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(公社)千葉県柔道整復師会 第2回「匠の技」技術講習会が開催〜整復固定と超音波観察の融合〜

トピック

2025年10月12日(日)、公益社団法人千葉県柔道整復師会主催による『第2回「匠の技」技術講習会』が、同会会館(千葉市中央区)にて開催された。本講習会は、柔道整復の本質的な技術である「整復固定」の伝承を目的に企画されたもので、特に臨床の現場で応用可能な手技とエビデンスに基づいた知識を実技とともに学ぶ貴重な機会となった。

第2回「匠の技」技術講習会

冒頭挨拶と講習の意義

講習会は、同会副会長・池畑啓作氏の開会の辞により始まり、続いて細谷吉隆会長が登壇。

細谷会長は冒頭で「『匠の技 伝承』プロジェクト」は、(公社)日本柔道整復師会が約10年をかけて全国的に取り組んでいる重要な事業であることを紹介し、以下のように語った。

「現在、骨折・脱臼の来院患者は著しく減少しています。しかし、我々柔道整復師の本来の職務は“骨接ぎ”にあります。この技術なくして柔整業界の未来は語れません。若手柔整師の中には、骨折を実際に扱った経験のない方も増えています。だからこそ、指導者のもとで、整復・固定技術をしっかりと習得していただきたいのです。」

また、「整復技術を継承することで、医科との連携体制の中でも信頼される柔整師であり続けることが可能となる」と力強く述べ、参加者の意欲を高めた。

続いて、(公社)日本柔道整復師会・長尾淳彦会長からのビデオメッセージも紹介され、全国規模で進められている「匠の技」プロジェクトの意義と、受講者への励ましの言葉が届けられた。

その後、匠の技講師の照沼亨氏により肩甲上腕関節脱臼の整復・固定の実技デモンストレーションに加え、臨床に直結する超音波観察法についても具体的かつ実践的に解説された。

肩甲上腕関節脱臼の整復固定および超音波観察

【座学講義内容】

担当講師:照沼 亨 氏(匠の技講師/千葉県柔道整復師会)

脱臼に対する評価と整復の臨床力

照沼 亨 氏

照沼氏による座学では、一人開業を前提とした実践的な状況設定から講義を開始。肩関節前方脱臼の患者が来院した際に、どのように評価し、整復・固定を行うかを丁寧に解説した。近年、肩関節脱臼の患者は、強い痛みによって救急車を呼ぶケースが多く、柔道整復師のもとへ自力で来院するのは稀である。そのため、地域に根ざした信頼関係が構築されている院でこそ、外傷患者が来院する可能性があるとし、「信頼される柔整師として整復技術を有していることが何より重要だ」と語った。

脱臼の評価・整復における要点

  • 肩関節は、関節窩が浅く可動域が広いため、骨性支持が弱く、脱臼しやすい構造。
  • 脱臼は特に10〜20代の男性に多く、初回脱臼が若年であるほど再発率が高い(再発率は30〜85%との報告も)。
  • バンカート損傷などを伴うケースでは、初回の対応が予後に大きく影響するため、適切な整復とその後の再発予防が極めて重要。

臨床の現場では、骨折との鑑別や神経・血管損傷の有無を整復前に確認する必要があり、その所見は施術録にしっかりと記載すべきとされた。
特に、骨折を伴う場合には激痛や著明な腫脹、軋轢音などが現れ、無理な整復は厳禁であることが再三強調された。

超音波観察の意義「見える化」で安全性と信頼性を高める

肩関節の整復技術に加え、今回特筆すべきは超音波観察装置の臨床活用である。整復前後の骨頭位置、軟部組織損傷の評価、ヒルサックス損傷の有無、腋窩神経周囲の変化などを、リアルタイムで非侵襲的に観察できる利点が紹介された。

【超音波観察 実技解説】

担当講師:高橋 輝 氏(匠の技講師/千葉県柔道整復師会)

超音波観察 実技解説
高橋講師による超音波描出の実技解説
肩関節を対象とした観察技術の基礎から臨床応用までを丁寧に指導

高橋氏による超音波観察の実技解説では、観察手順、プローブの持ち方、描出対象の明確化などが段階的に示された。

超音波観察の利点として、非侵襲性・リアルタイム性・被爆なしという特徴があり、整復前後の状態把握に非常に有用である。

実技では、以下の肩関節周囲構造を中心に観察手技が展開された。

  • 肩峰から棘上筋腱、大結節
  • 長軸での骨折部の描出
  • 結節間溝と上腕二頭筋長頭腱
  • 関節窩、関節唇、上腕骨頭(後方アプローチ)

描出ポイントとして、プローブを適切な角度で当てることが極めて重要であり、特に結節間溝の観察では横靭帯の描出精度が問われる。

また、ヒルサックス損傷や腋窩神経周囲の異常も描出対象として取り上げられ、臨床応用力を高める実習となった。

整復・固定 実技解説

担当講師:佐々木 和人 氏・伊藤 康裕 氏(千葉県柔道整復師会/匠の技講師)

佐々木講師と伊藤講師による脱臼整復の実技
安全性と確実性を兼ね備えた整復操作が丁寧に指導された

安全で確実な整復と固定を目指して

整復および固定の実技解説は、匠の技講師である佐々木氏・伊藤氏が担当。
今回の講習で採用された整復法は、古典的かつ安全性の高いヒポクラテス法である。
患者を仰臥位とし、術者は患側腋窩部に足底を当てて牽引力をかけながら、上肢を外転・内旋方向へ誘導する。この際、術者自身の体重移動を活かすことがポイントとされ、小手先ではなく全身を使った操作が必要であると解説された。

整復後は、整復感の有無、末梢循環や感覚の確認を行い、異常があれば即座に整形外科への紹介が推奨される。

固定法としては麦穂帯固定が紹介され、腋窩枕子、厚紙副子、冷湿布を用いて、整復位の保持を安定的に行う方法が実演された。

実技実習

座学講習後、整復固定及び超音波観察の実技実習が行われた。受講者同士でペアを組み、試行錯誤しながら実習に励んだ。実習中は指導員が各受講者のもとを巡回し質問に答え、さらに自信のついた受講者から指導員による動作チェックを受けた。

事業学術部長・小谷野勇治氏

講習会の締めくくりに、千葉県柔道整復師会 事業学術部長・小谷野勇治氏が総括を行った。

小谷野氏は、「本講習会は肩関節脱臼という重要な基本技術を、評価・整復・固定・超音波観察まで一連の流れで学べる、非常に実践的かつ臨床に直結した内容であった」と講評。

また、「初心者にも分かりやすく、経験者にとっても技術を見直す機会となり、幅広い層にとって有意義な講習であった」と述べた。
最後に、「今後も基本技術の継承と実践力の向上に資する場を提供していきたい」と締めくくり、受講者への期待を語った。

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