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日本機能訓練指導員協会、第1回認定機能訓練指導員実務研修会が開催!(後編)

2021/01/07

令和2年12月6日(日)・13日(日)の2日間、東京都柔道整復師会会館において、日本機能訓練指導員協会主催『第1回認定機能訓練指導員実務研修会』が開催された。受講人数を制限したうえで参加者は全員マスク着用、会場には消毒液を設置し、座席間隔を十分に確保するなど、新型コロナウイルス感染拡大防止に配慮した上での開催となった。

第1回認定機能訓練指導員実務研修会

柔整ホットニュースでは2日間の講義の模様を、前編・後編の2回に分けてお届け。
後編では、東京大学大学院特任研究員・竹並恵理氏『筋肉から健康を考える!シニアのための筋育栄養学』、公益社団法人日本柔道整復師会特別諮問委員・藤本進氏『認知症について(認知症サポーター養成講座)』、新宿医療専門学校歯科衛生学主任・内藤美生氏『嚥下機能と口腔機能 摂食嚥下とQOL』、株式会社ペアレント専務取締役・谷元健吾氏『福祉用具と住宅改修の知識と活用方法』の4題についてお伝えする。

筋肉から健康を考える!シニアのための筋育栄養学

東京大学大学院特任研究員 竹並恵理氏

筋肉は30代以降、加齢とともにどんどん減少する。加齢や慢性的な疾患などによりサルコペニアになると、基礎代謝やエネルギー消費量が低下することに加え、食欲や栄養の摂取量が低下し低栄養になることで、ロコモティブシンドロームに進行、寝たきりや要介護になってしまう。つまり高齢者にこそ、筋肉を鍛えることに重点を置いたケアが有効。

筋肉を鍛えるためには、年齢等に関わらず、適切な負荷を与える運動、適切な栄養と休養が重要となる。トレーニングにより筋力に負荷を与えると一時的に筋肉は弱る。しかし栄養の摂取と休養により、超回復が起こりトレーニング前よりも筋肉が育つ。高齢者においては、加齢により栄養に対する反応が低下してしまうため適切な栄養摂取が特に重要だが、加齢に従って食欲は低下してしまう。

では、効率よく筋肉を育てるためにはどうすればいいのか。筋肉は75%が水、残りほとんどがタンパク質で構成されているため、タンパク質をしっかり摂取することが重要。具体的には、▼良質でアミノ酸が豊富であること、▼欠食せず規則正しく摂取すること、▼適量の糖質を摂取すること、▼1日の摂取量だけでなく1食の摂取量も十分に摂ることがポイントとなる。食事の基本の形として、主菜(肉・魚介類・卵・大豆製品など)、副菜(野菜・海藻・きのこなど)、主食(ご飯・パン・麺類など)から成る食事を3食、加えて果物・乳製品を1日1回摂ることを意識する。

基本の食事の形を踏まえた上で、高齢者の筋育で注意が必要なのが欠食である。空腹は筋肉の分解を進めてしまう。特に朝食の欠食は長時間の空腹となりやすいため、空腹を感じないよう間食もうまく取り入れることも大切。高齢者はインスリン、ロイシンへの反応が低下しているため、本来であれば若年者よりもタンパク質を多く摂取する必要がある。しかしこれを実現することは難しいため、この事実を理解したうえでどのように量を確保するかが課題となる。特に高齢者の場合、豆類・魚介類は若年層よりも多く摂っているが、肉類の摂取量は若年層の半分近くまで減少している。しかし肉類は効率の良いタンパク質源であり、栄養に対する反応が低下している高齢者こそ積極的に摂取したほうが良い。年齢により健康・栄養問題は異なるため、年齢に応じた栄養管理を行うことが重要である。

 

認知症について(認知症サポーター養成講座)

公益社団法人日本柔道整復師会特別諮問委員 藤本進氏

認知症は正常な老化ではなく病的な老化過程であり、単なる物忘れとは区別される。認知症の症状としては、人格の変化やせん妄、幻覚などの周辺症状、中核症状には記憶障害のほか、見当識障害、実行機能障害、理解・判断力の低下などがある。 認知症には原因によっていくつか種類がある。

アルツハイマー型認知症は、高齢者の認知症の大半を占める。海馬周辺を中心に脳全体が萎縮することが原因。日常生活でできていたことが少しずつ出来なくなり、物取られ妄想や徘徊などの症状が出るが、身体面の症状は進行するまで目立たない。

レビー小体型認知症は、脳の神経細胞の中に「レビー小体」と呼ばれる異常なタンパク質の塊が現れることが原因となる。症状としては注意力がなくなる、物が歪んで見える、理解力・判断力が低下する、幻視や睡眠時に叫ぶなどの異常言動、抑うつ症状などがある。身体面ではパーキンソン症状や自律神経症状も見られる。しかしレビー小体型認知症は、患者によって症状の現れ方に差があるため診断されにくい。

血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などにより脳の神経細胞にダメージを受けたことが原因となる。手足の麻痺やしびれなどの神経症状が出る場合もある。原因となる疾患によって異なるが、比較的急に発症し段階的に進行していくことが多い。

日常生活に支障をきたす程度ではないが、記憶障害と軽度の認知機能障害があり正常とも言い切れない中間的な状態を「軽度認知障害(MCI)」という。MCIは正常なレベルに回復する例もあるため、早期に対応することが重要となる。最新の研究では、特にアルツハイマー病に関しては予防策が少しずつ解明されつつある。予防のためには有酸素運動をしたり、食べ過ぎないように食事を工夫して生活習慣病を予防したり、外に出て様々な人と接するなどで脳を活性化することが有効だとされている。

認知症サポーターは特別なことをする人ではなく、認知症に対する正しい知識を持ち、認知症の人やその家族が暮らしやすい地域を作っていく応援者・支援者を指す。認知症サポーターキャラバンは、全国キャラバンメイト連絡協議会が自治体と組んで主催するものと、企業・団体と組んで主催するものの大きく2つに分けられる。どちらの場合も、まず認知症サポーター養成講座の講師役となるキャラバンメイトを養成する。キャラバンメイトはそれぞれの地域や職場で認知症サポーター養成講座を開き、認知症の正しい知識や接し方を受講者に伝える。この講座の受講者が認知症サポーターとなれる。

平成27年には、認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)が策定された。地域包括支援センター等には認知症初期集中支援チームも設置されており、認知症の人が認知症とともによりよく生きられる環境の整備、認知症の人やその家族をサポートする体制の整備が進められている。

 

嚥下機能と口腔機能 摂食嚥下とQOL

新宿医療専門学校歯科衛生学主任 内藤美生氏

歯肉は様々な情報のバロメーターとなる。炎症が起きると赤く腫れ上がり、疾患があることがわかる。舌も健康状態を表しており、白っぽい赤くなっているといった変化にも注目する。

口腔には摂食嚥下機能、発声構音機能、運動機能(咬合・下顎運動・舌運動・咀嚼)、感覚機能(味覚)、唾液分泌機能、呼吸機能など様々な役割がある。

摂食嚥下機能とは食べる能力のことを指す。仕組みとしては、まず食べ物をみてどのように処理するかを考える。口に入れたら食べ物の硬さや大きさなどを口腔の感知器によって感知し、それに合わせて咀嚼し食塊を形成する。その後舌で食塊を咽頭から食道を通過し、胃まで送るというのが一連の流れとなっている。

成人期・老年期における摂食嚥下障害は、一度獲得された摂食嚥下機能が失われ、減退していくことにより生じる。生理的な機能低下・疾病による機能低下を区別する必要がある。原因としては、脳卒中、神経筋疾患(パーキンソン症候群・筋委縮性側索硬化症)、サルコペニア、認知症、口腔癌関連などがある。加齢に伴って、歯の欠損や舌の運動機能の低下、咀嚼能力や唾液の分泌機能の低下、口腔感覚が鈍くなる、咽頭への食べ物の送り込みが遅くなるなど、機能的な変化(オーラルフレイル)により、摂食嚥下障害を起こしやすくなる。

「食べる」ということは喜びであり、栄養摂取のみならず人生の楽しみ、人とのコミュニケーション手段でもあるため、口腔機能の低下はQOLにもかかわる問題だが、訓練によって機能低下前に戻すこともできる。嚥下機能を改善すると、誤嚥や誤嚥性肺炎の防止にもつながる。

訓練の方法には、食物を使用せずに行う基礎訓練(間接訓練)、食物を使用する摂食訓練(直接訓練)がある。基礎訓練は誤嚥のリスクが低く、経口摂取を行っていない人にも実施できる。口をすぼめて深呼吸する、頬を膨らませたりすぼめたりする、舌を出して上下左右に動かすなどの嚥下体操は、食膳の準備体操として覚醒を促すことができる。また摂食嚥下にかかわる筋のリラクゼーション効果もある。ただし、頚部の疾患やめまいなどの症状がある場合は注意が必要とある。それ以外の訓練としてガムラビング(歯肉マッサージ)や氷なめ訓練などもあるが、むせてしまう人や身体を安定させられない人には行うことができない等の制約がある。どのタイミングでどんなアプローチが必要かによって、多様な訓練の方法がある。

効果を実感するためにもまずはその人の思いを理解し、できる最初の一歩は何なのかを考えて機能訓練を行うことが重要になると考える。

 

福祉用具と住宅改修の知識と活用方法

株式会社ペアレント専務取締役 谷元健吾氏

福祉用具や住宅改修は、加齢、病気、事故等の原因により介護保険制度を利用している方々の生活をハード面からサポートする。

65歳以上における住宅内の事故発生場所の割合は、階段が18.7%、キッチン・ダイニングが17%である一方で、リビングでの事故が45%と抜きんでて多くなっている。65歳以上の事故では、65歳未満と比較すると中等症・重症・重篤・死亡となるケースが多い。事故の例としては、階段を踏み外して転落、起床時や夜間にトイレに行く際にベッドから転落、じゅうたんや毛布などに足を取られて転倒、風呂場で滑って転倒、椅子に上って電球を替えている際に転落などがある。転倒を予防し、住み慣れた自宅でより安心した生活ができるように、身体状況・生活状況をヒアリングし、その家屋状況にあったツールを使用して動作の安全性と容易性を高められる提案を行う。

住環境を整備する上では、動作をイメージして動線上にある障害物やバランスを崩しやすい動作などの危険因子を分析し、必要なものを提案することが重要となる。

具体的な住環境整備としては、歩いて移動する場合は、玄関に踏み台や壁取り付けタイプのベンチを設置する、廊下・階段、トイレ、浴室には手すりやすべり止めマットを設置するなどの方法がある。

車椅子の場合は利用者だけでなく、介助者の動作の容易性を高めることも重要となる。ベッドはモーター式で移動用の手すりをつける、トイレは入り口を広げて便器の近くまで車椅子を近づけられるようにする、車椅子は小回りが利く6輪タイプで、肘掛がはねあげ式で足台が取り外し可能なものだとなお良い、上り框や外階段には簡易スロープを設置するなどの方策が考えられる。

要支援・要介護者に対しては、自立した日常生活を送ることができるよう、利用者の心身の状態を勘案して13種目の適切な福祉用具の貸与が認められている。腰掛便座や入浴補助用具、簡易浴槽など、衛生上貸与が好ましくないものについては「特定福祉用具」とされ、購入後に申請することでかかった費用の9割相当額が支給される。

住宅改修においては、手すりの取り付けや引き戸等への扉の取り替え、床段差の解消、洋式便器への便器取り換え、滑り防止および移動の円滑化のための床の変更などには介護保険が適用される。また、各市町村単位で住宅改修に対する助成金を支給しているところもあり、自己負担を抑えることが可能だ。

 


 

2021年3月には、神戸市において第2回認定機能訓練指導員実務研修会の開催が予定されているが、対面での参加に加えてウェブからの参加も受け付ける予定とのこと。また、上級者向け研修会については来年度中の開催を検討しているという。

最後に、(公社)日本柔道整復師会・三橋裕之総務部長が〝今回は新型コロナウイルス感染者が増加する中で、受講者数を当初の予定の3割程度に減らしての開催となった。上級者向け研修会では厚生労働省や看護師会など幅広い職域から講師を招き、ワンランク上の研修にしたいと考えている。日本機能訓練指導員協会で研修を受けた方々が現場で活躍できるような道筋を作るためにも、多くの方に本協会に参加いただいて、しっかりとした組織にしていきたい〟と力強く語り、記念すべき第1回研修会は閉会となった。

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