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調査票の実態【第15回:柔道整復師と保険者の広告表記】

特集 調査票の実態

柔道整復の施術所、接骨院や整骨院における看板や広告類について読者の皆様は、どのようなお気持ちを持っておられますか?
柔道整復師法では広告の制限が定められ、違法すれば法に基づく罰則が科せられることになります。柔道整復の施術方法や傷病名など一般に理解されないであろうことを理由として、様々な文言をサインとして表す手法は、患者目線に立った対応であるのかもしれません。ですがこれらは明らかな法律違反です。一部の整形外科医師から、柔道整復は医療でない!と揶揄嘲弄されることもありますが広義の医療と捉えるならば、医科・歯科に倣って正しく法令順守した看板や広告に努めて頂きたいと願います。

平成9年4月17日保険発57「柔道整復師の施術に係る療養費の実施上の留意事項等について」の 第1 通則 1療養費の支給対象となる柔道整復師の施術は、柔道整復師法に違反するものであってはならないこと。と規定されています。例え看板や広告であっても違法行為が認められれば、柔道整復療養費特例受領委任方式による健康保険を利用した治療・算定の対象にならないことになります。受領委任を取り扱う場合、柔道整復師法の違反があっては利用することができないのでどうか十分にご注意ください。

発行者は某都道府県教育委員会事務局、編集は同公立学校共済組合、と記されている冊子に整骨院・接骨院のかかり方として紹介されているページをご覧ください。
冒頭に、わざわざ施術の限定が示されていますが、まったく不要な記述です。
また、「組合員証(保険証)を使用できるのは、骨折・脱臼・打撲~略」とあります。これら傷病名の表記は柔道整復師法により柔道整復師が広告表記すれば違法行為となりますが、受診者への啓蒙文書として保険者が表記することは違反とならないのでしょうか?

協定(受領委任の取扱規程)には、丁及び勤務する柔道整復師は、施術の必要があると認められる負傷に対して、的確な判断のもとに患者の健康の保持増進上妥当適切に施術を行うほか、以下の方針によること。(1)施術にあたっては、懇切丁寧を旨とし、患者の治療上必要な事項は理解しやすいように指導すること。また、療養費の支給対象等、療養費を請求する上での注意事項について説明をすること。とあります。

多くの受診者は、身体運動器に何らかの症状を覚えて来院されるはずです。柔道整復師の先生方は正しく初検を行い、的確な判断のもとに施術(治療)を実施されることになります。
受診者は、骨折や打撲など自ら判断し来院される訳ではありません。支給基準により使用を認められた傷病名を下すのは柔道整復師です。正しくは、「医師や柔道整復師により、骨折・脱臼・打撲~略 と判断された場合、健康保険による治療が可能だと判断された場合、組合員証(保険証)を使用して受診することができます。」と記載されるべきです。

内科的な病気に罹患されている方でも、柔道整復の治療対象となる身体運動器損傷を生じる場合があり、ヘルニア等の脊柱疾患を有する方でも筋挫傷や頸部・腰部捻挫と判断される損傷を生じられる例もありましょう。脳疾患による運動麻痺を有する方でも関節や腱損傷を生じることもあります。末文では、「審査の強化に伴う施術内容の確認を目的としています。」と結ばれていますが、4課長通知の目的は、「保険者による適正化への取り組みであり、調査は多部位、長期又は頻度が高い施術を受けた被保険者等への調査」です。
決して、受診制限であってはなりません。疑義ある請求例に対して調査が行われるべきなのですが、柔道整復の現場では返戻屋が濡れ手に粟のように思えてなりません。

柔道整復師の先生方には、様々な角度から負傷機転・柔道整復療養費特例受領委任方式などの説明を十分に重ねて頂き、決して返戻屋手法に劣ることなく、そして受診者による回答書の記載は、返戻対象とならないよう誤りなき回答が出来るための患者指導にも精励下さい。加えて、誤った対応を繰り返す保険者や返戻屋に、適正な抗議が強力に行えることを担保すべく法令を遵守し、より襟を正した柔道整復の実践にお努めいただきたく切に願います。

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