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柔整探訪、業界内に埋もれている秀でた先生を発掘!
【第2回 はしぐち整骨院 橋口浩治  氏】

2014/01/16

近年、柔道整復業務内容が不明確になったとされている。古くから「骨接ぎ」として、外傷および運動器の疾患を担当し、医療の裾野を担う職種として、地域に貢献してきたことは紛れもない事実である。

柔整養成校の急増に伴い夥しく誕生した柔道整復師は従来の柔道整復師と一体どこが違うのか?勿論、今の時代背景もあるが教育者並びに業界の責任が問われるところである。今後柔整業界はどのように整理区分され、どのように統一されていくべきなのか?また、保険者が発行するパンフレット等に記されている単なる肩こり・単なる腰痛はどういうものなのか?今後どのようなことを提示していけばいいのか?

長崎県の橋口浩治氏に率直に話していただいた。

 

柔道整復師は元々医学と体育がベースとなっている職種であり、
その特色をもっと有効活用すべきと思います!

―最初に橋口先生の柔道整復業務に対するお考え・志などお聞かせください。

私の考え・志というのは、患者さん、スポーツ選手のために本物の「ほねつぎ」「アスレティックトレーナー」を志、それに向かって日々過ごしているのが現状です。

 

―何故、橋口先生は柔道整復師になろうとされたのでしょうか?

私の出身中学校には福岡市内でも珍しくアイスホッケー部がありました。アイスホッケーに入部しGKになりましたが、ケガをした時に近所の整骨院を受診したことがきっかけで柔道整復師を知り、アイスホッケーを続けたかったこと、スポーツに携わりたかったこと、紹介者の先生が東北柔道専門学校OBであったことから東北柔道専門学校に入学しました。また、入学前から住み込みで研修をしました。研修先の鈴木壮士先生は、アントン・ヘーシンク(東京五輪柔道無差別級金メダリスト)も指導された柔道家で、接骨院にはスポーツ選手が多く来院していました。

研修をさせていただく中で鎖骨骨折、コーレス骨折などの「ほねつぎ」を目の当たりにしました。私の母が鎖骨骨折の手術をしているのですが50年前のことなので術痕も大きいのです。それに対し非観血術で傷を残さずに施術できることに感動し、最初に助手をした鎖骨骨折の整復・固定・後療法は今でもよく覚えています。研修中は、湿布づくり、包帯巻き、固定材の準備など毎日していました。家庭の都合で在学中の研修は1年半程で一旦中断し、卒業後に、お礼奉公という形になったのですが、今度は先方の都合により半年程で研修が終了となりました。

折角、宮城県まで来ていたので学校の授業で印象が強かった柴田仁市郎先生に弟子入りをお願いし約3年お世話になりました。教員でもある先生からは柔道整復師として必要なことをすべて教えていただきました。ここでも「ほねつぎ」が基本にありました。「いつ骨折、脱臼の患者さんが来ても対応できるように刀(知識・技術)を錆びさせるな」という言葉を覚えています。また骨折、脱臼の処置だけでなく柔道整復師が扱う多くの傷病も経験させてもらいました。特に院内勉強会での症例発表を通して患者さん一人一人に対する深い観察や構造論文の作成法などを学ぶことができました。院内には書籍が沢山ありましたので、そのような発表の際にはいやおうなしにも自学するわけですが、当然、労力が掛かる分、自分の知識となりました。また「なぜ治るのか?」というEBMに対する考えも少しですが身に付けることができました。

ちょうど研修3年目に柔道整復研修試験財団主催スポーツ科学講習会が仙台大学でありました。仁接骨院では柴田先生を筆頭に多くの勤務柔道整復師が受講することとなったのですが、もともとスポーツに携わりたかった私にはこの講習会受講が将来の指針となりました。話は逸れますが、今、考えると毎週土日の講習会を受講された柴田先生の向学心には今更ながら脱帽です。また震災の津波で多くの書籍が損失したと伺い非常に残念ですが先生をはじめ皆さんがご無事だったのが何よりです。

 

―橋口先生は、専門学校卒業後も人一倍勉強された先生とお聞きしています。卒後の臨床研修等を含めて、これまでの経緯をお聞かせください。

スポーツ科学講習会がきっかけとなり、アメリカでのNATA取得やアスレティックトレーナー研修を考えたので仁接骨院を退職しました。実家に戻るつもりで勤務先を探していたら静岡県掛川市の平成接骨院にお声をかけていただき渡邉高久先生の下での勤務となりました。こちらではカイロプラクティックを本格的に学ぶことができました。また今までの勤務先と変わらず「ほねつぎ」も軸になっていました。ある事情にて私一人で施術をすることが多く、今まで学んだことを全部動員しても間に合わないくらいの来院数、症例数にて、私の芽生えかけていた自信は折れることが多かったです(笑)。

特に記憶に残っているのは上腕骨外科頚骨折にて十分な処置ができずに専門医に委ねた私の知識・技術不足の症例があったり、小学校高学年のコーレス骨折があり治癒には導けたのですが、当然、骨端線の問題があるので成長期の骨折を取り扱う責任の重さを知る症例があったり、また顔面打撲をしたブラジル人の来院があったのですが、日本語はもとより英語がまったく通じない方とどうやってコミュニケーションを取るのか。という問題に直面し自分が独立開業した際に遭遇するケーススタディをレアのものからメジャーなものまで学べました。

また、この間にNPO法人ジャパンアスレチックトレーナーズ協会が主催するポートランド州立大学でのアスレティックトレーナー研修に参加しアメリカのスポーツ選手をバックアップする環境のすばらしさには感動を覚えました。その一方でNATAATC取得のための費用やハードルも確認することができました。何よりもこの研修では片岡繁雄先生、片岡幸雄先生、佐野裕司先生などの大学教員の先生方と寝食を共にし「So What?」という問いかけを常に受け、研究の大切さ、学会発表の大切さを毎晩の飲み会を通して深く心に刻むこととなりました(笑)。

静岡での勤務終了後、色々な事情があり長崎に来たのですが、なぜ縁もゆかりもない長崎での開業なのか?ということをよく聞かれます。一番の決め手は医師との連携でした。アイスホッケーをしている薬剤師の友人がおり、クリニックが4軒入っているビルの前で、いわゆる門前薬局を営んでいました。そこの医師と相互関係を築け、レントゲンを撮ることのできる環境、柔道整復以外の疾患に対応ができる環境の構築ができたことが最大の要因でした。当然、経営は大変で、開業後2年で現在の場所に移転しています(笑)。

しかし、私の軸は「ほねつぎ」「アスレティックトレーナー」に変わりなく、開業後も長崎市内の高校スポーツに携わり、アイスホッケーにも携わっていることが評価され長崎県体育協会より日本体育協会公認アスレティックトレーナー(以下、JASA-AT)養成講習会受講の推薦をいただき何とか2回の受験で合格することができました。この講習会では柔道整復師だけでなく、理学療法士、鍼灸師、すでにトレーナーとして活躍している方、NATAATCなどのバックボーンを持った方々と寝食を共にしながら学ぶことができました。この間に柔道整復師だけでいるとなかなか気づかないのですが、他の医療職者等といると柔道整復師のstrong point、weak pointの気づきができました。特にweak pointである他医療職、特に医師との相互関係、生涯学習、学校制度、研究については大きく差がついているのを実感しました。私自身も自分の知識、技術不足からくる施術レベルの低さを痛感し、出来ていないことの大きさに無力感さえ生まれました。

理学療法士の方で、その後、JASA-AT、スポーツ科学博士を取得された大工谷新一先生からは多くの気づきをいただきました。鹿屋体育大学の藤田英二先生ともJASA-AT同期なのですが、同じ柔道整復師でもこんなに差があるのかと思い知らされました。私もそれなりに研修してきた自負もあったからでしょう正直、かなり凹みました(笑)。米田病院に勤務されていた藤田先生の「ほねつぎ」に対する知識、経験の深さには、ただただ脱帽するばかりでした。その頃藤田先生は柔道整復師専科教員を取得されたのですが「専科教員受講の推薦はなくなる」という情報を得ましたので選抜試験であればチャンスはあると考え、今度は「ほねつぎ」に対する研鑽として選抜試験を受け、何とか柔道整復師専科教員認定講習会を受講することができました。

JASA-ATの受講を開始した頃に、アスレティックトレーナー長崎県協議会の前身である長崎県アスレティックトレーナー協会が横山茂樹元会長(京都橘大学教授)を中心に設立されたのですがJASA-ATはスポーツドクターとの連携も必須なので、そのため研修会や患者さんを通して長崎市内の整形外科専門医とコミュニケーションが取れるようにもなりました。

こういう経緯、またエコー超音波画像診断装置の導入などもありようやく、ここ5年くらいで自分の整骨院にて「ほねつぎ」ができる環境が整い、後進の指導もできる環境が整いました。まだまだ知識、経験不足は否めませんが専門学校にて「アスレティックトレーナー」「ほねつぎ」を後進に指導することでも一緒に成長させてもらっています。昨年度よりスポーツトレーナーとして長崎県教育委員会よりある事業を依頼されたり、白石洋介医学博士、柔道整復師主催研修会に参加しEBM、生化学の必要性を強く感じたりしながら自分のweak pointである研究というものがkey wordになっているこの頃でもあります。

 

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