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柔道整復師と介護福祉【第26回:介護保険制度の動向について】

2016/12/16

平成27(2015)年度の介護保険制度改正の方向について、「制度改正」の観点から再度整理してみます。

平成30年度改正に向けた平成27年度制度改正

今回の制度改正の目玉は、大きく3点となります。要支援1・2の対象者について介護保険本体の給付(予防給付)から、訪問介護と通所介護事業所を外し、対応するサービスについて地域支援事業を再編成することになります。

個別のサービスでは、通所介護の機能の改革、特に定員10人以下の小規模型については、地域密着型サービスへ移行となります。

今後新たな事業所開設については市区町村の保険者の管理下に置くということになります。行政担当者のさじ加減で開設できない地域が増えることでしょう。また、特別養護老人ホームの入所対象者を原則要介護3以上にすることが盛り込まれております。これらの改正を実際に実施するためには、区市町村、行政トップの力量・考え方が最大の課題です。一所管課の対応を超えています。

 

要支援1・2の軽度者の訪問介護・通所介護の予防給付の対象から除外へ

介護予防でのサービスの利用は、介護予防通所介護と介護予防訪問介護が中心となります。それぞれのサービスの内容は、前者では機能訓練(療法士、看護師、柔道整復師、あんまマッサージ師)が大半で、後者では買い物、お洗濯が中心となっています。

全国平均で介護予防の利用者は全体の約27%(平成25年4月末。地域によっては30%強、)ですが、そのうち57%が利用している訪問介護と通所介護が介護保険の本体給付から外れることとなります。

市町村による要支援者の占める割合の凸凹に加えて、同一市町村内でも地域により大きな格差が生じております。これまで利用している者の相当数が、介護保険の本体給付から外れることになりますので、訪問介護と通所介護を利用していた人たちへの対応が極めて重要な課題となります。担当窓口は、地域包括支援センターとなり、職員の増員、担当窓口の拡充、行政支援も必要ですが、マンパワー不足につきる行政のサポートに民生員や町内会といった地域の有志の活躍も期待されています。このような課題を抱えながら、軽度者への対応をどうするのか、地域支援事業の再編成による対応が必要となっています。

訪問介護・通所介護利用者の具体的なニーズ、またその利用によりどのような改善が図られていたかを把握し、どのような提供体制を構築していくか、区市町村の力量が問われます。

 

介護予防事業者への対応

予防給付の廃止に伴う介護予防サービスの事業所との関係も出てきます。厚生労働省は制度廃止に対して、現在給付している財源を、新たな事業に移すので、サービスの利用は継続できると説明しています。財源を確保し事業者側に手当、費用の伸びに上限を設けるとのことで対処する方針です。予防給付は、「新しい総合事業」に移行し、同様に実施する方針ですが、利用者のニーズ・満足度等を高めながら地域支援事業を再編し新たな事業へ構築するかが課題となります。自治体によっては、これらを踏まえた準備を始めているところもありますが、まだ認識できていない区市町村もあると思います。

なお、要支援サービスのうち訪問介護と通所介護の給付費が、介護保険の事業費に占める割合は3.3%(要支援全体では5.7%)程度です。また、要支援サービスの廃止については、平成27年度当初からではなく、自治体の準備状況等に応じて、27年度から3年以内に完了という日程設定になっています。

 

まとめ

全国一律のサービス内容であった訪問介護や通所介護については、新しい総合事業に移行することにより、介護事業所による既存のサービスに加えて、様々な主体により、多様なサービスが提供されることにより、利用者の選択の幅が広がる予定。

 

通所介護の改正

目的を明確にした通所介護への区分変更については、わかりにくい面もあります。

例えば、主として預かりサービス(レスパイトケア)の場合、介護保険施行前に行われた、高齢者福祉センター等の利用とどのあたりが違うのかが不明瞭です。また、認知症対応型通所介護のプログラムと認知症高齢者を受け入れている通所介護(若年型認知症対応加算)の、高齢者のそこでの過ごし方の具体的な違いなど不明瞭です。

全国的に通所介護が非常に増加している現状では、これらの明確化に危機感があったようです。したがって、今回の通所介護の改正は、機能の分化の明確化や増え続ける通所介護事業所のうち特に10人以下の小規模型への対応が標的となります。

現在の通所介護は、認知症対応型通所介護と一般の通所介護に大別されており、そこのメニューの中に機能訓練等の短時間型が著しく増えてはいますが、基本は長時間型が主流となっています。これらについて、通所介護の機能を分けるという考え方です。①機能訓練対応 ②認知症対応 ③療養対応応の通所介護へ改正が検討されています。この場合は、単に長時間のデイサービスを提供し、その中で一部機能訓練プログラムを実施しているような通所介護の介護報酬は、極端に運営できるかできないかの瀬戸際まで介護保険報酬単価が下がることが予想されます 。

 

小規模型通所介護の地域密着型への移行と再編

小規模型(18名定員以下)は、地域密着型サービスへ移行する、若しくは、小規模多機能居宅介護のサテライトや大規模型・通常規模型の通所介護のサテライト型事業所という位置づけが示されています。事業者は、地域密着型サービスに移行することで、その指定は当該市町村になり、整備目標数は、介護保険事業計画において管理、目標値を超える開設は事実上、総量規制となります。なお、通所介護の事業所数は平成24年度末現在35,453ヶ所で、そのうち小規模型は17,963ヶ所で、事業所数全体の50%を超えとなります。

 

在宅サービスについて

会計検査院は、平成25年10月22日、厚生労働省に、地域密着型サービスのうち、認知症対応型通所介護と小規模多機能型居宅介護の利用方法に対して、利用率が50%を下回る事業所が多くあることを指摘。これらの改善について処置要求を指示しております。平成30年介護保険改正時には、大きな変革が示されます。

 

特別養護老人ホームへの入所対象を、原則要介護3以上へ

原則的には、要介護3以上の利用が多いと思われますが、単身の認知症の高齢者等には一部在宅での生活が困難な高齢者等が存在している事実があります。要介護2以下の在宅生活困難者に対する居場所の確保(例 認知症であればグループホーム等)と、施設ではない高齢者への住まいの確保が地域においては喫緊課題です。これら高齢者の選択肢の拡充に、「サービス付き高齢者向け住宅」もありますが、利用料負担等の問題もあり、それでだけでは全ての解決には至りません。保険者による「在宅での生活継続のしくみ」とターミナルケアを視野に入れた「在宅での看取り」も喫緊課題として挙げられます。

 

「軽度(要介護1及び2)の要介護者」や「特別養護老人ホーム入所後に要介護1又は2に改善した高齢者」について

やむを得ない事情により特別養護老人ホーム以外での生活が著しく困難であると認められる場合、特例的に入所を認める取扱が示されています。

 

 
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