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第7回帝京大学・栃木県柔道整復師会ジョイントシンポジウム開催

2015/08/26

【特別講演2】では『障害者の為の乗馬療法』と題し井原正博学科長による講演が行われた。

井原正博学科長本来は小児循環器学が専門だという井原氏は〝約13年前から障害者のための乗馬療法を宇都宮市で始めた。経験から得られた知識やノウハウにより治療効果を上げるという点では柔道整復とも共通点がある〟と述べ、本題に入った。 はじめに〝乗馬療法は1940年代にヨーロッパにおいて小児マヒが大流行し、その際に罹患した馬場馬術の選手がリハビリでも良くならなかった症状を乗馬により劇的に改善させ、オリンピックでメダルを獲得したことで注目を浴びた。「アニマルセラピー」という言葉はまだ日本ではあまり一般的ではないが、大きく分けて「動物介在療法」と「動物介在活動」がある。「動物介在活動」は動物と直接的に触れ合うことにより癒しを得る方法だが、「動物介在療法」は治療のゴールを設定して患者ごとにレッスンプランを作成・記録・評価していく方法である〟と乗馬療法の発祥と概要について説明した。

乗馬療法の普及については〝1964年にはイギリスでRDA(Riding For The Disabled Association)という障害者乗馬の慈善団体が結成され、日本国内では19団体が活動している。2003年にRDA宇都宮を設立し現在36人の乗り手が所属しているが、その内肢体不自由児が40%、自閉症児が30%、精神遅滞児が30%だ〟として、行なっている治療方法について写真を用いて具体的に解説した。馬は四足動物の中で唯一人間と同じ骨盤の動きをする動物であり、乗馬中は自分の足で歩行しているような骨盤の動きを再現できるため、ある2分脊椎と脳性麻痺の側弯症の小児は1~3年の乗馬によって座位姿勢に著明な改善がみられ、レントゲン上側弯はほぼ治癒したという。また〝身体面だけではなく行動面、心理面でも大きく改善していくケースが多い〟として、メディアに取り上げられた改善例を動画で多数紹介した。

乗馬療法の認知度が少しずつ上がっていく中で〝障害者自立支援法が改正され、NPO法人も障害者の就労支援ができるようになった。以前は乗馬療法により改善しても就職口がないということも多かったが、現在はNPO法人を設立し、馬の堆肥による無農薬野菜の栽培や、馬の世話、皮細工、社会復帰トレーニングなど、障害者の社会復帰を支援している〟とし、今後は日本における普及率が十分ではない、行政によるバックアップがない、経済的自立が困難である等の課題解決に努めていくとした。

 

この他、帝京大学医療技術学部柔道整復学科教員による講演1題、帝京大学大学院医療技術学研究科柔道整復学専攻大学院生による発表3題、(公社)栃木県柔道整復師会会員による発表2題が行われた。

柔道整復が医療技術としてさらに国民の信頼を得ていくためには、学術的研鑽を積みその効果を論証していく必要があり、そのためにもこのような場において知識を共有し、議論を交わすことは重要だと思われる。一人ひとりが柔道整復の価値を再認識し努力を重ねることで「柔道整復学」としてより発展していくのだと感じられる機会であった。

帝京大学医療技術学部柔道整復学科教員発表
『これまでやってきた研究』

帝京大学医療技術学部柔道整復学科准教授 小林恒之

帝京大学大学院医療技術学研究科柔道整復学専攻大学院生発表
『新生仔マウス小脳皮質発達過程における各種栄養物質トランスポーター発現動態の解析~早期・組織の損傷・修復過程の理解を深めるために~』

帝京大学大学院医療技術学研究科柔道整復学専攻 青木未来

『組織の再生過程における栄養物質トランスポーター発現動態解析~マウス肝再生モデルを用いて~』

帝京大学大学院医療技術学研究科柔道整復学専攻 牛込謙一郎

『剣道選手における腰痛の発生要因と腰腹部筋の関係』

帝京大学大学院医療技術学研究科柔道整復学専攻 鈴木拓哉

(公社)栃木県柔道整復師会会員発表
『県内イベント会場で行なった骨密度測定の報告』

(公社)栃木県柔道整復師会佐野支部・学術部副部長 尾野剛稚

『シンスプリントにおける足底板を用いた2症例』

(公社)栃木県柔道整復師会小山支部・学術部部員 舘佳孝

 

 
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