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第72回   【今回の柔道整復療養費改定について考える  Ⅱ】

2013/05/16

今回の柔道整復療養費改定について考える  Ⅱ

明治国際医療大学  長尾淳彦

 

特に今回の柔道整復師の施術に係る療養費の「運用の見直し」で就業柔道整復師が知っておくべきことは各項目が「柔道整復師法」「「柔道整復師の施術に係る療養費について(通知)」「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項等について(通知)」のどこが改正されたということである。

「柔道整復師法」は法律であるので法改正の手順に沿って改正されなければならないので改定毎に変わることは考えにくい。よって今回の「通知」による一部改正は「柔道整復師の施術に係る療養費について」」「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項等について」となる。

平成25年4月24日の保発0424第1号は厚生労働省保険局長から都道府県知事、地方厚生(支)局長宛に出された「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の一部改正について(通知)」。保発0424第2号は厚生労働省保険局長から都道府県知事、地方厚生(支)局長宛に出された「柔道整復師の施術に係る療養費について(通知)」の一部改正について。保医発0424第1号は厚生労働省保険局医療課長から地方厚生(支)局医療課長、都道府県民生主管部(局)国民健康保険主管課(部)長、都道府県後期高齢者医療主管部(局)後期高齢者医療主管課(部)長宛に出された「柔道整復師の施術に係る療養費について(通知)」である。

保発0424第1号、保発0424第2号、保医発0424第1号によって今回の6項目の見直しが通知されたわけである。

なぜ、このようなことを書くかというと今後「社会保障審議会医療保険部会柔道整復療養費検討専門委員会」が開催されて、中長期的に柔道整復師に係る「制度」や「業務範囲」などについて検討されるであろう。その時に柔道整復師側がここ数回の改定・改正の中の見直しがどのような理由で行われたかを知っておくことは審議をしていく上で非常に重要なことである。この数回の改定・改正で変更された運用の見直しの理由が是正された場合は従前の運用に戻されるのだろうか?注視すべき事柄である。

また、社会保障審議会医療保険部会であるので「医科」「歯科」などの医療費においても柔道整復療養費と同様な運用となっているのかという検証も必要である。

「医科」「歯科」の診療報酬明細書は1999年より磁気媒体による提出が認められたが内容は患者氏名、性別、生年月日といった個人情報、患者の健康保険加入情報、請求元の医療機関名、診療科、病名、診療月に行った検査、画像診断、処置、薬、注射、手術、リハビリ等の項目と点数が入力されている。

柔道整復療養費の運用見直しのみ「患者の住所の郵便番号及び電話番号を支給申請書に記入する」があるが個人情報の保護対策が非常に厳しい中、支給申請書(紙ベース)が多くの第三者の目に触れる。固定電話が無く携帯電話のみの患者さんが近年多くなっているのも電話番号記載に危惧する要因である。

患者に支給申請書への郵便番号及び電話番号の記入を求めた時、「何の目的・理由で記載するようになった」という明らかな理由が必要であるのに厚生労働省は「保険者など支払側からの要望」としか現在答えていない。

実際、保険者や患者受診照会の外部委託会社が直接患者に照会をするための連絡がしやすいようにとは柔道整復師側から患者さんに説明は出来ない。

いま、柔道整復師業界で起こっている患者照会は、喩えとして適切ではないかもしれないが、私は次のような状況だと思う。“スーパーマーケットで卵を購入したお客さん(手首を捻った患者さん)に消費者センター職員(保険者や患者受診照会の外部委託会社職員)が電話で「今回○○スーパーで卵を買われましたか?(○○接骨院にかかられましたか?)買う理由をレジ係にお話になりましたか?(痛くなった理由をお話になりましたか?)お支払いになった金額はいくらですか?(窓口で支払われた金額はおいくらですか?)レジ係は卵の取扱いについて分かりやすく説明しましたか?(柔道整復師は保険の取扱いについて親切に教えてくれましたか?)」と尋ねているようなものである。卵は料理に使う以外何の利用があるのかと消費者センター職員に聞き直すとブチ投げて虐待用に使われることもあるので調査しています。と答える。”実際こんなことが卵を買った消費者に毎回尋ねることを国の金でルーチン化されたら、消費者も怒るし、スーパーマーケット業界も抗議をするだろう。なぜ?わが業界は素直に受け入れるのだろう?

多部位の地域格差をなくすためという3部位目の逓減強化や保険者や患者受診照会の外部委託会社のための郵便番号及び電話番号の申請書への記載など運用の見直しがなされて本当に国民である患者さんは喜んでいるのだろうか?はなはだ疑問である。

 

このようなことを議論していること自体が異常であり、良質な柔道整復施術を国民に提供するには、就学プログラムや卒後教育、受領委任取扱いにおける臨床研修など「制度」の改革が急務である。その整備のための有識者委員会の開催を強く願うものである。

<つづく>