整復という素晴らしい技術を発信していきたい。日本の柔道整復は西洋医学が浸透していない国にとっては最高の技術であり、若い柔道整復師が世界に羽ばたいていける環境を作らなければならないと感じている〟として、世界における活動を報告した。国内においては、地域包括ケアに柔道整復師として参入するために〝地域の人たちに理解され、必要とされる職業にならなければならない。そのためにも、全国各地区で行っている学術大会によって研鑽を積むことが大切だ。現在のこの柔道整復術は先達の必死の努力によって守られてきたものであり、その想いを胸に刻んで歩んでいかなければならない。今日も最後までしっかり勉強し、明日の施術に役立てていただきたい。明るい未来になるよう一致団結して頑張っていこう〟と呼びかけた。

(公社)岐阜県柔道整復師会会長主管である(公社)岐阜県柔道整復師会の鹿野道郎会長は〝昨今、療養費や自賠責保険の柔道整復師による不正請求問題が発端となり、業界全体が厳しい状況となっている。自分たちの襟は自分たちで正すことが、新たな信頼回復のスタートとなるのではないか。個々の柔道整復師が勝手に行動、意見していては益々信頼が失墜するが、個々が自制し業界が団結して資質の向上を図っていくことが信頼回復に必要となる。その中心的な役割を果たすのが日本柔道整復師会であり、各都道府県柔道整復師会だと考えている。岐阜県柔道整復師会ではすでに、広告や看板等の自制を会員に促すことを目的に、顧問弁護士に措置命令や罰則を含めた講演を行ってもらうなどしている。また、本学会は技術の研鑽はもとより、地域住民の健康福祉に寄与することを目的としている〟と挨拶し、当日のプログラムを紹介した。

 

特別講演
『フレイルの予防・改善 -健康行動への働きかけ-』

岐阜大学大学院 医学系研究科 成人看護学分野教授 西本裕 先生

岐阜大学大学院教授西本氏は〝1970年代後半~1980年代後半、フレイルはfrail elderlyやdisabled elderlyなどと表現され、「身体的・精神的に障害があり、地域のサポートなしでは在宅での生活が難しい高齢者」等を定義していた。2013年には身体的フレイルは「筋力、持久力、生理機能の減衰を特徴とする複数要因からなる症候群で、身体的障害や死亡に対する脆弱性が増大した状態」と定義されたが、これは運動実践・タンパク質やカロリーの補充、ビタミンD摂取、多剤併用の減少などによって、予防・改善できる可能性がある〟とし、介護保険において要支援・要介護を判定する基本チェックリストを示した。〝従来は身体的フレイルを中心とした判定だったが、現在は認知機能障害などの精神・心理的フレイルや独居、経済的困窮などの社会的フレイルも考慮されるようになった〟と説明した。

〝身体的フレイルの原因としてはサルコペニア、変形性関節症、骨粗鬆症などがあり、これは「ロコモティブシンドローム」(運動器症候群)の原因にもなっている。ロコモティブシンドロームの概念として、変形性関節症やサルコペニアによって関節可動域制限や筋力低下・疼痛などが生じることで、移動機能が低下、要介護状態になったり社会参加制限が出たりする。日本の平均寿命は世界的にも高い水準を示しているが、問題は健康寿命がどれだけ伸びているか。平均寿命と健康寿命の差は、その間に要支援・要介護になっている期間を示している。要支援・要介護となってしまう要因として、運動器の障害は23%にも及ぶ。サルコペニアの診断・評価として、低筋量・低筋力・低身体動作がある。使わないと使えなくなる。歩行速度を図り、秒速0.8m以下であり筋量が減少している場合はサルコペニアとされる〟と解説し、ロコモティブシンドロームになる前に兆候を調べて対応することが大切だとして、早期発見・診断のための評価項目を紹介した。さらにロコモティブシンドローム改善のための運動の他、〝栄養バランスの整った食事が大切だ。メタボも痩せすぎも良くない。タンパク質やビタミンD、カルシウムなど、骨に関わる栄養素を1週間の中でバランスよく摂取すれば良い〟等、食生活のポイントについても詳細に説明した。

最後に、運動等を習慣化させるためのアプローチの方法として〝病院の外来患者に指導する方法もあるが、要支援・要介護になっていない人に知識を得てもらうために、地域でポスターやチラシを配ったりマスメディアを利用したりする方法もある。周囲の協力を得ていくことがこれからの課題だろう。同時に、個々に合わせて対応していくことも重要だ。関心のない人に指導しても仕方ないが、意識している人に対しては段階を踏んで習慣化できるように指導してほしい〟と述べ、習慣化に導くための指導方法なども具体的に提案した。

 

日整介護セミナー
『2016・柔道整復師と介護保険について 
-柔道整復師の地域包括ケアシステムへの貢献-』

公益社団法人日本柔道整復師会 保険部介護対策課 川口貴弘 先生

岐阜大学大学院教授まず、川口氏は〝高齢化が進んだことで入院患者の増加が懸念される中、入院患者を早期に退院させて、地域が一つとなって患者やその家族を支えていこうという考え方が地域包括ケア。そこに柔道整復も参入し、地域の医療機関と患者をつなぐ役割を果たしていこうとしている。「介護予防」は来年4月から「総合事業」として介護保険と切り離してスタートされるが、多くの団体がここに参入してくることが予想される。「医師・歯科医師、薬剤師、看護師、介護支援専門員その他の専門職の積極的な関与の下、患者・利用者の視点に立ってサービス提供体制を構築する」とされており、柔道整復師はその他の一つとなっている。普段の接骨院の業務を行いながら、機能訓練指導員としても患者を支えていく。今年1月の調査では、既に総合事業に参入している市町村もあるが、慎重に様子を見ている市町村が多い〟と地域包括ケアおよび総合事業に関して概要を解説した。

これからの介護予防の具体的アプローチとしては、〝柔道整復師はリハビリの専門職として参加していきたい。病気の特徴なども把握でき、要支援者の可能性を最大限に引き出すことができる。リハビリ職等が住民運営の通いの場において、参加者の状態に応じて安全な動き方等適切な助言を行うことにより、様々な状態の高齢者の参加が可能となる。例えばリハビリの専門職に、体操教室等で効果的な機能訓練や安全な運動の仕方を指導してほしいというのが厚生労働省の考えだ。効果的な介護予防の取り組みとして、地域の高齢者の介護状況や認知症患者の数等を調べてニーズを把握したうえで計画を立て、短期的にリハビリを行う。元気になったら地域の集会等に参加してもらい、健康を増進していただく。総合事業に参入していくためには、まずは市町村の担当者に柔道整復師がどのような役割を果たしているかを理解してもらう必要がある〟と説明。地域における好事例を踏まえて、要支援者等のニーズに合わせて多様化したサービスの例を示した。総合事業の中での柔道整復師の役割として、〝①外傷の専門家として、②総合事業通所型A/Cの機能訓練指導員、③総合事業の訪問型Cの機能訓練指導員として、④総合事業の通所型Bのサポート、⑤認知症高齢者の見守りネットワークとして、地域包括ケアに参加できると主張してもらいたい〟として、具体的事例も含めて解説を行った。

最後に、IADL(Instrumental Activity of Daily Living:手段的日常生活動作)低下については〝IADLはADLより高次な動作を指していて、一般高齢者の17~30%にIADL障害が起こる。IADLの自立に関心・能力のある場合には介入が有効となる〟と述べ、介入方法として〝例えば料理については食材の準備、下ごしらえ、調理、盛り付け等、一つ一つの動作に分けてできないことを明らかにし、その人に合ったプランを立てる。その後、運動指導や動作訓練などを行っていく必要がある〟と紹介した。

 

 
前のページ 次のページ
大会勉強会情報

施術の腕を磨こう!
大会・勉強会情報

※大会・勉強会情報を掲載したい方はこちら

編集部からのお知らせ

メニュー