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運動器超音波塾【第1回:超音波観察の利点について】

特集 運動器超音波塾

株式会社エス・エス・ビー
超音波営業部マネージャー
柳澤 昭一

近年、デジタル技術により画像の分解能が飛躍的に向上した超音波は、表在用の高周波プローブの登場により、運動器領域で十分使える機器となりました。この超音波を使って、柔道整復師分野でどのように活用できるのかを、超音波の基礎からわかりやすくお話してまいります。

第1回「触診したその指の下の状態が、リアルタイムに視えてしまう!」の巻
―超音波観察の利点について

第35回バイオメカニズム学術講演会

先日、第35回バイオメカニズム学術講演会(岡山大学)で超音波の講演依頼を受けて、「筋の動きを視る -超音波による動態解剖学のススメ-」というテーマでお話しをして来ました。
検査技術や理学療法、義肢の製作者やロボット研究者、メーカーのブラジャーの研究者から、歩行動作による犯人同定を研究する警察関係者まで、実に幅広い分野の方々と交流することができて、とても刺激的な時間を過ごす事ができました。運動器領域といっても其々の分野があって、実に興味深いですね。

さて、今回から始まる「運動器の超音波観察法」の話ですが、「できるだけわかりやすく」を心掛けながら、実際の現場で役立つ情報を発信していこうと考えております。

超音波による運動器観察の利点は、他の画像診断装置と比べて安価であること、省スペース性に優れ、操作が簡単であること、非侵襲的で安全性が高いこと、触診などの理学的所見との相関が容易であること、リアルタイムに画像を得られ、動態検査やストレス検査を行えること、更に血流情報による血管新生や炎症の客観的評価が可能であることなどがあげられます。特に、触診などの理学的所見との相関が容易なことは、柔道整復師の皆様にとっては最も重要で、触診で得られた情報から実際の解剖学的な答えを確認していくことが可能であるという点に於いて、ほかの診断機器よりも優れていると言えるわけです。

触診で得られる熱感や圧痛点、硬結や陥凹を触れるといった情報を基に、実際に解剖学的にどうなっているのかを答え合わせしていくということが使い方の基本です。柔道整復師の皆様はその触診のエキスパートですから超音波は取っ付き難いものでも、難しいものでもないわけです。「触診した指の方向に超音波をあてる」、これが運動器分野の超音波観察法の、最大の極意でもあり、基本中の基本でもあるわけです。

運動器の超音波観察法は触診の延長であり、触診の答え合わせを解剖学的に行う

触診したら、その指の方向にプローブをあてる

次に、運動器の超音波観察で視えるものですが、骨・軟骨・関節・靭帯・筋肉・腱・末梢神経・血管・脂肪など、運動器の構成体と呼ばれるものは全て視えると言えます。では視えないものは何かと言えば、骨の内部・骨に囲まれた部分・気体がある部分(肺・腸管内のガス)となります。一般に空中を伝搬する超音波は、媒質のエネルギー吸収による損失と回折現象により、球面上に拡散する拡散損失が多くあり、これによってその伝搬距離が制約されます。つまり、空気中の超音波は減衰が大きく、伝わりづらいというわけです。超音波の振動数(周波数)が高ければ高いほどその減衰も大きく、伝搬距離が短くなります。診断用の超音波は高周波を使用していますから、気体がある部分では視えない理由はここにあるわけです。少し難しい用語が並んでしまいましたが、超音波の基本原理については、次章で解説したいと思います。

超音波が運動器分野で着目されているもう一つの理由として、動態観察が可能であることがあげられます。運動器分野に於いての画像診断は、単純X線・CT・MRIという新しい診断機器の開発の流れと共に進歩し、活用されてきました。また、これらの診断機器で、すべての運動器疾患が理解できると思われてきたのも事実です。

単純X線・CT・MRI

しかしながら、これらのモダリティには、運動器分野に於いては、ある意味決定的とも言える共通した弱点があります。それは、いずれも「静止画で視る」と言うことです。運動器とは、まさに身体を動かすための器官で、その病態も曲げると痛い、伸ばすと痛い、或いは曲げられない、伸ばせないと言った、動作に伴う痛みや機能障害が主になります。静止画で視る診断機器は、静止画で得られた情報から、解剖学的な動態を予測して病態を考えるという、正確な疾患の把握のために乗り越えるべき壁が存在していたのです。

つまり、運動器分野に於いての画像診断は、これらの動態を解剖学的に視られることが重要となる訳です。現在、このことを可能とする唯一の診断機器は、超音波画像診断装置だけです。

膝関節

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立位で膝関節内側の間隙の位置に超音波をあてて、そのまま該当する側の足に荷重を移動してくると、脱臼する半月板が観察されました。静止画では予想もできなかったことが、動態観察だからこそ解ってきました。

次回は、超音波の安全性とその基本原理について、考えてみたいと思います。

情報提供:(株)エス・エス・ビー

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