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第17回柔道整復療養費検討専門委員会 オンラインで開催

2020/04/30

令和2年4月22日(水)、全国都市会館第1会議室(東京都千代田区)において『第17回柔道整復療養費検討専門委員会』(以下、検討専門委員会)が開催された。なお、今般の新型コロナウイルス感染拡大の状況に鑑み、本検討専門委員会はオンライン会議にて開催され、委員の多くが遠隔地より出席した。

【 配布資料 】

本検討専門委員会では、次回柔道整復療養費改定についてと、これまでの柔道整復療養費検討専門委員会の議論の整理の各項目の状況等についてが主な議題となった。

 

1. 柔道整復療養費の改定について

まず厚生労働省から、再検料の毎回算定等や明細書交付の義務化と評価、初検時相談支援料の要件の強化と評価など、前回の専門委員会において挙げられた意見を踏まえ、令和2年度の柔道整復療養費改定について事務局案が提示された。(※事務局案の詳細はこちらをご覧ください

これに対し、各委員より意見が挙げられた。

施術者:
できれば再検料を加えていただきたかった。次回改定では改定率は医科の半分ということではなくそれを超えて、柔道整復師が生活していけるような改定にしていただければと思う。
保険者:
初検料及び初検時相談支援料の算定(参考資料1)について、現行では「~留意すべき事項 等をきめ細やかに説明し、その旨施術録に記載した場合に~」とあるが、改正案では「~留意すべき事項等をきめ細やかに説明した場合に~」とされている。記載を変えたのは何故か?また、今回追加された事項は受領委任のなかでも重要な説明事項だと認識しており、施術所によって差異があってはならない。そのため、疑義解釈を出してもらいたい。
事務局:
施術録に記載する事項をわかりやすくするという趣旨でこのように記載した。算定基準の留意事項として示しているものであり、算定要件になるものと認識している。疑義解釈については質問が上がった際に作成するかどうか検討したい。
保険者:
申請書への署名の趣旨については、施術者に受領を委任するための署名という以上に、患者が療養費支給申請書の内容を確認するということに意味があると考える。
事務局:
基本的には施術内容を確認いただいて署名いただくという位置づけにはなるが、その月の間にいつまで来られるかわからない場合もあることから月のはじめに署名をいただくこともある、ということで今までやってきていると認識している。
保険者:
往療料の包括化については、あはきと扱いを合わせていただきたかった。あはきについては現行では往療 2,300 円、4 ㎞超で2,700 円とされているが、今後完全包括化される見通しだ。柔道整復も次回改定時に完全包括化をお願いしたい。
施術者:
往療については、あはきが慢性を扱っている一方で、我々は真に安静が必要な患者であるから往療を行っている。そのため4kmを超える往療はほとんどないと思われる。

 

様々な意見が挙げられたものの、最終的には事務局案が承認されることとなった。

 

2. 柔道整復療養費検討専門委員会の議論の整理の各項目の状況等について

続いて、柔道整復療養費検討専門委員会の議論の整理の各項目の状況等について、厚生労働省よりこれまでの議論の内容と今後の方向性や検討が必要とされる事項について説明があり、それに対し意見交換が行われた。

 

患者が施術・請求内容を確認する方法について

柔道整復療養費は年々減少しており、施術者のコストなどを考慮すると、現行発行されている領収書または明細書を活用し、負傷部位を追加するなどして、領収書または前月分の明細書のどちらかを発行することができないか。

保険者:
不正がどこで起こっているのか今一度理解してもらいたい。患者が請求内容を確認できていないことが不正の温床になっている。
施術者:
患者には負傷部位などについて説明したうえで、だから保険適用となるということも事前に説明している。また、不正対策のために施術管理者の要件強化や柔整審査会の権限強化などを既に実施しており、さらに電子請求のモデル事業も早期実現しようと動いている。これらの結果を見てから判断していただきたい。
有識者:
柔道整復療養費は基本的に患者に給付されるものであり、柔道整復師にされるものではない。患者が請求内容を知らないということはあり得ない。しかし実際は、初回来院時に白紙の申請書に署名するというパターンがあり、これはその原則を踏みにじっていると考える。
事務局:
署名の趣旨については患者に請求内容を確認いただいてから署名いただく、またその受領を委任するという趣旨で署名いただくということが基本になるが、同月中にいつまで来院されるかわからない中で、請求のために署名をしてもらうという関係上、事前に署名をいただくというケースもあり得ると考えている。

 

電子請求に係る「モデル事業」の実施

電子請求については、実務的に整理が必要な項目が多く存在するため、実務者会合などで検討を行うこととしてはどうか。

施術者:
モデル事業の実施について、手を挙げる保険者と審査支払機関を募って、請求側・受け取り側を交えて課題を解消して、運用方針などの指針を早急に固めて、秋頃からスタートしたい。
保険者:
オンラインなのか電子媒体なのかといったことも決まっておらず、電子請求にかかる費用についても検討しなければならない。保険者ではマイナンバーカードの活用を推進しており、保険証の代わりとすることも検討している。こういった環境の変化の中で、電子請求のモデル事業を行っても意味がないし、行うにしても将来の方向性を示さなければならないと考える。

 

支給申請書における負傷原因の1部位目からの記載について

柔整審査会(面接確認委員会を含む)の状況調査(29,30,31年度)について、令和2年度に状況調査を行う予定。

保険者:
今回の改定には盛り込まれておらず非常に残念。1部位の施術について健保組合が行った患者照会のうち、1部位でも不正請求を行っていたのは約3割にも及んでいたという結果がある。こういったエビデンスを出して要求しているにもかかわらず、なぜ取り入れられないのか。
有識者:
接骨院からの支給申請書をみると整形外科では見たこともないような負傷原因が記載されていることや、両肘の同時負傷などどう考えても不自然な請求なのに2部位であるから負傷原因が記載されていない、などのケースがあることから、1部位目からの記載が必要だと考える。

 

問題のある患者に対し、保険者において償還払いしか認めない権限を与えることについて

柔整審査会(面接確認委員会を含む)の状況調査(29,30,31年度)について、令和2年度に状況調査を行う予定。また、③判断に迷う事例の中で併せて検討してはどうか。

保険者:
柔整審査会で審査を行っても問題のある患者は出てこない。保険者の裁量で「問題がある」と考える患者については受領委任から外すということを認めていただきたい。

 

復委任について

昨年末に、大阪に事務所がある接骨院グループの一部店舗が事実と異なる療養費を請求していた疑いがあるとして報道された。このグループ内の整骨院の請求は、関連の請求代行会社が取りまとめて提出する仕組み(復委任)であったと報道されていることから、復委任の在り方の検討を進める必要がある。

施術者:
この検討専門委員会の最大の目的は柔道整復療養費から不正を無くすことにある。このような団体があることで業界全体が悪く取り上げられることは真面目に施術を行う柔道整復師にとっては非常に不幸であり、放置できる問題ではなく復委任の取り扱いについては三者で協議しなければならないと考えている。
保険者:
施術者側と考えは一致している。このまま放置しておいてはいけない。

 

柔道整復療養費の支払い方法について保険者裁量制の導入

あはき療養費に受領委任制度を導入したときのあり方、保険者裁量で受領委任払いにする、 あるいは償還払いにするという選択ができる仕組みが導入された。受領委任の最大のメリットは、行政が指導監査をできるところにあるが、今までの状況を見ると、行政の指導監査が実態として機能していない。あはき療養費についても受領委任制度が導入された上で保険者の裁量になった今般、不正請求に対応できる償還払いを保険者が選択できる仕組みを次回の検討専門委員会で新たな課題として入れていただきたい。(保険者意見)

保険者:
患者が請求内容を確認できる仕組みが構築できなければ、不正は絶対に無くならない。償還払いであれば患者が施術内容を記載して、領収書を添付して申請すれば不正は防げる。何年議論しても仕組みを構築できないのなら、償還払いに戻すしかない。

 

 

最後に、健康保険組合連合会理事の幸野庄司委員が〝議論が紛糾して何の解決にもならない。受領委任の最大のメリットは行政の指導監査ができるというところにあるが、現在の状況を見ると指導監査が機能していないばかりか、受領委任制度を悪用した悪質な請求団体による大規模な不正請求もあった。この委員会には保険者として様々な要望を出してきたが、同じやり取りを繰り返すばかりで議論は全く進んでいない。我々は最低限、患者が請求内容を確認する仕組みを構築してほしいと主張してきたが、それさえも実現していない。「患者が請求内容を確認することなく署名することもやむを得ない」と行政が判断する以上、受領委任の公平性は担保されない。施術者との信頼関係も踏みにじられていると感じている。この状況に鑑みれば、受領委任協定の信頼基盤が崩れ、受領委任制度は今後も改善する見通しが得られないと考える。公的保険財政が崩壊の危機を迎えるなか、これ以上療養費の不正請求を放置することはできない。保険者で対策を強化していくしかないと判断した。これまでの議論を踏まえ、健保連としては、健保組合組合会の審議の決議を経て、償還払いに変更を希望する健保組合が現れた場合はこれを容認し、必要な手続きを行っていくこととする〟と表明した。

 

これに対し施術者側からは反論が噴出し、施術者・保険者間の溝はさらに深まる形となった。

次回検討専門委員会の開催日程は未定となっている。

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