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柔整探訪、業界内に埋もれている秀でた先生を発掘!
【第2回 はしぐち整骨院 橋口浩治  氏】

2014/01/16

―橋口先生は、多くの学会の会員になられていますが、柔整の中心的な学会はやはり日本柔道整復接骨医学会と思います。接骨医学会に多くの先生が発表されていらっしゃいますが、橋口先生も発表されていますか?そして他の医療職種の学会にも柔道整復師の方がどんどん発表していく必要があると思いますが、橋口先生のお考えをお聞かせください。

接骨医学会に関しては、私は17・8年前に初めて参加しましたが、その時と今とを比べると凄く良いですね。やはり大学が出来たことによって物凄く研究というものが進んでいるからだと思います。

私自身は第20回日本柔道整復接骨医学会学術大会にて「楊心流柔術と楊心流静間の巻」について発表しています。柔道整復の施術に関する症例発表などが普通は考えられると思いますが、私には温故知新・温故創新の考えがあり古いものも好きなのです。古典の名著である正骨範の中で著者の二宮彦可は吉雄耕牛を師事し整骨を学ぶにあたっては吉雄の紹介にて吉原元棟を師事したと記載されています。吉雄の邸宅跡などは実在しており私の施術所から徒歩3分の場所にあります。しかし吉原については誰も調べていませんでした。調べを進める中で長崎学の創始者である古賀十二郎氏は著書の中で吉原は本下町在住との記載がありました。実は、私が開業している長崎市築町の半分は旧町名を本下町と言います。そんなつながりもあり古典を調べるモティベーションになりました。また、なぜ柔道整復という分かり辛い名称になったのかも古典を調べることで理解できました。その中で、長崎歴史文化博物館には柔道整復の源流である楊心流最古の伝書である「楊心流静間の巻」があることを知り、博物館の研究員のご指導を仰ぎながら現代語訳とし発表しました。まだまだこの研究には続きがあるのですが遅々として進んでないのが残念です。

他の医療職種の学会に限らず色々な場所で柔道整復師は発表をする必要があると私も思います。なぜなら他の医療職並びに専門職の方々に柔道整復師も研究をして国民に貢献していることをアピールすることが、この職業及び職域の確保につながると考えるからです。

 

―橋口先生は日本体育協会の公認アスレティックトレーナー資格を取得、アスレティックトレーナー長崎県協議会会長・(公財)長崎県体育協会スポーツ医・科学委員会の委員等幅広く活躍されておられますが、柔道整復師の職種とはどのような職種と思われていますか?現在、治療のみをされていらっしゃる先生もいらっしゃれば、スポーツトレーナーとして活躍されていらっしゃる方もいます。また治療も含めて介護分野で活躍されている方も多数いらっしゃいます。このような形で柔整の多様化がますます進むのでしょうか?また公認のアスレティックトレーナーの役割というか職業として今後の方向性やお考えがありましたらお聞かせください。

柔道整復を職種ということで考えると医療+運動と思います。それは整復+柔道が示していると思います。またも過去からの引用になりますが明治から大正の公認運動の際には、柔道接骨で申請したのが結局、柔道整復で認められました。柔術家の経験的医療(エンピリシズム)ということです。そもそも楊心流柔術が医療と柔術を併せ持っていたのですから、最初から医学と体育がベースとなった職種なのだと思います。したがって柔道整復師が介護分野で活躍すること、スポーツトレーナーとして活躍することは自然の流れなのかも知れません。しかしながら現在の柔道整復のカリキュラムは医療にほとんどを割いていますので、もう少し体育系の知識は必要と感じています。

余談ですが、TVドラマ水戸黄門の格さん(最後に印籠を出す役)は柔術家という設定です。したがってドラマの中で倒れている方がいると「活」をいれて蘇生させ「手当て」をします。まさに私たちの原型です。公認アスレティックトレーナーの職業としては、東京オリンピックも決定しましたので、ようやくスポーツ関係での職業として成り立っていけるのではと考えています。

 

―東京オリンピックが決まり、柔整の活躍が期待されています。ただ、長野で冬季オリンピックが開催された時に、相当苦労されたともお聞きしました。橋口先生は長崎県でアスレティックトレーナーの会長をされていらっしゃいますが、東京オリンピックにもし柔道整復師の先生たちが参加される場合、既にアスレティックトレーナーとして活動されている方達であれば可能性が高いでしょうか?

正直言いますと、柔道整復師の免許だけでは、通じないように思います。医学系のカリキュラムは充分ありますので、体育系のカリキュラムを足して、関西医療さんや花田学園さんが既に開設されているアスレティックトレーナー科というのを作ってどんどん養成させるのであれば凄く良いと思います。或いは、以前財団が行っていたスポーツ科学講座を復活させるというような、それを受講することで、例えば日体協のアスレティックトレーナーの何かの教科を免除されるとかであれば、受かりやすくはなりますね。

 

―橋口先生は、柔整業界の現状についてどうお考えですか?また、中央と地方の違い等について、何か感じられていらっしゃいますか?

業界の現状についてと言うか、平等(調和の目的:責任)と公平(進歩の目的:自由)が機能していないのが根底にあると考えます。平等は柔道整復師であれば等しく所有する権利ということですが、公平は、何かした(若しくは何もしない)柔道整復師には、公平に権利が与えられるということです。免許の更新制度、保険取扱い制度や更新制度、学校制度などをなおざりにしてきた結果が今です。人間ならラクをしたいのが自然の摂理なので何も変化させずに食べていけるのであれば誰もが改革に手をつけることに躊躇します。

中央と地方の違いということですが中央のことは分かりません。私は地方の県庁所在地の中心部で開業していますので中央とも違いはあるとは思います。それから長崎には離島へき地が多くあります。私は公的機関からの依頼にて壱岐、対馬、五島でJASA-ATの立場として講義などをしましたが、もしそのような離島で柔道整復師が活躍し続ければ養成校で学んだことが十分に生かせるだろうとは感じています。

 

―厚労省から保険者に通知が出されたこともあり、適正化という名のもとに患者照会や返戻が頻繁になっていますが、橋口先生はそのことをどのように思われていますか?そういった状況が今後も続き、ますます増えていく状況というのは、柔道整復師がどんどん誕生している背景があってのことだとも思われます。それら相乗作用が働いて業界が混とんとしており、規律が全く働かなくなっているように思われます。橋口先生はこういった事態をどう思われ、どうすれば悪循環を断ち切れると思われますか?

患者照会については納得がいかない部分は多いです。健保組合、協会けんぽ、共済保険に加入している方の照会が多いようですが、このことで患者さんがケガをしても施術を受けにくいネガティブな要因となっています。施術を受ける患者さんは決められた保険料を納付している訳で、なぜ柔道整復施術を受けたからといって差別的に照会を受けないといけないのでしょうか。当然、こうなった背景は理解していますが・・。

また福岡裁判後、新設校の規制をしていない訳ですが、その当時は、九州、中国、四国の有資格者が少なく学ぶ機会の平等が成り立っていないため福岡にて学校を設立したいという意味合いでの裁判だったと理解しています。そのため現状では十分な数の養成校があります。私たちの免許は国家資格であり受領委任払い形式なのですから今後医師と同様に国より入学者数が規制されるべきと考えます。

 

―所謂単なる肩こり、単なる腰痛という表現で、健康保険組合のパンフレット等に接骨院で保険取扱いができませんと表記されておりますが、そのことについて柔道整復師の先生方はどのように捉えていらっしゃるのでしょうか?納得されていらっしゃるのでしょうか?

患者さんは何が慰安行為で、何が施術を受けるべき痛みなのかは分かりませんので、そもそもこういう広報は意味があるのでしょうか。柔道整復での施術を受けるには「こういった原因、こういった症状がある場合」という広報は柔道整復業界や厚労省と相談をしてからされた方が皆にメリットがあると思います。

 

―頚椎捻挫や腰部捻挫というのは柔整ではどういった疾患に対して、そういう病名にするといった一定の取り決めごとがあるのでしょうか?お答になられる範囲で教えてください。

ご存じの通り、柔道整復術とは「運動器に加わる急性または亜急性の原因によって発生する各種の損傷に対する施術」です。ここで言葉の補足をしますと急性とは急性の外力による損傷、いわゆる外傷。亜急性とは亜急性の外力による損傷、いわゆる障害となります。私の記憶では一定の取り決めごとはなかったと思いますが頸部の軟部組織損傷に対しては頸部捻挫としています。また、走っていてハムストリングの肉離れやランニングが原因による腸脛靭帯炎は大腿部挫傷としています。

昭和63年に発行された柔道整復学校協会編集、柔道整復理論初版の序文に「ここに新しい柔道整復理論の教本を完成した。また、この内容について、厚生省健康政策局医事課の監修を頂き、公的にも柔道整復師の業務範囲を明らかにすることができた。」と記載されています。従って業務範囲の基準と考えられます。また記載されている傷病名が適切とも考えられますが、それでは初版の教科書の内容が全部なのか。と問われればそうとは言い切れません。例えば、現在養成校で使用している第5版の教科書には、不全骨折の分類の中に骨挫傷:bone bruiseの記載がありますが初版にはありません。軟部組織損傷についても初版にはないものが多くあります。しかし「運動器に加わる急性または亜急性の原因によって発生する各種の損傷に対する施術」ではあります。また、初版の教科書は柔道整復師試験が国家試験に移行する際に発行されたものですから、当然、それ以前に免許をとられた方はこの内容はご存じないと思いますし、また、どのくらいの方が初版や現在の教科書の内容をご存じなのかも分かりません。

 

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