menu

ビッグインタビュー 【新・柔整考③】 業界内外の声をお聞きする!

2023/10/01

近年、不祥事が相次ぎ混迷をきわめている柔整業界。その火中の栗を拾うかの如く、(公社)日本柔道整復師会の会長に長尾淳彦氏が就任した。そもそも長尾氏は、先見性に優れ、行動力と政治力は抜群の人物である。その長尾新会長に今後の道筋をお聞きした。

道は険しいが、具体的な策はある!! ~失墜した信頼を取り戻すために~
(公社)日本柔道整復師会 会長 長尾淳彦氏

(公社)日本柔道整復師会 会長 長尾淳彦氏

 

―長尾新会長に、皆さんダイナミックな改革を期待されていると思います。具体的に何をされようとしているかについて聞かせてください。

先人、そして我々の年代は、接骨院を営むことで家を建てたり、苦無く、子どもたちを育てることが出来ました。ところが、今の30代、40代の人たちはそれが出来るかというと現実的には難しい。今後はもっと堅実に柔道整復師という職業、業種が生き残ることが出来るようにするのが我々年代の役目です。

会長就任挨拶で日整の会報誌に以下の文を載せております。

「登る山(目標)を明らかにして腑に落ちる対策、対応を行う―柔整にとって今、何が一番大事なのかを考える―」

柔道整復師業界が長きにわたり存在してこられたのは、以下の5つの信頼と協調があったからです。

  • 患者さんである国民からの信頼と協調
  • 支払い側である保険者からの信頼と協調
  • 内閣をはじめとする都道府県、市区町村である行政からの信頼と協調
  • 業界内外の柔道整復師関連機関からの信頼と協調
  • 業界を構成する柔道整復師からの信頼と協調

患者さんである国民からの信頼と協調

柔道整復師は初検から治療に至るまでほとんど一人の施術者が対面で治療にあたり患者さんの持つ様々な背景因子にも適切に対応してきました。そして、症状の変化や治癒に至る過程でその人に合った治療方法を選択して対処してきました。
そうした意味からも昔から患者さんがこの先生なら身を任せられるという安心感から信頼を得てきました。
だからこそ今、「柔道整復師はこういうことが出来ます」「接(整)骨院ではこういう治療をこういう治療計画に沿って行います」「保険はこういう時に使えます」など柔道整復師側から正しく伝えることを行います。

支払い側である保険者などからの信頼と協調

柔道整復師が療養費を使えるようになったのは、「柔道整復師はきちんと治す」「柔道整復師は不正をしない」という信頼があったからです。療養費外の保険においても同様です。
全国健康保険協会、共済連、健保連や国保連合会、後期高齢者医療、労働局、自賠責関連とは対立関係ではなく、対話の機会を設けて、保険者などと施術者お互いが抱えている問題点を患者さんファーストで解決策を探っていくことが大切です。
保険者などに対しても「柔道整復師はこういうことが出来ます」「接(整)骨院ではこういう治療計画に沿って行います」を正しく広報しなければなりません。
療養費などの請求、審査、支払いの一体化と透明性を確保して、いまこそ厚生労働省、保険者、柔道整復師によって、腹(腑)に落ちる内容に裏付けられた柔道整復療養費の制度設計が行われ、国民に示す時期であると思います。
それには、柔道整復師の根本的な存在価値について真正面から向かい合い徹底的に腑に落ちるまで考えなければ打開できないと思います。
保険者などと真正面から向かい合い対話の機会を作り協調していきます。

内閣をはじめとする都道府県、市区町村である行政からの信頼と協調

行政側からの通知などの連絡に対して、施行前より周知を徹底して行いお互いの業務が円滑に遂行されることが大切です。国は日整、都道府県及び市区町村は都道府県社団が縦横の連絡網を密にして折衝や協議を行うのが望ましいと考えます。
今回の新型コロナウイルス感染症や物価高騰への補助金や助成金の案内や申請手続きも国、都道府県、市区町村と異なる対応が必要であり、上記のような連絡網が整備されることにより迅速に正しく会員へ周知されます。ネットワークシステムを構築していきます。
また、近年、各地で頻繫に起こっている自然災害に対する救護活動、各種スポーツ大会の救護活動、地域包括ケアシステムの介護予防分野での機能訓練指導においても「柔道整復師はこういうことを学び訓練してこういうことが出来ます」ということを行政側に正しく広報し、柔道整復師の活躍の場を広げます。

業界内外の関連組織からの信頼と協調

公益財団法人柔道整復研修試験財団、公益社団法人全国柔道整復学校協会、一般社団法人日本柔道整復接骨医学会と日整の関連4団体では、定期的な連絡調整会議を行い柔道整復師業界のガバナンスとコンプライアンスの徹底とチェックシステムを構築していきます。
講道館や全日本柔道連盟をはじめとする各種スポーツ団体との連携はこれまで以上に親密に行っていかなければなりません。
新聞、テレビなどのマスコミとも友好的信頼関係を構築して「柔道整復師」を広く深く国民に広報していきます。
接(整)骨院経営でお世話になっている医療機器関係、包帯や固定具などの衛生材料関係、レセコン関係などの関連団体、会社の方々ともより良い治療の助けとなり患者さんに有益となるようお互いが切磋琢磨していく必要があります。会員の皆さんの声を集約して定期的な懇話会を開催します。
政治関係では、自民党本部は日整政連、自民党都道府県連は都道府県政連がこれまで以上に惜しみない協力体制を構築して柔道整復師の地位の向上、療養費料金UPの力添えをいただくようにします。

業界を構成する養成施設の学生、勤務柔道整復師、施術管理者の柔道整復師からの信頼と協調

柔道整復師となる入り口である養成施設の学生、実務経験期間を含む勤務する柔道整復師、開業している施術管理者の柔道整復師である仲間、同志との信頼を得なければなりません。日整会員も日整会員外も柔道整復師業界を構成する仲間です。
全国約76000名の就業柔道整復師全員が学術団体(一般社団法人日本柔道整復接骨医学会)や政治連盟で纏まれるところに席を置いて自らの業界の在り方を議論して出た結論に向かって進まなければ業界は衰退します。
意見集約できる場や組織を作り、業界全体で目指すべき「柔道整復師像」を構築していきます。

最後に

柔道整復師、柔道整復術が現代社会に何故必要なのか?何故、保険(療養費)で治療を行うことが出来るのか?を国民を主体として自論だけでなく、他者にも分かる説明が必要です。
そうしない限り、業界を取り巻く環境は混迷を深め未来は混沌とし業界は混乱します。
それは泥濘の地に杭を打つ、乾いた砂漠の地に水を撒くという今は虚しい行為かも知れませんが真剣に深く考えてひとつひとつ具現化していかなければ業界は無くなってしまいます。
業界全体で動き出さなければ誰も助けてはくれません。しかし、業界内だけで出来ることはたかが知れています。国を巻き込んで国が介入できるような「柔道整復師業界再建案」を構築していかなければなりません。我々、柔道整復師がどのように社会に貢献するかを常に問わなければなりません。
願望やお願いベースではダメです。願望を成就に繋げるには並みに思ってはダメです。そうできればいいな程度の生半可な思いはダメです。すさまじく激しく必死で考えなくてはなりません。
目の前にある安易な安心よりも正しいと思える困難を選びましょう。
「柔道整復師が本当に大切にしたいものは何か」「大切にしたいことの為に今出来ることは何か」その問いの繰り返しが柔道整復師業界を今一度誇りを持てる業界に出来る術であると信じています。
私たちの年代は若い柔道整復師に誇りを持って仕事に励み、生活や子育てを両立できる職業として確立させる責任があります。
 「あなたの職業は何ですか?」と問われたときに堂々と「柔道整復師」と答えられる誇りある業界に柔道整復師全員でしていきましょう。

と述べております。

 

 
前のページ 次のページ

 

 

大会勉強会情報

施術の腕を磨こう!
大会・勉強会情報

※大会・勉強会情報を掲載したい方はこちら

編集部からのお知らせ

メニュー