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上手・適正な保険請求の為のセミナー  開催される

2013/01/01
4) 療養費審査基準の運用について
司会進行役:弁護士  本多 清二

パネリスト:
諸星眞一・河野示・荒井俊雅・矢萩裕・山田佳香・川辺二郎・濱本和明

司会進行役の本多氏は〝柔道整復療養費は現在、風前の灯と言っても過言ではない程、大変大きなバッシングを受けている。おそらく返戻の件数も増加傾向にあるのではないかと思う。敢えて今回のセミナーのタイトルに「上手・適正な」という言葉を使ったのは、請求の仕方が下手であるために保険者の誤解を招いているからである。今日はそれを理解し、実際に保険請求する中で直面している問題をどう考えればよいのか、あるいはどうすれば保険者の誤解を受けずに済むかという事を議論していきたい。そして新しい共通認識を持って療養費を請求する道筋を作っていきたい〟と話し、議論を進めた。

まず本多氏は〝現行の療養費審査基準は、骨折・脱臼・捻挫・打撲・挫傷のみ対象とすることを原則としているが、それら以外の負傷原因が明確でない症状についても柔道整復師が治療しているのが現状であり、その治療によって症状が緩和されるケースも多々見られる。しかし、治療することと療養費請求することは別問題である〟と問題を提起。荒井氏は〝患者本人が原因を認識していない類似症状は、もし療養費として請求するのならば患者と施術者が共通認識を持つという事が大切〟と語り、諸星氏は〝狭窄症などの退行性変化に関して、柔道整復師はある程度の治療ができると思われる。保険請求はできないかもしれないが、患者のプラスになるならば良いのではないか。全てとは言えないが、治ることも往々にしてあると述べた。

 

さらに本多氏は〝類似症状の場合には、療養費請求するために何らかの傷病名を付けないと保険者から却下されてしまうから、無理に傷病名をつけている。もっと実態を明らかにして、こういう治療したんだから療養費を払ってほしいときちんと言えるようになれば、保険者も安心して支払う〟と主張した。これについて河野氏は〝以前、手術して人工関節をした患者が来院され、どのように治療すればいいのか、療養費請求はできるのかと困ったことがある。会や保険者に相談した結果、不全骨折の後療として治療することになった〟と具体的事例を挙げ、保険者にも事実を隠さず伝えれば解決方法が見つかることもあると、本多氏に賛同した。

また、柔道整復業界で用いられる「亜急性」の概念について意見を募ると、川辺氏は〝解釈の仕方がひとつではないと思われるが、例えば1ヵ月前に怪我をして後になって症状が出てきた場合は亜急性と捉えてほぼ間違いないのではないかと考える〟と述べた。その一方で、山田氏は〝亜急性とは、反復継続されることによって、本人ははっきり原因が自覚できないのにもかかわらず損傷が発生するもの。期間という意味ではない〟とし、荒井氏は〝明確にはわからないが、亜急性も保険者に言わせれば慢性ではないかと思われてしまう気もする〟と話し、亜急性の捉え方には柔道整復師内においても差があるように見受けられた。

次に計画治療について、矢萩氏が〝問診し、痛みが取れる時期やいつ頃までにどの程度回復するか、スポーツ選手なら復帰するまでにかかる期間のある程度の予測と、今後の治療計画等を説明している。それ以上時間が掛かったり、症状が変わらない場合は医師にアドバイスを頂いたり、他の医療機関を利用させてもらっている〟と自身が行っている方法を紹介。本多氏は〝診断書だけでは治療の計画性が見えない。専門家として治療する以上は治療計画を立てて、この位の期間で治療の効果を上げるということを保険者に示す必要がある〟として、保険者が判断しやすいよう具体的な情報を提供するよう呼びかけた。

これに関連して、〝計画も立てずに漫然と治療していたら治療期間や治療回数等は想定できない。例えば捻挫に対して治療期間はどれくらいに設定すべきか〟と本多氏が問いかけると、山田氏は〝一般的に靭帯損傷の場合は3ヶ月位かと思われる〟とし、濱本氏は〝腰部捻挫の場合、急性の場合は1週間から10日、亜急性の場合は3ヶ月から6ヶ月くらいはかかるだろう〟と回答した。治療回数に関しては、河野氏は〝腰痛の類似症状の場合では、月に10日見ておけば良いのではないか〟と目安を提示した。これらの返答を受けて、本多氏は〝最初は痛いから回数が多く、徐々に減っていくのが当然だ。それをずっと同じ回数施術していたら、本当に治療しているのかと保険者から疑われても仕方がない〟と、第三者にも治療内容がはっきり判るようにするために、きちんと治療実態に合わせた請求を行なうことが大切であると述べた。

加えて、近年の柔道整復療養費の適正化に端を発する患者照会については〝最近は患者照会が当たり前となっている。これには3つの理由が考えられる。1つ目は患者照会で返却をすると柔道整復師がほとんど再請求しないから。2つ目に、レセプトだけでは治療内容がわからないため、患者を通して治療内容を知りたいから。3つ目は、支給対象となる症状を患者にも啓蒙しなければならないから。これにどう対応していくかが非常に大切である。施術後、時間が経ってから患者本人に聞いても覚えておらず、どう書くべきかわからないから柔道整復師に相談に行く。すると保険者に患者と柔道整復師が共謀しているような悪いイメージを持たれてしまう〟として、患者・柔道整復師・保険者の三者間でのコミュニケーション不足を指摘。〝患者照会する際の照会文章のモデルを業界から保険者に提案して、本当に情報を取るための穏やかな手法に変えられれば、先生方と患者の間の信頼関係も今よりも強固なものになるのではないか〟とひとつの解決策を示した。

 

会場の参加者からも活発に質問や意見があがり、終了予定時刻を過ぎてもしばらくの間、熱い議論が交わされていた。

なお、同様のセミナーは今後、全国各地で開催される予定となっている。当面は来春に名古屋を予定しているようである。

 

 

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