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ビッグインタビュー 【新・柔整考③】 業界内外の声をお聞きする!

新・柔整考 特集

近年、不祥事が相次ぎ混迷をきわめている柔整業界。その火中の栗を拾うかの如く、(公社)日本柔道整復師会の会長に長尾淳彦氏が就任した。そもそも長尾氏は、先見性に優れ、行動力と政治力は抜群の人物である。その長尾新会長に今後の道筋をお聞きした。

道は険しいが、具体的な策はある!!
~失墜した信頼を取り戻すために~

(公社)日本柔道整復師会 会長 長尾淳彦氏
(公社)日本柔道整復師会 会長 長尾淳彦氏

―長尾新会長に、皆さんダイナミックな改革を期待されていると思います。具体的に何をされようとしているかについて聞かせてください。

先人、そして我々の年代は、接骨院を営むことで家を建てたり、苦無く、子どもたちを育てることが出来ました。ところが、今の30代、40代の人たちはそれが出来るかというと現実的には難しい。今後はもっと堅実に柔道整復師という職業、業種が生き残ることが出来るようにするのが我々年代の役目です。

会長就任挨拶で日整の会報誌に以下の文を載せております。

「登る山(目標)を明らかにして腑に落ちる対策、対応を行う―柔整にとって今、何が一番大事なのかを考える―」

柔道整復師業界が長きにわたり存在してこられたのは、以下の5つの信頼と協調があったからです。

  1. 患者さんである国民からの信頼と協調
  2. 支払い側である保険者からの信頼と協調
  3. 内閣をはじめとする都道府県、市区町村である行政からの信頼と協調
  4. 業界内外の柔道整復師関連機関からの信頼と協調
  5. 業界を構成する柔道整復師からの信頼と協調

患者さんである国民からの信頼と協調

柔道整復師は初検から治療に至るまでほとんど一人の施術者が対面で治療にあたり患者さんの持つ様々な背景因子にも適切に対応してきました。そして、症状の変化や治癒に至る過程でその人に合った治療方法を選択して対処してきました。
そうした意味からも昔から患者さんがこの先生なら身を任せられるという安心感から信頼を得てきました。
だからこそ今、「柔道整復師はこういうことが出来ます」「接(整)骨院ではこういう治療をこういう治療計画に沿って行います」「保険はこういう時に使えます」など柔道整復師側から正しく伝えることを行います。

支払い側である保険者などからの信頼と協調

柔道整復師が療養費を使えるようになったのは、「柔道整復師はきちんと治す」「柔道整復師は不正をしない」という信頼があったからです。療養費外の保険においても同様です。
全国健康保険協会、共済連、健保連や国保連合会、後期高齢者医療、労働局、自賠責関連とは対立関係ではなく、対話の機会を設けて、保険者などと施術者お互いが抱えている問題点を患者さんファーストで解決策を探っていくことが大切です。
保険者などに対しても「柔道整復師はこういうことが出来ます」「接(整)骨院ではこういう治療計画に沿って行います」を正しく広報しなければなりません。
療養費などの請求、審査、支払いの一体化と透明性を確保して、いまこそ厚生労働省、保険者、柔道整復師によって、腹(腑)に落ちる内容に裏付けられた柔道整復療養費の制度設計が行われ、国民に示す時期であると思います。
それには、柔道整復師の根本的な存在価値について真正面から向かい合い徹底的に腑に落ちるまで考えなければ打開できないと思います。
保険者などと真正面から向かい合い対話の機会を作り協調していきます。

内閣をはじめとする都道府県、市区町村である行政からの信頼と協調

行政側からの通知などの連絡に対して、施行前より周知を徹底して行いお互いの業務が円滑に遂行されることが大切です。国は日整、都道府県及び市区町村は都道府県社団が縦横の連絡網を密にして折衝や協議を行うのが望ましいと考えます。
今回の新型コロナウイルス感染症や物価高騰への補助金や助成金の案内や申請手続きも国、都道府県、市区町村と異なる対応が必要であり、上記のような連絡網が整備されることにより迅速に正しく会員へ周知されます。ネットワークシステムを構築していきます。
また、近年、各地で頻繫に起こっている自然災害に対する救護活動、各種スポーツ大会の救護活動、地域包括ケアシステムの介護予防分野での機能訓練指導においても「柔道整復師はこういうことを学び訓練してこういうことが出来ます」ということを行政側に正しく広報し、柔道整復師の活躍の場を広げます。

業界内外の関連組織からの信頼と協調

公益財団法人柔道整復研修試験財団、公益社団法人全国柔道整復学校協会、一般社団法人日本柔道整復接骨医学会と日整の関連4団体では、定期的な連絡調整会議を行い柔道整復師業界のガバナンスとコンプライアンスの徹底とチェックシステムを構築していきます。
講道館や全日本柔道連盟をはじめとする各種スポーツ団体との連携はこれまで以上に親密に行っていかなければなりません。
新聞、テレビなどのマスコミとも友好的信頼関係を構築して「柔道整復師」を広く深く国民に広報していきます。
接(整)骨院経営でお世話になっている医療機器関係、包帯や固定具などの衛生材料関係、レセコン関係などの関連団体、会社の方々ともより良い治療の助けとなり患者さんに有益となるようお互いが切磋琢磨していく必要があります。会員の皆さんの声を集約して定期的な懇話会を開催します。
政治関係では、自民党本部は日整政連、自民党都道府県連は都道府県政連がこれまで以上に惜しみない協力体制を構築して柔道整復師の地位の向上、療養費料金UPの力添えをいただくようにします。

業界を構成する養成施設の学生、勤務柔道整復師、施術管理者の柔道整復師からの信頼と協調

柔道整復師となる入り口である養成施設の学生、実務経験期間を含む勤務する柔道整復師、開業している施術管理者の柔道整復師である仲間、同志との信頼を得なければなりません。日整会員も日整会員外も柔道整復師業界を構成する仲間です。
全国約76000名の就業柔道整復師全員が学術団体(一般社団法人日本柔道整復接骨医学会)や政治連盟で纏まれるところに席を置いて自らの業界の在り方を議論して出た結論に向かって進まなければ業界は衰退します。
意見集約できる場や組織を作り、業界全体で目指すべき「柔道整復師像」を構築していきます。

最後に

柔道整復師、柔道整復術が現代社会に何故必要なのか?何故、保険(療養費)で治療を行うことが出来るのか?を国民を主体として自論だけでなく、他者にも分かる説明が必要です。
そうしない限り、業界を取り巻く環境は混迷を深め未来は混沌とし業界は混乱します。
それは泥濘の地に杭を打つ、乾いた砂漠の地に水を撒くという今は虚しい行為かも知れませんが真剣に深く考えてひとつひとつ具現化していかなければ業界は無くなってしまいます。
業界全体で動き出さなければ誰も助けてはくれません。しかし、業界内だけで出来ることはたかが知れています。国を巻き込んで国が介入できるような「柔道整復師業界再建案」を構築していかなければなりません。我々、柔道整復師がどのように社会に貢献するかを常に問わなければなりません。
願望やお願いベースではダメです。願望を成就に繋げるには並みに思ってはダメです。そうできればいいな程度の生半可な思いはダメです。すさまじく激しく必死で考えなくてはなりません。
目の前にある安易な安心よりも正しいと思える困難を選びましょう。
「柔道整復師が本当に大切にしたいものは何か」「大切にしたいことの為に今出来ることは何か」その問いの繰り返しが柔道整復師業界を今一度誇りを持てる業界に出来る術であると信じています。
私たちの年代は若い柔道整復師に誇りを持って仕事に励み、生活や子育てを両立できる職業として確立させる責任があります。
 「あなたの職業は何ですか?」と問われたときに堂々と「柔道整復師」と答えられる誇りある業界に柔道整復師全員でしていきましょう。

と述べております。

―柔整療養費検討専門委員会における業界代表者の方の意見集約等について

私が会長に就任してから、全柔協の岸野氏や全整連の田中氏と会って意見交換を行いました。やはり専門委員会で施術者を代表して意見を述べる訳ですから、しっかり意見をまとめて整合性のある内容でなければなりません。接(整)骨院約5万4千軒、柔道整復師数約7万6千人がおりますので、そういう人たちを1つにまとめるというのは非常に困難を極めます。何故、医師がまとまっているかというと、 「国民の健康に寄与する」という目的が医師法に記されているからで、それだけの倫理観を持って仕事をされています。医師の大半が、患者さんのためにどうするかとして治療をされているのです。そこの違いです。我々も見習ってキチッとした倫理観を持つべきで、そういう業界になっていこうという志を持って、組織運営をして参ります。

―最優先課題について

これだけは言いたいのは、柔道整復師業界自体が実態調査を今まで30年間してこなかったのです。接骨院に患者さんがどういうきっかけで来院されたのかということを調べていない。接骨院で何をしているか。どのように良くなったか、または生活が改善された等、何も調べていないため行政も柔道整復師はどういうことが出来るのかを分かっていないので柔道整復師の使い方も分からない。例えば、国体だとか、オリンピック等々にボランティアで出てください。選挙の時は応援してください。そんなことしかないのです。柔道整復師は患者さんに対して柔道整復術を使ってどうするか、または柔道整復師が持っているアイデンティティ、基礎にはこういう学問があり、それを学んで、こういうことが出来ます。例えば、認知症自体の治療は出来ないけれども、認知症と思われる方が来られた時には、家族に〝少し疑わしいから診てもらった方が良いですよ〟といったゲートキーパーというか、地域の門番的役割が出来る訳です。そういったこともこちらからインフォメーションを殆どしていません。先述しましたように、30年前の先人たちの時代は、患者さんは接骨院に如何いう時に行ったら良いかということが分かって来られていたのです。例えば、おばあさんが子供や孫にけがや痛かったら○○先生の接骨院に行きなさいと言ってくれたのです。いま大病院にしても歯医者さんにしても、〝こういう症状だから当面は毎日来てください〟〝1カ月位で治りますよ〟等伝え、しかも予約制です。同様に接骨院も初検の時点で、私の見立てではこのけがは3週間、もしくは1ヶ月ぐらいかかるかもしれないが、当面はこういう方法で治療を行っていくとして予約制にするべきであり、更には治療計画書を提出すれば良い。保険者の皆さんがそう言っているのですから、それをキチッと患者さんに伝え見せるようにしたら良いのです。昔の健康保険組合や 組合健保の人たちは接骨院に行ったことがあるので、ちゃんとそうしたことを理解をしてくれていましたが、今の健保連や組合健保の人たちは30代・40代の方々なので接骨院に行ったこともないし、これまでの信頼関係は無く柔道整復師は悪いことばっかりしていると思われているのです。

―オンライン化についての進捗状況を教えてください。

令和6年に着手というのは、どうしても無理なので令和8年から着手すると、先日、検討専門委員会でロードマップが発表されたところです。デジタル化というのは国の施策ですから、 実現可能だとして一歩一歩しっかり前に進めて参ります。

―いま災害が、世界中で多発しています。 東日本大震災以降、柔整のJマット等、今後柔整の地域貢献はどのような取り組みをされていくのでしょうか?

震災等の被害のあった地域において、トリアージされた人たちの中で、医師や看護師の方達はどちらかというと生命に関わるような人に対して治療を行いますが、我々は打撲や捻挫、挫傷等の怪我をされた方に対して施術を行うのが役目です。東日本大震災にも熊本地震にも行っています。今回、災害対策室を作りました。ヤフーニュース等でいっぱい取り上げられていますが、トルコの地震に柔道整復師2名がJICAから招集されました。日整に登録している災害対策室の人たちは、個々の知識と能力が求められるため、公的組織が推薦しています。以前にも災害対策室はありましたが、私が会長になってから会長直轄になりました。地域貢献については、地域の人たちのおかげで我々が生活をできて初めて行えることです。繰り返しになりますが、私たちの時代というのはこの職業で食べてきましたが、今の若い人たちにとってはかなり厳しいことと思っております。

―実態調査を行うと言われましたが、見通しについては?

来年、料金改定がありますが、 私が会長になって実態調査をして、それを伝えて、すぐ結果が出る訳ではありません。先述しましたように、何故患者さんが接骨院に来るのかという意識調査を先ず行うこと。腰が痛い、首が痛いという理由で来ている人たちが多いけれども、どういう要因で来院しているのか。また接骨院でどういうことをしてもらって患者さんが治ったのかについて調査をしないとダメなんです。 そういう調査結果がビッグデータとして上がってこそ、アルゴリズムは可能になる訳です。つまり腰が痛い、膝が痛というような時に〝あなたの悩んでいる膝の痛みに合う治療所がここにあります〟とスマホが教えてくれるようになります。ただし、それにはビッグデータがないと出来ません。私は昨年からそういったものを作ろうとして、電子カルテの推奨も行っている訳です。まだまだそういった意識が業界にはないので、我々が生き延びていくためには、キチッとした正確なデータが必要です。私見ですが、国が決める支給基準のルールは、実態に合わせて変えていくのが良い。そのためにも実態調査をしっかり行う。即ち第三者評価が大事です。それをこれまで誰も何もしてこなかったのです。

―患者さんの声をちゃんと取り上げる、患者さん評価が大切だとずっと思ってきました。

私が言っている「登る山」というのは、そういう意味です。決まったことをキッチリ行う。登る山を決めないで、みんなで料金上げましょうっていう、フワッとしたものではダメなんです。他の業界は、みな登る山を目標に努力をしているのです。

―機能訓練指導員の会は全国を統一した組織になっているのでしょうか?

未だ作って3年ですが、統一した組織にしようと思っています。どちらかというとグレードアップしています。活動の現場を増やしたりするのは、我々の仕事です。 都道府県から補助金だとか助成金をもらって、講習を行ったりしていますが、都道府県がその補助金や助成金を出すのは、出すに値する組織に対してです。病院や介護施設の経営者側からすると、 理学療法士で保険点数がたとえば100点取れるのに、柔道整復師を雇うと50点しか加算が取れなければ理学療法士を雇います。その加算点数を上げるのも我々の仕事です。

今後は、業界全体に日整がキッチリ様々なことの情報提供をして参ります。

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