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富士フイルムグループ健康保険組合・川岸嘉啓氏に聞く!

2014/08/01

超高齢化が急速に進展する中、ますます厳しさを増す健康保険組合。どういった施策を打つことで、今後も長きにわたって日本人の命を守っていくことが出来るのか?国民全てが健康で暮らし続けるために何を如何すれば良いのか?!果たして問題解決の糸口は何所にあるのか?富士フイルムグループ健康保険組合、若手気鋭の川岸氏にいろいろお話をうかがうことが出来た。

 

療養費の適正化は、受診ルールの正しい理解と受診行動の確認が最初の一歩です!

富士フイルムグループ健康保険組合 課長 川岸 嘉啓 氏

―先ずはじめに貴保険組合の設立の経緯と理念についてお聞かせください。

母体会社の設立経緯からお話しますと、富士フイルム㈱(旧:富士写真フイルム㈱)は、昭和9年1月20日に創立されました。親会社の大日本セルロイド㈱が映画フイルム事業を分離、新会社として設立させることを決めました。健保組合の設立経緯については、富士フイルムグループ健康保険組合(旧:富士写真フイルム健康保険組合)が昭和15年2月1日に設立され、被保険者数1,495名からのスタートでした。また新会社設立当初は政管健保に属しており、早く親会社のように健保組合を設立したいという強い願望がありました。昭和14年当初従業員が1,000人を超えた頃からその気持ちが更に強くなったようで、当時の社長の後押しもあり認可申請に向け動き出しました。認可後、事務体制を整えるため神奈川県保険課より職員を招き、初代事務長をお願いしています。今年で、75年目に入りました。現在の被保険者数は54,800人、被扶養者数は61,500人で、事業所数は93を数えます。

理念として掲げてはおりませんが、健保組合とは加入者の健康と心豊かな暮らしを支えることが第一義であると思っています。ややもすると社会保険の窓口業務に終始してしまう業種だけに、積極的に加入者や事業主とのコミュニケーションを図ろうと心掛けています。業務運営は「確実な保険給付」、「健康づくりサービス」、それらを実現させるための「積極的な情報提供」を柱とし、その礎となる「健保財政の安定化」に重点を置いています。

 

―川岸課長は、柔整療養費において何が問題であるとお考えでしょうか?

「厚生労働省保険局からの通知・通達の解釈にグレーゾーンが存在する」ことが問題と思っています。

よく話にあがる柔整の保険適用範囲で急性・亜急性の考え方は、保険者側は整形外科に基づいた解釈をしているため、柔整師側の考え方を何時になっても理解できない状態にあります。今の制度はグレーゾーンが広すぎるため、解釈が異なり保険者・整形外科医と柔整師の対立の元になっているという気がします。柔整レセの傷病名で〝日本には、捻挫という症状が何故多いんだ〟とおっしゃる保険者がおりますけれども、捻挫や挫傷などでしか請求できないようになっているので、そう書かざるを得ないのだから仕方ないと思っています。 整形外科の医師からすれば、自分たちは医学部を6年かけて出て、その後インターンとしての勉強と経験を重ねて、計10年位費やして学ぶところを、柔整師の方達は最短3年間で開業できてしまうという教育の問題も整形外科医と柔整師の対立構造に関係していると感じております。私はある意味、整形外科医と柔整師は治療行為の棲み分けをすることで対立問題を少しは解消できるのではないかと思っています。

別の観点からの問題点としては、レセプトという請求書は一般の請求書とは異なった扱いで運用されているところではないでしょうか。ある研究発表ではレセプトと領収書を突き合わせるとレセプトに書かれている本人負担の点数と領収書の金額が合わないのが、医科レセで1割、柔整レセではそれ以上だったと記憶しております。間違った請求に対して、いわゆる、罰則というものが何もない。健保が〝これ違うんじゃないか〟と返戻しても、請求書上問題なく書き直して再提出すれば通ることになっています。医科も同様です。まるで根拠のない請求であれば、それは不正請求となりアウトですが、所謂不正と疑わしいものは、柔整でもあるし医科でもある。それに対して何のおとがめもないというのが今の状態であり、それを野放しにしているから何も変わらないと思っています。つまり、システムの問題です。医療保険の世界でこの様なことがまかり通っているのがそもそもおかしいと思います。

それ故、保険者は外部業者に委託してレセプトの中身を点検せざるを得ないのです。柔整レセの一例をお話しますと、レセプトを保険者へ請求する前に患者がレセプト内容を確認し署名することになっています。このルールの是非はともかく、現状ルールに従わざるを得ないのだからルールに則った様式で請求して頂けるのであれば、保険者はお支払したら良いと思います。ただ悲しいかな、柔整師の一部の方には、治療部位を水増しし、署名を柔整師自身がするという方が現実にいらっしゃるので、調べざるを得ないのです。患者のニーズに応える整骨院は、同じように保険者のニーズにも応えていただきたいものです。

 

―療養費適正化の徹底をはかるということで2012年3月12日に厚労省から各保険者に通知が出されましたが、貴健保ではそれより以前から療養費の適正化に取り組まれていらっしゃいましたか?またこの通知以後、どのように取り組みを開始されましたでしょうか?

今までは機関誌を通じ「整骨院・接骨院へのかかり方」などのパンフレットや特集記事で案内するにとどめていました。療養費問題に関しては他健保間でも話題にはなっていましたが、当健保での柔整療養費は保険給付に対する割合(現金給付を除く)が1%(年間:145百万円/14,500百万円)であること、また毎月の請求件数が約3,000件あり、金額にして約12百万円の内容審査をするマンパワーが無かったことから、なかなか手をつけることができませんでした。通知を機に柔整事務の効率化、支払費用の適正化の観点から業者に「内容点検、照会事業、一括振込等」を2012年12月よりお願いすることにしました。内容点検により返戻件数が多くなりましたから、柔整師側は、〝富士フイルムさんチェックしだしたね〟というのが伝わり、〝ちゃんと出さなきゃ〟という不正請求に対する抑止力が働くことを期待しています。

 

―民間調査会社を利用されているとのことですが、そのメリットとデメリットなどについて教えてください。

メリットについては、受診状況が毎月レポートされるので実態が掴めます。また内容点検により、不審分を洗い出すことができるようになりました。照会事業においては、初回受診の方に「整骨院へのかかり方」パンフレットを同梱し、ダイレクトに周知できることです。また多受診者についても照会し受診内容を確認することが出来ています。デメリットについては、健保事業への理解不足の方からクレーム的な電話がたまにあることでしょうか。

 

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