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第19回社会保障審議会医療保険部会柔道整復療養費検討専門委員会 開催

2022/02/09

令和4年1月31日(月)、全国都市会館第3,4会議室(東京都千代田区)において、第19回社会保障審議会医療保険部会柔道整復療養費検討専門委員会(以下、検討専門委員会)が開催された。新型コロナウイルス感染拡大防止への配慮から、オンラインによる開催となった。

今回は、「柔道整復療養費の適正化について」を議題とし、「明細書の義務化について」「患者ごとに償還払いに変更できる事例について」「療養費を施術管理者に確実に支払うための仕組みについて」の3点について議論が交わされた。また、今回は参考人として、日本労働組合総連合会(連合)総合政策推進局長・佐保昌一氏が出席し、明細書発行の義務化と患者ごとに償還払いとできる事例に関して、被保険者の立場から意見陳述を行った。

 

厚生労働省事務局による説明

令和3年8月6日の柔整療養費検討専門委員会において、柔道整復療養費の適正化について議論を行い、「明細書の義務化」及び「不適切な患者の償還払い」については、年明けを目途に施行することに向けて調整を行い、柔整療養費検討専門委員会で議論を行うことに賛同が得られた。「療養費を施術管理者に確実に支払うための仕組み」については、令和4年6月までに方向性を定めて、令和6年度中を目途に施行を目指すという方向に賛同が得られた。

 

明細書の義務化について

現状では患者から施術に要する費用に係る明細書の発行を求められた場合にのみ、明細書を交付することとされているが、施術に要する費用に係る明細書を患者に手交することは、業界の健全な発展のためにも必要であることから、明細書の発行を義務化してはどうか。

明細書に記載すべき内容は、「柔道整復師の施術に係る療養費について(通知)」(平成22年5月24日保医発0524第3号)で定められている内容とする。
明細書発行にあたっては、明細書発行機能があるレセコンを使用している施術所は、患者から一部負担金を受けるときは、患者本人から不要の申し出があった場合等の正当な理由がない限り、明細書を無償で患者に交付しなければならないこととする。明細書発行機能がないレセコンを使用している施術所、あるいはレセコンを使用していない施術所は、従前どおり、患者から明細書の発行を求められた場合には、明細書を患者に交付(有償可)しなければならないこととする。なお、領収証及び明細書は、一部負担金の支払いを受けるごとに発行することとする。
ただし、施術所の負担軽減措置として、「領収証兼明細書」の標準様式を定めることとし、領収証に一部負担金等の費用の算定の基礎となった項目ごとに明細が記載されている場合は、明細書が発行されたものとして取扱い、別に明細書を発行する必要はないこととする。

 

患者ごとに償還払いに変更できる事例について

現状では不正が「明らか」な患者及び不正の「疑い」が強い患者であっても、引き続き受領委任払いとされている。その後の対応方針として、不適切な患者の償還払いについては、不正が「明らか」な患者に加え、不正の「疑い」が強い患者も対象とする。ただし、真に不適切な患者に対象を絞る観点から、「償還払いとする範囲」、「償還払いとするプロセス」について年末までに検討することとしていた。

患者ごとに償還払いに変更できる事例として、自己施術に係る療養費の支給申請が行われた柔道整復師である患者、自家施術を繰り返し受けている患者、保険者が繰り返し患者照会を行っても回答しない患者、複数の施術所において同部位の施術を重複して受けている患者、その他施術が療養上必要な範囲及び限度を超えている可能性のある患者については、保険者は被保険者への事前の周知や「償還払い注意喚起通知」の送付を行ったうえで、患者への確認を行う。その結果、当該患者について、状況が改善されない場合は保険者が受領委任の取扱いを中止し、当該患者に対する施術を償還払いに変更できることとしてはどうか。

 

療養費を施術管理者に確実に支払うための仕組みについて

受領委任の取扱規程に基づく療養費の請求は、各施術管理者から各保険者に対して行う必要があることから請求ルートが多数かつ複雑になっている。そのため、施術管理者の中には、当該請求事務を請求代行業者に行わせているケースがある。しかし請求代行業者による不正事例により、療養費が施術管理者に支払われないことがある。対策として、公的な関与の下に請求・審査・支払いが行われる仕組みを検討するとともに、併せてオンライン請求の導入を検討してはどうか。

検討事項として、療養費の請求・審査・支払手続き、オンライン請求の導入、オンライン請求以外の請求方法の取扱い、費用負担、実施スケジュール等について議論し、方向性を定めることとしてはどうか。

 

参考人による意見陳述

2010年度より、保険医療機関での診療明細書の無料発行が原則義務化された。明細書の発行により、患者の納得と安心に繋がり、医師との信頼関係の構築に寄与しているものと思われる。現在すべての医療機関で明細書の無料発行が行われているわけではないが、速やかにすべての医療機関で行われることが重要と考えている。高齢人口が急速に増加する中、歴史と伝統のある柔道整復術には多くの期待が寄せられている。ぜひ柔道整復においても、明細書の無料発行の義務化を速やかに推し進めていただきたい。また明細書発行に関し、患者へのアンケート調査を行った結果、「今後明細書が必要だと思うか」の問いに対し、約7割が必要と回答した。さらにその理由として「受けた医療の内容を知ることができるのは当然の権利だから」と回答した人が77.5%、「医療費の明細を知るための情報源になるから」と回答した人が54.5%となった。

不適切な患者の事例については、被保険者の大切な保険料が不適切に使われることがないよう、今回議論されているように患者ごとに受領委任払いから償還払いに変更できるようにすることはやむを得ないと考えている。運用のルールについては明確にし、透明性が確保された中で判断できるようにして患者が不利益を被らないようにする必要がある。

 

主な意見
明細書の義務化について

施術者側:

  • 我々の業界はコロナ拡大以前から、働き方改革等で経営がひっ迫し、従業員を雇い入れることもできない状況にある。そのため一人で施術所を経営している施術者が多数を占めている。医療機関のように受付に専従の事務員をおいて明細書の発行を行うことは不可能。義務化するのであれば、明細書が発行できるレジスターの導入やレセコンから印刷する作業にかかる費用についても算定できるようにしていただきたい。
  • 平成22年に領収書の発行が義務化された際に、被保険者に対し保険者が外部委託している業者から「領収書を送ってくれ」と電話がかかってきたという事例もあった。明細書発行について反対はしないが、ルールを守っていただく必要がある。
  • 明細書発行の目的は患者本人が請求内容を確認することと認識している。明細書発行機能があるレセコンを使用している場合、患者のために明細書を無償で発行することはやぶさかではない。
  • 参考人意見から被保険者の7割は明細書が必要だと感じているとわかったが、残り3割については「会計時に待たされるのが嫌だ」という意見もある。だが医療提供者としての責任があると感じている。保険者にも協力をお願いしたい。

保険者側:

  • 参考人の意見にもあったように、患者は発行が必要だと考えているという事実がある。施術者側は「患者に要らないと言われる」と言うが、そうではなく自分の受けた施術を確認してもらうためにも発行すべき。
  • 適正な医療保険制度を維持するためにも、明細書の発行は必要だと考える。我々保険者も患者への周知徹底が必要だと思う。規定を明確にして、それに則って運用していくということを徹底しないと絵に描いた餅になる。実効性のあるレベルにする必要がある。
  • ひとり施術者で明細書発行に対応できないという意見もあるが、レジスターで印刷する領収書兼明細書の案まで出して譲歩している。発行できない理由はないだろう。
  • 健保組合等に対しては研修を行うなどして「領収書の提出がないことのみをもって不支給とすることはない」と周知徹底している。明細書についても、点検事業者や審査のために発行するのではなく、患者が自ら施術内容を確認するために発行していただくものと考えている。

事務局:

  • 患者に施術内容・請求内容をきちんと知っていただくためにも、明細書発行は必要だと考えている。施術者側から「施術者の負担を軽減してほしい」との意見があったため、今回領収書兼明細書という様式を示している。発行に際して料金の算定も必要ではないかとの意見もあったが、料金改定の際に改めて議論いただきたい。また、患者照会に関して適切な実施が必要との意見については、「柔整療養費の被保険者等への照会について」(平成30年5月24日事務連絡)を改正し、患者照会において、明細書の提出を求め、明細書の提出がないことのみをもって不支給決定をすることは適切ではないこと等を周知していきたい。

 

不適切な患者の償還払いについて

施術者側:

  • 事例として「保険者が繰り返し患者照会を行っても回答しない患者」が挙げられているが、回答が無いからといって不適切とするのはいかがなものか。保険者から委託されている調査会社にも問題があるように思う。回答しない患者に対しては保険者が直接問い合わせるなどすれば解決できるのではないか。むしろ償還払いにするよりも、面接確認委員会に情報提供していくほうが早いように思われる。
  • 我々柔道整復師は人間の自然治癒力を最大限に生かした施術を行っているため、患者によって対応も異なる。償還払いに変更することは、柔道整復の受診抑制や患者の自由選択を阻害することにつながるのではないかと危惧される。
  • 「不正が疑われる患者の例」が挙げられているが、疑われるというだけで償還払いとされるべきではない。不正が疑われるものについては面接確認委員会にて確認し、地方厚生局に情報提供するという仕組みがあるのだからそれを活用すべき。
  • 柔道整復師が怪我をして、自院や同一法人内の施術所にかかりたいという場合もあると思う。その場合は施術者も協会けんぽや国保等の被保険者かと思うが、自家施術と認識されるのか。
  • 患者照会を複数回同じ書式で行うのは、丁寧に確認しているとは言えない。患者が答えやすく、わかりやすい書式にすべき。

保険者側:

  • 事務局案に賛同する。長期・頻回の定義についても、3ヶ月を超える施術、月10回以上の施術というのは妥当だと考える。不支給にすると言っているわけではなく、重点的に審査するために償還払いとしたい。
  • 現在、47都道府県に柔整審査会をおいて審査し、さらに疑義があるものについては重ねて議論を行っている。今回さらに深堀して、それでも不正が疑われる事例については償還払いとすることに賛成したい。
  • 自己施術や自家施術は認められない。
  • 償還払いの対象となる患者については事務局案でかなり絞られているように感じる。保険者が繰り返し患者照会を行っても回答しない患者というのも数は少ないが一定数いるのも事実。なかなか今までは対応手段がなかったが、償還払いにするというのは理にかなっていると思われる。
  • トラブルが起こらないようにするためにも、受領委任規定の中で手続きを明確にしておくことが重要だと考える。

 

療養費を施術管理者に確実に支払うための仕組み

施術者側:

  • 保険者側とも手を取り合って実現していきたい。協定・契約に沿って進めていただくのが一番と考える。
  • 受領委任は患者が施術管理者に対し受領を委任しているのであり、請求代行業者等の患者に委任されていない者が受け取るべきではない。請求代行業者が悪いというわけではないが、きちんと運用されれば問題ないのではと思われる。
  • 現行の取り扱い規定では、支給申請書に記載された支払機関に支払うということになっており、施術管理者でなければならないという規定ではない。規定に則っていてもホープ接骨師会のような事案が出てきてしまったということをご留意いただきたい。

保険者側:

  • オンライン請求に向けて、事務処理のシステム化などに相応の時間がかかるものと思われる。またオンライン請求とするのであれば、効率化のためにもすべての施術者にオンライン化していただく必要があるのではないか。
  • 開発等にかかる費用負担の問題もある。療養費受領委任払いが施術者・保険者・行政の三者で締結・運用されていることを考えれば、費用負担は公平に分担するのが当然と考える。費用対効果の高いシステムを構築する必要がある。
  • 受領委任取り扱い規定が適切に運用されているのかというところが一つの課題と考える。また、オンライン請求を進めるにあたってどんな問題・課題があるのかをもっと詰めていく必要がある。
  • 事務局が示す検討スケジュールについて、令和4年6月には方向性を取りまとめるとされている。課題は山ほどあると思うが、どの程度の具体性をもって取りまとめるのか。

事務局:

  • 方向性の取りまとめについては、今回検討事項(案)にてかなり細かい部分まで提示した。これらすべてを6月までに決めるのは困難と考えており、細部については追って詰めていくというように段階的に検討を進めていく必要があると考えている。

 


 

今回の検討専門委員会の議論の取りまとめとして、明細書発行の義務化については、施術者側から発行にかかる費用について料金を算定できるようになることが条件との主張があり、療養費改定の際に改めて議論されることとなった。不適切な患者の償還払いについて、また療養費を施術管理者に確実に支払うための仕組みについては、今後も引き続き議論することとした。

次回検討専門委員会の開催日程は未定となっている。

 

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