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柔道整復師国家試験対策【第6回:生理学のポイント ―概説~呼吸編―】

主要ポイント編 国家試験対策

今回で6回目となる国家試験対策講座。第3、4、5回と解剖学の主要ポイントをお送りしました。ある程度の把握はできているでしょうか。毎回言わせていただきますが、早い時期からの準備が大事となります。夏までにはしっかりと記憶となるよう取り組んでください。さて、今月からは全3回に渡って生理学の主要ポイントをお送りします。今回は、概説、体液、血液、循環、呼吸の生理学のポイントを提示します。

概説

1)ホメオスタシスされる因子

体液量、体液浸透圧、体液pH、体液電解質組成、体液ガス組成、体液温度

2)細胞膜の構成成分

蛋白質、リン脂質(主成分はリン脂質)

3)細胞膜のタンパク分子の役割

輸送体(チャネル、ポンプ)、受容体、酵素

4)細胞小器官の種類と働き

ミトコンドリア/高エネルギー化合物(ATP)の合成、肝臓・筋細胞の豊富   
粗面小胞体/リボゾーム付着   
滑面小胞体/ステロイドホルモンの産生(副腎皮質・間細胞)         
カルシウムイオンの貯蔵(筋細胞)、有害物質の無毒化(肝細胞)   
ゴルジ装置/合成された蛋白質の修飾(糖蛋白の合成等)   
リソソーム/分解酵素により細胞内消化   
中心小体/細胞分裂時に紡錘糸を形成   
細胞骨格/細胞の形態保持、運動、細胞内物質移動に役立つ
マイクロフィラメント・中間径フィラメント・微小管がある

5)DNAの構成要素と単位

糖(デオキシリボース)、リン酸、塩基(アデニン・チミン・グアニン・シトシン)
ヌクレオチドを1つと単位として、このヌクレオチドが鎖状に結合したものによって、二重鎖を形成。     
※クロマチン=DNAとヒストン蛋白で構成。細胞分裂時に染色体となる。

6)RNAの構成要素と種類

糖(リボース)、リン酸、塩基(アデニン・ウラシル・グアニン・シトシン)
mRNA(DNAの塩基配列をコピーしたもの)、tRNA(リボゾームにアミノ酸を運搬)
rRNA(リボゾームの母体)がある。

7)受動輸送を3つ

拡散(物質が濃度、電位勾配に従って輸送される形式)、
浸透(膜を通過する水の移動現象)
ろ過(毛細管圧を利用した物質の血管外への移動)

8)能動輸送を説明

濃度勾配、電位勾配に逆らってATPを利用した物質に移動現象
※エンドサイトーシス、エクソサイトーシス
受動・能動輸送では細胞膜を通過できないような高分子物質の移動スタイル  
エンドサイトーシス(細胞外→細胞内):マクロファージの貪食など
エクソサイトーシス(細胞内→細胞外):化学伝達物質の細胞外への放出

体液

1)体液と細胞外液と細胞内液の体重に占める%

体液量:体重の60%、
細胞内液:体重の40%、
細胞外液:体重の20%   
細胞外液:血漿(体重の5%)、組織液(間質液)(体重の15%)       
※脳脊髄液も組織液として考える

2)細胞外液に多いイオン(記号で)

Na、Cl、HCO3、Ca2+

3)細胞内液に多いイオン(記号で)

K、HPO4
※イオンではないが蛋白質も細胞外に比べ細胞内に多い

4)体液量を感知する受容器とその存在場所

容量受容器(低圧受容器)、心房・肺内

5)体液量調節における重要なホルモン

バゾプレッシン

6)体液浸透圧の決定因子

体液濃度(体液量、体液溶質物質→代表的なものはナトリウムイオン)   
体液濃度上昇=体液浸透圧上昇、体液濃度低下=体液浸透圧低下

7)体液浸透圧を感知する受容器とその存在場所

浸透圧受容器、視床下部

8)体液浸透圧調節における重要なホルモン

アルドステロン(レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系)、バゾプレッシン

9)体液の至適pH

7.4±0.05、弱アルカリ性   
数値上昇=アルカリ性に傾く=アルカローシス   
数値低下=産生に傾く=アシドーシス

10)体液pHに影響を与える代表的イオン

水素イオン(水素イオン濃度上昇=酸性へ)

11)酸塩基平衡調節の3要因

肺での調節(二酸化炭素を体外へ)、
腎での調節(水素イオンを尿中へ、重炭酸イオンの産生)、
血液緩衝 (ヘモグロビン蛋白、アルブミンによる)

血液

1)血液中の血球と血漿の割合

血球成分45%、血漿成分55%

2)血球成分の中で核のあるもの

白血球 (赤血球、血小板は無核)

3)血球成分のそれぞれの数は?

赤血球(450〜500万/㎜3)  
白血球(3500〜9000/㎜3)   
※血小板は10〜40万/㎜3

4)血球成分の中で寿命が最も長いもの

赤血球(約4ヵ月)

5)血球の産生部位と処理部位

骨髄で産生され、脾臓で処理

6)赤血球の役割

酸素・二酸化炭素運搬、血液緩衝作用

7)赤血球に含まれる血色素とその代謝産物

ヘモグロビン、¥ビリルビン(間接)  
※赤血球が破壊されヘモグロビンが放出されうる現象を溶血という

8)顆粒白血球と無顆粒白血球

顆粒白血球:好中球、好酸球、好塩基球(肥満細胞)   
無顆粒白血球:単球(マクロファージ)、リンパ球(T・B)

9)赤芽球(赤血球)、顆粒球系、巨核球系(血小板)の造血因子

赤芽球系:エリスロポエチン、
顆粒球系:コロニー刺激因子
巨核球系:トロンボポエチン

10)血清とは

血漿からフィブリンーゲンを除いたもの

11)血漿蛋白の種類と役割

アルブミン:膠質浸透圧維持、担送機能、緩衝作用   
グロブリン:免疫機能、血液粘性   
フィブリノゲン:血液凝固機能

12)空腹時の血糖値

70〜110mg/dl(0.1%)

13)血漿中のタンパク質量

7.5g/dl

14)血漿中の無機塩類濃度

0.9%

15)A凝集原、B凝集原の有無により決定されるもの

ABO式血液型

16)A凝集原、B凝集原の存在部位

赤血球細胞膜  
A凝集原:A型、AB型  
B凝集原:B型、AB型

17)α凝集素、β凝集素の存在部位

血清(凝集素=抗体) 
α凝集素:B型血清、O型血清 
β凝集素:A型血清、O型血清

18)血液凝固機序

一次血栓形成、スチュアート因子の発生         
 ↓    
プロトロンビンをトロンビンに(スチュアート因子、カルシウムイオンによる)
 ↓    
フィブリノーゲンをフィブリンに(トロンビンによる)→ 
 ↓  
二次血栓の形成

19)線維素溶解をおこすもの

プラスミン
※ヘパリンは抗凝固機能を持つが線維素溶解するものではない

20)プロトロンビンが生成される臓器と必要なもの

肝臓、ビタミンK

循環

1)刺激伝導系の役割

興奮発生と伝導

2)刺激伝導系を記せ

洞房結節(右心房上大静脈開口部)
→房室結節(右心房冠状静脈洞開口部)
→ヒス束(房室束)    
→ 右脚・左脚 
→ プルキンエ線維

3)心筋の基本的性質

①自動性:
洞房結節により興奮が発生する為に、自ら興奮し収縮することができる  
          
※洞調律:洞房結節が歩調とり(ペースメーカー)となっている時の  心臓の拍動リズム

②伝導性:心房、心室の固有心筋へ順序よく興奮を伝導する
③興奮性:脱分極→オバーシュート→プラトー→再分極
※興奮時、カルシウムイオンの流入、興奮持続が長い
※洞房結節、房室結節は歩調とり電位を認める    
④収縮性:固有心筋細胞は収縮する性質を持つ
1)興奮収縮連関=興奮に伴い収縮する            
2)全か無かの法則            
3)階段現象:刺激頻度増加により収縮力が強くなる
4)不応期:絶対不応期が長い為(収縮時間と一致)、収縮加重が認められない
          
5)スターリングの法則:心臓の拡張度(静脈還流量)によって心収縮力が強くなる

4)心電図P波、QRS波、ST波、T波、PQ(PR)間隔、R−R間隔が示すもの

P:心房の興奮    
QRS:心室全体に興奮が広がる時期    
ST:心室全体が興奮している時期    
T:心室の興奮の回復(消退)    
PQ:房室間興奮伝導時間    
R−R:1心周期と1心周期の間隔、短縮=心拍数増加、延長=心拍数減少

5)心室の心周期を等容性弛緩期から記せ

等容性弛緩期→充満期→等容性収縮期→駆出期    
※心房収縮期を加えるならば、充満期の後    
※心室弛緩→心室内圧低下、心室収縮→心室内圧上昇

6)心周期において、動脈弁が空いている時期と房室弁が空いている時期

動脈弁開口:駆出期  
房室弁開口:充満期   
※第1心音発生:等容性収縮期、第2心音発生:駆出期終期

7)弾性血管、抵抗血管、交換血管、容量血管を記せ(特徴も)

弾性血管:大動脈、弾性線維豊富、脈波形成   
抵抗血管:細動脈、平滑筋豊富・神経分布蜜、収縮核超能高く、血流量・血圧調節能高い   
交換血管:毛細血管、1層構造な為に物質の透過性が高い   
容量血管:静脈、伸展性に富み、弁も有している為に貯血機能が高い

8)血流速度が遅い部分、総断面積が大きい部分、血圧が最も低い部分

血流速度:毛細血管  
総断面積:毛細血管  
血圧:大静脈

9)平均血圧の求め方

拡張期血圧+脈圧/3   
脈圧=収縮期血圧ー拡張期血圧

10)血圧上昇要因

心拍出量、血液量、血液の粘性、血管の伸張性(弾性)

11)血液の化学受容器と圧受容器(何を検知しているか)

化学受容器    
 頸動脈体・大動脈体、中枢性化学受容器:血液中の酸素分圧・二酸化炭素分圧を検知   
圧受容器    
 容量受容器(低圧受容器):血液量を検知    
 頸動脈洞・大動脈弓圧受容器(高圧受容器):血圧を検知

12)循環中枢の存在部位

延髄     
※循環中枢(弧束核、心臓抑制中枢、血管運動中枢)

13)心、血管機能を亢進させるホルモン(複数)

カテコールアミン(アドレナリン・ノルアドレナリン)    
レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系、バゾプレッシン

14)各組織への局所循環のうち、自己血流調節能に優れている循環

脳循環

15)各組織への局所循環のうち、毛細血管の物質透過性が低い循環

脳循環

呼吸

1)肺胞に存在する代表細胞

I型肺胞上皮細胞・Ⅱ型肺胞上皮細胞(表面活性剤分泌細胞)、
塵埃細胞(大食細胞)

2)肺胞の収縮因子

肺胞の弾性線維、肺胞内面の水による表面張力
※胸膜腔の陰圧、表面活性剤はこの2つに抗する

3)安静時の呼吸筋(吸息時、呼息時)の状態

安静吸息:外肋間筋、横隔膜の収縮→肋骨挙上、横隔膜下降→胸郭容積増大
安静呼息:外肋間筋、横隔膜の弛緩→肋骨下制、横隔膜上昇→胸郭容積減少

4)残気量、機能的残気量とは何か

残気量:最大限に呼気を行っても、気道、肺内に残る空気量
機能的残気量:安静呼息後に気道、肺内に残る空気量(予備呼気量+残気量)

5)死腔量、肺胞換気量とは何か

肺胞換気量:呼吸によって体内に入った空気量の中で、肺胞に入る空気量
死腔量:呼吸によって体内に入った空気量の中で、気道に入る空気量

6)吸息時の肺胞内圧、胸膜腔内圧の圧状態

肺胞内圧:陰圧  
胸膜腔内圧:陰圧

7)呼息時の肺胞内圧、胸膜腔内圧の圧状態

肺胞内圧:陽圧  
胸膜腔内圧:陰圧

8)呼吸仕事量の決定因子

コンプライアンス(肺と胸郭の膨らみ易さ)と気道抵抗
※コンプライアンス低い=膨らみにくい=仕事量増大
 気道抵抗高い=空気流入しづらい=仕事量増大

9)拘束性換気障害・閉塞性換気障害時の1秒率と肺活量

拘束性換気障害:1秒率 不変  肺活量 低下
閉塞性換気障害:1秒率 低下  肺活量 不変

10)酸素とヘモグロビンの結合力の決定因子と影響因子

決定因子:酸素分圧  
影響因子:血液pH、血液温度、血中DPG量
酸素分圧高いと結合力高い
※pH低い、温度高い、DPG多い→結合力下がる=還元ヘモグロビン量増大
 pH高い、温度低い、DPG少ない→結合力上がる=酸化ヘモグロビン量増大

11)二酸化炭素の運搬方法

重炭酸イオン、カルバミノ化合物、血漿中に溶解
※カルバミノ化合物=血漿中の蛋白物質(アルブミン・ヘモグロビン)と二酸化炭素が結合したもの

12)ヘーリングブロイエル反射(肺迷走神経反射)における受容器と感覚神経

肺伸展受容器(肺胞・気管支) 迷走神経
※吸息運動から呼息運動へ切り替える反射

13)呼吸中枢とその上位中枢の存在部位

呼吸中枢:延髄  
上位中枢(呼吸調節中枢):

14)ガス組成受容器(化学受容器)

酸素受容器:頸動脈体・大動脈体
二酸化炭素受容器:中枢性化学受容器(延髄に存在)

如何でしたでしょうか。概説8項目、体液11項目、血液20項目、循環15項目、呼吸13項目の全57項目のポイントをお送りしました。生理学も解剖学同様、同格を目指すにあたり苦手科目にしてはならない科目となっております。今回の部分からは6-7題程度の出題が予想されます。また、概説、体液、血液、循環の部分からは必修問題も出題されることも考えられますので、一つ一つを整理して記憶するように何度も何度も反復して確固たる知識、知恵となるようにしてください。次回は、消化、代謝、体温、内分泌を予定しています。夏休みまでに解剖学、生理学をおおよそ履修しておくと、今後の受験勉強に大きなアドヴァンテージとなります。みなさまの奮闘を期待しています。

西村 雅道

プロフィール

西村 雅道
柔道整復師、鍼灸師、柔道整復専科教員、医科学修士
平成15年より平成26年まで学校法人杏文学園東京柔道整復専門学校に在職、同校の国家試験対策を牽引。また国家試験対策塾『杏文塾』の代表として同塾を運営。著書に一般臨床ポイントマスター。現在北里大学大学院博士課程に在学。

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