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第20回社会保障審議会医療保険部会柔道整復療養費検討専門委員会 開催

2022/03/07

令和4年2月24日(木)、日比谷国際ビルコンファレンススクエア(東京都千代田区)において、第20回社会保障審議会医療保険部会柔道整復療養費検討専門委員会(以下、検討専門委員会)が開催された。新型コロナウイルス感染拡大防止への配慮から、今回もオンラインによる開催となった。

前回に引き続き、今回も「柔道整復療養費の適正化について」を議題とし、「患者ごとに償還払いに変更できる事例について」「療養費を施術管理者に確実に支払うための仕組みについて」の2点について議論が交わされた。また、今回は審査支払機関の立場としての意見を聴取するため、国民健康保険中央会常務理事である中野委員、社会保険診療報酬支払基金の須田参考人の2名より意見が述べられた。

 

患者ごとに償還払いに変更できる事例について
厚生労働省事務局による説明

現状では不正が「明らか」な患者及び不正の「疑い」が強い患者であっても、引き続き受領委任払いとされている。その後の対応方針として、不適切な患者の償還払いについては、不正が「明らか」な患者に加え、不正の「疑い」が強い患者も対象とする。ただし、真に不適切な患者に対象を絞る観点から、「償還払いとする範囲」、「償還払いとするプロセス」について年末までに検討することとしていた。

前回の検討専門委員会において、「不正が疑われる段階で患者を償還払いとすることは不適当ではないか」「 自家施術の中には、適切に施術が行われ、適切に療養費が請求されているものもあるのではないか」「患者の症状・経過は様々であり、一律の期間や回数で償還払いに変更することは適切ではない」等の意見が出たことから、事務局において受領委任協定・契約の改正案を作成した上で、検討専門委員会で議論を行うこととなった。

<「柔道整復師の施術に係る療養費について」の改正案>

 

主な意見

施術者側:

  • 保険者が不適正な手続きによって患者を償還払いとした例が出てきた場合を想定し、保険者への罰則規定も設けるべきではないか。罰則を設けられないのであれば、厚生労働省から保険者に対し、取り扱いに関する明確な文書を前もって出していただきたい。
  • 自家施術であっても、施術者が勝手に請求を行っていて家族が認識していないなどのケースも考えられ、「不正が疑われる」という段階で償還払いとしてしまうのは性急ではないか。
  • 資料には、患者ごとの償還払いへの変更については患者に着目しているものであるとの記載がある。一方で、償還払いへの変更対象となり得る患者について、改正案には「適切な時期に患者に分かりやすい照会内容で繰り返し行っても、回答しない患者」との記載があるが、患者照会は施術所に着目しているものと考えられるため、さらなる検討が必要ではないか。
  • 償還払いとされた患者に異議がある場合も考えられる。厚生労働省が保険者との間に入り、申し立てを行う際の窓口を設置するなどの対応が必要。
  • 償還払い注意喚起通知の標準様式については「形式を変えてはならない」等、厳格化すべき。
  • 例えば骨折の場合、初月であれば頻回になるのも当然であり、長期・頻回自体が悪いわけではない。1度の請求を見て判断するのではなく傾向を見て判断していただきたい。
  • 患者の権利を奪うようなことがないよう慎重に検討すべき。

保険者側:

  • 前回は3ヶ月を超える長期施術、月10回以上の頻回施術に関しても償還払いに戻すという具体的な提案がなされていたが、今回は対象患者の基準については引き続き検討する、とされており承服しかねる。長期・頻回にあたる場合でも即償還払いとするわけではなく、施術者や患者に治療計画や状況等を確認して、個別に確認していく必要があると判断した場合に償還払いとするはずであり、必要な施術を排除してしまうことにはならない。
  • 長期・頻回については照会を行い、中身を丁寧にヒアリングして、審査会に諮ったうえで支給が妥当かどうかを判断する。一律の期間や回数で償還払いに変更するわけではない。
  • 償還払いに変更するための各保険者の審査のあり方等については、しっかりとした仕組みを構築するためにも施術者側との共通認識を持って明確にしていくべき。

活発な議論が行われたが、座長より〝全体的な枠組みについては概ね賛同が得られているという印象を受ける。どう扱っていくかについてはこれまで相当議論を重ねてきており、柔道整復療養費の適正化を一歩進めるという意味でも座長一任で施行させていただければ〟との提案があり、特段異議が無かったため、事務局案をもとに進められることとなった。

 

療養費を施術管理者に確実に支払うための仕組みについて
厚生労働省事務局による説明

受領委任の取扱規程に基づく療養費の請求は、各施術管理者から各保険者に対して行う必要があることから請求ルートが多数かつ複雑になっている。そのため、施術管理者の中には、当該請求事務を請求代行業者に行わせているケースがある。しかし請求代行業者の不正により、療養費が施術管理者に支払われないことがある。対策として、前回の検討専門委員会にて、審査支払機関からの意見聴取を行った上で、検討スケジュールに沿って引き続き議論を行うこととなった。

<検討スケジュールおよび検討事項>

今回は審査支払機関からの意見聴取を行い、各論として目的・効果、療養費の請求・審査・支払い手続き等について、事務局案をもとに議論を行う。

 

主な意見

施術者側:

  • オンライン請求で最も懸念されるのは患者の自署の取り扱いと紙での支給申請の扱い。自署はオンライン資格確認として、カードリーダーでの暗証番号入力で代えられると考える。紙での申請については経過措置期間を設けず、オンライン請求のみとしていただきたい。
  • スケジュールでは7月から施行に向けた議論を行うとされているが、1年や2年ではスタートすることはできないと思われる。現状の中でできることから検討していくべき。
  • 「療養費を施術管理者に確実に支払うための仕組み」としては、柔道整復療養費を法制化して療養の給付とするか、もしくは健康保険法第87条から独立した条文とするなど、主体を施術者とする仕組みも今後検討すべきではないか。
  • 取扱規定では「支給申請書に書かれている金融機関に振り込むこと」とされている。つまり施術管理者個人に振り込まれても、施術管理者が運営している法人口座に振り込まれても、施術管理者が委託した請求代行業者に振り込まれても問題ないことになる。現状の課題として「請求代行業者は受領委任規程の当事者ではないため、地方厚生(支)局長などによる指導・監査等のチェック機能が働かない」とされているが、請求代行業者を地方厚生(支)局に登録するような仕組みとしてはどうか。
  • 反社会的勢力に対し支払うような危険性を排除するためにも、振込先についても調査する必要があると考える。保険者としては施術管理者個人に支払うと費用が嵩む可能性もあるが、危険を回避するためにも検討していただきたい。

保険者側:

  • 関係者の手続き・業務・システムの見直しのスケジュールについては、療養費に関するシステムが搭載されている国保総合システムは、令和6年度に更改が予定されており、既に開発に着手しているためそこに新たなシステムを組み込むことは不可能。スケジュールありきではなく、合理的なスケジュール設定が必要。
  • オンライン請求については、業務効率化の観点から、申請書に記載されたすべての項目がデータ化されていることが必要。経過措置期間を設けることでオンライン請求と紙による請求が混在してしまうと、非効率な状態が続き、電子化のメリットが損なわれると危惧している。
  • 療養費は保険者がやむを得ないものと認めるときに、療養の給付の補完として支給することができるものであり、療養の給付と同様ではない。療養費の請求・審査・支払手続き案では「保険者は、療養費の請求受付・審査・支払いを審査支払機関に委託することを基本とする方向で検討してはどうか」とされているが、あくまでも公的機関に審査支払業務を委託するだけと捉えている。現在と考え方が異なるシステムが構築されたり、委託の費用対効果が現在よりも悪くなったりする場合は委託しないという選択肢もあるということを明言する。

有識者:

  • 療養費は患者に支払われるものと考えている。その原則を曲げるような仕組みにすべきではない。
  • オンライン請求については、医科においてもかなり長い時間苦労したが、オンライン請求を開始した当時と現在では基盤整理の様子が変わってきている。決定的に変わったのはオンライン資格確認が整備されたということだが、これも完ぺきではなく、必ずしも十分なセキュリティがあり安心して使えるというわけではないと認識している。国として施策を進めていくのであれば、個々の施術所が参加できるよう財政面を含めた具体的支援を検討する必要があると考える。

療養費を施術管理者に確実に支払うための仕組みについては、今後も引き続き議論することとされた。

 

 

次回検討専門委員会の開催日程は未定となっている。

 

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