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ビッグインタビュー:帯津三敬塾クリニック院長 板村論子氏

2014/06/01

―板村先生は日本統合医療学会の認定医もされていらっしゃいますが、統合医療を推進されるようになった切っ掛けとそのお考えをお聞かせください。

私はJACT(日本代替・相補・伝統医療連合会議)の時からの会員で、日本統合医療学会の認定医にもなっております。

2012年9月に第67回Liga国際ホメオパシー医学会大会が奈良で開催されました。ヨーロッパではホメオパシーというのは相補・代替医療の中の大きな要素で、そのことを統合医療学会でも認知はされていましたが、未だちゃんと知っていただけていないところがありました。国際大会では海外からの招待講演者が殆どで、日本の招待講演者は2人しかお呼びしなかったんですが、日本統合医療学会名誉理事長の渥美和彦先生に講演していただきました。それを切っ掛けに統合医療学会の先生方にホメオパシーをより考えていただけるようになりました。

日本ホメオパシー医学会も教育システム等がうまく安定してきたところで、外に向けてホメオパシーをより多く知っていただくことに力を注いでいく時機になっていました。また昨年より、<統合医療女性の会>の世話人として手伝うようになりました。食事に関しては、子供がいる関係で前から関心が高かったことと長男が食物アレルギーだったこともあり、元々料理が好きで、食べることも好きでした。子育てをしながら精神療法や心理療法、発達心理等にも興味がありました。という訳で、子供がいたことで教えられることが多く、食べることはとても大事なので何所かでキチッと勉強したいという気持ちを持っておりました。

 

―昨年の夏に『統合医療女性の会』が発足。8月24日に「かしこく、ていねいに食べる」と題した記念セミナーが開催され、論子先生は「いろどりで食を考える」をテーマに講演されました。講演の冒頭で〝食に関する情報があふれるほどある中で、本当に役立つ知識は何か?〟として話され、2011年『Food as Medicine』というアメリカのセミナーに参加されたそうですが、その動機など教えてください。

昨年の『統合医療女性の会』発足セミナーでお話しましたように、2011年に『Food as Medicine』に参加して〝アメリカのセミナーって凄い!〟とビックリしました。本当に行って良かったと思っています。とにかくニュートリション(栄養学)がよかった。5月にテキサスでアンドルー・ワイル先生が主催しているニュートリションの学会にも参加しました。

近年、栄養学は著しく進歩しており、その分野その分野の最新のデータが出されております。オメガ3とかオメガ6等の脂肪酸についての最新情報はアリゾナのプログラムで勉強しました。以前はコレステロールも悪いイメージしかありませんでしたが、コレステロールが低くなりすぎると、うつ病の発症に関わっているというデータもあります。コレステロールは神経の細胞膜を構成しています。またビタミンDの不足は骨格異常に関与するだけではなく、大腸癌の発症率に関係しているというデータも出てきたり、日進月歩で、とても複雑です。色どりについては、簡単ですし、しかも色で考えるというのは、理にかなっています。

やはりいろんな情報がありすぎて、ある程度みんな少しは勉強して自分たちで判断できるところまでいけば良いのですが、直ぐお手軽なキャッチコピーに飛びついてしまいがちです。それについては私達がちゃんと努力していないからで、実はホメオパシーもそうです。

「正しいホメオパシーの理解のために」WHO版(「ホメオパシー薬の調整と取扱いに関する安全指針」準拠)という小冊子を作る時に〝あなた達、ちゃんと努力していないよ。ホメオパシーの小冊子を作ってキチッと広報したほうが良い〟と助言されました。多くの人はもっと簡単な内容を求めていると思うんですが、あまりに簡単すぎると正しい情報が伝わり難い。人によってはちょっと難しいかもしれませんが、あれぐらいのボリュームというか、しっかりした内容のものを創らないとちゃんと伝わらないと思っています。<統合医療女性の会>ではそういう努力をしていこうということです。

 

―日本の医療は転換期を迎えていると思いますが、板村先生はどのように今の医療を分析されていますか?

統合医療というのはこれからの医療としての在り方だと思います。私は統合医療とは"人"を中心とした医療システム、概念だと考えています。今の医療のシステムではなく、統合医療というシステムが新たに必要だということを理解して頂くために女性の視点で拡めていこうというのが、<統合医療女性の会>の目標です。つまり、みんな形を求めるから分らないのではないのか、それはシステム論でありコンセプション(概念)・考え方であると思えば良いと思います。

<統合医療女性の会>の定義にも書いてありますが、今までの医療というのは、医療を供給する側から見た医療なんですね。要するに治してあげる、あるいは治ることを目標に、医療従事者からみた医療です。〝西洋医学がありますよ、相補代替医療もありますよ、伝統医学がありますよ〟と言ってあくまでも医療を供給する側から見ていて、それを医学モデルですが、今の日本の超高齢化が加速している中では、病気を治すことだけが求められているものではありません。病気にならない予防を含めて「患者さん中心」と統合医療学会がずっと言い続けてきたことですが、「患者さん中心」と言うこと自体、医療を供給する側から見ていたと言えるでしょうね。つまり、一人一人の"人"を中心に考えた医療の在り方であり、しかもそれは"人"である場合もあれば、人が構成する「地域」や「社会」でもある訳で、地域医療に関わってくるのです。

医療の受け手側から見た医療システムが、包括的な医療と称される地域医療だということで、既に統合医療が実践されている地域もあります。医療におけるパラダイムシフトなんですね。供給側からではなく医療の受け手側からの視点をもった医療の考え方、医療システムの在り方が「統合医療」です。従って、その人が健康を維持するために医師は治療の過程に関わるけれども、看護師さんや理学療法士など多職種の医療従事者が関わってくる訳で、グローバルな医療システムだと思います。多職種の人達が協働して一人の"人"のためにいろんな医療を統合していけば良い訳です。たとえば、病気の人が病気を持ちながら生きるとなっていったら、西洋医学が重要になってきますし、関わる医療のパターンが変わってきます。アメリカの統合医療は、医師主導であくまでも医療を供給する側から見ているものです。しかしながら医療を受け手側から見るということは日本式の超高齢化社会の医療システムの在り方に深く関わると思います。

西洋医学をやっている先生たちに〝統合医療って何なの?〟と聞かれた時に、〝システム論です。今までの医師中心の医学モデルではなく、受け手から見た「人」を中心とした医療システムなんです〟と言うと、〝あっ、そうなんだ〟と言って、みんな素直に理解してくださいます。所謂地域医療を包括していく大きな考え方が統合医療ともいえます。中には医師が中心でやるべきだと言う方が未だいらっしゃいますが、そうではないと思うんですね。「人」が中心なんです。だから「食」も「運動」も関係しますし、「建築」など「生活環境」も、あとは「教育」、「子育て」もみんな大きく関係しています。

 

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