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この人に聞く!
【東京有明医療大学 保健医療学部 柔道整復学科長 教授・成瀬秀夫 氏】

2013/11/01

これまで柔整ホットニュースでは、柔道整復大学で活躍されている教育者にテーマを設け、リレー式でご執筆いただいてきた。しかし、近年の柔整教育は4年制大学と3年制専門学校の2極化が進展していることから、大学と専門学校の差別化が加速すると思われる。そこで柔整ホットニュースでは、〝柔整教育の根幹はなんぞや〟という大きな問いかけをテーマに専門学校の教育者、大学の教育者両者に提言いただくことにした。今回は東京有明医療大学 保健医療学部 柔道整復学科 学科長 教授・成瀬秀夫氏にお話をうかがった。

 

―成瀬先生は東京有明医療大学にて保健医療学部柔道整復学科の学科長をされておりますが、柔道整復師を養成する上で、専門学校と大学の大きな違いは何処でしょうか?

成瀬:
厚生労働省認可の専門学校(養成施設)では、専門的知識を身につけた職業人の育成を目的としています。これに対して、文部科学省認可の大学では、教養系の科目の充実が必要となります。

専門学校に比し、大学では卒業必要単位数が多く、教養系科目、専門基礎科目、専門科目共に授業時間数が多く配当されています。授業時間数が多いため、超音波画像観察装置を用いた実習授業、解剖学実習、生理学実習、運動学実習、リハビリテーション医学実習なども行うことができます。また、臨床実習も附属の臨床実習施設のみでなく、学外実習も認められています。また、卒業研究などの科目を通じて研究の素養を身につけることができます。

柔道整復師になるのに、専門学校と大学でどちらが良いということは決してなく、学ぶ内容は異なりますが、柔道整復師として十分な知識及び技能を身につける点は同じであると考えます。

 

―成瀬先生は教育者としてどのような柔道整復師を育てたいとお考えでしょうか?また教育理念などがございましたらお答えください。

成瀬:
柔道整復師である前に、人として、社会人として、常識のある礼儀を重んじ、医療人としての倫理観をもった柔道整復師を育てたいと考えています。また、医接連携の重要性もしっかりと教育していきたいと思います。もちろん、柔道整復師としての十分な知識および技能を修得することは当然のことですが。

 

―以前と比較して、今の柔道整復師の教育現場は変化していると感じられますか?変化がある場合はどこがどのように変化したのでしょうか?

成瀬:
以前(全国の学校の定員が1050人の時代)には、定員に比し入学希望者が多く、そのため、柔道整復師養成施設に入学するために相当な競争倍率を突破し、また、そのため、何度も入学試験にチャレンジし、その上で入学してくるものも少なくなかった。ほとんどの学生が柔道整復師にどうしてもなりたいという強い願望や将来に夢を描いて入学した。ところが、柔道整復師養成のための養成施設(専門学校)や大学の急増により、定員確保に奔走し、柔道整復師の業務についての理解が不十分な状態で入学する学生も散見されるようになってきたように思います。

 

―柔道整復師の質の向上のため、養成機関卒業後の卒後研修が必要であるという話を最近よく耳にします。その点に関しましてはどのようなお考えをお持ちでしょうか?

成瀬:
卒後臨床研修は柔道整復師にとって必要不可欠なものであると考えます。柔道整復師養成の専門学校あるいは大学において、優れた教育を受け、その知識・技能を身に付け、見学のみの臨床実習を修了しても、まだ、患者さんの病態を正しく評価し、施術し、指導管理をするのには無理があると思います。柔道整復師免許取得後に臨床現場で適切な指導者の下、実際に患者に接し、多くの臨床経験を経て、初めて一人前の柔道整復師になると思います。医接連携の下、患者さんに適宜適切な施術を行うためにも卒後臨床研修は必要不可欠であると考えます。

 

―現在、柔道整復師の業界では「養成校の乱立による柔道整復師の過剰輩出」の問題を抱えていますが、成瀬先生が危惧されている問題について、ご意見をお聞かせください。

成瀬:
柔道整復師養成のための養成施設(専門学校)や大学が急増することについては、各学校が国民の健康に貢献できる知識・技術を身につけた倫理観をもった柔道整復師を教育するという信念の下、学校間でより良い教育に向けて競争するのであれば許容できるのではないかとも考えられる。しかしながら、今日のような少子化社会における学校の急増はややもすると定員確保のための勧誘活動に走り、しかも、それが国家試験合格率ばかり傾注し、その結果、柔道整復師にとって重要な実技実習を軽視するようになるのではないかと懸念されます。適切な学校数により、また、学校間で協力してより良い柔道整復師養成を行うのが望ましいと考えます。

 

―成瀬先生は学校協会の教科書委員を長く務められていた方であるとお聞きしていますが、学校協会、接骨医学会、業界団体(主に日本柔道整復師会)の3者の関係がどのようであれば良いとお考えでしょうか?

成瀬:
学校協会(公益社団法人全国柔道整復学校協会)、接骨医学会(日本柔道整復接骨医学会)、業界団体(公益社団法人日本柔道整復師会)の3者が協力し、柔道整復師にとって不可欠な教育、研究、臨床という3つの柱をさらに有機的に充実させる必要があると考えます。学校教育では柔道整復師として必要な知識・技能を教育するとともに、研究活動の必要性、柔道整復の団結の重要性なども周知してほしいと思います。そのためには、ほとんどの柔道整復師が接骨医学会に入会し、最新の情報を学ぶとともに、自身の研究成果を発表してほしいと思います。

 

―これから柔道整復師を目指す人にメッセージがあればお願い致します。

成瀬:
柔道整復師の業務内容を理解した上で、教養を身につけ、柔道整復師にとって必要な知識・技術を修得し、臨床研修を十分に経た後に、この仕事に就きたいと真摯に思い、生涯学習し、国民の健康保持増進に寄与することのできる倫理観をもった人がいましたら、是非、柔道整復師を目指して下さい。

 

 

●成瀬秀夫氏プロフィール

東京有明医療大学保健医療学部柔道整復学科  学科長  教授
東京有明医療大学大学院保健医療学研究科  教授
公益財団法人柔道整復研修試験財団  評議員
公益社団法人東京都柔道接骨師会  学術参与

柔道整復師、医学博士

【所属学会】
日本柔道整復接骨医学会、日本解剖学会、日本超音波骨軟組織学会、
日本看護学教育学会、埼玉県立大学保健医療福祉科学学会

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