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公益社団法人日本柔道整復師会「匠の技 伝承」プロジェクト2025年度 第3回指導者育成講習会開催

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2025年11月30日(日)、日本柔整会館(東京都台東区)において『公益社団法人日本柔道整復師会「匠の技 伝承」プロジェクト 2025年度 第3回指導者育成講習会』が開催された。

今回はフォローアップ講習として、足周辺の骨折と顎関節脱臼をテーマに整復・固定法および超音波観察装置による観察方法の座学・実習がオンライン形式にて行われた。

徳山健司学術教育部長

公益社団法人日本柔道整復師会・徳山健司学術教育部長は〝休日にもかかわらず、フォローアップ講習会にご出席いただき感謝申し上げます。「匠の技 伝承」プロジェクトは6年目に入った。本プロジェクトは【日本全国どこであっても、日整水準の平準化した治療が受けられる】ことを目指している〟と本プロジェクトの意義を語った。

超音波観察装置取扱技術実習

超音波観察取扱技術実習では、小野博道講師による座学講習、川戸典知講師による観察手順の解説が行われた。

足周辺の骨折

座学

外側靭帯には前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯があるが、この中で1番損傷されることが多いのは前距腓靭帯だ。足関節捻挫は外傷の中でも圧倒的に多く、柔道整復師が扱うことも非常に多い。前距腓靭帯は、足関節15~20度ぐらいの底屈位にて最も緊張する。役割としては、距骨の前方移動、内旋運動の制御などがある。

前距腓靭帯はおそらく1本の線維束でイメージされることが多いと思うが、解剖して肉眼解剖で見ていくと、実は線維束が2本であったり3本であったりと、バリエーションがあるということが分かっている。割合で見ると、1本の線維束は22.3パーセント、2本の線維束が70パーセント、そして3本の線維束は6.7パーセント。つまり、大半の人が2本の線維束になっているということを頭に入れておかなければならない。前距腓靭帯の中では、メインの働きをしている上部線維(superior band)の損傷が多い。下部線維(inferior band)には足関節の運動軸を固定する機能がある。上部線維がしっかりと線維があるのに対し、下部線維に関しては薄いバンドになっている。

後距腓靭帯の前部線維と前距腓靭帯には連続する線維が存在するケースが多く、互いに協調して距骨と腓骨を安定化されている。そのため、前距腓靭帯を内反損傷した時に、外力が強ければ強いほど踵腓靭帯も損傷し、なおかつ中の部分で繋がっている後距腓靭帯も損傷されることがあると留意する必要がある。

エコー画像から見る損傷分類として、kemmochi分類では、前距腓靭帯がピーンと張っているような状態を[Type Ⅰ]、ATFLの腫脹はみられるが線維性は保たれており切れていないようなものを[Type Ⅱ]、ATFLがへこむような形で何かしらの部分的損傷が疑われる状態が[Type Ⅲ]、完全に線維束が下に持ち込んでいて、牽引をかけても落ち込んだ線維束が動かないようなものを[Type Ⅳ]、そして距骨側・外果側で裂離骨折しているようなパターンが[Type Ⅴ]とされている。その点も踏まえて、症例収集をしていきたい。

また、もう1つ注目する点として、距骨の形は上部線維の停止部のところがなだらかに斜めになっているが、下部線維のところの関節面のところは急激にカクンと落ちるような形を示している。この距骨の形にしっかりと注目して観察していただきたい。

超音波画像で治癒過程をみていくと、患者さんも納得して「また来院してちゃんと治そう」と継続してきてくれる。患者の通院管理という観点からも超音波観察装置は有効だと考えている。

超音波観察の手順

足関節の肢位は、背屈していると前距腓靭帯がたるんでしまい描出しにくいため自然な底屈位とする。プローブを足底と平行にすると前距腓靭帯が観察しやすい。

描出のポイントになるのは骨性ランドマークだ。いきなり前距腓靭帯を描出するのは難しい。まずは腓骨側と距骨側の骨性ランドマークを理解し、そこを目掛けてプローブを当てていただくと描出しやすい。

腓骨側はなだらかな骨輪郭が角状に、距骨側では角状の骨輪郭がなだらかになるところがランドマークとなる。腓骨側のなだらかな面にプローブを当て、そこからプローブを下方に走査していくと、腓骨の角状のところが見えてくる。そこを起点としてプローブを回転走査していくと、距骨頚部のなだらかな面が見えてくる。ここに前距腓靭帯がある。

距骨側の滑車の角状のところにプローブを当ててしまうと前距腓靭帯が全て見えてこないため注意して観察する。

整復・固定施術技術実習

続いて整復・固定施術技術実習として、山口登一郎講師より足周辺の骨折の整復およびクラーメル副子・金属副子による固定法と、顎関節脱臼の整復・固定法について解説が行われた。

足周辺の骨折

整復

患者は仰臥位、膝関節を45度屈曲させる。踵骨に手掌部を当てて末梢に牽引する。十分に引いたら外果の部分に母指球を当て、両側から直圧を加えて関節面を整える。

クラーメル金属副子による固定

クラーメル金属副子を踵骨に当たらないように採型し、下腿で足関節を支持するような形を作る。綿花を敷いてクラーメル金属副子を固定する。上端部を仮止めし、外果にかからないように中足部を固定する。この状態で電療したりエコーで観察したりでき、また上端と中足部を固定していることで患部の安定性が保たれる。上から内側と外側に厚紙副子を当てて固定する。厚紙がなければプライトンでも良い。最後に循環をチェックして完了とする。

キャストライトによる固定

患者の肢位は下垂座位とする。まずチュービコットを固定する範囲よりも大体5センチぐらい長い範囲で、なるべく皺にならないように装着する。チュービコットを装着したら、次にオルテックスを装着する。オルテックスは撥水性のある素材で出来ている。キャスティングする際にはディスポの手袋を使用する。手に汗をかきやすい人は、タルクを手にまぶしておくと装着しやすい。キャストライトは開封するとすぐ硬化が始まるため、手早く開封し、水の中に縦に挿入する。気泡がなくなったら少し水を切って、固定が必要な足関節の部分から巻き始めること。範囲としては、先ほど下巻きをしたオルテックスよりも若干内側に巻く。キャストライトの1番最後は折り返しがついているため、必ずそれを引き伸ばして当てがう。先に巻いたチュービコットを内側に折り返したら、2巻目を巻き始める。3巻目の最後は乾燥させないと密着しないため、少し空気に触れさせてから付ける。最後に対抗圧を加えて成形する。この際、指先は使わず、内果と外果の部分を手のひらで押さえるようにする。また、足底のアーチ部を保つように手掌で押し上げる。

キャスティングしたキャストライトはギブスカッターでシャーレする。スチールのブレードだと摩擦熱で患者さんに苦痛を与えてしまうため、ホウ素で作成したブレードを利用する。切れたか切れていないかは音で判断する。回転していないブレードでも患者を傷つけることになりかねないため力の入れ方に注意すること。また、摩擦と振動で切るので非常に熱くなる場合がある。熱くないか患者さんに確認しながらシャーレするように心がけてほしい。切れたかどうかを確認したら、ハサミで下巻きごとカットする。

シャーレはおよそ4週間後に行うが、その間ギブスとの緩みがあった時には巻き替える。シャーレした段階で、エコーを使って仮骨の出現をチェックし、その状態によって固定方法を検討する。この状態で1週間おきぐらいにエコーして仮骨の状態をチェックし、荷重のかけ方等も考えながら固定の軽減を図る、あるいはこの状態で固定を継続するのかを確認する。

顎関節脱臼

患者の後頭部を術者の大腿部に乗せ、下顎角に左右の母指球を、頤部に四指を当てて下方に牽引する。関節頭が動いたのを確認した後、頤部を挙上させて整復を完了する。整復後は必ず弾発性固定の有無を確認する。固定はバンデージを用いる。頤部にきちんと当てるのがポイント。吊り上げるようにして固定を完了する。

受講者は講義を受けながら実技を行って、整復固定および超音波観察の手順を確認。それぞれ講師から技術確認およびアドバイスを受け終了となった。
また、受講者からは今後のプロジェクトの進め方についても積極的に意見が出され、非常に充実した講習会となった。

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