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調査票の実態【第25回:患者調査は保険者努力?】

特集 調査票の実態

平成24年3月12日保医発0312第1号いわゆる4課長通知が発出されました。この通知が出されるはるか以前から、一部の保険者や返戻屋によって正しくない患者調査(患者照会に同じ、以下調査と略す)がなされている例が多発していました。多くの方法は、返戻屋が事前に準備した「調査基準内容」に沿った網掛け方式での調査であり、これが保険者による業務スタンダードとなっていました。その上に4課長通知が出され調査の実施は、あたかも適正化に向けた保険者努力だと大きな誤解をされているようです。網掛け方式ですから、特に疑義の無い請求例であっても一律に調査がなされます。これら調査とは名ばかりであり、明らかな受診抑制を数多く招くことになりました。

柔道整復施術療養費の取り扱いについて、個人開業者や社団法人組織、任意団体等が混在し、チェックや支払い業務に苦慮する多くの保険者に対して、「基準通院日を超えた請求・合計銀額が基準を超える・長期施術の基準を超える」など、調査基準内容として対象となる抽出条件を提示されることによって、多くの保険者は返戻屋に業務を委ねることになります。業務を委託された返戻屋は、委託費用に応じた効果を示す必要があり前述の網掛け方式での調査を行い、適正な柔道整復師の先生方まで受診抑制となる結果を表し、単に返戻屋の利益のみが生じる現状です。

4課長通知の発出1年後に4課事務連絡が出されました。その内容は、『通知は、「被保険者及び施術者等の負担の軽減」「支給決定までの迅速化」「手続きの公平さ」を勘案しつつ保険者が療養費の適正化に取り組むことを主眼とし、文書による患者照会の手法について、再照会の場合の大切な注意点について』であり、保険者へ再び注意喚起がなされました。特に「保険者側の先入観や仮定の判断を踏まえた誘導的な聞き取りは行わないこと・患者にわかりやすい照会内容や記述しやすい回答欄の作成に努めること」と示されています。しかし幾度となくお伝えして参りましたように、我が国の厚生労働行政における先読みをされる役人の皆様がこれら一方的な患者調査を奨励する通知や事務連絡を発出した場合、(これらが発出される以前から返戻屋は台頭しています)受診抑制をより生じるという結果は十分に先読みできていたはずです。4課事務連絡が発出される前年から柔道整復施術療養費総額は下がり始めており、この事実は厚生労働省が療養費の推移(推計値)」として毎年発表しています。

当初の4課長通知では調査の手法例として、通院日数の多い請求傾向がある場合や多部位請求傾向がある場合など、あくまでも傾向的な請求が認められる場合を対象として実施するよう記述がなされていました。ですが実際には、これら頻回通院・多部位請求・長期請求の傾向でなくとも一律に、返戻屋の抽出条件に沿った調査が行われています。本来ならば頻回通院となるには頻回施術の理由が必要であり、多部位請求には負傷原因記載が必要であり、長期施術には長期施術理由が必要です。加えて逓減算定(多部位逓減・長期逓減)が義務化されており、本来であれば疑義ある請求として、架空請求・付け増し請求・部位転がし請求が疑える場合に疑義を解消することを目的として調査が行われるべきです。

  • わずか月に1回の通院で1部位請求でも調査となる
  • 数か月間の継続した請求で同じ患者に数回の調査となる
  • 明確な負傷原因があるのに負傷の繰り返しであると警告文書が受診者に届く
  • 症状が長引く場合に医師の受診を促すように警告する文書が受診者に届く
  • 治療を完結し数か月を経て受診者調査が行われる
  • 治療期間が3か月を超えただけで調査が行われる
  • 同一世帯で複数の受診者がある場合に調査が行われる
  • 単に月10日以上の通院であるだけで調査が行われる
  • 返戻された支給申請書の再提出に際して再び受診者の署名を求められる
  • 受診者への調査結果のみを理由として支給申請書が返戻される
  • 調査用紙にある人型への負傷部位(治療部位)の誤記入で支給申請書が返戻される
  • 申請書への負傷原因記載がなされていても調査回答に書かれる内容と異なれば返戻

これら例をあげると枚挙にいとまがありません。

資料は平成30年5月24日 4課事務連絡(前回の再掲)ですが、「被保険者への照会については、本来の目的である不正の疑いのある施術等についての被保険者等への確認のために実施するものとし、受診の抑制を目的とするような実施方法は厳に慎まれたい。」と示され、「不正の疑いのある施術や多部位、長期、頻度が高い傾向がある、又はいわゆる部位転がしといった照会が必要な施術について照会することとされたい。」とあります。

また協定(受領委任の取扱規定)の(施術の方針)には、「~ 患者の治療上必要な事項は理解しやすいように指導すること。」「療養費の支給対象等、療養費を請求する上での注意事項について説明をすること。」と規程されています。これらを遵守し、調査が行われても負傷や損傷の原因や治療の内容について、受診者が誤回答をされないよう適正な対応を旨とされ、柔道整復師の先生方の不利益・返戻屋の利益とならないよう国民保護の精神で歩んでいただけることを切に願います。

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