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ビッグインタビュー:早稲田大学スポーツ外科学学術院教授・福林徹氏

2016/02/16

―わが国におけるスポーツ外傷の実態を明らかにされたとお聞きしておりますが、その辺についても教えていただけますか?

日本には大きな団体「スポーツ安全協会」と「日本スポーツ振興センター」の2つがあります。日本スポーツ振興センターというのは中学校・高校の学校体育の怪我の全国集計を行っています。現在、私はスポーツ安全協会の顧問を務めておりますが、スポーツ安全協会というのは、学校体育を除いた任意加盟団体の怪我の集計を行っています。つまり、日本の全国レベルでの集計はこの2つです。ただし、此処に医者は関与しておりません。また、その統計について見ますとそれは数字が並んでいるだけで、詳しい分析がなされておりません。また独自の団体が全国統計を別に行っているので、足して2で割るということは出来ないんですね。本来は一緒になってやってくれれば、日本全体の怪我の統計が分りますし、原因解明もできるのですが、夫々の団体が行っておりますので非常に難しいものがあります。それで日本体育協会でやろうということで企画しましたところ、競技種目では、サッカー、女子バスケットボール、ラグビー、柔道が協力してくれました。予防プログラムについて各競技団体が何をやっているのかというと、サッカーはFIFAが全世界的にやっておりますFIFAイレブンプラスを日本サッカー協会でも推奨してくれております。本プログラムは特に中学・高校生向けには有用です。女子バスケットボールもジュニア向けとJリーグ・女子リーグ用のプログラムを作りました。柔道のほうは予防プログラムとして「柔道の基本運動」を作りました。ラグビーはラグビーレディーというのが出来ています。特にサッカーのFIFAイレブンプラスの予防プログラムは、世界的にも実施されており、ある程度有用性が証明され、効果も出ています。

 

―更に福林教授は国民体育大会における都道府県選手団へのスポーツドクターの帯同義務付けを実現され、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)など連携のもと、平成15年、第58回国民体育大会で大会期間中のドーピング検査を導入。しかも(公財)日本サッカー協会では、スポーツ医科学委員会委員長を務められ、Jリーグのチームドクター及びトレーナー制度の確立もされ、スポーツ界に多大な貢献をされていらっしゃいます。2020年東京オリンピックが決定しましたが、現在の心境をお聞かせください。

Jリーグのチームドクター制度は前からありましたが、トレーナー制度は私が立ち上げました。しかしながらスポーツ界全体としては未だトレーナー制度は確立されておりません。そこはアメリカと比較して日本の遅れているところです。私が思っているのは、アスレチックトレーナー(以下、AT)は人気が出てきましたから、ATをちゃんと現場に導入させるような事を考えております。これまでドクターも鍼灸マッサージ師も治療は行いますが、スポーツ現場に居なかった、というのは言い過ぎかも知れませんが、スポーツ現場にマッサージ師は居るんですが、スポーツ現場に即して動けないのが現状です。現場で選手のリクエストでその場でテーピングを行ったり、その場で応急処置をしたり出来るようにしなくてはいけないと思います。2020年には、日本でもちゃんとATを配置するべきで、前回のオリンピックと同じ話にはなりません。

日体協のATは、医療資格ではありませんし、またコーチ資格でもなく、やはりその中間に位置するような資格で、スポーツ現場で動いて選手が怪我をしないように予防をしてあげるのが本来の役割です。2020年に東京オリンピックを開催するにあたって日本の選手団が活躍するためには、怪我人が多くいたらダメなんです。怪我人が出たら選手の質がみんな落ちてしまいますので、怪我人を出さないようにしなければなりません。そのためには、やはり現場で選手が怪我をしないように予防できるシステムを構築しなければなりません。それは海外でも言われていることです。日本はそれが未だ出来ていないのです。それをやるのがトレーナーシステムで、それを一部の競技種目で作り始めた訳です。ATであり、しかも鍼灸或いは柔整のライセンスを持っていると医療行為も出来ますので、両方あれば非常に便利です。逆に両方の資格がないと医療行為が出来ませんから、テーピングを予防で捲くのは良いけれども、怪我したものを治療するとなると資格の問題が出てしまいます。

海外には日本の体育制度のような中学・高校の学校体育はありません。クラブ活動みたいなかたちです。結局、体育現場で生徒が怪我をしないように指導をして、例えばテーピングの巻き方一つにしてもケア出来るような指導者を入れていかなければいけないでしょう。少しそれが導入され始めて、スポーツで有名な大学や高校にトレーナーが付き始めました。ただし一般の高校では全くついておりません。弱小のところほど選手が間違った処置をしたり間違った固定法をしたりしているので、現場で指導できる人がいなくてはいけないと思います。そういう意味で日体協のATは今厳しく養成活動をしています。志願者が多く、受講したいという人が多いんですが、日体協が数を制限しています。受講出来ない人が多いと言う問題点はあります。しかし2020年までにトレーナーシステムをもう少ししっかり構築しようと思っています。話は違いますが、昨年の7月に日体協のアスレチックトレーナー学会を作りまして、研究発表もスタートさせました。ATのコースを持っている専門学校で日体協が認定した所は、日体協の講習会を受けなくてもATの資格を取得できることになっています。日体協のAT資格を取得するには、時間数も多く、また試験も難しく、その上受講するのも難しい、レベルを最初から高くしていますので。今度、日本体育大学でATの学科を作る筈ですし、各体育大学がATコースを作るという話を聞いています。それだけ若い人でATになりたい方が多いということでしょうし、またスポーツ現場でのニーズが高いということが言えると思います。私が思っていることは、ATをやりたい人は出来れば現場でトレーナーをやって、日本の需要から考えると両方のライセンス、柔整か鍼灸のライセンスとATのライセンス持って、治療から予防に至るまで一貫した指導が出来るように、それがベストであるということです。

 

―福林教授は、現場帯同トレーナーに対する予防プログラム取得の徹底化をはかられ、指導効率化のため、選手に対して連続ジャンプや着地動作を行わせ、特にリスクの高いと思われる選手を中心にトレーナーを通じて正しい動作の指導の徹底化をはかったとされております。こうした中で、スポーツドクタートとトレーナーの役割分担や連携において現状はどうなっているのか、更に今後の方向性もお聞かせください。

ドクターとトレーナーの役割分担はそんなに変わっていません。ドクターはあくまでも指示・指導を行って、実際にそれを行うのは、特に体の動きの指導はトレーナーの役目です。プロ野球界も近代化してきましたし、プロがあるような競技はやはりそれなりにちゃんと分担が決まっています。ここまではコーチの役割、ここから先はトレーナーの役割、ここはドクターの役割であると。そうすると鍼灸・柔整の役割は現場では入ってこない。結局、トレーナーの役割の中にマッサージや鍼灸的なことが一緒に入ってきてしまうのです。以前はマッサージにたけた人、スペシャルなマッサージを出来る人なんて言われましたが、今のトレーナーはそれだけではダメで、勿論マッサージも出来ないとダメですが、体の動かし方とか筋肉の使い方、その辺のトレーニング指導が実際に出来なければ難しい。そして今は、トレーニングコーチ的なところを少し入れていかなければいけないと思います。早稲田に廣瀬先生という方が居て、元々ATの方ですが『なでしこジャパン』を担当され、やられていたことは結局トレーナー的なことではなく、トレーニングコーチ的なことを、実際に練習メニューを決めるところまでやっていました。練習メニューまで決めると流石にトレーナーではなくトレーニングコーチです。少しずつ今のATはトレーニングコーチの分野を抱き込んでいっています。コーチは怪我とか何もできないですからね。体の動かし方や体の使い方など、その辺までの指導を幅広く行う、それを現場で出来るようにお願いしています。トレーナーはチームに雇われて、チームのためにやるもので、現場で働く人であって、治療院で働く人ではありません。私のゼミを出た人で、読売巨人軍のATになりキャンプに帯同して行っている人がいます。やはり若い人は、スポーツ現場でやりたいという夢をみんな持っているんですね。

 

 
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