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スペシャルインタビュー:大田区長・松原 忠義 氏

2016/02/01

大田区の人口は、約71万人。内、高齢者人口は約16万人で、高齢化率は約22.5%である(平成27年1月1日現在)。 大田区は、1984年8月に平和都市宣言、また2012年6月にはスポーツ健康都市宣言を行っている。

来たる2020年の東京オリンピック・パラリンピックを成功に導くため準備に余念がない大田区は、何より「地域力」が強い地域である。地域住民の情熱で更なる進化・充実していくことでますますの発展を遂げるであろう。あふれる叡智と辣腕の大田区長・松原忠義氏にまちづくりの原点と今後の抱負を話して頂いた。

 

地域包括ケアシステムを切れ目なく万全に構築し、情熱とパワーを結集して「共に信じあえる」まちづくりを行っています!
松原氏

大田区長
松原 忠義 氏

 

―日本の社会保障制度について松原区長のお考えをお聞かせください。

日本の社会保障制度は、乳幼児から高齢者まですべての国民が安心して生活するために幅広く実施されており素晴らしい制度であると思います。世界と比べると社会保障がこれだけ多面的になされている国は珍しいと思います。所謂ヨーロッパ、スウェーデン・デンマーク等の先進事例がいろいろ紹介されますが、やはり夫々の国によってやり方がいろいろ異なります。日本の場合、全般的に若い人からお年寄りまでかなり行き届いた施策をしていると思います。ただし、残念ながらもの凄い勢いで少子化と高齢化が進んでおり、深刻な課題に直面しています。国の推計では、2060年には、10人中4人が高齢者となり、出生数は現在の半分以下となるとしています。子どもや生産年齢人口が減少し、高齢者の割合が増えていくことが推測される中で、社会保障費の財源不足などが一層深刻化していくと思います。

大田区では、2060年を見据えた「人口ビジョン」と「総合戦略」を今年度中に策定し、長期的な人口構成の変化に対応できる持続可能な地域社会の実現を目指してまいります。子育て政策の充実、高齢者の健康づくりの支援など区民に一番身近な自治体として出来る取り組みを行っていくことが社会保障制度を支えることにも繋がると考えております。 そういう状況の中で、社会保障制度成り立たせるには2つあると思います。1つは、安心して産んで、育てて学べる環境を如何につくるか、この環境が作れたところは当然魅力が出てきますから、若い方が増えますので、お子さんも増えてきます。子どもが増えれば将来的に長続きする自治体になると思います。もう1つは、これだけ元気高齢者の方が多く、65歳以上の方の8割は元気高齢者です。その元気高齢者の方に対してもっと元気で寝たきりにならないようにやっていくには、所謂介護予防です。要するに地域包括センターの機能を如何に充実させるのか。特に東京では特別養護老人ホームを作るといっても土地もありませんし、建築費も嵩むため、需要に追いつけないので、そういったことがとても大事だと思います。今社会保障費が110兆円になり国家予算よりも大きくなってしまいました。

 

―人口減少社会に突入しました。超高齢化の進展と少子化に対する大田区の取組みを教えてください。また、予算規模等についても教えてください。

平成27年度当初予算について申し上げると、一般会計の予算規模は2,501億円で、前年度比が約81億円、3.3%の増額となっております。保育園待機児童解消に向けた対策強化など、産みやすく育てやすい環境を整備すると共に、高齢者の在宅生活を支える24時間サービスの拡充等、地域包括ケア体制の構築を推進し、区民の誰もがいきいきと暮らしやすいまちづくりを進めるための予算を計上しています。

因みに予算のおおまかな内訳を申し上げると、子育て・教育予算として、①待機児童解消に向けた取り組み―保育ニーズにあわせた保育施設の整備(36億9,113万円)②小学校における放課後児童の居場所づくり事業―学童保育事業及び放課後子ども教室事業(7億2,035万円)③計画的な小中学校校舎の改築―志茂田小・中学校等(18億7,395万円)となっております。また、健康・福祉・医療予算としては①さぽーとぴあ管理運営・第二期工事(4億3,262万円)②高齢者の在宅生活を支える24時間サービスの拡充―高齢者見守りキーホルダー、訪問サービス等(2,201万円)③生活困窮者自立支援事業―大田区生活再建・就労サポートセンター開設等(1億1,159万円)④介護予防事業の充実―いきいきシニアサロン等(1,574万円)⑤体力向上の推進―体育・健康教育授業地区公開講座・小学生駅伝大会等(545万円)⑥スポーツ健康都市宣言記念事業「第2回おおたスポーツ健康フェスタ」の実施(555万円)⑦地域医療施策に関する調査・研究(1,578万円)⑧がん検診等健康診査の推進(13億596万円)、等となっております。

 

―近年、社会保障費の財源が苦しくなっていることに加えて、高齢社会で医療費も介護費も大変な増加が見込まれ、それに伴い在宅ケアを含め包括型の医療ケアシステムの構築が求められております。大田区で現在取り組まれている地域包括ケアシステムの構築状況についてお聞かせください。

大田区では、住み慣れた地域で安心して暮らせることを目指して、地域包括ケア体制の構築に取り組んでいます。昨年度末に、平成27年度から29年度の3か年計画で、大田区の高齢者福祉計画と介護保険事業計画を合わせた『おおた高齢者施策推進プラン』を地域包括ケア計画と位置づけて計画の推進を図っているところです。大田区では地域包括支援センターのことを「さわやかサポート」と称していますが、その「さわやかサポート」が核になっています。ご承知のとおり「さわやかサポート」で行うサービスというのは、「医療・介護・介護予防・住まい・生活支援」の5つが地域包括ケアの主たるサービスで、適切かつ円滑に受けることができる体制を目指し、今果敢に取り組んでおります。そういった中で、柔道整復師会大田支部の先生方には介護予防事業として高齢者の方々のための体操教室の講師としてご協力をいただいており、このような介護予防のための取組みも地域で安心して暮らせることを目指す地域包括ケアを支えていく極めて重要な要素だと思います。そういうことを頑張ってやっていただいている柔道整復師会の先生方を有難いと思っています。

大田区政の2本柱の1つは「地域力」であり、もう1つは「国際都市」ということです。何故なら大田区には羽田空港がありますから、羽田空港を拠点に幅広い展開を目指していこうということですが、「地域力」と「国際都市」は乖離するものではなく、実は表裏一体なんですね。先に申し上げた少子化と高齢化が同時に進んでいる中で一番大切なのは、問題を放置しておくと人口がどんどん減っていきます。政府も1億人を維持しようということで一生懸命やっている訳ですが、中々難しい面もあります。昨今、例えば「ゴミ屋敷」・「空き家」・「孤独死」等、様々な問題が出てきておりますが、我々行政だけでは見守り体制がとても困難になっている状況であり、「地域力」が物凄く求められている訳です。

「地域力」というのは、他の自治体でも取り組みが始まっておりますが、中でも大田区は最初のほうで、元々阪神淡路大震災で出てきた言葉です。地域住民みんなで助け合わないと復興できませんから災害が最も「地域力」を必要とします。高齢だからといって引っ込んではダメです。つまり、周りが引きこもらないようにしてあげることです。新聞配達の人にも、郵便物がたまっていると見てあげるなど、様々な形で協定を結んでいます。

また私ども大田区は、「地域力」を〝地域力とは区民一人一人の力を源として自治会・町会・事業者・団体・NPOなど様々な主体が持っている力、それらの相互及び区との連携・協働によって生まれる力を含んだものであり、防犯・防災・福祉・子育て・教育・産業・環境・国際交流・まちの魅力づくりなどを行う。その結果、多様な地域の課題を解決することによって魅力ある地域を創造していこう〟と定義しており、この定義が大田区の考え方そのものです。従って、福祉の問題や健康の問題も、すべて「地域力」の大事な核なんですね。そういった意味では柔道整復師の先生方の力というのはまさに地域力の源でもあるという風に我々は考えております。

大田区の「さわやかサポート」では、高齢者見守りコーディネーターを配置して、様々な活動、例えば、いま全国的に人気になっている「高齢者見守りキーホルダー」の普及事業を展開しており、見守りキーホルダーは区長が1番ということで、私自身いつも身につけています。認知症の方が何所かで家に帰られなくなった場合、杖にホルダーがつけてあると連絡先の「さわやかサポート」が記載されていて、そこに問い合わせをすると個人情報なので配慮を要しますが、番号でその人の氏名・住所等全部分かるようになっています。また「見守り支え合いネットワークづくり」や社会福祉協議会とのネットワーク等も作らせて頂いております。そういう形で、みんなで支え合う自主的な取り組みが行われており、区内の商店街或いは事業者等にも高齢者の見守りに取り組んで頂いて、地域の力を結集して共に支え合う地域を作っていこうと推進している真っ最中です。

 

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