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調査票の実態【第19回:国民健康保険法と調査票】

特集 調査票の実態

国民健康保険法 第四章 第四節 雑則

(強制診断等)
第六十六条 保険者は、保険給付に関して必要があると認めるときは、当該被保険者若しくは被保険者であった者又は保険給付を受ける者に対し、文書その他の物件の提出若しくは提示を命じ、又は当該職員に質問若しくは診断をさせることができる。

国民健康保険法 第十一章 雑則

(文書の提出等)
第百十三条 保険者は、被保険者の資格、保険給付及び保険料に関して必要があると認めるときは、世帯主若しくは組合員又はこれらであった者に対し、文書その他の物件の提出若しくは提示を命じ、又は当該職員に質問させることができる。

(資料の提供等)
第百十三条の二 市町村は、被保険者の資格、保険給付及び保険料に関し必要があると認めるときは、被保険者若しくは被保険者の属する世帯の世帯主の資産若しくは収入の状況又は国民年金の被保険者の種別の変更若しくは国民年金法の規定による保険料の納付状況につき、官公署に対し、必要な書類の閲覧若しくは被保険者の雇用主その他の関係者に報告を求めることができる。

編集部解説

第六十六条は、保険給付の適正な実施を目的に、保険者に対して被保険者への文書等の提出命令や強制診断を行う権利を認めた条文であると言えます。
「保険給付に関して必要があるとみとめるとき」とされていることから、当該の保険給付が実施されていない場合を意味しています。「文書その他の物件」とは、医師の診断書や画像診断結果などが考えられます。単に質問は、保険者職員により行われますが、「診断」となれば、医師や歯科医師でなければ行うことはできません。
(この命令に応じず診断を拒んだりした場合には、保険の給付が制限或いは停止されることになります)

柔道整復師の先生方は、ご理解いただけたと思います。
この照会文書には、「おわかりになる範囲でご記入の上…」とあります。
その根拠として記載されている国民健康保険法第六十六条・第百十三条は、命令として被保険者(受診者)に文書提出等の指示を可能としたものであり、協定や、いわゆる4課長通知にある照会とは法的に、性質の異なる解釈となります。
適正に作成し提出された柔道整復療養費支給申請書に関する照会であるにも関わらず、当該の被保険者には法的権限により、調査を実施している強権的な様子が伺えます。

柔道整復施術療養費特例受領委任に係る協定(療養費の支払い)33には
保険者等は、療養費の支給を決定する際には、適宜、患者等に施術の内容及び回数等を照会して、施術の事実確認に努めること。また、柔整審査会の審査等を踏まえ、速やかに療養費の支給の適否を判断し処理すること。

保医発0312第1号 平成24年3月12日
いわゆる4課長通知 4.外部委託及び返戻の留意事項には

外部委託についての留意事項

保険者が、療養費の支給決定までの事務を民間業者へ外部委託することは、健康保険法、国民健康保険法及び高齢者の医療の確保に関する法律に制約する規定はないが、保険者が有する権能(返戻、支給・不支給の決定など)を委託することはできないこと。
民間業者への外部委託に当たっては、被保険者等に誤解を生じさせないよう、また個人情報の保護に関して適切に取り扱われるとともに、契約内容が適切に履行されるよう、保険者が責任をもって、指導・監督を行うこととし、別紙4に基づき適切に実施されたいこと。

別紙4民間業者への事務の外部委託における留意事項(柔道整復療養費関係)

1外部委託の範囲にかかる留意事項

保険者は、療養費の支給決定までの事務を外部に委託することは、現行の法令では制約する規定はないこと。
外部委託に当たっては、被保険者等に誤解を生じさせないよう、また個人情報の保護に関して適切に取り扱われるよう、保険者が責任をもって、指導・監督を行うこと。

[ 外部委託が可能な事務の例 ]

文書照会の要否の提案(照会する対象者を選定)、疑義案件や審査案件の抽出、審査資料の作成、審査・点検の作業的な事務、照会文書の発送、患者からの問い合わせに対する対応、聞き取り項目の作成などただし、次に掲げる保険者が有する機能については、外部委託することはできないこと。

  1. 返戻の決定
  2. 文書照会の要否の決定
  3. 審査の決定
  4. 支給または不支給の決定
  5. 被保険者等からの聞き取り

今回の照会文書では、単に「受療者確認」を求めており比較的簡素な設問構成となっていますが、書面の冒頭には受診者である方々が理解するには大変困難だと思われる文面となっています。この照会は、法律(国民健康保険法)に基づいた照会である旨が記載されています。
協定や通知レベルの規程を飛び越えて、法的根拠による照会が返戻屋により行われる事実が、保険者サイドにおける適正化とは到底考えがたいと編集部では捉えております。

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