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学校長トップインタビュー:学校法人杏文学園 東京柔道整復専門学校 校長 有賀薫氏

2022/06/22

今年で70周年を迎えた東京柔道整復専門学校。この業界で知らない人は一人もいないほど有名な老舗の柔道整復師養成校である。しかも柔道整復師のみの単科校であり、毎年の高い国家試験合格率がそれを物語っている。それ程重要な東京柔道整復専門学校の校長を務める有賀薫氏に柔整師本来の役割等について話していただいた。

東京柔道整復専門学校は、アットホームな校風と学生のやる気を大事にしています!
学校法人杏文学園 東京柔道整復専門学校 校長

学校法人 杏文学園
東京柔道整復専門学校
校長 有賀 薫 氏

 

―コロナ禍になって3年目に入りました。そろそろ収束しつつあるように見えますが、貴校でとられた対応策等お聞かせください。

最初の1年目の時には、大変でした。学生達にしてみれば、やはり学校に行きたいという気持ちが強いと思います。しかしながら本校は、定員が全部埋まっている学校です。教室がギチギチで、学生と学生の距離や3密を防ぐというのはかなり困難を要するため、コロナ感染拡大初期には完全オンラインで行っておりました。去年の暮になって、ハイブリットということで、半分登校、半分オンラインにして、それを1週間交替でずっとやってきましたが、今月から全員登校に切り替えました。学生たちはとても喜んでいます。ただ9割以上の子は喜んでいますが、数名は〝学校に行くのが怖い〟という学生もおります。今は、家に居て買い物も出来てしまいますし、勉強も出来ますし、リモートで人とも会えますので、人が集まるという文化が2年以上失われてしまいました。学校に来いといっても、逆に来たくない。人と付き合いたくない、接したくないというような、そういった悪影響も出てきてしまっています。しかし実技の授業は、さすがに学校に来ます。学生達もやっぱり実技は面白いのでしょう。

 

―生徒さんも大変だったと思いますが、先生も大変苦労されたという話もお聞きしますが…

多くの資料を郵送したり、電話で質問を受けたり等、とても大変で大騒ぎでした。今はもう慣れましたし、対面でも授業を行っております。先生達も家で動画を作ってきて、最初の10分位それを映してから授業に入る等、様々に工夫しております。他にも、本校では「まとめ動画」というのを作ってユーチュ-ブに上げたりしています。これについては賛否両論あるようです。そういった形でいろいろなツールを活用するなど、この2年の間で随分進歩しました。学生全員にタブレットや携帯wi-fi器を無償貸与し、オンライ授業行っていたのですが、今では教室内に学生用wi-fiを完備し、教室内でもタブレットの活用を始めました。私自身もiPadで授業をするようになりました。要するにIT関連、そういった部分では非常に進歩しましたし、本校が遅れていたところを一気に導入することになりましたので、良い流れだとは思います。今後もそういうかたちで、良い点、長所は取り入れながらやって行こうと思っております。

東京柔道整復専門学校

 

―貴校は毎年合格率が非常に良いですが、秘訣というか秘策があるのでしょうか?

1つは教員達が研究して、教えるテクニックにたけているというのが一番だとは思います。例えば、全く意味はないことですが、前回の国家試験は4択のうち2が多かったや3が多かったという、そんな統計もやはりとったりするんです。更に毎年どういった問題が出ているのかについても追及しておりますので、そういった分析に基づいて、先生達も命をかけてやっています。

 

― 一般論としてお聞きします。試験に不合格だった生徒さん達は何年も続くとたまっていくと思いますが、その方々への対策というのはどのように行われているのでしょうか?

実は、本校は今年70周年を迎えますけれども、約20年前に合格率80%位の時がありました。その時に、このままでは良くないということで「チューター制度」をしいて、チューターが教えるというやり方を始めました。スタート時は3年生で成績が優秀な生徒を指名してクラスで勉強会をやらせる等して、その生徒達が卒業しても残って、また次の後輩を教えていくというチューター制度が其処から始まりました。

しかも「杏文塾」というのが現在もあります。学校を卒業しても、もう1度国家試験にチャレンジする方たちが通っています。前年の現役合格率は100%でしたので、去年杏文塾に通った生徒は全員他校出身の方たちです。多い時には他校の卒業生が30人位通っていた時もあります。「杏文塾」は、通常の学校の授業とは違って、国家試験対策の予備校みたいなものですから、柔整師という職業に関してや人間的にどうあるべきかといったことよりも国家試験に特化した授業を行う場所ですので、そのノウハウが在学生の授業に随分活きていると思います。去年も完全オンラインで5名位が杏文塾を受講していましたが、そのやり方も蓄積されてきています。対面では去年は15人位通っておりましたが、半数位は大学の卒業生でした。私ども教員は、〝なんでこの子が落ちたのだろう?〟という落ちるような生徒では無いのにという感じの方達が多かったです。全国の既卒者の合格率は17%位ですが、本校の既卒者の合格率はほぼ100%です。ここ十数年において2年連続不合格という記憶はありません。

 

―定員に満たない学校が増えているとお聞きします。貴校のどういうところが人気であるとお考えでしょうか?

本校はこれまでもずっと定員に達しておりますが、他校では定員に達するのが非常に難しくなっている状況であるとお聞きしております。やはり、本校に来られる生徒さん達は、まずは合格率が良いということで本校に興味を持つようです。ただし最終的に入学を決めるのは、本校の雰囲気や校風だと思います。

私が職員として入ってから約35年になりますが、当時の学生は先生に絶対にさからえないというような学校でした。練馬区に移転したのが平成6年ですが、その頃から私は冗談が大好きなので、学生と先生の上下関係をなくして今のアットホームな雰囲気を作り上げてきたように思っています。

また本校は、学生のことを一番に考えている学校ですし、教員達も身を削って学生たちに対応しているところが結果になっているんだと思います。校風と文化。やはり単科校で、柔整だけでやっていますので、小回りがききますし、学校全体で国家試験を応援するという雰囲気が出来上がっています。そこら辺が強いんだと思います。

東京柔道整復専門学校

 

―本当は夜間部って凄く大切だと思います。

夜間部はもうあまり需要が無いため、他校はバタバタ募集を停止しています。今年初めて本校の夜間部も、定員60名のところが40名でした。

東京柔専の設立時は夜間部でしたから、その大元を切るということはしたくないと思っていることと、やはり夜間じゃないと通えないという人はいますので、他校が閉めるのであれば、本校は残そうという考え方です。しかも夜間の学生のほうが勉強はよく出来たり、意識が高い場合があります。

 

―3年間の臨床実習と卒後教育がありますが、卒後臨床実習というのはどの学校もやっていることなのでしょうか?

昔と違って今は大手の接骨院グループというのがありますが、かなりしっかりした教育制度を作って研修を行っているところが多いです。ですので自分たちの施術方針と異なる講習は聞いてほしくないという考えもあるように思います。

本校では、私が去年構想を練って立案した「十年教育」というプログラムをスタートさせました。入学前の2年間と在学中の3年間、そして卒業後の5年間で「十年教育」を目指し実施していくことにしました。最初の2年は殆どの人は高校2年生ですから、例えばスポーツや柔整、ハリや介護等、目指すものはなんでも良い訳ですが、医療に興味があるという切り口で先ず来て頂いて、その後、〝本当に自分は何になりたいのか〟ということを高校3年になるまでに考えるというプログラムです。高3になって、もし柔整を希望して、本校に入学することを決めたとなれば、入学までにちょっとしたテキストがありますので、それをやって頂く形です。とにかく今の若い子達は勉強したことがないという子が非常に多く、勉強の仕方が分からない。漢字がどうしても苦手だという子達が大勢いますし、医学はどうしても漢字は必須ですからプログラムに基づいて勉強していくことは重要であると考えています。

 

―今の柔整業界は、将来に希望を持てないような空気がありますが、その辺先生たちは学生さんにどんなふうに伝えていらっしゃいますか?

そこのところも本校では、非常に力を入れています。柔道整復師になると、ビルが建つ、ベンツが買えるという時代はもう昭和で終わっています。確かに最近の柔整業界は、明るいニュースもなく、かなり疲弊しているように思います。しかし保険収入のみを頼るという考えは減っているように思います。つまり、健康保険以外でどうやっていくのかというところが大事だと思いますし、今は収入が6:4位で自費診療を行うという院も多くなって来ています。ネガティブな暗くなるような言い方は勿論しませんが、〝保険だけでは食べられませんよ〟ということは強調しています。〝だから勉強しなさい〟〝だから技術を磨きなさい〟と。保険適用の場合は、決められた外傷で決められた施術をすれば請求が可能です。でもこれからの柔整師は、それ以外にこういった特別なやり方があります。〝僕はこういった技術を持っています。でもこれは保険適用外になります〟と、堂々と言えるような人にならなければ、この先食べていけないので、2、3年程前からその辺についての取組み、啓蒙を行っております。昔であれば5年間位、修業をして接骨院を開けば患者さんが40人50人来院されて、保険で高収入というのが柔整師でしたが、今はそうではありません。

 

―もうそういう時代ではないと分かった上で、柔整師を目指しているんですね。

確かに今の学生は、昔みたいにギラギラしていなくて、開業はどうかなという学生達も多いように感じます。開業も頭にはあるのでしょうけれども、開業しても成功するとは限らないというのが分かっていますから、勤務柔整師という形でなるべく長く続けてチャンスを狙っていく人達が多いような気がします。

もう1つは、スポーツトレーナーを目指している学生も多いです。本校は、トレーナーコースというのを日本で一番最初に作った学校ですから、其処のキャッチは強いです。やはりスポーツの分野で働きたいと考えている学生達が非常に多いです。例えば、大阪なおみさんのトレーナーは柔整師です。ああいう風になれるのは、ほんの一握りですが、頑張ればちょっとしたチームのトレーナーやアスリートのトレーナーになることは可能です。

東京柔道整復専門学校

 

―地域包括ケアシステムへの参入についてのお考えを聞かせてください。

業界団体の悪い部分と言えるのかもしれませんが、どうしても柔整師というのは、下に見られます。もちろんレベルアップをしなければならないのは当然ですが、医師には整形外科という分野がありますから、柔道整復師を認めないというところが、いつも困難な状況を作り出していると感じておりますし、もっと柔道整復師をうまく使えばよいのにと思っています。

機能訓練指導員だけではなく、予防を含めていろいろな技術も持っていますので、介護のスタッフとして十分な素養を持っています。でも中々参入出来ないのは、業界の努力不足のようにも見えます。国民が声を上げてくださると厚労省も前向きに考えてくれるのではないでしょうか。

 

―柔整師の良さとは?

私の個人的な話になりますが、私は走るのが好きで、よく走ります。東海道を日本橋から京都まで走って、帰りは中山道で返ってきました。今は奥州路と言って函館を目指しているんですが、東海道を走っている頃から膝がおかしくなって、痛くて整形外科に行ってレントゲン・CT・MRIを撮っても何でもないと言われました。でもやはり痛いので、本校の先生達がやってくれると良くなります。私の膝が痛い時に本校の先生が何をやってくれたかというと、筋肉のバランスが悪いから、鍛えましょう、膝が痛いんだけどお尻を鍛えましょうと痛んだ膝だけではなく、身体全体のバランスをとって治療をしてくれました。これが柔整師だと思います。

つまり、お医者さんに行って写真撮って、何ともないと言われて、だけど痛いというのは柔道整復師でなければ治せないように思います。医学的にこれが悪いというのであれば、其処に対して、薬だ、注射だ、手術だとありますが、そうではない不定愁訴、或いは未病みたいなものに関して、お医者さん達は弱いと私は思っています。其処はやはり柔整師の強みであり、活きるところだと思っています。そこを理解していただけるお医者さん達は非常に有難いですし、逆にそういうお医者さん達は柔道整復師をしっかり使って、更に自分たちが繁栄している方も多いです。

 

―今後の展望について

最古の柔道整復師養成校であり、柔道整復学科一本でやっている学校です。そこにはなにか大きな責任と義務が本校にはあるように感じます。まずは国家試験の為だけではなく、社会に求められる柔道整復師の教育の向上に努めていかなければなりません。むろん業界の為にも微力ながら努力をしなければならないことは言うまでもありません。ですが本校ができる最大のことは、質の良い・他を思いやる柔道整復師の輩出であると思います。毎年の全国の資格取得者の5%強が本校の出身者です。関東で言えば約20%が本校の出身となります。ゆえに「柔道整復師の職務に誇りと責任を持ち、仁慈の心を以て奉仕する」卒業生を輩出することこそが業界の為になると信じ、かつそれが本校に課せられた最大の責務と思います。古いだけの小さな学校ですが、伝統は守るものではなく、築き上げていくものであるという気持ちで、100周年に向けて成長をしていきたいと存じます。

 

 

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