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スペシャルインタビュー:八王子市長 石森孝志氏

2017/03/10

八王子市の人口は、約56万3千人である(平成28年12月現在)。
本年、市制施行100周年を迎えた八王子市は、現在市民一丸となって記念事業への準備を進めている。因みに八王子市ゆかりの著名人による「100年応援団」団長は歌手の北島三郎さんである。
緑豊かな学園都市として日本全国に知られる八王子市は、学生をはじめ優秀な頭脳が集まっている東京都屈指のまちである。住民同士の繋がりが欠かせないとして、シームレスな地域包括ケアシステムに取り組む八王子市のトップリーダーとして、多くの人材を登用し、顔の見えるネットワークづくりを推進する石森市長は、優しい笑顔で力強い施策を次々と打ち出し、まちの未来を任せられる方である。
石森市長に今後のビジョンなどを聞かせていただいた。

 

地域住民と共に活力と魅力あふれるまちを目指して、八王子市を輝きのある素晴らしいまちにしていきます!!

八王子市長
石森 孝志   氏

 

―日本の社会保障制度について石森市長のお考えをお聞かせください。

日本の社会保障制度、特に国民皆保険制度は、世界最高レベルの平均寿命と保健医療水準を実現するなど、現在も国民の日々の安心につながっている世界に誇るべき制度だと思います。しかしながら人口構造の変化は、社会保障費の増加など、社会保障制度全体に影響を与えることは言うまでもありません。
今後の社会保障制度を考えるうえでは、我が国の人口が大きく変わっていることを踏まえ、一人ひとりが介護予防や健康づくりなどに取組むことが重要です。
そのうえで「地域での助け合い」によって「より暮らしやすいまちを創っていこう」という市民の意識を高めることが求められます。
東京のような都市部では、地域でのつながりが弱いため、ボランティアや住民活動など「互助」による「地域の助け合い」を期待することが難しいといわれてきましたが、本市では町会・自治会の加入率は平成28年度で約60%と比較的高くなっています。また、地域の困りごとの解決など生活支援を行うNPO等の団体が45団体あることなど、本市は高い「市民力・地域力」を有しています。
しかし、5年ごとに実施している国勢調査を見ますと、平成27年度の本市の人口は、平成22年と比較して、人口が2,540人、0.4%の減の577,513人となりました。本市もおおむね人口減少に転じたといってよいかと思います。
また同調査では、15歳未満の人口は7.2%の減、15歳から64歳の人口は7.3%の減、一方で65歳以上の人口は18%増加となり、高齢化率が25%に達しました。
今後、少子高齢化の一層の進行や財政状況から社会保障を大幅に充実していくことは難しいでしょう。
社会全体においては、介護予防の取組みや健康づくり、そして「地域での助け合い」の果たす役割がより大きくなることを意識し、様々な課題に取組んでいかなければなりませんので、本市がもともと有している「地域の助け合い」の機運をより高めていくことが、社会保障制度を支えることにつながっているものと考えます。

 

―近年、社会保障費の財源が苦しくなっていることに加えて、高齢社会で医療費も介護費も大変な増加が見込まれるなか、今後は在宅ケアを含めた包括的なケアシステムの構築が求められています。八王子市で現在取り組まれている地域包括ケアシステムの構築状況についてお聞かせください。

地域包括ケアシステムを広い市全域で構築するためには、地域ごとの多様な特性や社会資源も踏まえることが重要です。
また、医療や介護などの専門機関の連携を充実させるとともに、地域の住民の皆様にご理解やご協力もいただきながら、"地域"を主体とした活動の充実を図らなくてはなりません。

そこで、先ほどの「八王子・地域包括ケアシステム推進プラン」では3つの事業の柱を設定しています。
まず、一つ目の柱は「地域で生きがいを持ち、活き活きと暮らす」としています。
「高齢者ボランティア・ポイント制度」や「一般介護予防サロン」の充実、さらに貴重な経験・特技などを持つ高齢者と、地域の人々や学校・福祉施設等をつなぐ『八王子市高齢者活動コーディネートセンター』の設置など、高齢者自身が地域で役割をもち、元気に活動するための様々な取り組みを実施しております。
また、「市民力・地域力」を発揮する取り組みとして、本市の特徴でもある学園都市としての強みを活かした、大学との連携事業を行っています。
大学の専門性と学生が持つ活力を大きな社会資源として捉え、学生自らが地域で高齢者支援にかかる活動を行うことで、地域に活力を注ぎ、高齢者の社会参加を促すとともに、将来地域を支える担い手としての意識を醸成することが期待できます。

二つ目の柱は「住み慣れた地域で安心して暮らし続ける」です。
ここでは地域包括ケアシステムの構築を進める上で重要な基盤となる「地域包括支援センター」の増設や機能強化を進めることとしています。
地域包括支援センターは、市民にとって親しみやすい身近な相談機関となるべく、愛称を「高齢者あんしん相談センター」として、平成29年1月現在で市内の16箇所に設置しております。今後は平成29年4月に1箇所増設し、計画では2025年度までに21箇所に設置することを掲げています。
また、病院から自宅に退院するときや療養生活に調整が必要なときなどに、医療や介護の知識を持つ相談員が相談を受ける「在宅医療相談窓口」を設置するなど、専門的な支援体制の充実も図っています。
認知症の方への支援も重点施策と位置づけており、認知症の方やご家族などの介護者の方が、住み慣れたご自宅で安心した日常生活が送れるよう、認知症支援にかかる専門職や医療機関と連携した「早期支援チーム」の配置、家族介護者が交流できる「認知症家族サロン」の運営補助などの取り組みを実施しているところです。
さらに、在宅療養患者の夜間の診療依頼にかかりつけ医の対応が困難な場合に、当番医療機関がかかりつけ医に代わって診療を行う「在宅医療24時間診療体制」の確保も、医師会の協力を得て実施しています。

そして三つ目の柱は、「利用者の自立を支える介護保険サービスの安定した提供」です。これは、安定的に質の高い介護保険サービスの実現を狙いとするものです。
市でも高齢化率が年々上昇していることから、介護保険制度の持続可能性を高めることも念頭に、平成28年3月に「介護予防・日常生活支援総合事業」に早期移行しました。
これは地域の多様な社会資源が提供する生活支援のサービスを、従来の介護サービスとあわせて包括的に提供することを目指す、新たな取り組みです。
地域が主体となるサービスやそれを担う"担い手"の醸成には幅広い啓発と多くの時間を要するため、現状は従来の介護サービス中心の提供となりますが、将来的には高齢者の環境や心身の状況にあわせ、専門職によるサービスと地域主体のサービスが切れ目なく、安定的に提供できる仕組みを構築してまいります。

これら3つの柱を構築の視点とし、地域包括ケアシステムを推進し、その基盤は構築されてきたものと感じておりますが、地域包括ケアシステムをさらに推進するためには、高齢者の皆様が自らの健康に留意することはもちろん、市民の皆様が、それぞれ自分が暮らしている地域について考え、自らも社会資源の一つとして"お互い様の気持ち"を持ちながら生活することが重要です。
一人ひとりが支えあう気持ちを意識し、活動することで、計画の基本理念でもある「健康で笑顔あふれる、ふれあい、支えあいのまち」を実現できるものと考えておりますので、今後より一層、地域包括ケアシステムについての普及啓発を推進していきたいと思います。

 

―地域力が弱くなっている現在、「互助」による支援体制が機能する可能性についてお聞かせください。

少子高齢・人口減少社会において、地域で暮らす高齢者にとって最も身近な支援を行える方は、同じ地域で生活する住民の皆様ですので、「互助」による支援体制の構築は、極めて重要な課題です。
本市では、社会福祉協議会と連携し、「地域福祉推進拠点」を設置することとしています。これは、地域の困りごとを地域で解決するための「地域づくり」を進める拠点であり、現在は1か所の設置ですが、将来的には、「高齢者あんしん相談センター」と同様に、日常生活圏域ごとに配置を進めていきます。
「互助」による支援は、ご近所や地域の課題に気づくことがスタートとなります。そのためのきっかけづくりと、地域の支援体制の輪に加わっていくためのわかりやすい仕組みとして、この地域福祉推進拠点が機能していくことで、互助による「地域での支えあい」が当たり前となる可能性は十分あると思っています。

また、互助活動の担い手自体も高齢化が進んでいることから、今後ますます需要が高まるのに対して、活動が縮小してしまう団体もあるようです。
これら住民主体による互助活動を維持、充実していくためには、高齢者自身がいつまでも元気に活動していただくことはもちろん、次代の担い手をいかに増やしていくかということも大きな課題となります。
地域包括ケアシステムの構築を進めるにあたり、若い世代から地域を支える意識の醸成を図るとともに、社会参加を希望する方が、自ら選択し、参加できる仕組みを構築することができれば、互助による支援体制も世代を超えてつながり、より強化されていくと思います。
先に述べましたが、本市では、学園都市としての強みを最大限発揮し、大学の専門性や学生の力を大きな社会資源として、様々な互助活動の支援を行っており、支援の内容も大学の得意とする分野により多様です。

いくつか例をあげますと、ある大学では地域活性化を目的に、空き店舗や大学の空き教室を活用したサロンを開催しています。そこでは高齢者と学生が互いの特技を披露するなど、笑顔あふれる交流を行っています。
また、運動やリハビリを得意とする大学では、その専門性を活かし、地域向けに介護予防の体操教室を開催していますし、映像等の制作を得意とする大学では、地域の互助活動を支援するため、活動のプロモーション映像の制作にご協力をいただいています。

 

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