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何故、柔道整復は国民に支持されてきたのか?【第11回:単独法獲得に向けた請願運動の継続】

何故、柔道整復は国民に支持されてきたのか? 特集

単独法獲得に向けた請願運動は尽きることなく継続され、昭和42年の定時総会(社団法人全日本柔道整復師会)において議決を行い、より強固に獲得運動を展開することになりました。

第六十一・第六十二国会では廃案となりますが、第六十三国会(昭和45年3月17日)で衆議院を通過し、参議院社会労働委員会(昭和45年3月31日)を通過し即日、参議院本会議において全会一致で柔道整復師法が可決成立しました。

第六十一国会参議院社会労働委員会において、大日本柔道整復師会柔道整復師法請願実行委員長(金沢利三郎氏)による趣旨説明の抜粋を示します。

略~柔道整復師法請願趣旨の説明を行うよう社会労働委員長吉田忠三郎先生より申しつかり光栄の至りに存じます。~略~ 本法案は現在の法律をそのまま独立させるものであって、内容については変わっておりません。只一点罰則が強化されております。何故単独法を制定しなければならぬかと云うことは請願書にも記載しております通り、あん摩、マッサージ、指圧と異なり、私達の領域は骨折、脱臼、打撲、捻挫の四点に限られておることであります。昔日の牛馬、自転車をもって足れりとせる時代と異なり、進化せる今日、建設工事、スポーツの振興、交通機関の発達は昔のこと、交通戦争、交通地獄の様相を呈している現在、その負傷程度において深度なるもの多く、ここに独立した高度の教育と相俟って技術の探求を必要とし、時代に即応し、科学検査により的確な判断のもとに施術の万全を期すること切なるものがございます。~略~ 修学年限の延長と相俟って実地研修期間を設定し ~略~ 柔道整復師の単独法制定により保険法一部改正を願い、療養費を基金払いに加えるよう今後の重要課題として参りたいと考えております。~略~ 日本医師会会長武見太郎先生、代議員会議長渡辺真吉先生、常務理事菊池慎一郎先生にも医師会会長室において親しくお目にかかり、今後の御指導をお願いするとともに請願趣旨の説明を行ない、御了承を得ております。(日整六十年史より)

これらエネルギッシュに先人が努力と精進を重ねられ、柔道整復師法が昭和45年4月14日、法律第十九号をもって公布され、同年7月10日から施行されました。

柔道整復師の業務は明らかに医療の一端を担い、国民からの絶大なニーズがあればこそ単独法として成立されたことは、その歴史からも大変重要な事実です。

この後、昭和時代の終盤に至るまでは比較的順風と言える料金改定通知が繰り返されます。

  • 昭和40年 後療回数制限が廃止される
    (脛骨骨折:20回、上腕骨・肘関節・両前腕骨:24回、打撲捻挫10回など包帯交換処置として後療回数が定められていた。)
  • 昭和49年 骨折後療に係る延べ日数方式廃止、休日算定加算
  • 昭和52年 国民健康保険が全国協定となる
  • 昭和53年 骨折・脱臼に係る金属副子加算
  • 昭和56年 骨折拘縮後療加算
  • 昭和58年 温罨法に併施の電気光線器具使用料加算
  • 昭和59年 後療料の引き上げ
  • 昭和60年 再検料・冷罨法新設

料金体系は柔道整復の現場に相応した金額とは言い難いながら、漸次料金のアップや新設の算定項目が認められていました。しかしこの後、いわゆる「アメとムチ」と呼ばれる改定が続くことになります。

  • 昭和61年 申請書委任欄の患者署名徹底、一部負担金領収証発行指導、3ヵ月を超える施術理由記載、高額・長期・濃厚施術に対する指導監査強化(保険発57いわゆるロクロク通知)
  • 昭和63年 社団法人柔道整復師会所属以外の柔整師に受領委任取り扱い認可(取扱規程)
  • 平成  4年 温・冷罨法や電療料に関する算定制限の一部緩和、施術情報提供料加算新設及び多部位請求や長期施術に対する逓減算定方式導入
  • 平成  6年 多部位請求は6部位 → 5部位に制限、逓減算定率が拡大(部位別算定事実上否認)
  • 平成  8年 拘縮後療加算、届け出による定額制算定方式導入
  • 平成  9年 保険発57による既出通知の整理、急性・亜急性の文言(留意事項等)
  • 平成11年 養成校規制解除、申請書受取代理人欄の自署の押印廃止(自署の徹底)
  • 平成12年 多部位請求は5部位 → 4部位に制限、逓減算定率が拡大
  • 平成14年 逓減算定率がより強化、再検料・往療料引き下げ
  • 平成16年 4部位算定の負傷原因記載
  • 平成18年 金属副子概念変更及び温罨法料引き下げ
  • 平成20年 初検時相談支援料加算新設
  • 平成22年 後療料引き上げ、4部位 → 3部位に制限、負傷原因記載強化

平成13年~平成17年には、小泉政権による聖域なき構造改革として、医療保険制度改革が断行され、日本医師会による「小泉政権における医療政策の総括(2006.9.27)」では、『「破壊なくして創造なし」というのは小泉前総理の持論だが、医療については破壊のみで終わった感が否めない。新たに発足した安倍政権においては、「医療は国民の生命と生計の安心を支える国家安全保障である」という共通認識のもと、建設的な議論を重ねて行けることを望みたい。』と結ばれています。

柔道整復療養費の料金改定における根拠は、これまでの慣例上、医科における医療費改定率のおおよそ1/2とされていました。しかし民主党政権における改定時には、興味深い定義が示されることになりました。また、民主党政権誕生時のイベントと称しても過言でなく、法的拘束力も有さない行政刷新会議の一方的結果までもが改定の根拠の一部にされています。

平成22年料金改定においてプラスマイナス±ゼロとする算式

±ゼロとする改定根拠

平成22年度の医科外来の改定率が0.31%であったこと、及び行政刷新会議における多部位請求適正化の指摘等を踏まえ、±0%とする。

この料金改定時は、平均治療部位数が2部位以下で算定をされている柔道整復師にはプラス改定、平均治療部位数が2部位を超えている場合にはマイナス改定だと説明がなされました。
この翌年以降、厚生労働省が発表する柔道整復療養費総額推計値は年々、非常に大きな下がりを示しており、下げ止まることなく推移しているようです。
昭和63年から認められた個人契約、平成11年以降の養成校乱立は、国民や柔道整復業界が望んだ対応なのでしょうか。読者の皆様は、どのようにお考えになりますか?

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