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ビッグインタビュー 【新・柔整考⑪】 業界内外の声をお聞きする!

新・柔整考 特集

JB日本接骨師会の最高顧問・本多清二氏は柔整業界になくてはならない人物である。コロナ禍になる前に打ち出した数々の施策、平成21年10月~平成22年の間に「柔道整復診療と療養費の問題協議会」を計4回開催。同21年2月には〝患者と柔道整復師の会〟を創設。以来、〝患者と柔整師の会〟では「保険者会議」「患者会議」「柔整師会議」を次々と開催され、また平成23年6月には〝接骨院・整骨院の患者相談ダイヤル〟を開設。その並々ならぬ活動展開には目を見張るものがある。コロナが落ち着いた現在、本多弁護士が次に取り組もうとされているのは一体何であるのかについてお聞きした。

常に患者さんに寄り添い、柔道整復の原点に立ち返ることで新たな道を切り拓いていくべきと考えます!!

社団JB日本接骨師会最高顧問・弁護士 本多 清二  氏
社団JB日本接骨師会最高顧問・弁護士 本多 清二  氏

―JB日本接骨師会ではこれまで数々の先駆的な取組みをされてこられましたが、その内容について、どのような意図、趣旨で活動されてきたのかお聞かせください。

設立当初はどちらかというと、やはり他団体、特に日整さんを意識しながら、日整さんに無いところに対して取り組んでいました。そういう姿勢でやってきたつもりです。日整さんの場合には、保険を中心にやられておりましたが、保険以外にも例えば会員の教育等にウエイトを置いて行っていました。東京以外の地域との格差みたいなものを少しずつ変えてみようということで、夫々地域のカラーがあったのですが、それを出来るだけ統一していったら良いのではという考え方をもっていましたので、支部というのを作りませんでしたが、あまり成功しておりません。

―設立当初は試行錯誤されたことも多かったのでしょうか?

反日整さん的な考えが強い会員が居ましたし、その人達との折り合いで苦労したところがあります。日整さんのことを批判しながらも、やることは同じことを考えている人が多かった。つまり、いじめられたら、いじめ返すという考え方なんです。どこかの運動部みたいに(笑)。そういう意味で、自分達が中心になったら今度は自分の思い通りにやろうというような感じでした。それを抑えるというか、バランスとろうというのは大変な苦労をして、意見が分かれて結構辞めていった人も居ます。やはり権力志向型で、そこをなんとかクリアしたいと思っていましたが、難しかった。当時は、柔道の高段者というか段位を持っていた方が柔整業界の指導者で多くいましたし、そういう人が中心になって会を運営されていたのではないでしょうか。しかし、今はそういう会員はもう少数派です。当時はレントゲン問題が中心テーマでした。レントゲンを取られてしまうのは、柔道整復の仕事としては困る、それが一番強かったのではないでしょうか。なんとなく行政のほうも目をつぶっていたところがありましたが、だんだん整形外科が増えてくると整形外科の多い地域では、レントゲンの締め付けが厳しくなって、隠れて撮るような、そういう時代でした。それを奪還したい、破りたいというのがありました。なんとか勝ち取ってあげようという、もうお亡くなりになった佐野先生らが中心になっていました。それはやはり私は良い話だったなって思っています。一番やりたかったというか、取り組まなければいけないことは、支払い側の保険者と受け取り側の柔整師との間の距離を縮めたいという、双方の間の誤解を解きたいという思いが大きく80%位はそこに力を注ぎました。
誤解を受けるのを恐れずに言えば、医師会、医師側と商売敵のような感じがあります。特に、柔整師さんのほうが流行っていて、お医者さんの方が流行っていないという地域が激しかったように思います。今は知りませんけれども、その当時は柔整師さんのほうが親しみやすかったように思いますし、お子さんがスポーツをやっているとか、スポーツを通してやっていましたから、お医者さんよりは近場に居て、また料金が安かった。お医者さんと柔整師の距離を縮めようとして、反柔整師・非柔整師の発言をするドクターに何度か個別にお会いして、考えを聞きだして距離を埋めようという努力もJBはしました。

―柔整フォーラムを何度も開催されて、また盛り上がりもありましたね。

柔整師さんもこれではいけない、やらなきゃいけないという反発もあったので、割と理解しやすかったように思います。勿論、そんなのをやっても意味が無いんだと反発した方もいましたから、状況は二分していました。二分したのは、お前のせいだとご指摘を受けたことは何回もありました。とにかく、日整オンリーの時代でしたから、日整さんと分かれて活動することは、やはり分断活動であり、分断者といわれるのは、やむを得なかったと思います。昔は、団体を作ってもダメになって、また日整さんに戻るという人が何人もいましたので、どうせまた戻ってくるのであろうという発想でした。そのようななかでも、日整さんの幹部の方達とレントゲン問題で2,3度ディスカッションをした記憶があります。

―フォーラムを開催された目的や意図というのはやはり保険者の理解を深めようということでしたか?

保険者の理解を深めたいという思いと、やはり医者との関係の両方です。私はあの時に、保険者さんとの間のコミュニケーションを上手くとれないかということ、つまり〝柔道整復療養費というのは、何だ?〟と。そこのところをキチッと理解をしなければいけないというのがありました。もう一つは、お医者さんとの間でどういうコミュニケーションをとれるようになるのが良いのか、ということでした。やはり、それはこちらからお医者さんのほうにメッセージを送らなければならない。あと一つは、当時は鍼灸と柔整師との垣根、整体との垣根が表に出てきた時代でしたから、〝柔整師の仕事とは何ぞや?〟っていうところ、柔道整復師の施術とはどういうことなんだということを、僕は素人だから分からないけれども、柔整師の先生達に聞いていくというかたちでした。マスコミの方も取り上げてくれてました。当時、整形外科の先生をお呼びして柔整師の医療過誤を防ぐということで、いろいろ講義をしてもらうようにお願いをして、名前を公にしなければ行ってあげるという、そういう雰囲気で来てくれました。大学の先生はあまり医師会に関係ないので来てくれて話してくれましたが、現場でやっている先生、開業医の先生は難しかったです。私どもは柔整の仕事を理解してくれないかという思いですが、例えばゴルフを一緒にやったり、お酒の席でというよりも、柔整ってどんな仕事をしているんだということを整形の専門家に理解してもらえれば、非常に仕事の上での距離感が縮まってくる訳です。

―平成20年に「公開シンポジウム―接骨院治療の療養費の運用を考える―」として開催されましたが、その目的と反響についても教えてください。

どちらかというと反響は、柔整師さん、特に日整さんの反響は良い意味でも悪い意味でもありました。やはり二通りあるんです。当時の雰囲気としては、一つはもっともっとやってほしいと。もう一つは、あんまり触るな、そこを触っては困るんだと。暗黙の了解でやっているんだから、公にされると潰されてしまうという二通りがありましたし、いろいろ批判も受けましたが、その考え方が強かったです。表現は不適切ですが、おこぼれをいただいているというような感じを受けました。しかし、それではダメなんだと。正々堂々と頂けるものは頂くんだということを行うべきだと主張しましたが、やはり其処は、そっとしておいてくれ、みんな上手に?やっているんだからと。だから今でも古い時代の先生であれば、同じようなことを言ったと思います。レントゲン問題を、表立ってやると逆に潰されてしまうから、そっと裏口でやっているのが良いという意見が多くありました。もっとやるべきだという人達、その時に一番努力したのは登山さんで、表立ってやるべきだと言って一緒に戦いました。彼はそういう意味ではおこぼれ頂戴ではなく、とれるものはきちっと主張して理由付けて厚生省と話を進めるべきだと主張されていました。ただ、だんだん私も厚生省の役人たちと話をしているとどうも相手は厚生省ではなく、やはり医師会だということが解りました。厚生省は正直言って柔整師さんに関してはどうでも良いんです。本当に理解していただくのは、厚生省ではなく医師会なんだということと、医師会でもある一定の特定のグループだというのを垣間見ることが出来ました。つまり商売敵ではなく補完関係であるとハッキリ分かれば良いと思いますが、今考えてみると、これはよく言われていたことですが、医師のほうは大学に6年、当時はその後インターンをやって、かなりの投資をして、また開業にもお金をかけています。それに比べて柔整師さんは、当時は2年でしたし、しかも高卒でもやれます。専門学校を卒業して直ぐに開業して、開業費用も安い。それが隣に出来てバンバンやられたら、それは面白くないでしょう。従って、それはもう理屈を超えたことです。其処を如何埋めていくかという努力を本当は団体がしなければいけないんですが、やはりそっとしているのが良い、明るみにすると潰されるという恐怖感があった。そこがちょっと残念でした。そこは鍼灸さん達のほうは違っていました。鍼灸さんのほうがどちらかというと正面からぶつかっていきます。つまり東洋医学というバックボーンを持っていますので、西洋医学と東洋医学は文化的にもひけをとらないんです。しかし、柔整にはそういうバックボーンがありません。伝統医学、伝統ある施術と称しておりますし、伝統というのはある意味で古いということになってしまいます。そういう意味では整体さん等は、アメリカの医療技術を移入するなどして行っていますが、柔整師さんはどうしても伝統医学という、ただ其れだけで終わってしまっています。

―JBさんは随分実技講習会をやられていましたね。

随分やりました。しかし、それは柔道整復師だけなんです。そうではなく患者さんに向かって、社会に向かってそれを公開していくという努力が大事です。匠の技というのは大事でおおいにやっていただいて良いのですが、それと対で公開の場を作って、費用をかけて宣伝をして、こういった骨折や脱臼の場合は、オペをしなくてもこういう方法で治って、副作用についてはやはり診てもらわなければならないところもありますし、柔整師さんには及ばないところがありますから、そういうところをちゃんと出してリスクヘッジが出来るような仕組みを作る必要があります。それは必ずしも整形外科医でなくても良いし、内科医でも十分出来る訳です。「匠の技」をやるのは大いに結構で、私も勧める人間の一人ですが、それにプラスアルファで社会に対して公開していく、マーケティングにのせるということです。学会に僕は何度か出させてもらいましたが、一生懸命にやっている人に怒られてしまうけれども、あれは本当に学会と言えるのかなという感じを持ちました。会員の方がこういう活動をしているということで、それを発表することで柔整業界の社会的地位を上げることは大事なことです。しかし技自慢というのか、それではダメなんですね。

―その他に取り組まれたことで、心に残ったことなどは?

私の大失敗、今でも苦笑いしてしまうんですが「患者友の会」を作ったんです。それは患者さんを取り入れるという「患者と柔整師の会」を作る前です。患者さんのニーズ・国民のニーズを聞こうとしてやった訳ですが、私の力量不足で途中で有耶無耶になってしまいました。患者さんのファンもいっぱい出来ていましたし、続ければ良かったじゃないかと随分お叱りも受けましたが、ちょっと私には力がなくて出来ませんでした。
療養費というものが誰のためにあるかというと、それは勿論国のためでもない、柔整師のためでもない、患者さんのためにある。患者さんの負担をなるべく軽くして柔整治療を受けられるようにすれば良いという。つまり、患者さんがポイントなんです。患者さんとコミュニケーションを交わして療養費の在り方を研究すべきだとしてその「友の会」が出来た訳ですが、ただしその前はそういう発想ではなく、柔整師さんにかかっている患者さんと柔整師が良いコミュニケーションがとれるための方法や場を創ってみようと思ったけれども、結局患者さんの名簿を提出して2,3歩動き出しましたが、そこから先へ進まなかった。保険者さんと柔整師さんが敵対関係にありましたので、真ん中にあるのが患者さんだから患者さんを取り込むことで両方が上手くいくのではないかというのは良い切り口でしたし、これが今の財団に結び付く土台を作った訳です。その時に、ある保険者さんから〝本多さん、何で患者さんを取り込むんだ?〟と言うから、〝いやあ貴方達が言うことを聞いてくれないからですよ〟って(笑)。親しくなった保険者さんとそういう話をして、苦笑いをしました。また、保険者さんの方もそういう路線があったんだということに気がついて、特に組合保険の場合は、従業員の方が患者さんなので、柔道整復の治療を受けて、それを支給しないとなれば会社の中での人事が難しいため、そこは乗り切れるパイプになりました。組合保険さんとの話し合いでは、柔整師の施術は安くて早い。更に職場復帰はどうすべきか、もっと言えば怪我をしなければ良い。そのためには運動療法や予防とかに柔整師さんを使える余地があるのではないかと。こういう座り方は怪我しやすいとか、こういうことをやれば腰に負担がかからないとか、そういうのが実際にはお医者さんよりも柔整師さんのほうが遥かに能力がありますよというようなことを言って、怪我の防止等にもお金をかけたら如何ですか、という話をしました。ただし、それを料金に加算していくにはどうすれば良いのかというのは、やはり知恵を借りなければならないけれども、そういった話をして共感されたことが何度もありました。

―やはりコロナのことがあって、いろんな活動に支障をきたしたのでは?

ただ、私ども非常に良くなったと思っているのは、ズームでテレビ会議が出来るようになりましたので、これは割と会員の先生達も慣れてきました。特に役員は東京に来なくても、その場で話が出来るというのは非常に副作用として良かったと思います。役員も、東京以外の先生も常任理事等になってもらって、今は殆どテレビ会議です。統計とか資料を事前に提出してテレビに載せて、それで議論をしていますからかえって費用も安上がりですし、多くの人の意見を聞くことが出来るので、コロナによる思いがけないメリットがありました。

―利便性等を考えるとテレビ会議等は良いと思いますが、以前JBさんでは女性の職員さんを他県のホテルに宿泊して会員と合同研修会をされていました。当時かなり珍しいことだと思いましたが?

あれは会員の先生が女性の事務員さんに会いたいという声がかなり多くありました。それならば職員研修を兼ねてやろうと言ってやったところ、結構好評でした。ただ事故があってはいけないということで、3つ位ルールを作りました。1つは、女性職員が多いから、行動は一人でしない。必ず複数で行動しなさい。研修以外は自由行動で何をやってもかまわないし、縛る必要はない。また宴会の席で絶対にお酒はつぎにいかないという、この3つを徹底しました。やはり柔整は武道の世界だから上下関係が厳しい上に、男尊女卑が非常に厳しい世界ですから、それだけは注意してもらわなければ困ると伝えました。また職員は二次会に行く必要はないとしました。

―今、特に重きを置かれている一押しの取組み等についても教えてください。

先にも述べましたように、やはり患者さん抜きにした世界ではないということで、患者さんがどういう考えでいるのか。また、柔整師さんにかかる人はどんな人がかかっているのか?を知りたいということで、「患者相談ダイヤル」を作りました。患者さんのニーズに応えられるような柔整師さんがポイントでした。躍進的なのは、患者さんを通じて療養費の在り方を見直すという、少なからずそういう狙い、政治的野心もありました。もう1つは、その頃から柔整師さんの規律が段々緩んできたように僕は思ったんです。というのは、柔整の専門学校で柔道家や剣道家など武術とは関係ない人がどんどん柔整師になって、そういった柔整師さんが増えてきた中で、やはり患者さんに対する施術の仕方等でちょっと具合が悪い人が増えてきましたので、患者さんからの苦情があれば聞いてあげよう、それを組織的にやってみようという話になりました。日整さんの名古屋の団体でやっておられたという話を聞いたことがありましたが、それを全国に拡げてみようと考えました。しかも会員、非会員は関係なく、柔整師にかかった患者さんから、困ったことがあれば聞いてみようということで、これは今も続いております。ただ難しいのは、どっち側にもつかずに出来るだけ中立にやりたい。患者さん側に付くというのも、付きすぎてしまうと具合が悪いし、柔整師側に付くのであれば、何のために相談するのか分からなくなってしまいますから、なるべく中立を保ちたいという、そのための幾つかのルールを作りました。その1つが、訴訟に関係する事件は扱わない。それは別の機関にやって頂く。というのは、訴訟になると権利義務の問題ですから当然どちらか側につかなければ話が上手くいきません。もう1つは、ただ情報を聴くだけではなく、患者さんが困ったことをどうやって是正していくかということで、其処は大変難しいことです。というのは、患者さんの中には誤解している人も居ますので。患者さんの誤解を解かなければいけない。そのためには、相談員の教育を少しやってみよう。また、それだけでは足りないから、事実確認というのを双方にやることで、患者さんから、こういう苦情が出ています。それは間違いありませんか?と。柔整師さんのほうでイヤ違うということで、こう言っていますよという、双方の事実確認をした上である程度の信号を送ります。例えば、柔整師さんのほうにそれは止めなさいという注意勧告。その注意勧告を聞かなければ〝公開しますよ〟と、公開したケースはあまり無いけれども。逆に、患者さんのほうに、貴方の誤解ですよというのもあります。また相談ダイヤルには、運営委員と相談員が居りますが、JBの中で行っているので、もう少し一般社会から選出したいということで、今運営委員に保険者出身の方や、損保の出身の方、自営業をされている患者代表の方、柔整師さん、医師の方にも入ってもらって運営委員の活動をやって頂いており、相談員研修も行っております。〝こういう相談の受け方はダメですよ〟〝こういう聞き方をしたほうが良いですよ〟といった研修ですが、相談員の方から勉強になると喜んでくれています。
ただし、何度もJB以外の柔整師さんにも参加してもらおうと思って呼びかけていますが、なかなか敷居が高いのか入って来られません。募集はしていますし、これが拡がってくれれば私は大変良いことだと思っています。JBだけで固まってもあまり良いことではないので、もう少し汎用性が高くなるように、特に相談員にJB以外の方に入ってもらって、どんな相談があるかということを知って頂きたい。相談員を経験することで、〝僕もそういうことをやったなあ、じゃこれを改めよう〟等、柔整師さんの今後の姿勢に繋がっていきます。つまり、JBのやることだという理由の無い反発。そういうセクト主義が業界を発展させていないんですね。じゃどうやってそのセクト主義の壁を外すかというのは長年の課題なんですが、中々これを外せない。もう少し役員同士でも交流する機会があると良いなと思っています。 もう1つ、いま私共が考えていることは、JB接骨師会の運営も長きに亘っておりますが、職員と協議した結果、これまでのホームページを刷新することにしました。今まではホームページの中で公開する情報と公開しない情報を分けておりました。それを撤廃して全部公開することにしました。社会に公開しようということでチャンネルを変えることにした訳です。つまり、社会に公開するということには3つの要素があります。1つは、治療を受ける側が、〝ああこんな治療もあるんだ、整形外科だけではないんだ〟と。こういう治療を行う分野があるんだという意味での公開、自分の息子や娘がこういう職業を選択してみたいという時にこの職業はどんな職業なのかと、そういう情報も公開します。また柔整の団体はどんな事をやっているのかについて公開して、財政も公開しようと考えています。ただどうしても公開できないものがあります。その1つは会員のメンバーの個人情報についてです。もう1つは、研修内容については知見ですから公開できません。ということで、柔整師に対する公開ではなく社会に対しての公開、そこを見極めてもう一度全部洗い直しをしようということで今取り組んでいます。

―また平成30年に「広告に関する検討委員会」を設置。令和元年には「広告等に関するガイドライン試案」を公開。令和2年3月、「広告業務適正推進委員会」を設置する等、時代を先取りしていたと思います。何故そのような先駆的な活動を展開できたのでしょうか?

やはり広告が柔整師の仕事、社会的評価を誤解させている面がありますから、もう少し規律のある広告を作りたい。それが柔整師の信用と社会的評価を高める要因であると取り組みましたところ、思わない副作用というか副効果がありました。それは何かというと、この業界には憲法というか規範が何もない。憲法というのは、どういうものを作ったら良いかというと、業界人が如何あるべきかという業界人に対する憲法です。具体的な柔道整復師の行動基準・行動規範、こうやってはいけない、ああやってはいけない、こうやるべきである等、そういうものを作って、それを公開しました。これは広告規制を捉えながら出来た根本です。どうあるべきかということを他所の団体とも比較しながら、もう少し細かくて分かりやすいものを作りました。それを今回のホームページに大々的に載せてみようと考えています。要するに柔道整復師という専門家としての職業倫理は必要で、これは日整さんも勿論作っていますけれども、あまりにも抽象的では意味が無いので、委員会にかけてアイデアをもらって何回もやり直してもう少し具体的かつ現実的なものを作りました。基準というのは可変性があり、不可変というのはあり得ないんです。社会の流れにそって変えていかなければなりませんし、それはこれからまた掲げていかなければいけません。やはりこの柔整業界ももうビックリするほど変わってしまっているんです。変わったのが良いのか、変わったのがまずいのかについては常に悩むところです。こういう時代だから仕様がないんだ、それを取り入れるべきだという考えもあれば、イヤイヤそんなにだらしがないのは良くない、もっと規律を固めるべきだという規範と現実との戦いが常にありますので、そこが法律を作る上で非常に困難な思いをしているところです。やはり僕は変わってしまったことは、変わってしまったことで受け入れなければダメだろうと。しかし、何所まで超えたらダメというのか?それを倫理規範で作っておこうと思いました。道徳というのは崇高な考えで、理想ですが、僕が掲げているのは理想ではなく、現実なんだよと。これをちゃんと守ってくださいというのを作ってみました。
更に今やっているのは、柔道整復師の原点回帰というか、もう1回元に戻って今の柔道整復師業界の流れを眺めてみようと。良い悪いは別として、原点回帰という思考を持つことでもう少し見えてくるものがあるのではないかということです。1つの大きな流れというのは、今の柔道整復師の先生達の生活の基盤は、もう療養費ではなく保険外治療なんですね。そうしなければ生活をやっていけない。あまりにも療養費の締め付けが強くなってしまって中々療養費1本で生活するのは非常に困難になっています。僕はそれを自由診療とは呼びません。わざわざ「保険外診療」と称しているんですが、その保険外診療に対して業界団体がどのように向き合うのか。ノーとするのか、取り入れるのか。取り入れた場合には、どんなルールを作るのか?僕はやはり取り入れて、その保険外治療のルール化をしていかなければならないと考えています。自由診療というとどうも誤解を与える恐れがあります。自由診療というと、なんでもやれて自由なんだという誤解を与えて、訳の分からない治療をする人も居るかもしれません。人の体に触れられるというのは特権です。普通は触ったら、暴行か猥褻しか無い訳です。だから人の体を触れるというのは素晴らしい特権です。ということは素晴らしい倫理を持たなければいけないんです。ということで原点に戻って、そういう職業なんだということを認識するためにどんなところまで認められるかというのが一つあります。もう一つは、料金というものをどうやって作るの?料金というのは2つあって、1つは時間です。これだけ時間を使ったという時間単位の料金設定と、もう1つは、こんな技を提供するという専門的な技への対価です。その2つで料金をこれから決めていかなければなりません。今まで柔道整復師の料金の決定を誰も議論していないんです。これを業界あげて議論をして料金の公準化、これは独占禁止法に関係ありますので均一にするのは難しいことですが、参考の料金を提示して、それを患者さんが見て良し悪しを決めてもらう。先生方も料金の公的な裏付けがあることによって施術し易くなります。患者さんもこれは公の基準であると思ってくれれば、安心してかかることが出来ます。保険外治療における料金をどのように決めるのかという時に、原点回帰というのは、元々柔道整復師は療養費でやられてきたのだから、療養費の基準は一体何だったのか?其処と如何差があるのか?患者さんの話をお聞きすると、私は30分かかって治療を受けたからこれだけ支払っても良い。でも10分しか治療してもらわなかったというのもあり、やはり時間というのは、患者さん、特に慢性疾患の患者さんは気にされます。そういったところを、今後JBでは保険外診療の料金の公準化をはかっていきましょうと。それを取り入れることによって社会的信用を獲得できる訳です。この発想の基になっているのは、やはりダイヤル相談です。患者さんからどんな苦情が来るのか、怒鳴られたりだとか、セクハラだとか、不親切だとか、或いは料金が高いとか安いとか、治療以上に支払ったとか、これは医療事故ではないか等、いろんな相談を受ける中で様々な発想が出てくるのです。それをどの様にして取り組んでいくのか。つまり、電話相談は今や私の知恵の源です。

―令和2年に、柔道整復師業務救済活動を始められておりますが、そのお考えについて教えてください。

柔道整復師の生活で何が維持されているのかというのは、とても大事なことで、やはり生涯保障というもの、年金等の社会的な保障を組織で作っていく必要があります。共助ですから仲間で作っていかなければならない。今までは高収入でしたが、今は収入が減ってきましたから、組織で公助、或いは共助といった、お互いが助け合うような共済制度を真剣に作っていかなければならないでしょう。食べていくことは自由社会だから大いに個人個人が努力しなければならなりませんが、やはりこういうリスクは業界でカバーするべきです。治療事故が起きた場合の損害賠償、所得補償、怪我したり入院した場合にある程度の所得を補償してあげるとして共助を行う。やはり業界が創意工夫をして助け合う共助の仕組みをつくるべきだと考えております。勿論経営の相談もしなければいけないけれども、そういうことを今やっています。もう1つ問題なのは、最近チェーン店が増えてきて、雇われ院長が増えています。労働条件というのは、非常に厳しく所謂使い捨てのような形です。これを如何カバーすべきか。歩合制の人も居ますし様々にあるようです。それについては、私どもは別の組織を作って今いろいろ取り組んでいるところです。未だ具体的には何を直したら良いかは分かっておりませんが、相談コーナーだけは作っておこうと考えていますし、それをネットに出してやってみようと思っています。やはりもう一度原点に帰った上で、正すべきものはただし、伸ばすところは伸ばしていかなければならないと思っています。

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