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『「匠の技 伝承」プロジェクト第4回指導者養成講習会』開催

2023/03/07

2023年2月19日(日)、日本柔道整復師会会館(東京都台東区)において、『「匠の技 伝承」プロジェクト第4回指導者養成講習会(2022年度第2回新規重点部位講習)』が開催された。本講習会は肘関節後方脱臼をテーマとし、整復・固定施術実技実習と超音波観察装置取扱技術実習がオンラインにて行われた。

指導者養成講習会

長尾副会長

(公社)日本柔道整復師会・長尾淳彦副会長は‶「匠の技 伝承」プロジェクトは2020年から10年計画で開始された。日本柔道整復師会以外の方々からは「骨折・脱臼で接骨院に来る患者は1%にも満たないのに何故このようなことをしているのか」といった声も聞かれるが、医師以外で骨折・脱臼の整復・固定ができるのは我々柔道整復師だけである。本プロジェクトはこの柔道整復師の根幹に係わる部分をきちんと押さえるために、47都道府県の皆様と一緒にその技術をブラッシュアップしていこうという事業だ。その点をご理解いただいたうえで受講していただきたい〟と挨拶。

森川学術教育部長

森川伸治学術教育部長からは〝「匠の技 伝承」プロジェクトは我々柔道整復師の施術の基本技術、そして考え方、進め方をしっかりと平準化することを目的としている。日常の施術の中で遭遇することが少ない骨折・脱臼だが、だからこそしっかり整復・固定の技術を身につけて次の世代に繋げていかなければならない。超音波観察についても患者安全のために必要不可欠だ。各都道府県の指導者候補の先生方の力で、ぜひ全国に技術を広めていただきたい〟と、改めて「匠の技 伝承」プロジェクトの趣旨が説明された。

 

整復・固定施術実技実習

山口講師は‶肘関節後方脱臼は肘頭が後方に突出しヒューター線が乱れるため、鑑別はすぐにできる。肢位は弾発性固定が見られる。まず整復だが、肘関節を伸展位にして整復を行うと、鉤状突起の骨折や軟部組織のさらなる損傷などの副損傷を引き起こしやすく予後が悪くなりやすいため、弾発性固定の肢位のまま、母指を前腕の近位端にあてがって上腕長軸方向に牽引を行う。ある程度動きが出てきたところで、上腕の遠位端に母指を移動させ4指を肘頭に持っていき、牽引を持続しながらゆっくり肘関節を屈曲させる。整復後は屈伸させて、弾発性固定が取れているかを必ず確認すること。固定は肘関節90度屈曲位、前腕は中間位にて行う。固定具は末梢から合わせること。前腕には緩いカーブがあるので、そこに適合するようにクラーメル金属副子を採型する。四裂包帯を2巻使用し、手首に環行帯を施して蛇行帯で中枢に入っていく。蛇行帯で仮止めした後、螺旋帯でクラーメル金属副子と患肢を支えながら末梢に巻き進める。肘関節は亀甲帯で被覆するが、包帯の線維が凝縮しやすいため緊迫とならないよう注意が必要となる。包帯は近位から遠位まで、なるべく同じボリュームで巻くようにすること。最後に三角巾で提肘を行う。また、三角巾と患肢の間にアイスバッグを入れるなどして患部を冷やすこと〟等、実技を披露しながらポイントを押さえて丁寧に解説した。

その後、オンライン環境を利用し、モニター越しに整復操作・固定操作の確認が行われ、山口氏は各受講者に対し‶クラーメル金属副子は、末梢はMP関節までとするほうが良い。また、クラーメル金属副子が肘頭にあたると褥瘡になりやすいため、当たらないように固定すること〟等、細部に至るまで指導した。総括として‶肘関節脱臼は出血量が多く、骨化性筋炎や伸展障害を起こしやすいため、障害を残さない固定法、手技療法、物理療法が必要となる。また、これから各地域で指導者となっていただくためにはさらに口述のスキルを向上させる必要がある。口述しながら手技を行うのは難しいが、指導者候補として選ばれた先生方であれば必ずできる〟と鼓舞した。

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超音波観察装置取扱技術実習

超音波観察装置取扱技術実習に先立ち、森川学術教育部長は‶我々柔道整復師は、視診・問診・触診の三診によって骨折・脱臼・打撲・捻挫・筋腱等軟部組織の損傷を評価しているが、その基本的技術をしっかり身に付けていただきたい。そして自分の評価を確認する補助機器として超音波観察装置を使用するための取扱い方法を、ここで学んでいただきたい〟と超音波観察装置を扱ううえでのルールを再確認した。

佐藤講師は‶患肢は右上肢とする。向かって左が外側、右が内側となるようにする。プローブはできるだけ下のほうを持ち、指が出るくらいが良い。まずは上腕骨を短軸走査すると、下に半円形の上腕骨が描出される。低エコーにならず輝度がしっかり取れるように角度に気を付けること。末梢に移動すると上腕骨小頭、滑車が描出される。小頭の上には橈骨神経と動静脈、滑車の上には上腕動脈が描出される。小頭から長軸走査すると向かって右に柄杓をひっくり返したような形の橈骨頭が出てくる。左が上腕骨の小頭で、小頭の上には無エコーで硝子軟骨が描出される。橈骨頭の上には回外筋、橈骨神経が入るFrohse(フローセ)のアーケードがある。尺側にスライドすると、向かって左に尺骨の鉤状突起が見える。上腕骨の内側上顆、関節が出てきて尺骨の鉤状結節が出てくる。内側上顆と鉤状結節を結ぶ靭帯が内側側副靭帯だ。内側上顆が描出されたら、そこからピボット走査(プローブを扇状に回転させる)すると、内側側副靭帯が容易に描出できる〟と一連の動作を実演した。

その後、各県ごとに超音波観察装置での観察方法の実習が行われた。佐藤講師は受講者が描出する超音波画像をリアルタイムで確認しながら、描出のコツを詳細に指導した。
総括として‶以前よりも皆さん描出方法が上手くなっている。ただ良いところで止めようと思ってもどうしてもぶれてしまうことがある。患者さんに説明する際や画像を保存する際には必ず止めるという動作が必要になるため、練習を重ねていただきたい〟とアドバイスした。

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富永敬二匠の技伝承プロジェクト推進室長

最後に、富永敬二匠の技伝承プロジェクト推進室長が‶骨折・脱臼を処置できるのは医師と柔道整復師だけであるということを大事にし、柔道整復師が柔道整復師であるためにも、ひとりひとりが研究・勉強を重ねていかなければならない。骨折・脱臼の患者が来院された場合にもしっかり対処できる技術を身につけておく必要がある。そのためにも指導者の皆さんによる各地域での指導が重要だ〟と閉会の辞を述べ、終了となった。

 

 

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