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宮城県「柔道整復学」構築学会名誉会長 医学博士 佐藤揵氏に聞く!

2014/02/16

―また佐藤元教授が柔道整復研修財団で専門委員を務められ、さらに学術講座も受け持たれていらっしゃいますが、卒後研修の重要性についてお聞かせください。

私が財団のスポーツ科学講習委員会の委員長をしていた頃に話が出ていました。〝こんなに学校が増えてしまった。入口で縛る方法は無い、出口で締めるしかない〟と。それは何だと言ったら、1つは国家試験のレベルを上げることで、もしそれが駄目なら、卒業した人たちの研修を義務化することを考えなければ駄目である。それを実行しようじゃないかということで実現したのが、今の卒後臨床研修です。必修にしたらどうだというと、これは今の受け入れる側の問題からすると、とても可能ではない。卒後研修は臨床と座学の両方ですから、デスクワークだけなら何とかなりますが、臨床研修のほうは何所でもいいという訳にいきません。ある基準を設けて実施したらどうだということですが(今は5千人位ですが)、その頃の卒業生7千人に対して、現実には算盤がはじけない。そういう理由から希望者でやるしかないということが当時議論されました。

問題はどこにあるかというと、厚労省です。国家資格を認めて作らせておきながら後は野となれ山となれです。福岡の裁判で負けたからといって、何も後ろ向いている必要はないんです。やらなければいけないことがいっぱいあるはずで、行政が動けば研修施設なり指定病院なりは可能です。もう1つ言えることは、そのためには柔整業界が一致団結しなければいかんです。幾つあるのか知りませんが、団体が乱立しているようでは、どうにもならないです。卒後研修の必修化を学・業・教の3界がまとまって考える必要があると思います。私は、ちゃんとしたことをやらなければ、結局は自分たちの首を締めることになるのではないかと思っています。ある一部分をいじってもダメだろうと。

卒後をなんとかもですが、さらに入口のほうをなんとかしなければ。14校だったものが今は全部入れると107校、それをこれ以上増やさないように行政指導が出来ないはずが無いのです。医師や歯科医師の養成に関しては厚労省は敏感です。それに較べて柔整業界はなんにも無い。入口の問題、学校における養成の問題、出た後の問題、全て一貫しています。厚労省に対して、文句をいうような強力な上記以外の医療職の人がいないからです。

 

―今は何においてもEBMが求められるようになりました。一方NBMも求められています。ある意味、柔道整復はどちらも内包した医療と思われますが、佐藤元教授はこれらをどのように定義づけていけば良いと思われますか?また柔道整復の施術に根拠が求められていることは事実だと思います。しかし、それは柔道整復が患者さん、あるいは社会からの要望に応えるための根拠であると思います。そうした根拠の基となる患者さんからの要望あるいは社会貢献できる分野というのは、どのようなことだとお考えでしょうか。そこが曖昧だと根拠が求め難いのではないかと思うのですが。

現在、リハの専門職に理学療法士・作業療法士・義肢装具士・言語聴覚士・看護師等、があります。その人達が仕事をするために養成施設がある訳で、その方面にはEBMが出来ているのです。全部の領域で夫々の職能団体が学会を持っています。そういったリハビリ専門の各分野の仕組みが最初から上手くいっていたかというと、そうではありません。日本のリハビリは昭和38年がスタートです。昭和38年に法律が出来て養成学校が出来ました。やはり、出来る時には随分すったもんだしました。私は、厚生省に居りましたから、出来ようとする時期に顔を出さざるを得なかった訳です。PTと柔整はやっていることは重なる部分も多いが、発想が全然違います。つまり、技術だけを先に導入しておいて、後になって患者さんに何でこういうことをしなきゃいけないんだ、どうなんだというのを考え出した時に、整形外科のほうから、系統だってやらなければダメだろうということになって形が出来てきたのです。当時、まだ大学はありませんでしたから、専門学校がそういうことをやりだして、理学療法士会・作業療法士会を作って、自分たちでやり出した訳ですが、お金が無いからリハビリテーション医学会や厚生労働省がお金を出して理学療法士・作業療法士の教員養成指導をし出しました。そういう波乱のスタートでした。規制緩和以降、PTの数がいっぱいで質が落ちているから、質を取り戻すことが問題だそうです。厚生労働省は実は何年か前に理学療法士・作業療法士2万5千人で足りないと言っていました。しかし、4人に1人が65歳以上という超高齢社会です。高齢者は元気で死なない、予防的なリハも行うとなってリハの範囲が拡っている訳です。これはいかんということで計画の練り直しをしていますが。

柔道整復師の業界は、そういったことを率先してやっていくような仕組みが無いと思います。

全部証拠を示すことが出来るものだけが科学ではないので、特に手技療法というものは、プラスかマイナスか、いやゼロもあるみたいなところもありますからEBM化は難しいんです。従って何でもEBMで処理できるかというとそうではありませんが〝でも、良いんだよ〟ということを自分たちで〝証拠固め〟をして説明しなければならない。それも今まではやれていなかった。そこから再スタートすればと思います。

一番EBMで進展しているのは、アメリカのスポーツ医学界のやり方です。『EBMスポーツ医学』という論文集が出ています。その中に1000いくつの論文を全て見た結果、例えば、腰痛を起こした後、手術をしないで非観血的に治療する、電気をかける、マッサージをする、運動療法、ストレッチを行う、どれが有効だったかという論文が沢山ありますが、腰痛に関してはこれが有効だという証拠は1つもないというのが結論です。NHKの医療系の番組で、整形外科の先生に腰痛の原因は何だと問うと8割は不明ですと答えています。そうかと思うと、間違いなく分っているのは、足関節の捻挫です。捻挫を1回以上やっている人は再発する可能性があるということで、如何にして再発しないようにするか、特にスポーツ系においては非常に大事なことです。足関節捻挫の再発防止にはバランス運動を行うのが一番効果がある。これはもう証拠が出ていますから、柔整の方々はそれを知っていなければいけないでしょう。近接領域をも見まわすことです。

 

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