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フランスベッドグループ健康保険組合・土屋誠一郎常務理事に聞く!

2013/06/01

―医療費の適正化という名の受診抑制だという批判もあります。またそれが効を奏して受診抑制によって医療費が抑制されたとしても、患者さんの病状が改善されないということでは本末転倒のように思いますが、そうしたことに関して何かお考えがありましたならお聞かせください。

自費治療なら何も言う事は有りませんが、不適切な治療や不正を見つけて正しい方向に正す事が我々の使命なので適正化に名を借りた受診抑制とは思いません。確かに治らないと意味がありませんが、もし柔整に対する受診抑制だったとしたら患者さんは藁をもすがる気持ちなのですから、整形外科に通いはじめことは明らかです。その方が確実に医療費は上がると思いますが、今の法律下ではこれが正しいルールであり我々が意義を唱えることは無い筈です。また、症状の改善進捗状況についても個人差があり把握できない状況にも問題があるので中立的な立場で判定するセクションも適正化の手段として必要だと思います。それが保険者だと思っています。よくスポーツが原因で接骨院に行く人がいます。例えばテニスをやっていて肘をひねったとかで接骨院にかかりながら、次の日もまたテニスに行く。悪いのであれば完治するまで休めば良いのに、痛みを我慢しテニスに行き、又柔整にも何ヶ月も通い続ける方がありました。この場合、いきなり受診抑制する事は簡単ですが柔整を利用している事情をよく確認し、状況によっては自費治療について時間を掛けてでも説明し、説得する事も保険者の役割と思います。

 

―一部の柔道整復師の方からは、治療のガイドラインが必要であり、保険者や患者さんも参加される中で、作ることが望まれるとして、作り始めているとも聞きますが、そうしたことに関してもし参加の依頼がありましたなら、参加してみたいというお考えはありますか

そもそも歴史のあるこの業界において基本となるガイドラインが無いことが不思議ですね。ガイドラインについては最終的には各関連セクションに影響を及ぼす事なので、先ずは柔整師団体として早く示して頂き、保険者団体や管轄省庁に原案を示すことが重要であると思います。業界としてのガイドラインの認可が取れれば我々保険者は粛々とそれに沿って作業を進めていくだけです。もし、ガイドラインがあっても"運用"が間違っていたら無意味なので宜しくお願いしたいものです。

 

―JBさんが出されている案については、どんな風に思われておりますか?

JBさんが業界の発展と正常化の為、独自な活動を行い改革案を検討されていることには改めて敬服いたしました。以前、お聞きした計画診療なんかも実現すれば安心して柔整治療が受けられる良い制度だと思いますが、中々業界内統一も難しいようですね。実現の為には内容もさることながら、少しずつでも良いので前進していく事を期待しています。法律の整備や国の承認、柔整業界内の統一、保険者との連携等難問も多く実現には相当長い年月がかかるのではないかと心配しています。

 

―療養費が支給・不支給の決定権は保険者にあるとされておりますが、無知な被保険者は困りますが、必要があって接骨院で治療を受けたにも関わらず、不支給になったというのであれば、国民皆保険の理念に反すると思われますし、保険料を支払っている被保険者の健康は守られないことにならないでしょうか。その辺はどのようにお考えでしょうか?

確かに決定権は保険者に与えられていますが、照会方法に多少の差があるにせよ、それを乱用し理由もなく行使している保険者は無いと思います。当健保でも不支給と判定する場合は、過去の治療状況の確認、治療の原因、本人確認を行なってからですので、皆保険の理念に反する審査とは考えておりません。自費で受ける事も否定しているわけではないのですから。柔整機関への支払についても悪意で止める事はありませんし、正しいと思われる治療に対しては長期になっても不支給としたこともありません。内容の照会中、本人から回答がない為、3~4ヶ月保留になった時もありますが柔整師さんからは何も言って来ないのでそのままになったケースはありました。普通は〝なんで払ってもらえないんですか?〟と聞いてくる筈ですが、何も言って来ないのはそういう例が他にもいっぱいあるのだろうと判断しています。不支給となった場合、一番困るのはいきなりレッドカードを突きつけられた患者だと思いますので、そこをご理解頂き正しい受診の有り方を患者に説明することをお願い致します。例えば、この治療内容では次回からは自費治療となります。と堂々と言える姿勢を柔整側にも見せて頂きたいですね。

 

―今後どのような方策をとれば、全ての国民にとって健康に役立つ方向に向かうことが出来ると思われますか?それについてどんなお考えでもよろしいのでお聞かせください。

国民が安心して柔整を含めた診療機関で適切な治療を受け健康になる事が国民の為でもあり、健保財政の安定にもつながる訳ですから、適切な治療に対して保険者が療養費を支払うことは当然の義務であり、其処は否定することではありません。しかし、制度の悪用や不正に対してはそれなりの対処を行い、又それを許す制度的な欠陥は少しでも早く解決していかないと最終的には国民にとってもプラスとなることは無いと思います。柔整側も医療機関側も、互いを目の敵にするのではなく次元の違う立場で切磋琢磨して頂き、タッグが組める様になる事を保険者として期待しています。今、柔整師数が年々増え続ける中、業界団体が共通の目的をもって正しい倫理のもとで業界を発展させ、誰もが柔整師による治療を気持ちよく受け、関連業界が夫々に発展していくことを期待します。

 

 

●土屋誠一郎氏プロフィール

1979年入社。以来、本社勤務、大阪勤務等、営業畑を長く歩まれる。2009年、フランスベッドグループ健康保険組合に配属。常務理事に就任、現在に至る。

 

 

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