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スペシャルインタビュー: 松戸市長・本郷谷 健次 氏

インタビュー 特集

現在、特養の入居待ちが約52万人。うち要介護5が約10万人。2025年までに地域包括ケアシステムの構築が進められる中、在宅介護を支援するサービスは、どのように進んでいくのであろうか?1969年、〝市役所とは『市民に役立つ所・市民にとって役に立つ人がいる所』〟をモットーに、日本初の即応部門「すぐやる課」を設置したことで全国的にあまりにも有名な松戸市。

その松戸市の本郷谷市長に今後の高齢化社会をどのように支え維持していくべきかについて崇高な理念等を話して頂いた。

地域包括ケアシステムを構築していく上で、人材不足は確実であり、柔整の方達の参加が望まれます!

松戸市長
本郷谷健次 氏

―日本の社会保障制度について本郷谷市長のお考えをお聞かせください。

やはり国民が安心して生活していくためには、社会保障制度がしっかりしていないと国の土台が崩れてしまいます。年金、健康保険、介護保険は大変重要な制度です。現在の日本の社会保障制度が良いかという議論もありますが、歴史的な経緯もあり、またいろんな問題もあるとは思います。

しかしながらこれから10年20年高齢化社会という大変大きな国家的課題を背負っている我々にとっては、現制度を根本的に変えてどうこうするということを今から議論していたのでは、遅きに失してしまいます。何故なら議論してから動き出すまでに長い時間を要しますから、当面の10年20年を考えた時には、現行の制度をどうやって運用していくのかということを前提に考えざるを得ないということなんですね。

つまり、良い悪いという議論をしている場合ではないと思っています。もっと先の50年を今からどうやってやるかといった議論はあっても良いとは思いますが…。とりあえず市民の一番近いところに居る者として、今後どうやって今の制度を如何に上手く活用するか、修正も含めて行っていくのかということが一番大きなテーマであると考えております。

―人口減少社会に突入しました。超高齢化の進展に対する松戸市の取組みを教えてください。

現在の松戸市の人口は約48万人です。高齢化は松戸市も大きく進んでおりまして、65歳以上の方が今20%を超えています。しかも今約4万8千人居らっしゃる75歳以上の方が10年位先には約8万人になると予想されており、大変な比率になってしまいます。

しかし、高齢者の増加を活力の低下と捉えるのではなく、地域の特性や年齢構成なども考慮にいれながら高齢者が住みなれた地域で自立した生活が営めるような施策にも取り組んで参りたいと思っています。こういった取り組みを進めることにより、単に人口規模の維持拡大を追求するだけではなく、市民の皆さまが生き生きとした生活を送ることができる成熟した社会の実現を目指しています。

基本的な考えとしては、今住んでいる人たちが安心して年を重ねていける社会をどのようにして作っていくかということなんですが、中でも一番大きな問題は、やはり医療・介護施策だと思っております。医療であれば急性期の大きな病院から中小病院、個人病院に至るまで在宅医療の支援体制をどうやって作り上げていくか。介護であれば特養等の大きな施設と老健施設、グループホームなどの在宅介護の支援体制をどうやって夫々作り上げていくか、この2つが大きなテーマです。なにしろ何万人という規模になると、個別に対応していくことは非常に困難を極めます。高齢者の問題というのは、地域でお互いに助け合う仕組みを作り上げることです。医療・介護・在宅のための助け合い、元気になっていただくためのスポーツであるとか、災害が起きた時の助け合いだとか、地域での助け合いの仕組みがベースにないと医療・介護・在宅の制度を早めに作っても中々上手く機能しないだろうと思っているんですよ。

従って高齢者の問題は医療・介護の体制をしっかりすることと弱っている地域力をもう一回どうやって強化するかという全体の底上げをしなければ、この何万人という方たちが高齢者になってきた社会というのは支えきれないと思っています。最早、施設をいくら作っても足りないでしょうし、その先の将来のことを考えても施設や病院に頼るというのは、限界があります。75歳以上が8万人になる松戸市を考えても、またこれは松戸市だけではなくどの町でも多かれ少なかれそんな状況になる訳ですから。結局、日常的な生活支援を含めて、ご高齢の方々が健康で安心して暮らせるように様々な生活支援・医療支援・介護支援、身心の状態から、移動や食事等、また経済的な問題や複合的な問題等、そういうことからも施設というハードだけではもう無理でしょう。繰り返しになりますが、社会全体で支え合う仕組みを作り上げていくことが物凄く重要であると思っています。

―少子化対策についてもお聞かせください。

松戸市の場合は、東京に近いということもあって、松戸に若い人が転入されてきます。こちらで子育てして、子供が育って巣立っていくというのが松戸市の構図になっており、年間約2万5千人の人が出たり入ったりしている状況です。

少子化対策については、将来町を支える子供たちですから、やはりもっともっと増えていってほしい。子育て世代の方たちが松戸に来ていただくために子育てしやすい環境を作りあげていくということで、保育園・幼稚園を含めて、教育環境、文化的環境を充実させるよう魅力的な町づくりを考えています。

また待機児童についても力を入れておりまして、6月1日現在で待機児童数は5名でした。殆ど居ないとも言える状況ですが、ただしこれは国の基準なので、実際に入りたいという人たちが全て入れる訳ではないんですね。保育園の制度というのは、国の制度で福祉のための施策という位置づけなので、既に仕事を持っているという基準や要件がありますから、それをクリアしたということで言えばほぼゼロに近いんですが、結局潜在的な需要といいますか、例えば今子育て中だけど、秋には仕事をしたいと望んでいても預ける所がなければ何時になっても就労は困難です。いま松戸市で潜在的な待機児童数は5・6百人居るんじゃないかと見込まれています。

そこで松戸市の施策としては国の基準とは別に、保育園の入所を希望する人はみんな入れるように、この1・2年の間に、次のステップとしてその体制を作ろうということで一生懸命取り組んでいるところで、具体的には小規模保育事業所の整備を進めています。新年度においても3ヶ所の小規模保育事業所の整備を図ります。教育施策につきましては、児童生徒などの安全性の確保、震災時の収容避難所などの応急活動拠点としても重要な役割を担う学校施設ですので、安全で安心な学校づくりに向け、小学校及び中学校の校舎耐震改修工事などの施設の整備を引き続き実施します。

他には、児童虐待への対応として、1歳6か月児健診、3歳児健診の未受診世帯を対象に家庭訪問を実施、子育て環境の確認を行うとともに、家庭相談員・母子自立支援員・婦人相談員を増員することにより虐待の早期発見と対応の充実を図ります。生活保護被保護世帯の児童に対し、学習支援及び安心できる居場所を提供し、基礎学力を向上させる支援などにより「貧困の連鎖」の防止を図る取り組みを実施します。

新たな取り組みとして、自殺予防対策である国の「地域自殺対策緊急強化基金」を活用し、パソコン・携帯電話でストレス度などが気軽にチェックできるメンタルヘルスチェックシステム「心の体温計」を導入し、心の健康の保持に努めます。

医療費の補助を中学3年生まで行っておりますし、15歳~39歳までの若者の職業的自立を支援するため、就職に向けたスキルアッププログラム等、就職や進学に向けた支援を行います。専門のキャリアカウンセラーが若者支援の経験とノウハウを生かしてサポートしています。あと子育てコーディネーター制度といって、市が子育てに関する相談員を一生懸命育成し市の施設等に配置、或いはいろんな場所にその方たちが出向いて行って、お母さん達の相談に乗っています。今のところは学校に行く前の小さいお子さんを対象にしていますが、もっと拡充していかなければと思っております。

やはり、大きな建物作ったりするなどハードだけではなく、ソフトが重要だと思っています。子育て環境がしっかりしているということで、松戸市は子育て支援の盛んな町として全国2位という評価を受けております。

―近年、社会保障費の財源が苦しくなっていることに加えて、高齢社会で医療費も介護費も大変な増加が見込まれ、それに伴い在宅ケアを含め包括型の医療ケアシステムの構築が求められております。松戸市では今後どのような地域包括ケアシステムの整備を行おうとされているのでしょうか?

昨年の10月に地域包括支援センターを市内3カ所から11カ所に増設しました。地域包括支援センターの機能を充実し、高齢者がなんでもご相談できる総合的な窓口として役割を果たすとともに、医師、歯科医師、薬剤師、介護支援専門員などの多職種が連携した、在宅医療連携拠点事業を推進するなど、高齢者が住みなれた地域で安心して過ごすための地域包括ケア体制の整備、また在宅医療を充実させるため訪問看護を24時間体制とするなど、所要の整備を図っています。

松戸市の場合、在宅医療は全国でトップレベルと言われており、というのも松戸市の医師の方々が長年往診などの活動をされ、現在自宅で亡くなる人の割合が全国平均12.8%ですが、松戸市は20%弱です。東大の教授も〝在宅医療は松戸市に学べ〟と提唱くださっており、松戸市で会議を開くなどしています。

しかしながら、松戸市の在宅医療も今の体制だけでは十分対応できない状況です。従って現在の地域医療の基盤を一層拡充していきたいと考えており、地域包括支援センターを中心にして、今ある地域の在宅医療・在宅介護などを中心に整備・展開していこうと思っています。先ほど話しました、出来るだけ地域に根ざした体制づくりを意識しながら取り組んでいこうと考えています。

―介護の人材不足、在宅系看護師不足等、人材が不足していると聞きます。 松戸市において人材は足りているのでしょうか。

夫々の専門家を自治体のみで育成していくというのではなく、国全体の施策ではありますが、やはりそれぞれの専門家の方々の処遇を良くしていかないことには人は集まってこないと思います。だからといって財源が限られているため、介護保険制度がパンクしてしまうということで上げきれないんですね。そういうことで人材不足をどのようにして補っていくかということは大きな課題で、その中で互助・共助という助け合いをボランティアの方々に受け持っていただく方向であり、ボランティアの支援体制の構築は非常に重要であると考えています。

一方、専門家集団もしっかり育成していかなければなりませんし、専門家集団とボランティア集団をコーディネートしていくことが要になると考えています。家族も高齢化していく中で家族だけで介護をしていくというのは、殆ど不可能に近いでしょう。また、それを介護保険制度を使って全てやるとなると、やはりパンクしてしまうので、地域の人たち特に民生委員や地域で様々な活動をしている人たちに力をつけていただいてもっと支援していただけるようにしたい。

松戸市も介護ボランティアの方たちが300人位おります。しかし、それでは足りません。単位が違うといつも話しています。市の力、県の力、国の力、総力を挙げて支援体制を整備していかなければ、医者も看護師も介護士もケアする方々も含めて足りなくなると思いますので、そういう方たちを増やしていかなければなりません。

この問題は、ご高齢の方がいる家庭の家族だけが悩む問題ではなく、町ぐるみで取り組む、社会みんなで助け合っていくことをしなければ、いずれ誰もがみんな高齢者になる訳で、どうやってこの先の超高齢化社会を維持していくか。必ず誰もが起きてくる問題なので、みんなでやっぱり助け合いをしなくてはいけないですね。

―専門職の方達とボランティアの方達をどう組織構成、或いはコーディネートされていくのでしょうか?

1つは、専門家の集団、臨床の集団には様々な職種の方が含まれますが、その様々な専門家がしっかり育成されないと今後の在宅医療は成り立っていかないと思っています。所謂ボランティアというのは素人の方々ですから素人同士だけでは大きな力にならないということもありますし、指示し指導する方達が必要になります。

またボランティアというと何か人のためにやるみたいですが、いずれ自分自身が高齢者になれば誰かに手伝ってもらわなければ、一人では中々生活していくことが困難です。高齢者問題は順繰りの問題ですから、何度も申し上げますが、助け合いであって、その助け合いの仕組みを作り上げていくということなんですね。やはりこの両方がしっかりしなければ全体的な力になり得ない。

私としては、市民全員がボランティアであるという意識をしっかり持つことが大事で、8万人になってしまうと市の人口の2割近くで、5人に1人が75歳ですから、隣近所みな高齢者であると言っても過言ではありません。普通に元気な時は問題ないが、何か起きた時には手助けが必要ですから、「市民全員がボランティア」という言葉が適切かどうか分りませんが、市民みんなでボランティアをしようと、それぐらいの助け合う仕組みにしておかないと実際に上手くいかないのではないかという気がします。今現在も不足していると思いますし、今後を考えたら物凄い数の人が不足してくるだろうと思っています。

―古来から地域医療を支えてきた医療職種である柔道整復師は、骨接ぎ・接骨院の先生として地域住民の方々に親しまれてきました。
また柔道整復師はスポーツ現場でもスポーツトレーナーとしてアスリートの怪我やパフォーマンスの向上に役立つ指導を行ってきました。今後の超高齢化社会においては、運動能力の維持管理が重要なテーマの一つと感じます。
運動能力を維持していくには、単に痛みを取るという考えではなく、能力そのものへの取り組みとしてトレーナー的な業務は必要と感じます。
介護分野では柔道整復師は機能訓練指導員として機能訓練を行える職種であります。地域包括型ケアシステムの中に柔道整復師の参入は可能でしょうか。本郷谷市長のお考えをお聞かせ下さい。

松戸市の中小型介護予防事業の委託業者の中に、整骨院が6カ所入っており、もう既に介護の仕組みに組み込まれているのが実態です。

今後、健康に良いことを提案して市民の健康をどうやって維持していくか。今は、要介護であっても予防のための運動をして健康を維持していく。それらは一体だと思うんですね。体のどこかに障害がある人、認知症みたいな脳に問題がある人、どちらにとっても運動することが良いということは間違いないことで、非常に重要です。

高齢者というのは、元気であっても足を骨折してしまうと、一変に悪くなってしまって寝たきりになってしまいます。従って、怪我をしても回復できる、健康を維持できるような体を作りあげていくことや具体的な支障が出た時に直ぐ回復できるようにしていくことが重要だと思いますし、其処がしっかりしていないと介護体制ばかり整備してもダメなんですね。つまり、運動機能を維持していくことがどれほど肉体的にも健康的にも大事であるかということです。

(公社)千葉県接骨師会の岡本会長は元市議をされ、今は体育協会の会長をされご活躍頂いております。また柔道整復師の方達は、これまでスポーツの救護活動等でスポーツ現場をバックアップいただき、何か支障があった時に機能を回復するための機能訓練など、運動器の専門家としてのノウハウをお持ちです。まさに現在、在宅医療と介護の世界で働く方達が求められておりますので、柔道整復師の方たちの重要度が増していくのではないかと思います。

健康な人でも足を捻挫した時に放置しておくと全然動けなくなってしまいます。やはりちゃんと生活が出来る、歩行や運動が出来るようにしてあげることは重要であると思います。

我々としては、専門家の方々に体を使うことを目的に健康体操や軽いスポーツを指導していただいたり、更に要支援の方々には、これまで地域支援事業が行われておりましたが、そういった事業に対してももう少し工夫して参加しやすい仕組みにしていく、特に転倒予防など軽度の方々へのプログラムを用意することは今後ますます重要で、全体として健康な人を増やしていく、健康年齢を長くさせていく。訓練、指導、治療、こういった取り組みを日常的に効果的に考えていく。いかにベッドに居る時間を短くして健康でいられる時間を長くしていくかが重要なテーマです。

―やはり、医療のいきづまりといいますか、今後は治す医療ではなく、生活支援型の医療を目指すといわれているお医者様も多くいらっしゃいます。
生活支援、QOLの向上をはかっていくことは今後重要になっていくと思います。松戸市でも健康教室、転倒予防教室、市民ウオーキング等、予防医療の取り組み並びに様々な取り組みについて教えてください。

健康体操等は、NPOの方たちが中心になって活動しています。市民ウオーキングはお年寄りが集まって、年に一回ウオーキングをするなど、いろんな健康予防事業の取り組みが行われております。いずれにしても予防重視の世の中ですから、これからもっともっと拡大していかなければならないでしょう。市全体で取り組むと言ってもそんなに大勢集まることは考えられませんし不可能でしょうから、出来るだけ単位を小さくして、地域の元気な方々に担っていただいて、頻繁に活動を出来るようにしていきたい。

またそういった元気な人を柔整の先生たちにも指導していただいて活性化させたいし、組織化していかなければいけないと考えております。しかも、それら健康事業を、もっと市民にPRして少しでも多くの市民に参加していただきたい。一部の人だけに限定されることなく、8万の高齢者の方々が外に出てきてもらえるよう知恵を結集する努力が大事です。なにしろ母体が大きいですから、その仕組みを如何に作っていくかが市の仕事です。老人クラブの方々というのは、元々地域で若い時から活動している方々です。ただし、高齢者は増えているのに老人クラブの人数は減ってきているんです。65歳超えたら高齢者だとは誰も思っていないですからね(笑)。

―近年、地球規模で大災害が多発しています。松戸市の防災計画について教えてください。防災計画を立てる時に極めて重要なことは、何を前例として何を想定するかと言われておりますが、その辺についても教えてください。

松戸市も2011年の3.11東日本大震災で被害を受けまして、全壊・半壊を合せて130軒でした。また福島から3月15日の朝にバスで松戸に辿りつかれて、3か月位だったと思いますが避難されて、公共施設や民間の施設、お寺等いろいろ開放していただきました。その対応が一番早かったということでNHKでも報道されました。

その後、放射能のホットスポットということで、そう高いレベルではないものの以前は放射能の無い場所でしたので市民も相当不安に思われ、当然公共施設は市が行いますけれども、除染の申し出があった1万4千軒の家屋をチェック、全部除染してこの3月末にやっと終わったところです。30億円くらい除染費用がかかりました。東日本大震災では地震が起きて、地震による被害、津波による被害、それだけではなく放射能という大きな問題がありました。松戸はどちらかというと津波の問題は無いため基本的には直下型の地震を想定して、市としても全力あげて取り組んでおります。

松戸市は一応、阪神淡路大震災の直下型を前提に、又3.11の東日本の大震災を参考にして対策をたてていますが、一度に何もかもは出来ませんので継続的に施設を整備、備蓄倉庫の補充管理も余念なく行っております。地震など大災害が起こった時に、高齢者も増えていますし、地域の自治会会長さん達の一番の関心事は、やはり防災ではないでしょうか。高齢者や障害者など、災害が発生した時に自ら避難をすることが困難で、特に支援を要する避難行動要支援者事業について12の市政協力委員連合会単位で、馬橋地区をモデル事業とし、順次地区の拡大を図っております。

また本年11月8日には、全市をあげて防災訓練を実施する予定です。全小学校、全中学校を拠点にして、地域の自治会とか地域の人たちが参加して市民全員で訓練を行うというのは今回が初めてです。なにしろイザという時に備えておかなければなりません。市民みんなが防災意識を高めていただきたい。そのためにはやはり訓練を行うことがとても重要であると考えております。

―柔道整復は阪神淡路の大震災、2011年の東日本大震災時においても活躍してきました。柔道整復は、高度診断機器、薬物を用いることなく救護にあたれる医療職種として、また近年盛んに言われ出したエコ医療であると言えます。本郷谷市長から見て、柔道整復(伝統・民族医学)は今後どのような活用が望まれるでしょうか。

柔道整復師のお仕事はもの凄く大切と思っています。今にも命に危険のある人は直ぐ手術をするなど勿論急性期も重要ですが、今求められているのは、回復期であるとか慢性期におけるリハビリです。

特に地震が起きた時に生きるか死ぬかのライフラインは2・3日と聞いておりますが、それをフォローしていくことが大切ですし、多くの人が救護やケアを必要とする状況が起きる訳で、そういう意味では柔道整復師の方々の支援活動というのは非常に心強く、役に立っております。

また体一つで出来ることから大きな災害による非常事態においては、大変重要です。松戸市の医療体制をみても、手術する大きな病院は沢山ありますが、リハビリ病院をもっと充実させなければなりません。これについては我々が医療体制を充実させる施策の大きな柱であるように思っています。

柔道整復師の先生というのは地域に密着している方々なので、何か支障があった時には接骨院に通って治療していただくと良いと思います。これから地域包括ケアシステムを構築していく中、お互いを理解し合うことで、役割も広がっていくのではないでしょうか。実績をいっぱい積んでいるプロなんですから何か研修制度みたいなものを作って、もし何かが不足しているのであれば、其の部分だけ勉強をして資格を与えて地域包括ケアシステムの中に完全に組み込んでもらえると一度に大きな戦力になる訳ですからね。そうすることで人手不足も補えるし、地域密着型の支援体制の中で本当に大きな力になっていただけます。現在の体制の中に十分に組み込まれていないこと自体がそもそも問題であると思います。これだけいろいろ治療実績を重ね、また公益的な事業をやってこられている訳で、相当のノウハウをお持ちなんですから、今後の超高齢化社会に有効に活用され、活躍していただけることが望ましいと思っております。

―今後、病院で死ぬことが出来ない時代がやってくる中で、どのような地域社会を構築できるか。地域における健康づくりを従来型の健康政策のみではなく、機能の集約化、住居環境及び交通網の整備など街づくりの視点も加えた総合的な施策の構築等についてはどのようなお考えをおもちでしょうか。

医療関係者やそういった関係者だけではなく、地域の人たち、或いは地域で商売をやっている人たち、消防団の人、民生委員、薬局の方達、そういう方達が連携して、地域住民の健康を維持していくという役割をみんなで担っていく必要があり、松戸市では「連携型地域社会の形成」を目指しています。地区の各種団体が連携し、地区の課題を解決していく方策としては、地区との連携を図りながら、モデル地区の試行に取り組んでおります。何度も申し上げた通り、市民がそれぞれの地域社会の中で、お互いに助け合いながら生きていくということを共有することがとても大切なことだと思っています。

また、近年は、地域が元気になる活動やソーシャルビジネスに対する社会的認知度の向上など、人々の社会に対する意識に新しい兆しがみられます。市民一人ひとりが社会に目を向け、主体的に地域をよくしていこうとする意識が更に高まる必要があると考えています。

松戸市では、人と人とを結びつけ、人の活動を支援していきます。そして”認知症になっても安心して暮らせる街まつど”を目指しています。認知症の方の生活にかかわる課題は、認知症の方やその家族だけで抱えるのではなく、地域全体で考え解決していくことが必要です。
(文責・編集部)

本郷谷健次氏プロフィール

1948年8月29日名古屋市生まれ。
■学歴
愛知学芸大学附属岡崎中学校、愛知県立旭丘高校、東京大学経済学部卒業。
■職歴
新日本製鉄株式会社にて総務、人事を中心に様々な仕事を担当する。
その後、大手監査法人にて主に国へのコンサルタント業務を行う。
■ 公職歴
平成18年11月、松戸市議会議員。 平成22年7月、第21代松戸市長。
平成26年7月、第22代松戸市長、現在に至る。
■趣味
スポーツ全般(高校、大学時代はラグビー部に所属、中学時代はバスケットボール部に所属。他に野球、サッカー、テニス、山歩き、スキー、グラウンドゴルフなど何でも)書道、絵画、珠算、天文、素粒子、歴史研究など
■ 家族構成
妻と一男一女

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