これだけは知っておいて 【第67回:試行錯誤を繰り返せるのは今 ―業界全体で考えること―そのⅡ】
明治国際医療大学 教授 長尾淳彦
新型コロナウイルス感染症が発生し緊急事態宣言が出された4月7日以降の滋賀県、京都府、兵庫県、奈良県、和歌山県の公益社団法人柔道整復師会の平均同月比率は
件数ベース | 金額ベース | |
---|---|---|
4月 | 20%減 | 20%減 |
5月 | 27%減 | 26%減 |
6月 | 22%減 | 18%減 |
7月 | 18%減 | 15%減 |
であった。6月7月と回復傾向にありますがその減少の中身分析が必要です。
柔道整復師業界は運動器疾患で発熱患者の来院が元々少なく、検温とマスクの着用を徹底的に行えば患者さんは安心して来院されると思います。
ただ、それは短期的なもので今後、業界が考えていかなければいけないことは数多くあります。
会社も学校なども大都市集中で退社時、下校時に通院できる大都市圏の接骨院が流行っていましたがテレワークの普及など自宅や都会集中でない働き方の変化により今までは治療時間に受診できなかったサラリーマンやサラリーウーマン層が自宅近隣の接骨院に昼間に受診できる環境となることなどがあげられます。
来院患者数減少の原因が新型コロナウイルス感染症対策だけなのか前述したように働き方などの別の要因なのかの分析は綿密に行っていかなければなりません。
院全体の支給申請書枚数は変わらず、一人の患者さんの通院回数だけが減っているのなら新型コロナウイルス感染症対策での受診控えと考えられますが支給申請書枚数が極端に減っている場合はその原因を探らなければ業績の回復はあり得ません。
患者さんの気持ちは「接骨院に行って感染しないだろうか?」「この程度の痛みなら我慢したほうがいいのでは?」「この程度の痛みで受診したら接骨院に迷惑なのでは?」と考えられています。
迷われている患者さんにメッセージを送ることが大切です。「感染症拡大防止策の手洗い、検温、マスクの着用の徹底」「このまま放置したら症状が悪化するので再度治療計画を作成しましょう」とホームページ、はがき、電話などで患者さんを励ます行動が必要です。
今後は、患者さんと施術者が触れ合わないと出来ないこと。患者さんと施術者が触れ合わなくとも出来ることを区別して「良質な柔道整復施術」を提供出来る環境を業界全体で考えるべきであると思います。
その中で柔道整復施術でしか出来ないこと、接骨院という施術所でしか出来ないことを今、試行錯誤して考えていかなければ柔道整復師は生き残れないと思います。
この数か月で新型コロナウイルス感染症が終息することは無く、さらなる感染症も出現する様相です。柔道整復師業界は試されています。
社会構造が変化していく今だからこそ柔道整復イノベーションを起こすチャンスです。
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