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『患者と柔整師の会』  患者副代表  伊佐野裕之氏インタビュー

インタビュー 特集

『患者と柔整師の会』が2010年に設立され、伊佐野氏はその患者副代表を務められている。

超高齢化社会が加速する中、医療財政の逼迫は著しく、医療費をいかに抑制していくかが課題となっている。また、柔道整復師が急増し続けていることもあり、不正問題の解決をはかる意味でも、療養費の適正化という名目で膨大な数の患者照会調査が民間業者によって行われている。

今後、柔整は国民の身近な医療として存続できるのだろうか?

伊佐野副代表に患者が望む真の声をお聞きした。

『回答不可能な患者照会調査を無くしていく方向の制度改革を願って!』

伊佐野  裕之   氏

『患者と柔整師の会』
患者副代表  
伊佐野  裕之   氏

―伊佐野副代表が『患者と柔整師の会』に入られた切っ掛け、若しくは接骨院にかかられた経験など教えてください。

『患者と柔整師の会』が発足して約半年経った頃に知り合いの先生の紹介で入りました。私は、学生時代相撲をやっておりまして高校、大学とずっと相撲部でした。その知り合いの先生とは学校の先輩、後輩の間柄です。先輩は大学卒業後に柔道整復師になられて接骨院を開業されました。私が中野区に在住していることもあり、こういう会があるよと声をかけられたのが切っ掛けで入ることになり、その半年後くらいに副代表に就任しました。ボランティア活動の一貫として参加させていただいております。私が接骨院にかかった経験は、5年前に実はパニック障害になったことがありまして、転倒した時に、胸や肩を強く打ったんだと思います。当然痛みもあった訳ですが、それよりも全く動けなくなってしまいました。2、3分も歩くことができない状態で、歩くと心臓が苦しく、しかし内科的には別に何所も異常はありませんでした。そういう状態になって暫くして、自宅から100メートル位のところに新しく整骨院ができました。その頃はますます動けなくなっていましたので、精神科の先生にお聞きしましたら〝そういう所があるなら行ってみなさい。少しでも楽になったほうが精神的にも楽になるよ〟と言われ、整骨院に行くようになりました。電気治療とマッサージをやっていただき、又少しずつ精神科で投与されている薬も効いてきて徐々に回復することが出来ました。結局、整骨院には1~2か月間通いました。保険組合から〝その程度でそんなに時間がかかるんですか?〟といった照会状のようなものが届いたこともあり、行くのを止めました。丁度、歩けるようになってきて、また歩いているから体全体が動くようになってきました。しかし、もうちょっと整骨院にかかっていたかったという思いはありました。あと他に整骨院に行った経験は、私は転勤族で横浜に住んでいた時にも昔相撲を取っていたせいかギックリ腰によくなりました。こういう言い方はよくないんですが、整形外科さんより整骨院さんのほうが親身になってくださいます。整形外科の場合、湿布をくれて終わりで、あまり何もやってくれません。実際、転んだことが原因かもしれませんが、私のように精神的なものというのは、理解されず非常に辛く〝どの辺が痛みますか〟と、電気をかけていただいている時は精神的にとても楽になるんです。言うなれば現代社会はストレス社会でもあり、ストレスによる疾患は非常に増えていると思います。たとえ整形外科さんに行ったとしても、何なのかよく分らないものも多くあると思います。

―これまでいろいろな会議に出席してどのようなことを感じましたか?

接骨院や整骨院にかかるときは、怪我でなければ保険が適用されないということも、こういった会議に出席してから初めて知りました。整骨院さんにかかる場合、何が保険対象なのかということはもうちょっと初めから明確に言っていただいたほうが良いと思っています。様々な問題があるということをこの2年半の間に初めて知ることが出来ました。また柔整師さんの中でも、良い先生と悪い先生の差が大きいというのを感じました。例えば、会議に出ていらっしゃる先生というのは、ちゃんとした先生だと思います。保険者会議にも出させていただいております中で、保険者さんの感覚と柔整師の先生の感覚、もう一つ患者側から見る感覚が全く異なるということを知って大変勉強になりました。今、保険組合さんも経済的に苦しいという現実がありますので、非常に厳しいだろうと思っております。もう一つ危惧されることは、今柔整師さんは物凄い数です。私の町の商店街だけでも、毎年、新しく2軒から3軒位出来て増え続けています。しかも、その接骨院全部が保険適用と謳っているところは少々理解し難く思います。会議の内容を聴いていますと、やはりしっかり研修や講習を受けた方にちゃんとした診療を行っていただきたい。個人の方が悪いということでもないのでしょうし、中には非常に優秀な先生もいらっしゃると思います。統一した審査基準と審査会を通して、不適格な先生は処罰・公表していくような制度にして頂きたいですね。遅きにきした感がありますが、今からでも取り締まる規則を作る必要があり、時間をかけてもう少し難しい資格にして頂いて、クリアした方には普通に健康保険が使えるという正規のルールづくりをして頂きたいと思います。国のほうでも柔整業務について問題があるのであれば、ちゃんと見直すべきであり、傍で見ていると逃げているような気がします。昭和11年の古い法律から変わっていないこと自体が異常ですし、厚生省の通達一つで運用していること自体が国民には理解しがたいことなので、早急に正して頂きたいと思います。

先日の会議では、患者照会に関する意見も随分違っていました。初回はやらないという方と初回もやるという方がいて、両方正しいと思って聞いておりました。そして、その基準が無いということにも驚きました。保険者さんごとではなく、支払を一括化したほうが、効率的です。法律改正をするなりして、一律にやらないと根本的におかしいような気がします。

―患者さんは何故、接骨院や整骨院に掛かるのでしょうか?伊佐野副代表から見て、整形外科と接骨院の違いはなんでしょうか?

整形外科に行くと、先ずレントゲンを撮ってもらいますので、ある程度正確な情報が得られます。また、町の整形外科でもCTスキャンを持っている所も随分増えてきています。CTで撮ってもらうと非常に分りやすいです。以前相撲をとっていたせいもあり、また年齢のせいもあって、腰でも頸でもヘルニア状態になっているみたいです。整形外科さんでやって頂いた頸の牽引が気持ち良かったです。ただ、整形外科で診ていただいても、ヘルニアと言われるのは、もう分っていましたので、10年前になった時は、最初から近くの整骨院さんに行きました。これまでヘルニアを何回もやっていて、レントゲンを撮っても、何所かが詰まっていると言われるだけだと思いましたので。整骨院では、直接診察されていない時にもじっと観察されているのか〝ここですね〟と言われた時に〝当たっている〟と信頼感が生まれます。会社帰りの夜8時頃に半年くらい行っていました。夜遅くまでやっていただいているので、助かります。今は何所も悪くないため行っていません。競争が激しいからだと思いますが、土日祝日やっている所が非常に多くなっているので、それはニーズに合っていると思います。改めて頂きたいことは、いま領収書を出すことになっていますが、一月に一度でも良いと先日の会議で言われておりました。領収書について、もう少し徹底して欲しいですね。

―伊佐野副代表は、医療全般に何を望まれていらっしゃいますか?国民の求める医療というのは、どういった医療でしょうか?

今の日本の医療制度に対して不満はありません。ただ自己負担が結構高いように思っております。我が家は医療費を使っているほうなので、いつも健康保険組合には申し訳ないと思っています。ずっと薬を飲んでおりまして、ジェネリックにしてからは随分安くなりましたけれども。もっと窓口負担が高い国もあるのでしょうけど、今度消費税を上げる訳ですから、窓口負担を安くすることを考えていただきたい。先ほども話しましたが、例えば精神科に受診して、体が動かないことに対して整形外科若しくは整骨院にもかかったほうがいいですよと紹介してくれるような制度が出来れば、患者さんにとって、とても良いと思います。好きで寝ている訳ではなく、動け無くて寝ている訳なので(笑)。整形外科と接骨院の連携を上手くやっているところもあると聞いたことがあります。もし可能なら役割分担をして頂けると良いですね。

―治療計画書というものを出していただくと、治療の目安が分って良いと思われますか?

先ず、出せるんでしょうか?といった疑問が少なからずあります。整形外科さんでも治療計画書というものは見たことがありません。治療を始めてから一か月か二か月が経って、骨折の場合であれば、レントゲンを撮って〝くっついています〟で終わってしまいます。しかし、それでも出すことは良いと思います。間違いなく安心感があります。〝こういう治療方法で、治癒の見込みはこの位です〟と。それを保険者さんに出すというのは、非常に説得力があると思います。保険者さんが〝ここまでキッチリされているのであれば、OKです〟と認めていただくような制度改正が行えるように、業界全体でそういうルールづくりが可能かどうか私には分りませんが、もしもやれるのであれば透明感があって良い気がします。

私の息子が大学でアメリカンフットボールをやっておりまして、今年の1月、膝の前十字靭帯断裂で手術をしました。私も相撲とラグビーもやっていましたから、同じところを手術しています。昔も医師から説明があったと思いますが、今は術後にもちゃんと手術前のレントゲン写真と手術後のレントゲン写真を示して、〝再生されています〟という説明がありました。そういうインフォームドコンセントというのか説明があると、やはり安心します。私自身のそういった体験からも、現実的に出来るものでしたら、治療計画書が添付されていれば非常に良いと考えております。保険者さんの中には柔軟に大きな目で見ている保険者さんと、法律だから規則に基づいて行うことは当然であるとされている考えの保険者さんもいて相当温度差を感じました。それでも、会議に出席され意見交換してくださる方は好意的な保険者さんだと思います。逆に出てこられない保険者さんはもっと冷やかなんでしょうか。

―受領委任払いを償還払いに戻すといった声がよく聞かれますが、どのように思われますか?

手続きが複雑すぎると思います。また息子の話で恐縮ですが、術後にコルセットを作っていただいて7、8万円だったと思いますが、その金額の7割は健保組合で戻してくれるということでした。当然申請書を書かなければなりません。息子の場合は1回だけですが、これが接骨院に行く度に毎回毎回その手続き申請を行うことは不可能ですし、治療を受ける度に全額を支払うというのは、負担が大きすぎます。被保険者は何のために高い保険料をずっと払っているのでしょうか。そして健保組合のほうも面倒くさいのではないでしょうか。私もよく分からないので3回位電話しました。皆さんそういった手続き等に慣れておりません。結局、償還払いになると流れが複雑すぎて患者は接骨院に行かなくなってしまうだけであると思います。この受領委任払いという制度は決して施術者側の利便性を考えてのものではなく、患者さんの利便性をはかるためにある制度だと思いますので、この制度がなくなると、特にお年寄りには申請手続きは全く無理です。先日の会議で、最初は〝初回でも照会文書を出します〟と言われた時にイヤだなと思いましたが、後でそのほうが良いのかなと思いました。というのは、こういう疾患しか保険適用できません。これは違法ですよ、という形のほうが分かりやすいのかなと思えたからです。後になって、これは保険適用外なので支払えませんと言われるより余程スッキリしていると思いました。つまり、分かりやすいんじゃないかと。皆さん殆ど何も知りませんから。初回から文書が届けば、どういう場合にかかれば良いかが分かりますし、もしいい加減なことを言っている柔整師さんがいらっしゃったとすれば、どんどん良くなっていくんじゃないのかという気がしました。これだけ物凄い数の柔整師さんが出来てしまったからには、本当に良い先生方を残していかなければいけないと思います。

―患者照会が当たり前のようになってきましたが、患者さんにとって毎回接骨院にかかるたびに「どのような内容でしたか?」と質問され、またその都度記述されることはとても不愉快ではないかと思います。まして後期高齢者の方が2月も3月も経過してから、その内容について回答することは困難ではないかと思われますが、伊佐野副代表のご意見をお聞かせください。

あまりにも何ヶ月か後になって照会が届くというのは、記憶力からいっても無理でしょうし、不可能です。しかも毎回来るというのは非常に気分が悪いと思います。患者さんからするとうっとうしいようなことは無いほうが良いですし、照会が来るというのは、悪いことをしているような気持になります。まるで犯罪者のような気持になるというのはどう考えてもおかしいですよ。そういう理由で治療計画書を提案されているんだと思います。確かに柔道整復師の先生方の手間が増えるのかもしれませんが、何もなくて分からないよりもそういうものがあったほうが患者照会は来なくなるような気がします。

―結果的に患者さんは整形外科と接骨院を棲み分けているのではないかと思いますが。

それは絶対あると思いますよ。何回も同じ疾患をわずらって毎回同じ診断だとしたら、レントゲン代が勿体無いということもあります。国民が棲み分けを行っているのであれば、そういう時代であるとして、法律を見直して、例えば治療計画書等を出せるような柔道整復師さんの所に行ってください。その場合は、受療委任払いOKですといった差別化があっても良いのではないかと思います。ただし、あくまでも受療委任払いは残していただくことが大前提です。

―JBさんが出されている試案の中で賛同が得られない部分について、伊佐野副代表はどこに問題があると思われますか?

最大の問題は、1団体でやっても難しく、それこそ全部の団体さんでやれば、国だって動くということも皆さん分かっていらっしゃいます。その礎としてJBさんがやっていらっしゃるのは非常に良いことだと思っています。患者が不愉快な思いをしない制度を作るために業界として全体でやっていただければと願っております。多分、日整さんが真っ先にやってくれていたら違っていたように思います。JBさんと一緒にやってくれれば流れが変わると思います。そして何所かに登録をした柔整師さんだけが受領委任払いを使えるほうが良いのではないでしょうか。別に団体に所属するのではなく、ここはまともな接骨院ですよと保証する形の差別化は国民にとって非常に良いと思います。素晴らしい先生方の集まりだと思いますので、ごく一部の人のために、おかしなレッテルを貼られることがあってはならないと考えており、これまでの会議の内容を聞いていると、結局ごく一部の先生のために業界全体が批判され標的にされているという印象を持っています。国民の多くはお医者様と同じように思って接骨院にかかっているので、同等であれば同等の組織を作りあげていただきたい。そうすればこんな照会という問題も消えていくと思います。どの業界も同じだと思いますけれども、お医者さんであれば日本医師会という単一の組織があって、そこで除名処分なども出来るでしょうから、一定の歯止めが出来ているのだろうと国民は見ているんです。しかし、柔整業界の場合、そういうことが出来ているかどうか、国民には見えませんし分りません。好き嫌いがおありになると思うので、いろんな組織があっても仕方がないと思いますが、ただそれを統合した何か別の枠組みを作るようなことで纏めていただいて、そこが保険者さんとちゃんと調整できるという形を全体で作り上げていただきたいと誰もが希望されていると思っております。

―接骨院の治療内容について、患者サイドとして、改善してもらいたい点がありますか?また、接骨院の治療で問題だと思う点をお聞かせください。

時々、患者相談ダイヤルを担当させていただいているんですが、〝保険を使えると思っていたのに後でこういうものが来て不愉快だった〟という相談が中にはありますから、やはり最初にちゃんと説明することが大事であると思っております。不正の部分で療養費が減っている場合はいいんですけど、患者さんが行きたいのに行けないというのは、一番の問題です。

―今後の活動において、最も力を入れていくことなどお聞かせください。

お医者さんに準ずるようにもっと資格要件を難しくして欲しいと思います。地位を上げるだけの先生方がいっぱい揃っている業界だと思っていまして、非常に良い先生が多く、まともなお考えをされている方々ばっかりなので、別段お医者さんと比較してどうだという話ではないと思います。また、この『患者と柔整師の会』ももっと賛同してくれる方を募って会員数がいっぱい増えるように努力をしたいと考えております。出来れば署名活動等も行って、照会文書がなくなる方向に持っていければと思っています。

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