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酒田塾・酒田達臣先生と小粥博樹整形外科医とのビッグセッション

2013/10/16

〝プライマリケアの視座から、何が残り、何が変わるべきか?〟をテーマに酒田達臣先生立川病院・小粥博樹整形外科医によるシンポジウムが8月25日(日)、横浜人形の家・多目的室にて開催された。司会進行役の廣瀬良大氏が出す質問に対しお2人が答える問答形式で行われた。

はじめに酒田氏から〝プライマリケアを志すにあたって「意識」を更に深めていただきたい。我々柔整師、鍼灸師はどうしてもドクターに対して構えてしまうところがあり、こんな紹介状を書くと怒られるんじゃないか、馬鹿にされるんじゃないか等紹介状一つを書くにもあると思いますが、やはり患者さん中心の医療を行っている上で医師と連携することはとても大事です。ドクターとの出会いが皆さんの施術家人生にとって1つのターニングポイントになればという願いをこめて開催したい〟と今回のセミナーの目的と趣旨説明を行った。小粥氏からは〝今日は対談形式でフランクに話し合いたいですね〟とあり、早速スタート。

 

プライマリケアを実践していきたいと思われるようになったきっかけは何ですか?

小粥:プライマリケアという言葉は幅広い使われ方をしていると思いますが、スペシャリストであり、しかもジェネラリストであることが求められています。様々な疾患をある程度網羅し、重要な疾患をみつけて、適切な医療機関に繋げる役目があります。我々は外来と入院両方の患者さんを診ていますが、外来の場合紹介による患者さんが多く、私は背骨の医者ですが、背骨ばっかり診て見落としてしまう疾患があってはならない。外来で〝貴方は精神性のものです〟と言われて、患者さんは精神科に行く訳ですが、しかし、精神科や心療内科に行っても適切な治療を受けられないケースもあり、自分で診てあげられたらいいな、外来の患者さんに対してプライマリケアをやれたらいいなと思いました。また、入院患者さんにもプライマリケアとして全身を自分で診ていったほうがいいなと思っています。整形外科で背骨を診て、背骨の手術をしていると、当然いろんな合併症がある訳で、例えば手術後、人によっては心不全、肺炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍等を起こすことがあります。もし消化管出血なら消化器内科の先生に依頼することで、適切な治療を受けられる訳ですが、最初から自分で診断する目を持っていないと対応が違ってきます。この疾患にはどういう合併症があり得るかを常に頭に入れて対応を進めていくべきだと思うようになりました。背骨ができるからといって、他は診ませんというのでは、患者さんの利益にならないと考えたことがプライマリケアをやろうとした理由です。整形外科って全身管理ができない科だと思われていますが、そういうのができるようになると、入院当初から栄養つけてあげようだとか、肺炎の予防など早めに手をうてるようになるので、やはり自分にジェネラルな知識があることは、患者さんに役立つと思います。

 

酒田:最大のきっかけを除くと、4回あります。1回目は、柔整学校卒業後、初めて患者さんを診察した時で、患者さんを目の前にして、私は頭が真っ白になって、何からどう診ていけばいいのかわからなくなり「外顆炎」の診断ができなかった。大変な衝撃で、「これは診察を一から自分で勉強し直さないとだめだ」と気付きました。2回目は、その1年後のことで、私が勤めていた整形外科医院に当時川崎中央病院整形外科部長だった三谷先生が外来診察に来てくれており、上腕部が酷く腫脹した患者さんがいて、三谷先生は当初腫瘍を疑ってCT等の検査をされていましたが、私は初めから「肩手症候群」を疑っていました。先生が外来に来られた時、思い切って聞いてみましたら、〝酒田君、よく見つけたね。君が正しい。僕が誤診していたんだ〟と、患者さんの前でニコニコ言ってくれました。私は凄く感動して〝ああ、こうやっていけばいいんだ、我々にもできるんだ〟と、この時は本当に励まされました。3回目は、開業して少し経ったところで、○○さんという80代の女性患者さんとの出会いです。僕はその人を診察させてもらった結果、頸髄障害があると判断したんです。ところが首については前から個人の総合病院で診てもらっていて、そこでずっと牽引治療を受けているとのことでした。牽引は逆に危ないんじゃないかなと思ったんですが、当時私はまだドクターに紹介状もあまり書いてなかったし、専門医がする治療に口をはさむ立場じゃないと思っていたので、首は触らず腰痛などその他の症状に対する施術だけを行うことにしました。でも、その人はどんどん脊髄症状が悪化していったんです。〝別のところでも診てもらったらどうですか〟ということは時々伝えましたが、主治医の頭を飛び越えて柔整師の私が他の病院に紹介状を書くなんてことをしてはいけないと考えていました。しかしある時その病院に代診で来ていた大学病院の医師が診察して〝これはすぐに手術しないと寝たきりになってしまう〟ということで、高齢でしたが大学病院ですぐに手術が行われました。でも、進行は防げたものの酷い歩行障害と巧緻障害は治りませんでした。この時私は、自分が脊髄障害が疑わしいと思ったら、どこで治療を受けていようが、少なくともMRIを撮ってきちんと確定診断のできる施設の専門医に必ず紹介しようと誓いました。4回目は、以降ドクターに紹介状を書きまくり始めた頃、ある総合病院のドクターから〝いつもご紹介、本当にありがとうございます。感謝しています〟という返信をもらった時で、ドクターから感謝していますと言ってもらえるとは思ってもいなかったので、大変励みになりました。

そして最大のきっかけは、「患者さんが亡くなったこと」です。何度も、患者さんがお亡くなりになるということに直面しました。そしてその度に強く誓ってきました。「助けてあげられなくて本当にごめんなさい。あなたと同じ病態の人が来たら、もう絶対に見落としませんから、どうか、力を貸してください」と。

 

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