menu

第94回日本感染症学会総会学術講演会 <FUSEGU2020 市民公開講座>

2020/09/16
パネルディスカッション
『グローバル社会のなか、感染症とどう付き合っていくのか -学生の視点も交えて-』

出席者は、東京大学医科学研究所先端医療研究センター・四柳宏先生、日本感染症学会理事長/東邦大学・舘田一博先生の2名。リモートでの出席者は、後半進行役の東北医科薬科大学・藤村茂先生、明治薬科大学薬学部4年/一般社団法人日本薬学生連盟/APS-Japan2020年度会長・中尾美波さん、日本大学危機管理学部2年・成田直央さん、日本医療科学大学診療放射線学科3年・長谷川犀月さん、国際医療福祉大学医学部医学科3年/国際医療福祉大学プライマリケア研究会・宮澤政淑さん、長崎大学医学部医学科5年/日本熱帯医学会学生部会代表・山﨑里紗さんの6名。総合司会は愛知医科大学大学院医学研究科・三鴨廣繁先生が務めた。

 

進行役の四柳先生から、〝本日のディスカッションを分かりやすくするグラフィックレコーディングを行っています。今日は5人の学生さんの方にご参加いただきます。右上の方が中尾美波さん、中段左が成田直央さん、真中が長谷川犀月さん、下段左は宮澤政淑さん、下段右が山﨑里紗さん。前半は「コロナ禍の情報格差 正しい行動には何が必要か?」というテーマです。情報の真実を見分けることの難しさ、正しい情報を見分けて、情報交換をしていくかについて学生の皆さんに経験等を伺っていきたい〟。

長谷川:
正しいかどうか分からない情報を周りと共有するということは、誤った情報をもしかしたら自分から広めてしまうかもしれないと思って、この情報が本当に正しいものなのかを自分で考えながら気をつけていました。

「長谷川さんの情報はどういった風に得ていらっしゃったのか?」

長谷川:
ネットで感染症について調べたりというのをずっとやっていたんですが、友達と話したりすると違ったりすることが出てきて、自分で解釈して伝えられるように気をつけました。
中尾:
正しい情報が何か分からない中で不安が広がってしまったということが今までにあったと思います。どうしても普段医療から遠い所にいる人とかですとウイルスという恐怖を前に情報の真偽を確かめるのは難しい気がします。私の友達の場合ですが、インスタグラム等で、手洗い、手の衛生が強く言われるようになってから、凄く気にするようになって春先なのに手は赤ぎれてしまうくらい過剰に反応してしまった人もいました。完全にこれが正しいかを突き詰めていくのは、知識としても、テレビや新聞とかの情報量としても難しいとは思いますが、情報発信者のほうも受け取り手も気をつけなければならないと考えています。

「正しいような情報を私たちは取りにいかなければいけない。情報交換を上手に出来る人、出来ない人、そういったことで情報格差というのはどうしても生じるのではないかと思います」

宮澤:
WHOや各国からの発信、法的機関等、様々な論文から情報を得ることも考えられますが、情報を集めるという段階で英語の論文等を利用して情報を集めていましたが、その情報が正しいのかどうかを判断するのは2段階でハードルがある感じがしました。専門家の方の間でも意見が分かれているのも今の状況の中で正しい情報を集める難しさを感じると共に情報格差を生じてしまうのではないかというのを実感しました。

「WHOの情報を、日本とあてはめていいものかどうか、ご意見ありますか?」

三鴨:
WHOも試行錯誤であったので、WHOが正しいかと言われるとそうでもないというところがあったと思います。
舘田:
WHO、もしかしたら正しくないかもしれないという風に考えることが凄く大事だと思います。WHOというのは、世界全体で特に貧しい国、リソースがあまりないような国も含めて徹底していかなければいけないこともありますから、もしかしたら日本には向いていないかもしれない情報を発信してくる可能性は当然ある訳です。大事なのは特に何をもってそれを正しい情報と判断していくのか。其処を考える姿勢が凄く大事だと思いました。

「同じ医学生として何かご意見ありますか?」

山﨑:
新型コロナウイルス感染症に関しては、毎日新しい情報がどんどんアップデートされている中で、どの情報が正しいか分からないという、特に情報格差というのを個人単位或いは地域単位でも実感しました。自分は感染症に興味を持っていて疑問を感じて、情報を得ることに努めましたが、調べてみるとメディアで言われたこととちょっと解釈が間違っているかなと感じることがよくあり、情報を得るのもアクセスがあるか無いかで審判し、情報格差が生じるのは大きくあると感じます。あとは地域単位でも、私は長崎に住んでいますが、東京と長崎の情報格差がある。個人単位でも地域単位でも情報格差というのを感じたので、適切に情報を受信して発信していかないと偏見・差別にも繋がっていくので、極めて重要な問題だと感じています。

「個人間、地域間の情報が大事なキーワードかなと思って聞いていました」

中尾:
私が経験したことを2点お話します。1点目、四国に修業でいかなければいけないかもしれないという移動を検討した際に、関東から人が来ると過敏になってしまうから、控えたほうが良いと言われました。四国の感染者数をみても関東とは違います。警戒が強いというのもあるのかなと思います。個人の問題よりも関東の人というバイアスがかかってしまうことがあるのかなと。2点目は、お盆に帰省するかしないかについて結構議論されていたと思いますが、私もその一人で、私は関東に在住し、私の祖母が関西に居ますが、祖父の一周忌で関西に行くことについて家族会議をしました。検討に時間がかかってしまいましたが結局行きました。祖母にとっては、直接孫なり家族と会って話すことが凄く嬉しいみたいで、そういった点でも、同じ情報を受け取っていたとしても個人個人によって受け取り方や判断の基準は違うということを実感しました。
成田:
地域に関わっている視点から、特長的だなと思ったのは、地域ではご婦人の方々がボランティアでやっているような口コミ、真偽は不確かですが凄く特長的だと思いました。高齢者の方々がテレビのワイドショーやネットのニュースを観て鵜のみにしてしまう方々が多かったのが非常に特長的でした。

「同じ情報を持っても響く人と響かない人、或いはそれが正しい行動に結びつく人と結びつかない人、いろいろな人が居るということで多様性ということが皆さん達のお話からも出てきたと思います」

宮澤:
私が所属しているプライマリ研究会では、緊急事態宣言が出され混乱が生じていた4月にコロナに関する情報発信を行いました。同世代に出来るだけストレートに伝える情報発信をして、画像の投稿やメッセージを発信しました。反応が良かったんですが、今から取り組む課題もありました。現在は新しい生活様式が叫ばれるように、外出することが問題なのではなく適切な感染対策を行なわずに外出することが問題であると考えられています。効果的な情報発信の方法としては、不安をあおるような情報発信が発信力が強くて、情報に対して過敏に反応してしまう方がいらっしゃるので、情報発信は難しいと考えられ、人に情報発信をして響かせるということと、正しい情報を正しく伝える、この2点を両立させることの難しさを実感しました。
山﨑:
私は、情報発信に関しては自身でユーチューブで情報発信をしていました。若者向けの情報発信、あとは在日外国人の方に向けて英語の情報発信に取り組んでおりました。同じ若者、同世代という立場で情報発信しようと始めました。情報格差という点でも、在日外国人の方に例えば10万円の給付金の申請の仕方を英語で説明し、それを通じて思ったことは、専門でやられている先生方が出てくださると見てくださる。私自身取り組みをしてみて、リスクコミュニケーションに関しては世代毎にアプローチを変えていかなければいけないと感じました。

40代の方からの質問:
「現時点で、少し心が折れています。これからどうやってこの感染症とつきあっていったらよいか?或いはどうやってストレスを発散させたら良いか皆さんの考えを教えていただけますか?」

中尾:
あくまでも私の考えですが、ずっと緊張状態は続く、人にうつされることを恐れてどうしてもストレスになってしまいます。例えば家から出ないでエアコンをかけて好きなテレビを観るや、この日はコロナウイルスに関することは何も見ない、考えないような逆コロナウイルス対策みたいなかたちでやってみることも長期的な取り組みとして1つあるのではないかと考えます。

 

後半に入り、進行役の藤村先生から〝新型コロナウイルス以外の感染症、海外から入ってくる可能性が十分にあるとして、加来先生からのご講演内容、備えはどうするかというテーマで考えていきたいと思います〟とあり、ディスカッションが続けられた。

 

 
前のページ 次のページ
大会勉強会情報

施術の腕を磨こう!
大会・勉強会情報

※大会・勉強会情報を掲載したい方はこちら

編集部からのお知らせ

メニュー