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調査票の実態【第5回:大阪市内の健康保険組合】

2015/08/01

今回ご紹介する資料は、大阪市内にある健康保険組合による被保険者向けの文書です。

いわゆる返戻屋コアジャパンによる受診者調査の結果に基づき、受診者に対して受診抑制を示す内容で構成されていることが伺えます。
文面には「〇月から整骨院を利用されていますが、数か月で新たな負傷と治癒を繰り返しておられ、症状の改善がされていないと思われます。」とあります。返戻屋による受診者調査結果と共に申請書の縦覧点検を行い長期間の治療(施術)について健康保険組合としての捉え方を文書の冒頭から示しています。

 

長期間、途絶えることなく治療が継続される中で、定期的に傷病名が変更されるような算定例を「部位ころがし」などと表現される場合があります。

では、果たしてすべての同算定例が不適切な請求であると言えるのでしょうか?

結果的に長期間継続された算定で、且つ傷病名の変更が行われる例は柔道整復療養費特例受領委任にかかる治療と算定から考えると十分にあり得るはずです。当初の治療箇所が治癒する頃に、新たな負傷や損傷が発生する症例はあって当然です。

 

また「ちなみに健康保険では長期加療や負傷部位治癒後の慢性疼痛に対する加療は認めておらず、自費扱いとなります。」とも記載がなされています。慢性疼痛についての治療は、健康保険を利用した治療は行えません。しかし、「長期加療を認めておらず・・・とは編集部においても初耳です。
協定(契約)には、『施術は療養上必要な範囲及び限度で行うものとし、とりわけ、長期又は濃厚な施術とならないよう努めること。』とあります。支給基準においても『~3月を超えて継続する場合は、負傷部位、症状及び施術の継続が必要な理由を明らかにした長期施術継続理由書を支給申請書に貼付すること。』と規定されており、長期治療があたかも不適切で保険者から認められない例であるとは到底考えられないことです。

 

加えて「~整形外科専門医による整骨院に通院することへの同意と医師による治癒見込み日を書いた書類の提出をお願いします。」とも記載されています。応急手当を除く骨折・脱臼に係る継続した治療の場合には医師による同意が必要ですが、この場合においても同意を得る医師は整形外科医と限定されていません。柔道整復として治療を施行する中で、柔道整復師により必要と判断された場合には、しかるべき医師の診療を受けさせる規定は定められていますが、この場合には当該の柔道整復師による判断に任せられています。

回答書A

整骨院への長期通院理由について

回答書B

受診内容回答書

(クリックするとPDFが表示されます)

同文書にある質問部分は、失笑に値します。受診者が自らの損傷について、医学的に柔道整復的に十分に理解されていない場合、その回答に苦慮し誤回答するであろうことは容易にうかがい知ることができる質問構成となっています。「ストレス解消のための通院も含まれている」とありますが、ストレス社会であると云われる現代において多くの日本人に該当するであろうを言い得て妙な表現も見られます。

文末には再び「なお、今後も健康保険を使って整・接骨院を利用する場合は、整形外科医師による同意書(整骨院への通院許可の同意)に治癒見込み年月を書いてもらったものをご提出ください。」とあり、同意書の提出が行われない場合には「半年にわたる繰り返し施術で慰安的なものとみなし、健康保険での適用は終了させて頂きます。」と結ばれています。

 

柔道整復による健康保険治療については、療養費であることは事実です。加えて療養費は一般の医療費による診療に対して補完的位置にある事も事実であり、それらの支給決定に係る判断は保険者に認められている点も法律で定められています。ところが、柔道整復療養費特例受領委任に係る健康保険適用となる治療については、その根拠となる負傷原因・損傷原因が有する限り、柔道整復師による必要かつ妥当な判断により実行されるべき『特例方式』であります。
保険者は、請求内容や治療内容に疑義を生じた場合、すみやかに疑義の解消に努めなければならず、その場合には当該の柔道整復師に対して照会や直接調査を行なうことが通知で定められています。単に半年間の間に傷病名が変更された点を理由として、健康保険の適用を終了するとした保険者対応は横暴であると言えます。

 

整形外科医師が所属される組織であるJCOAでは、柔道整復をバッシングする活動がますます盛んになっているようです。柔道整復とは異なる身分や資格者の方々から一方的に叩かれることは如何なものでございましょうか?
一部の不心得な柔道整復師による不正行為は許されるべきではありません。ですが、特例受領委任の方式や柔道整復師判断による治療等がすべて不正の温床であると決め込み、柔道整復療養費を消滅させるがごとく活動を展開される様子は異常なことです。柔道整復師の先生方は受診者保護の観点から受領委任が特例として認められ、法的には医師の代替機能をも有する資格者として、真摯に適正に治療と算定を励行頂きたいと考えます。

誤った保険者判断に対しては、規定や通知に則り協定(契約)順守し凛と対応し理解を得るべく努めていただきたいと編集部では願っております。

 

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