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スペシャルインタビュー:
国家公務員共済組合連合会  立川病院   小粥  博樹  氏

2014/09/01

―在宅医療について小粥先生のお考えをお聞かせください。

医療費の面から考えると、在宅医療は流れとしては仕方がないと思いますが、所謂医療難民、介護難民と言われる人たちが続出するでしょう。 2025年というのは単に団塊の世代の方達が後期高齢者に入るだけなので、そこから2040年位まで高齢者は増え続けることになります。医療保険制度上、急性期病院は平均在院日数が18日以上になると7対1看護の点数はとれなくなってしまいます。だからといって無理やり追い出して家に帰すのかといっても不可能な話で、次の受け皿が整っていないとダメなんですね。

ただ、今回の改正で急性期病院退院後の行先として在宅へ戻す率75%というのも7対1看護算定の要件に入っていますので、その要件もクリアしなければならないため、介護保険と医療保険をフルに導入して、受け入れ態勢を整えていくことが必要不可欠です。イギリスの成功しているケースで、認知症の発症を5年後ろにずらすだけでも、認知症患者数の全体数が半分位に減るということです。認知症を遅らせる薬、あとはリハビリテーションや介護方法を工夫することによって、認知機能或いは廃用で運動機能が落ちていた人を歩かせたり、要介護度を下げてADLを上げるということが期待できます。

それらは解決策の1つであり、複数を上手く組み合わせないと介護難民、入院難民は必ず増えますし、もう実際に出ていると思います。しかも在宅では介護者も疲れて共倒れになったり、仕事を辞める人も今は相当増えている印象です。在宅は一人の開業医さんだけではなく、専門医がチームで取り組み、介護面での行政の支援もないと幸せな結果を生まないでしょう。

 

―2025年を目標に地域包括ケアシステムの整備が推進されております。柔整が参入するためには、どのような手続きが必要でしょうか。柔整の方々をはじめ多くの医療職種の方々が連携しないとこの超高齢化社会を救えないと思っております。ご意見を聞かせてください。

私は地域包括ケアについての専門家ではなく、病院のソーシャルワーカーさんなどの方が詳しいと思いますが、一医療人として感じていることを述べます。柔道整復師の方は機能訓練指導員となる資格があり、ケアマネジャーの資格もとられて、事業所を運営している人もいらっしゃって、多分その方面の選択肢も今後増えてくるだろうと思っています。

一般的に効果が高いのは介護度の低い人です。介護度の重い人になってくると脳血管疾患が多いため、機能訓練的なアプローチよりも医療的アプローチが求められると思います。介護予防給付で、ある程度エビデンスが出ていて効果があるものは、やはり要支援1・2とか要介護1くらいの介護度が低い人に対してでしょう。介護を統括している専門家が〝認知症になりはじめた要支援段階の人に本来手厚くするべきであるのに現段階では既に進行してしまった人に対して介護報酬を手厚くしているのはお金の使い方が間違っているんじゃないか〟〝この要支援をしっかりおさえることが大事で、介護の認知症予防のプログラムをしっかりやると効果が高いのに〟と嘆かれていました。こういった正しい指摘があっても実際には行われていない。その辺を、柔道整復師の皆さんで各自治体の担当者とかけあって運動器疾患患者のみならず、運動療法の有効な認知症初期の方もカバーしていってあげることも大事ではないでしょうか。

これまで以上に各自治体は地域包括型ケアシステムの構築に向けて真剣に取り組んでいくことになるでしょうから、十分あり得るのではないでしょうか。介護保険の給付は今後どんどん増えますし、柔道整復師さんの人数がいっぱい増えてくる中で、いま介護の人材が不足していると言われており、就職の確保としてはやはり絶対に押さえておいたほうが良いと思います。そしてその領域というのは、開業医さんなどともバッティングしない。ただ理学療法士さんとは、介護保険では同じ運動機能の専門家として重なる面はあるでしょうね。本来は柔整師さん自体が個々で違う方向を向いていないで横の繋がりを持って医療サイドにもっとアプローチして、地域包括ケアだけではなく、医療全体の中でプライマリケアも共にやっていきましょうみたいな動きを期待しているところです。仰る通り今後も進行する超高齢社会で満足のいく患者立脚型の医療、介護を構築するにはためには、今までとは違う他職種の連携、参加が必要になってくると思います。

 

●小粥博樹氏プロフィール

1983年3月   東京都立戸山高等学校卒業
1991年3月   慶応義塾大学医学部卒業
1991年4月   慶応義塾大学医学部整形外科学教室入局
                  慶応大学病院整形外科助手
1992年7月   佐野厚生総合病院整形外科医員
1993年7月   平塚市民病院整形外科医員
1994年7月   済生会宇都宮病院整形外科医員
1995年7月   東京歯科大学付属市川総合病院整形外科医員
1996年7月   慶応大学病院整形外科助手
1997年7月   稲城市立病院整形外科医員
1999年7月   埼玉社会保険病院整形外科医員
2001年7月   総合太田病院整形外科医員
2004年7月   国家公務員共済組合連合会立川病院整形外科医長
2010年7月   同リハビリテーション科部長(整形外科医長兼務)
現在に至る。
日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定脊髄脊椎病医・日本整形外科学会認定リウマチ医・日本整形外科学会認定リハビリテーション医

 

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