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(公社)日本柔道整復師会「匠の技 伝承」プロジェクト第1回指導者養成講習会開催される

2021/10/11

2021年9月26日(日)、日本柔整会館(東京都台東区)において、『公益社団法人日本柔道整復師会「匠の技 伝承」プロジェクト第1回指導者養成講習会』が開催された。

養成講座開講式

公益社団法人日本柔道整復師会では、オンラインによる講習会は今回が初めての試みとなる。入念な準備を行い、ライブ配信のような一方通行の配信ではなく、双方向でのやり取りを可能にしたことで、受講者が行う実技の様子や描出した超音波画像をリアルタイムで講師がチェック・指導するなど、対面での講義にも引けを取らない程の質を確保している。

工藤鉄男会長(公社)日本柔道整復師会・工藤鉄男会長は〝今回は第1回目となる指導者養成講習会であり、本来であれば47都道府県の皆さんが一堂に会して行うところであるが、コロナ禍での開催となり皆様にはご不便をおかけしているが、ご協力に感謝申し上げる。江戸時代から続く我々の匠の技術は明治時代に全盛を誇り、さらに昭和の時代にはレントゲン等の医療機器を用いて患者を治療していたという事実がある。整形外科がない時代には「骨折・脱臼は接骨院の先生にお任せしよう」という機運があった。その後、個人契約者の増加や養成校の乱立等が起こり、現在、柔道整復師は世間からの信頼を失ってしまっている。信頼を取り戻すために、日本柔道整復師会は骨折・脱臼をしっかり手当てできる柔道整復師を育成する。その裏付けとして超音波観察装置という科学的検査機構を用いることで、社会との信頼関係を築いていきたいと考えている。すべての柔道整復師が検査機構として超音波観察装置を使用しているという状況を目指して、皆で勉強し、「骨折・脱臼の手当てができる柔道整復師」として、この令和の時代に新たなスタートを切りたい〟と熱く述べた。

長尾淳彦学術教育部長(公社)日本柔道整復師会・長尾淳彦学術教育部長は〝この匠の技伝承プロジェクトは、柔道整復術公認100周年を記念して、10年計画で行われる事業である。骨折施術・脱臼施術、そして超音波観察装置の取り扱いの3つを、我々は「3本の矢」としている。我々は、全国の接骨院で「いつでも・どこでも・どなたでも」均一的な施術を受けられる、また均一的な施術を提供できるという業界を創っていきたいと考えている。この事業は日本柔道整復師会だけでなく、本日参加されている47都道府県の皆さんとともに行っていく一大事業である。我々柔道整復師のアイデンティティは、応急処置といえども骨折・脱臼を診ることができることであり、これを手放してはいけない。そこで日本柔道整復接骨医学会では、骨折施術・脱臼施術・超音波観察装置の取り扱いについて、認定制度の立ち上げに向けて動き出している。これは学術団体のみならず、日本柔道整復師会、研修試験財団、全国柔道整復学校協会、厚生労働省、日本医師会といった様々な力を結集して取り組んでいる。今回ご参加いただいている指導者候補の皆さんには、将来ご自身の都道府県でこのような研修が行われる際には講師として参加していただきたい。皆で構築していくという気構えを持って講習に臨んでいただきたい〟と趣旨説明を行った。

 

整復・固定施術技術実習

講師:山口登一郎 氏

山口氏は、少人数で施術を行う接骨院でも取り入れることのできる実践的方法として、ひとりでできる前腕骨遠位端骨折の整復・固定法について解説。〝上腕の遠位端部にバスタオルを載せ、寝台の上に乗って足で固定する。一番大事なのは両母指と両示指の当て方。主根部と前腕遠位端を包むようにしっかり密着させて末梢方向に牽引することがポイント。両母指は遠位骨片の背側に当てる。両示指は近位骨片の遠位端に当ててゆっくりと末梢方向、そして尺側気味に牽引する。女性など力の弱い方は膝に前腕を当てて膝の力も利用して牽引すると良い。手に汗をかく人はラテックスグローブを使用するのもひとつの方法だ。牽引しつつ、両示指を支点として背側から掌側方向に、両母指で直圧を加える。そして触診で末梢片と中枢片が適合したところで回内して掌屈する。これが整復の一連の流れとなる。そのまま手を放さずに寝台から降り、固定に移る。固定に用いるクラーメル金属副子は、フラットにすると接地面がうまく当たらず、固定した後にずれてしまうため、手掌部、前腕部のアーチにぴったり合うように作成すること。MP関節が屈曲できるように固定することも予後を良くするためにはとても重要となる。患部が確認できるよう、シーネを把持しながら手関節部と前腕近位に包帯を巻く。一人で包帯を巻くのは難しいため日々の鍛錬が必要になる。固定がずれないことを確認したら、血液循環を確保するためにカナルシートを使用する。下巻きとして包帯を一周巻いたら、カナルシートの凹凸面を皮膚側に向けて当てる。その後、背側にカーブに沿わせて採型したクラーメル副子を当てて固定する。最後に、三角巾で提肘する。患者さんを座位にする際には急に起こすと貧血を起こす可能性もあるので、ゆっくり起こすようにすること〟等、整復・固定を実践しながら丁寧に解説した。

その後、各地域から参加する受講者が実技を行い、モニターを用いてオンラインで確認・指導を行った。

  • 講義1
  • 講義1
  • 講義1
  • 講義1

 

超音波観察装置取扱技術実習

講師:佐藤和伸 氏

超音波観察装置の取り扱いについて、佐藤氏は〝画像は向かって必ず左側が中枢、右側が末梢となるよう観察する。プローブを持ったらまず中枢がどちらになるのかを確認する。持ち方としては第4指、第5指はプローブから少し出して、身体に少し触れるくらいのほうが安定する〟と基本を説明したうえで、橈骨を例として超音波観察を実践。〝観察時にはランドマークを決めておくと、第三者が見たり保存したデータを確認したりする際に、どこを撮ったかわかりやすい。背側からの描出ではリスター結節をランドマークとする。エコーの一番高い部分が一本の線のようになるよう描出すること。リスター結節から尺側に移動すると、長母指伸筋が層状の線状高エコーとして出てくる。長母指伸筋は橈骨下端骨折の後発疾患として断裂する場合もある。リスター結節から橈側に移動すると総指伸筋が描出される。茎状突起もまた線状高エコーとして描出される。橈側から撮影する際、橈骨下端の怪我をされた方に回外するのは良くないので、中間位で描出する。掌側の場合は手根骨をランドマークとする。橈骨の橈側でランドマークとなるのは舟状骨。舟状骨から中枢にスライドさせ、尖った山のようなものが描出されれば橈骨掌側の外側が撮れている。手根骨から尺側に移動すると月状骨が丸く描出される。そこから中枢にスライドさせると左から右にかけて台形のような形で掌側が見えてくる〟等、位置関係を確認しながら描出のされ方を解説した。

その後、各会場の指導者候補の超音波観察方法をオンラインで確認し、描出のコツや改善方法について詳細に指導。佐藤氏は〝プローブの使い方は技術というよりも慣れることが重要。関節を動かしながらリアルタイムに骨や腱の動きを描出することもできる。慣れるためにも楽しんでどんどん観察してほしい〟とコメントした。

  • 講義2
  • 講義2
  • 講義2
  • 講義2

 

 

最後に、長尾学術教育部長は〝将来的にはこのような講習を各都道府県で行えるようにしていきたい。超音波観察装置も希望者には貸し出しを行っていく予定だ。ぜひ超音波観察装置を普及させ、すべての接骨院に常備されることを目標としたい〟と述べ、第1回目となる指導者養成講習会が終了となった。

なお、講習会終了後には、ダイジェスト版の配信、ホームページへ関連情報の掲載を行うなどアフターフォローの体制も万全だ。今後はオンラインと対面の講習を組み合わせて、「いつでも、どこでも、日整会員ならば参加できる学習システムの構築」を行っていくという。日本柔道整復師会は、コロナ禍においてもその活動を止めることなく、前向きに、着実に歩みを進めている。

 

次回は11月7日(日)、肩甲上腕関節の脱臼についての講習が行われる予定だ。

 

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