これだけは知っておいて【第55回:柔道整復師、はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師と「整体」】
明治国際医療大学 教授 長尾淳彦
柔道整復師、はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師という国家資格者が開設している接骨院や鍼灸、あん摩師の治療院の広告・看板に「整体」と大きく掲示しているところがある。
「整形外科」「整骨院」「整体院」と「整」の付く看板が並んでいる街の通りもある。運動器を痛めた患者さんはその違いを理解して通院しているのであろうか?
3年前にもこのコーナーで「整体」について書いていますが、当時よりも柔道整復師、はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師の数も増えて施術所も増えています。厚生労働省では、広告に関する検討会も開催されており、もう一度この「整体」について考えてみましょう。
3年前も群馬県の鍼灸師である田中一行先生が書かれた内容を引用させていただいたが今回も注釈を入れて紹介する。
この業界(柔道整復師、はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師)の資格制度をよく道路交通法に例えて話すことがあります。自動車の普通免許と原付バイクに限って話すとしたら、自動車の普通免許があれば原付バイクも運転出来るのが「医師」です。医師免許があれば医療行為の中の鍼灸治療も医師はしてもよいのです。我々、柔道整復師、はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師を原付バイクとしたら、原付バイクの免許しか持っていないので自動車は運転出来ず原付バイクしか運転はしてはいけません。当たり前のことです。はり師、きゅう師は鍼灸治療の免許しかないので鍼灸しか出来ません。柔道整復、あん摩マッサージ指圧に関しても同じです。国家資格という免許がないと出来ないのです。しかし、現状はどうでしょう?
○○式マッサージとか、もみほぐしとか、リラクゼーションとかは、資格がないのに名前はどうであれやっていることはあん摩マッサージ指圧です。つまり、街で見かける原付バイクに乗っている人に例えるなら80-90%が車や原付の免許すら持つことなく堂々と道を走っている状態です。怖くないですか?
車やバイクになんで免許が必要か。それは人の命に関わるからです。
柔道整復、鍼灸、あん摩マッサージ指圧に何で国家資格が与えられているか。それは、同じく人の命に関わるからです。(中略)
現実は不思議なことに無資格者が当たり前に施術しているじゃないですか。 このままでは本当に国家資格を持って治療に当たっている柔道整復、鍼灸、あん摩マッサージ指圧の先生方の信頼度も下げてしまいます。何の知識もない人が治療をすることで助かる人も助からなくなってしまいます。これは柔道整復師に限らず、鍼灸師もあん摩マッサージ指圧師も同じです。柔道整復も鍼灸もマッサージも、もちろんどれも「整体」には属しませんし、国家資格を取る為のカリキュラムにも「整体」なんて授業も無いし、言葉も一切出てきません。まず、最初に理解していただきたいのが「整体」というもの自体になんの国家資格など公的な資格は存在しないという事です。つまり、その手法や技法も何も確立されたものがないと言ってもいいと思います。いや、あるよ!って言う整体師さんもいるとは思いますが・・・それはあくまでも独自の確立された「整体」です。整体師という職種はあっても、公的な整体とか公的な整体師という免許は無いです。
「整体」を否定するつもりもありませんし、「整体」が悪ではありません。
更に道路交通法になぞらえて「整体」を見てみましょう。
自動車免許を持った人は免許の特性上、原付バイクにも乗れます。さて、ここで「整体」です。自転車に近い感じでしょうか。免許がないと乗ってはいけないのではなく、乗れるかどうかの乗り物というイメージです。そして、大事なのがここです。
乗れるのは良いけれど、その乗る人が道路交通法を知ってるかどうかです。でも、自転車に乗ることが悪い訳ではありません。自転車という乗り物自体が悪い訳でもありません。車やバイクに乗る人が自転車に乗れば当たり前に交通ルールを知っていてそのルールを守って道路を走ります。問題なのが交通ルールを知らないで自転車に乗っている人です。身体の構造の基礎を知らずに無謀な整体という名の行為で人の身体に触れていることが問題だと思います。つまり、整体という行為そのものが悪ではなく交通ルールここで言えば身体のつくりなどの基礎医学を解った上で整体をしているのか、自転車と同じでただ乗れるからという理由で乗っている。つまり整体という技術が出来るからやっているということが問題でしょう。なので、医師でも柔道整復師でも鍼灸師やあん摩マッサージ指圧師などは医学的な基礎を学んで国家資格という免許がありその責任を背負った上で治療を行っている。自転車を庭で乗るのと公道を走るのでは訳が違いますし、責任と法律がのしかかってくることを知った上で自分がどちらで乗るべきなのかを判断する必要があると思います。
患者さん自身は自分を歩行者だとしてその道にどんな危険があるかを予知し、気をつけて歩かなければいけない。免許のないドライバーが車やバイクに乗るのも怖いですが交通ルールを知らない自転車が同じ歩道を走っていることにも気をつけなくてはなりません。大事なのは見分ける目です。
ナンバーの付いていない車や整備されていない車が走っていても怖いですね。簡単に見分けを言うと院外に金額が表示されていたらルールを知らない無免許ドライバーだと思ってもらっていいでしょう。インフルエンザの注射一本○○円なんて書いてある医療機関見たことないですよね。国家資格を持っているからこそルールがありそれを当たり前に守っているだけです。
そのへんを知った上で患者さんは自身の身を守っていただければと思います。
*田中一行先生(明治国際医療大学鍼灸学部鍼灸学科卒・師鍼灸学士)
龍華鍼灸院院長 群馬県渋川市(田中先生引用承諾済)
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