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調査票の実態【第17回:柔道整復療養費に係る疑義解釈】

特集 調査票の実態

今回は、柔道整復施術療養費支給申請書への負傷原因記載、郵便番号・電話番号記載、申請書返戻後の再提出について、編集部に寄せられた質問をもとに、これまでに発出されている疑義解釈及び柔道整復師小委員会における質疑の一部から再確認を致したいと存じます。

平成23年3月3日付 厚生労働省保険局医療課発出の事務連絡「柔道整復療養費に係る疑義解釈資料の送付について(その2)」いわゆるQ&Aの一部を抜粋。

(問20)
3部位目を所定料金の100分の70に相当する金額により算定することとなる場合は、すべての負傷名にかかる具体的な負傷の原因を申請書の「負傷の原因」欄に記載することになったが、施術が継続する場合、毎月同様に記載しなければならないか。また、具体的な負傷の原因はどの程度まで記載が必要か。

(答)
「負傷の原因」は、保険者等での確認が容易になるよう、申請書ごとに記載をされたい。また、具体的な負傷の原因は、どこで、どうして、どうなったか等負傷等に至った状況がわかるよう次の記載例を参考にされたい。

(負傷の原因の記載例)

  1. 私用で自転車に乗って買い物に行く途中、縁石に乗り上げ転倒して負傷
  2. 自宅で階段を踏み外し転落して負傷
  3. 学校でサッカーの部活中、ボールを強くキックしたときに捻り負傷 など

負傷の原因の記載例が示されていますが、負傷した部位を特定する記述はありません。
負傷や損傷を生じた部位については、傷病名により判断することが可能であるから原因の記載内容は、受傷機転・負傷動作・アクションについて分かりやすく記載することが重要です。

平成25年4月24日付 厚生労働省保険局医療課発出の事務連絡「柔道整復療養費に係る疑義解釈資料の送付について」同じくQ&Aの一部を抜粋。

(問5)
申請書の「住所」欄には住所のほか郵便番号、電話番号の記入を求めることとあるが、郵便番号、電話番号の記載は必ず必要か。

(答)
患者に郵便番号・電話番号の記入を求めた結果として、患者の理解が得られず、記入がない場合は、これらの記入が無いまま申請書を提出することでやむを得ない。従って、郵便番号・電話番号の記載が無いことのみをもつて、不支給とする取扱はしないものである。

続いて平成25年5月9日参議院議員会館B107会議室で開催された「民主党統合医療を普及・促進する議員の会 第21回柔道整復師小委員会」より抜粋。

(質問15)
患者に記載を求めるならば、郵便番号、電話番号を記載させる利用用途を施術者が説明しなければならないが、何の目的で書くのか尋ねられたならばどのように答えればよいのか。
また、氏名や続柄に加え、電話番号情報まで多くの第三者の目に触れることになることから、オレオレ詐欺等に使用される危険性等を考えるとあまりにも問題がある取扱いである。実施を見送るべきではないか。このような取扱いであれば必須の記入事項でないと解釈してよいか。

(回答)
先程も言った通り、保険者さんが必要な場合に被保険者の方々に対し照会を円滑に行えると、それがひいては療養費の早期支給に繋がると思われる。そういう趣旨でお願いするという事であり、施術者さんが患者さんに書くようにお願いして欲しい。結果として個人情報だからと理解が得られず、記入できない場合は記入がないままで請求書を出すこともやむを得ないと考えている。

(質問20)
「郵便番号・電話番号の記載がないことのみをもって不支給とする取扱いはしないもの」とは、返戻も含むと考えてよいのか。また、返戻される場合に備え、申請書欄外に「郵便番号・電話番号の記入がない場合は、記入を求めた結果、患者の理解が得られませんでした」等の印字を行ってよいか。

(回答)
返戻を含むと考えているので、私共としてはその記載がないから返戻するという取扱いは想定していない。また申請書の欄外にそのようなことを記載するのもひとつの方法だと考えている。

申請書への郵便番号・電話番号の不記載を理由として一律に申請書の返戻を行うことを決めておられる保険者があるようです。保険者の判断は「ある施術所に通院するすべての受診者が郵便番号・電話番号記載を拒むことは考えられない」とのことだそうです。
昨今、電話番号については携帯電話の普及により公開を拒む方もおられることから、大切な個人情報であると強く位置付ける柔道整復師の先生であれば、受診者へも相当の説明を行うはずです。
その結果、個人情報であることを認識され申請書への記載を拒む方が現れると、他の受診者も連鎖反応的に右へ倣えとなる様子が容易に伺えます。規程に従った対応の結果、記載を拒否された場合にはその旨を施術録に記載しておくことも必要です。ちなみに健康保険組合や国民健康保険に係る保険者は、加入者情報として電話番号などの情報は管理出来ている可能性が高いと考えらえます。
協会けんぽ保険者の場合は、その立ち位置から加入者に関する電話番号情報の把握は少ないと考えることができます。

平成25年12月11日衆議院第2議員会館第3会議室で開催された「民主党統合医療を普及・促進する議員の会 第23回柔道整復師小委員会」より抜粋。

(質問)
柔道整復師療養費支給申請書に係る返戻の再提出に際して、すでに来院を停止している受診者に対して、受診の事実を確認するための署名を求める記載が見られることがある。
連絡が取れない場合など不可能な場合があるが、署名を求める根拠を教えていただきたい。

(回答)
元々この話については、柔道整復師に返戻し患者の署名をもらうこと自体がどうかと思っている。質問の通り来院を停止している患者に署名をもらうことは到底できないことであって柔道整復師に保険者がそれを求めることはやはりおかしいことだと思う。この場合は、保険者に「この人は来院していないので署名することは出来ない」と回答していただきたいと思うが、これを以って不支給にするというのはおかしいので、指導を行っていきたいと思う。

今回資料として載せている返戻付箋には、この質疑事項に触れる内容が見られます。
再提出の条件として「受診者もしくは被保険者の新たな署名」の要求や問診票(写)もしくは施術録(写)の提出が求められています。当該の健康保険組合が保険者機能として要求されるものでありましても、その理由は単に受診者からの調査回答が整合していないだけのことであり、施術が適正に行われていても調査手法が不適正ならば、受診者の回答もおろそかになることが予測されます。
いずれにしましても、保険者は返戻屋に対する対価を支出することになり、柔道整復師の先生方は度重なる執拗な調査によって入金遅延や受診者の誤解を生じることとなります。
これら患者調査の効果としては、患者離れ(受診抑制)となることは必至です。
返戻屋への漁夫の利を生むために発令された4課長通知でないことを切に祈りたいです。

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