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運動器超音波塾【第4回:肩関節の観察法 2】

2015/06/01
棘上筋・棘下筋の観察

前回同様、結節間溝を触知してから、大結節の山にプローブを合わせます。腱板の線維構造が描出されたら、大結節の付着の際(きわ)から後方に向かって、プローブをほぼ平行移動させて、観察します。この時に、腱板の線維構造がきれいに描出されるようにプローブの角度を前後左右に微調整する事を忘れないでください。また、全体像を把握するためにも、必ず外側からの短軸での観察を併せて行います。

図 棘上筋・棘下筋の観察 プローブの走査方向 上腕骨を上から見た図

図 棘上筋・棘下筋の観察 プローブの走査方向 上腕骨を上から見た図

図 棘上筋・棘下筋の観察 長軸走査で前方から後方へ

図 棘上筋・棘下筋の観察 長軸走査で前方から後方へ

超音波で観ると付着面の形状は、SFが山のように盛り上がった形をしており、後方のMFに向かうと平坦な形に変わってゆきます。

では、棘上筋腱の超音波長軸走査の画像の解説です。

図 棘上筋腱の超音波画像の解剖

超音波の場合、腱板の構造が潰れる事なく、線維の模様として描出することができます。プローブを懐中電灯で照らすように、角度調整をしてください。この時に、肘関節を持って少しだけ動かすと、腱板と骨頭が動き出すことで、腱板と滑液包の境目を認識する事ができます。

 

Clarkらは腱板が単一の腱組織ではなく、5層構造として分れ、複雑に腱線維、関節包、靭帯が重なり合って作られた組織であると発表しています。*2

更に、皆川先生は棘上筋の筋内腱が主に前方1/3に移行しているのに対し、他の腱板構成筋では均一に筋内腱が分布していることを、また棘下筋は棘上筋後方1/3を上方から覆いかぶさるように存在することを報告しています。*3

*2 Clark J.M.: Tendon, Ligaments, and Capsule of the Rotator Cuff. J.Bone and Joint Surg. 74-A:713-726, 1992.
*3 皆川洋至、他:腱板を構成する筋の筋内腱-筋外腱移行形態について. 肩関節. 20:103-110, 1996.

図 腱板の5層構造

図 腱板の5層構造

 

腱板断裂の観察ポイントは主に3点

腱板断裂の観察ポイントは、主に3点あると言われています。*4

A
断裂部では、線維構造が描出されず、水腫による低エコーが観察される
B
Peribursal fat、肩峰下滑液包は、正常であれば腱板と平行な位置で丸いドーム型を 形成するのに対して、菲薄化する、或いは断裂の程度でフラットや陥凹型になる
C
腱板の付着位置であるfacet、或いは周囲の軟骨下骨が、不整(骨棘の有無)

*4 超音波でわかる運動器疾患 皆川洋至 ㈱メディカルビュー社 より

図 参考 腱板断裂(RCT=rotator cuff tear)

図 参考 腱板断裂(RCT=rotator cuff tear)

 

Peribursal fatは、肩峰下滑液包の天井にある脂肪の結合織で、腱板表面の形状をそのまま表している為、とても重要な情報を提供してくれます。腱板が菲薄化するにつれ、或いは断裂の程度で、その形状がドーム型から平坦、更に陥凹する状態が観察できます。*5

参考 腱板断裂(RCT=rotator cuff tear)の下図の場合は、肩峰下滑液包の水腫、付着面での骨棘も顕著に観察されています。以上の3点と併せて、肩峰下滑液包の水腫、石灰性腱炎(腱板内部での高エコー像)の有無なども注意すべき項目です。この場合、石灰像は棘上筋から棘下筋への移行部に認める場合が多いと言われています。また、肩峰下滑液包の水腫に関しては、プローブで圧迫しすぎると、見落とす可能性がありますので注意してください。

*5 超音波でわかる運動器疾患 皆川洋至 ㈱メディカルビュー社 より

 

図 腱板内の高エコー像 石灰の存在を示唆

図 腱板内の高エコー像 石灰の存在を示唆

 

側方拳上と不安定感

次に、棘上筋腱の位置にプローブを置きながら、動態観察をしてみます。肘関節を保持して下方へ牽引、或いは側方拳上へ外転動作を誘導すると、肩関節の不安定感を観る事ができます。

動画 側方拳上と不安定感

 

今回の観察法で大切な事項をまとめると、下記のようになります。

腱板の観察法の基本肢位は、座位で行う
棘上筋・棘下筋の観察は、手を鼠蹊部におき、肩関節軽度伸展位で行う
腱板は、上腕骨付着面の(facet)を目印にして区別する
腱板の線維構造をきれいに描出するよう、プローブの角度を微調整する
棘下筋は棘上筋後方1/3を上方から覆いかぶさるように存在する
腱板断裂の観察ポイントは、線維構造・Peribursal fatの形状・付着面の不整に注意する
肩峰下滑液包の水腫、腱板内の高エコー(石灰の存在)も併せて観る
プローブで強く圧迫してしまうと肩峰下滑液包の水腫などが見えなくなる事があり、圧迫を緩めながらプローブ角度を微調整して観察する
動態観察により、肩関節の不安定感を観察する

 

次回は、「上肢編 肩関節の観察法」の続きとして、その他靭帯や注意事項について、考えてみたいと思います。

 

情報提供:(株)エス・エス・ビー

 
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