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ビッグインタビュー:帝京大学大学院医療技術学研究科
柔道整復学・前専攻主任 塩川光一郎氏

2014/05/16

―また塩川教授はその著書にスイスのローザンヌ大学に赴きセミナーを行い、セミナー前半は、アフリカツメガエル胚でのSAMDCと略称して呼ばれるポリアミンの代謝で大事な役割を果たす酵素を用いた発生学研究のテーマについて、後半では現在の本務である柔道整復学についてお話しされたと書かれていましたが、スイスの研究者の方達の反応はいかがでしたか?塩川教授があちこち海外各国で柔道整復についてお話してくださっていますが、海外の方は日本の柔道整復についてどの程度理解・認識されているようですか?

非常に興味ある方向性を示してくれているということで、みんな面白がっています。いろんな国からの感想をいただいております。外国の研究者や大学院生はとても高い関心を持たれて面白いと言われますので、〝じゃ貴方は、腕が折れたらどうする?〟という質問を私が投げかけると、MIHの女性の部長が〝私は手術をしないで治してくれる柔道整復師の病院に行きます〟と言われました。ところがフロリダのポリアミンの生化学者である仲良しの研究者が〝お前の話は素晴らしい〟というので〝君が骨を折ったらどうする?〟と尋ねると、〝イヤ、私は整形外科に行く〟と言いました。当然だと思います。私が面白い話をしたからといっても整形外科に行く人が殆どかもしれません。やっぱり柔道整復はもっともっと宣伝をして事実を知らせなくてはいけません。私はこれまで7カ国位で柔道整復の話しをしています。私が覚えている範囲では、中国の大蓮医科大学、ペンシルベニア大学の医学部、ローザンヌ大学、イタリアのパドバ大学とローマ大学、オーストリアのグラーツ大学、スイスの公文アカデミーでも、行く先々で話しました。ローザンヌ大学の一人の遺伝子学者は〝ツーショート〟、話が短すぎると言われました。もっと知らせろということです。

 

―最後に細胞生物学者である塩川教授がこの業界に深く関わってくださって、またこの度帝京大学を退官されることで、元の世界に戻られていくことになるようですが、どんなことをお考えになられていらっしゃるのか、そのお気持ちをお聞かせください。

引き続き、柔道整復専門学校で生理学を教えることになっておりますから、柔道整復師の方々のお手伝いをしていくことになります。冲永学長のお蔭で、レパートリーが広がりましたので、生きていて良かったなと思っています。帝京大学に来て、バイオサイエンスでスタートしてバイオサイエンスで定年退職するのであれば私にとっては普通のことだったでしょう。しかしそれをバイオサイエンスと柔道整復学と両方足し算でやってきましたので、レパートリーが広がりました。そして、基礎生物学のことがらを医療技術の1ブランチに注ぎこむことが実行できました。それは自分にとって、とても良いことでした。トンイという韓国の昔の朝鮮王朝の映画があり、クムという天才的な子供がいて、ある時、偉い学者に〝お前は勉強が好きで仕方がないように見えるが、いったい、何のために勉強するのか?〟と問われて〝分けるためです〟と答えるんです。学者は、〝それは、どういう意味だ?〟と問い返すのです。その子供が答えるには〝才能のある者は、周りの人間から才能を集めて生まれてきているので、才能のある者は多くを学び、その学んだことを周りの者達に分け与えるのがその本来の役割である〟と言うのです。これは私もおぼろげながら感じていたことでしたが、このように明確に表現できるまで、考えがまとまってはおりませんでした。私はクムのような天才ではありませんが、勉強が好きだから努力をしている訳です。このトンイの子供のように、勉強してきたことを自分のためだけに使うのではなく、親戚縁者をはじめ友達、周りの無関係の人達にも分けるのが良いことだと思います。冲永学長が、〝塩川さん柔道整復学科の学科長になって少し面倒をみてくれないか〟と言われたことにより、私も分けるチャンスを冲永学長から分けて頂いたのです。私達がこれまで勉強してきたものを学生諸君に分けたことにより、当大学院から院生が育っていきました。その院生達がやがて教授になって、私塩川が言っていたことを思い出しながら、また世の中の世話をする。細胞の気持ちが分かるという考えも引き継がれていくでしょう。そのことを私としては今とても嬉しく感じております。

 

●塩川光一郎氏プロフィール

経歴
1963年、九州大学理学部生物学科卒業。1968年、九州大学大学院理学研究科生物学専攻修了(理学博士)。同年、日本学術振興会奨励研究員(九州大学理学部生物学教室)。1969年、武田薬品工業株式会社生物研究所(感染病菌およびウイルス研究部)。1972年、ニューヨーク血液センター研究所(細胞生物学部門)、客員科学者(Visiting Scientist)。1974年、九州大学理学部生物学教室助手。1981年、九州大学理学部生物学教室助教授。1981年、日本動物学会賞。1989年、東京大学理学部動物学教室教授。2001年、東京大学名誉教授。2003年、帝京大学理工学部バイオサイエンス学科教授。2008年、帝京大学医療技術学部柔道整復学科学科長。2003年、中央民族大学(北京)客員教授。2010年、大連医科大学(大連)客員教授。2012年、帝京大学大学院柔道整復学専攻主任教授。2014年、福岡医療専門学校講師(非常勤)およびアジア日本語学院(福岡・長住)学院長(2002年より)
所属学会
日本発生生物学会 日本動物学会 日本分子生物学会 日本細胞生物学会(永久会員) 日本ポリアミン学会(評議員) 日本柔道整復接骨医学会
専門分野
分子発生学・細胞生物学・生理学・柔道整復学
趣味
福岡OBフィル会員(2nd Vn);九大フィルハーモニー会顧問。
著書
実践柔道整復学シリーズ(塩川・宇井・松下監修):塩川光一郎編著『生理学』2010年オーム社。同シリーズ、(塩川・宇井・松下監修):川崎一朗・塩川光一郎編著『柔道整復学総論』2012年オーム社。塩川光一郎著『生命科学を学ぶ人のための大学基礎生物学』2002年共立出版。塩川光一郎著『分子発生学』1990年東京大学出版会。塩川光一郎著『ツメガエル卵の分子生物学』UPバイオロジー・シリーズ1985年東京大学出版会。『ガードン卿:その研究と人柄の魅力』2012年理工学社。
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