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日本赤十字社・大塚義治副社長に聞く!

2013/07/01

―後の質問にも出てきますが、東日本大震災が起きて日赤はどのような救護活動をされたのでしょうか?

全国各地の日赤職員が、〝こういう時に赤十字が頑張らなくてどうする〟という使命感を持って活動してくれました。勿論、日赤だけではありません。多くの様々な団体が活躍されました。阪神淡路大震災を1つの教訓にして、あの災害で学んだこと、或いは反省したことを材料にいろいろ考え準備していましたが、それが大いに役立ったと思います。阪神淡路の時にも、日赤の医療チームが随分出動しましたが、今回の東日本大震災における初動のスピードは阪神淡路の場合と全く違いました。阪神淡路の時はその日の内に動き出した救護班は数チームだと思いますが、東日本大震災ではその日の内に出発した医療チームが55チームに昇ります。これも前回の経験から学んだことが生きたのではないでしょうか。もちろん災害の種類が違ったということもあります。阪神淡路の時は地震による建物の崩壊、それによる被害と火災。東日本大震災は最大級の地震と津波の影響で被害が広範囲に及んだことが最大の特徴であり、その内容が随分違いますので、我々はまた新しい課題に直面したと言えます。緊急医療・緊急救護は、48時間が大事だ、72時間が大事だとよく言われますように、本当に1分1秒を争うとされる時期は、最初の数日間です。しかし、特に今回はそれだけでは済まなかった。少しずつ復興してきた地域の医療機関にバトンタッチをしながら、日赤の医療活動は結局、約半年に及びました。その後も、メンタルな問題や復興過程における医療の再建に対してのお手伝いは継続して行っております。

 

―先日の日本柔道整復師会60周年記念式典で大塚副社長は記念講演をされ、2年前におきた東日本大震災で日赤救護班等の初動や医師ら1万5千人が被災地入りし、また医療救護班の派遣状況と柔整師による救護活動の記録も報告されました。柔整は阪神淡路大震災時にも何も医療機器をもたずして医療活動ができるとして高い評価を受け、東日本大震災でも被災地の多くの方々から喜ばれたと聞いております。多発する災害、南海トラフなども予測される中、柔道整復師の果たす役割は今後ますます高まると思われます。柔整団体と各県で災害協定を締結されるところも増えておりますが、日赤が柔整を医療チームに正式に参加させていただくようなことは可能でしょうか。

夫々の地域の事情もあるでしょうから、一律に形を決めるよりも、夫々の地域でご相談いただくことだろうと思います。日赤病院では、常日頃から各病院に医師と看護師と薬剤師と事務スタッフ等による救護班を配置、準備しており、二百数十チームが常備されています。何かあればその医療チームが動くという仕組みになっています。従って、そのメンバーになるという形より、他のチームなり団体なりとのコラボレーションという形で協力し合うパターンのほうが現実的な気がしますがどうでしょうか。どういう形で協力すると一番効率的な救護活動を行えるかということについて考えたほうが良いのではないでしょうかね。今回の災害での柔道整復師さん達の救護活動に対して評価が高まっているのですから、今後も実際の活動を通じて、被災地域の方々に支持、評価される活動を積み重ねていけば、様々な可能性が出てくるように思います。その場合も、いろんな形で常日ごろ関係者間でご相談しておくことが大事です。柔整師会独自の活動もあるでしょうから、医療チームと柔整師チームが上手く協働できる枠組みが見つけ出せればいいですね。

 

―やはり講演で、東日本大震災の義捐金について、手数料等は一切いただいていないが、風評被害にあっていることも言われました。私も日本赤十字社ならばと少額ですが、寄付させていただいた一人です。知人が先月2年後の被災地を訪ねて義捐金をまだもらっていない人と出会ったとお聞きしました。義捐金の使われ方について今一度教えていただけますか?

まず、義捐金から手数料とか事務費のようなものはビタ一文いただいておりません。どうして、そんなことが言われたのか、今でも不思議でなりません。

直近の数字を申し上げますと、3300億円近くの義捐金をいただいております。しかし、それは日赤が配っている訳ではありません。大きな災害の時には、各都道府県に義捐金配分委員会という組織が出来ます。日赤の支部も関係者として入っておりますが、その委員会で、具体的な配分について、どなたに配分するか、いくら配分するか等を決めていく仕組みになっています。従って、日赤としてはお預かりしたお金をそちらにお送りするということが役割であり、今回の災害では、福島・宮城・岩手、さらに東京都・茨城・千葉などを含め15の都県にお送りしています。ということで非常に広域なんです。実際問題として住民の方をキチッと把握されているのは市町村ですので、その都道府県配分委員会から市町村を通じて被災者のお手元に届けられることになっています。

既に3300億の内の98%は少なくとも被災地に届けられております。〝2年経ってまだ貰っていません〟という方がおられるのはどういうケースか分りませんが、考えられる理由の1つは、義捐金は被災者全員にいく訳ではないんですね。原則的には、「亡くなられた方」、「家を失ってしまった方」、「家が半壊した方」、福島でいうと「原発事故で避難区域になって、他に移らざるを得なかった方」、そういった方々が対象ですから、被災者であっても、現金という形で差し上げる対象にならなかった人もいらっしゃいます。あるいは、支給の対象なんだけれども、何らかの事情でその手続きがとれなかったということがあったのかも知れませんね。

本当に気の毒な、家族も家も何もかも失なった方から、それほど深刻な被害には至らなかった方まで、被災された方の中でかなり差があるため、どういう風に義捐金を配分するかというのは非常に難しい問題です。例えば、少額であっても、まず被災者に一律に配分するのがいいのではないかといった議論もありますが、これはこれで異論もあり、もっときめ細かい知恵があるのではないだろうかという気もしております。

義捐金に絡んで日赤がご批判を受けたのは、スピード、つまり被災者の手元にお金が届くのが遅いということでした。〝少しでも早くお届けしたい〟という気持ちは全く私達も同じですが、いかんせん今回の大震災では市町村も甚大な被害を受けてしまった。市町村以外に住民の方々全体を把握しているというところは何所にも無いのです。その市町村の多くがやられてしまった。また、市町村にとっても、被災後にまずやるべきことは、今直ぐに医療を必要とする人、住いを必要とする人、食料を必要とする人、そういう人達に具体的な対応をするのが最優先だと思います。食料だけは何とか凌ぐ、水も何とか手配する、最小限の生活物資をお届けする、それらがまず先ですが、その中で義捐金も配分しなければならない。そうした現場では、実際問題として、そうそう簡単な作業ではなかったと思います。もちろん、それで良いとは決して思いません。何かうまい知恵はないだろうかということは常に考えなければなりません。我々も反省するところもあります。

今後こういう大災害が起きては困りますが、起きないという保証はありません。阪神淡路で学び、東日本でも学んだことが多々ありますので、一旦総括をしようということで、今年の3月末にこれまでの経緯を私どもなりに総括して、報告書に纏めました。災害が発生してから議論している暇はありませんので、大体こういうことにしようということを予め決めておくことが重要なのではないでしょうか。地方自治体や関係者の意見もあるでしょうから、日赤だけで決められる訳ではありませんが、我々としては一応のマニュアルを整備しておくこととしています。

また、今回の震災で生命保険や損害保険の会社が非常に速く保険金を支払ったと聞いています。全国から職員を動員して被災地に少しでも早くお渡ししようとされた。例えばそういった保険会社等と何か協力できないものだろうかと考えたりもするのですが。

今回の災害では、世界各国の人々からもたいへん大きな支援金が寄せられました。日赤ではこの海外から頂いた資金を使って、例えば着のみ着のまま逃げてきたために日常生活に必要な物が何も無いまま仮設住宅などに入居されている方々に、家電6点セット(冷蔵庫・洗濯機など必需品)をお送りする事業を行ったり、被災地の子ども達を対象として、北海道でサマーキャンプを開いたり、いろんな事業活動を展開しています。

 

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