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運動器超音波塾【第2回:超音波の安全性と基本原理について】

2015/02/01

超音波のプローブ(探触子)の中には、超音波を送受信する為の圧電素子が入っています。この圧電素子に電圧をかけると、振動を起こして超音波を発生させる事ができます。逆に圧電素子に外から超音波の振動が入ってくると、今度は電圧を発生させるという性質を持っています。これを、ピエゾ効果と言います。尚、この圧電素子からは細い制御線が多数出ており、精密部品ですからプローブの取り扱いには十分注意をして、落としたりぶつけたりしないで下さい。

では、最初にスポンジのコアラを使って、超音波がどのように描出されているのかを音響的に考えてみます。水槽に水を張ってスポンジのコアラを入れて、何度か握って水を含ませた状態にして、プローブを当ててみます。

スポンジのコアラを超音波で視ると(右図)

A コアラの頭の上方
プローブから発射された超音波は、水槽の水を伝わっていきます。水は一定の媒質で反射が起きない為、暗く(黒く)表示されます。
B コアラの頭部
スポンジ内の穴には水で満たされており、水とスポンジの境界で反射を起こしながら音は伝播します。そこでコアラの頭部は少し明るく(グレーで)表示されています。
C コアラの鼻
コアラの鼻はその形状にくり抜かれているので、水だけで満たされています。水は一定媒質で反射が起きない為、暗く(黒く)表示されます。
D 鼻の下方の白いヨダレのような描出が出現している意味
鼻を通過した超音波はその間に反射が起きないので、周辺のスポンジを通過して反射している超音波より、多くのエネルギーが残っています。そこで鼻の下方部を通る超音波はより強い反射エコーを発生させる為、鼻の下は周辺より少し明るく(明るいグレー)表示されることになります。このように、本来の状態と違う描出が現れる事をアーティファクト(虚像)とよびます。この場合は、音響増強という種類のアーティファクトです。

このように超音波の画像は、音響的な性質により描出されています。また、他の診断装置と同様に、超音波にも超音波特有のアーティファクト(虚像)が存在する事に、注意をしてください。

 

(社)日本超音波医学会 超音波診断装置の安全性に関する資料よりさて、この資料をみると超音波画像診断装置は、他の手法の診断装置と比べて圧倒的に低いエネルギーレベルであるという事がわかります。それでもエネルギー波ではあるわけですから、超音波の音圧・強度・出力が上がっていけば、何らかの作用を引き起こすことになるわけです。身体の中に超音波を当てて振動させる事によって起こる作用は、主に2つです。

● 超音波が体に吸収されて起こる温度上昇
● 疎密波により起こるキャビテーション
  (気泡の発生と消滅)の影響

これらの問題が生体に影響しないように、超音波診断装置の音響出力は国際規格IEC60602-37 Ed.1&Amd.1(国内ではJIS T0601-2-37:2005)によって規制されています。これによると、最大音響出力が720mW/㎠、MI=1.9を超えないようにとなっています。運動器でよく使う電子リニア走査式超音波診断装置の場合、JIS T 1507に音響強度が10mW/㎠以下でなければならないとしており、国際規格よりもさらに厳しく規制されています。 車の安全性を保つためには、走行速度を示すスピードメーターやエンジンの1分間あたりの回転数を示すタコメーター、エンジンの冷却水の温度を示す水温計など、さまざまな計器類がついています。超音波診断装置の場合も、音圧・強度・出力という理解しづらい物理量よりも、そのまま生体作用へのリスクを認識するための、2つの指標が用意されています。それが、サーマルインデックス:TI(Thermal Index)とメカニカルインデックス : MI(Mechanical Index)です。

  • サーマルインデックス : TI(Thermal Index)
    超音波による熱的作用の安全性を評価する指標

    組織の温度を1度あげるのに必要な超音波出力の値で、妊娠の走査、眼の走査、潅流のない組織(血液が十分に行き渡っていない)、検査時間の長い照射などの場合に重要な指標となります。
  • メカニカルインデックス : MI(Mechanical Index)
    超音波による非熱的作用の安全性を評価する指標

    いろいろな周波数の負音圧を1MHzに置き換えた時の負音圧に換算した指標で、造影剤を使用する場合、肺を照射する可能性のある心臓走査、腸管内にガスのある腹部走査などの場合、キャビテーションにより小さな気泡が発生して弾ける事で組織の損傷や活性酸素の発生する場合に、重要な指標となります。

 

ということで書いてきましたが、世界超音波医学会(WFUMB)では、通常のBモード画像診断に於いて超音波強度が低い装置であれば、過熱による作用を考慮する必要はないとしています。また、身体への影響を考慮する必要のない場合には、指標自体表示されない機種もあります。MI、TIを下げるには、音響出力(送信出力)を下げて、受信ゲインを上げるという事になりますが、通常の運動器の場合、造影剤を使用しての観察や、体の内部に素子を挿入して観察するような事もないのですから、安全性は高いと言えるわけです。したがって、短時間に観察を終えるよう心掛ける事が、最も大切となります。

 

次回は、いよいよ上肢編として肩関節の観察法について、考えてみたいと思います。

 

情報提供:(株)エス・エス・ビー

 
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