HOME トピック (公社)千葉県柔道整復師会主催「第2回災害研修」が開催

(公社)千葉県柔道整復師会主催「第2回災害研修」が開催

トピック

2025年12月7日(日)、千葉県柔道整復師会館において災害研修が開催された。日本医科大学千葉北総病院フライトドクター(ドクターヘリ)の本村友一氏、千葉県総合救急災害医療センターの伊崎田和歌氏を講師に招き、特別講演が開催された。

本研修会は、(公社)千葉県柔道整復師会・池畑啓作副会長の開催宣言により開始。

池畑啓作副会長

同会の細谷吉隆会長は〝日曜のお忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。本日は本村先生、伊崎田先生にご講演いただきます。災害はいつどこで起こるかわかりません。我々も医療者の1人として、患者さん、国民に対して仕事をしていますが、災害が起きた時に我々に何ができるでしょうか。国民のために我々が働かなければならないという気持ちを常に持って、日々行動していかなければなりません。本日の講習でスキルを向上し、さらに国民の力になれるように努力していきたいと思っています〟と挨拶。

第1部「災害・救急医療とドクターヘリと柔道整復師」

日本医科大学千葉北総病院 救命救急医師・フライトドクター 本村友一氏

本村友一氏

救急救命は時間との勝負だ。心停止した患者は3分で半数、10分でほぼ全員が助からないと言われている。呼吸停止では10分で半数、30分で全員が亡くなってしまう。怪我や病気の発生から時間が経ってしまうと、同じ病気、同じ怪我であっても患者さんが助からないこともあるということ。従来の手順では、事故や病気の発生から119番で救急要請を行い、受け入れ先の病院が見つかったら搬送し、医師は病院内で初めて患者に接触してそれから手術するということになる。これではどうしても時間がかかりすぎてしまい、患者さんが亡くなってしまうことがある。そこで、ドクターヘリと呼ばれるヘリコプターで医師が現場に行き、すぐに治療を始めることで時間短縮になる。

事故から手術を行うまでの時間を60分以内としなければならず、これをGolden Periodという。ドクターヘリは15分で50キロ飛ぶことができ、2機で千葉県全域をカバーできる。費用が高いが、その分治療を早期に始められることによりトータルの医療費は削減できる。近年は月に100件程度出動しており、患者は半数が外傷で、残り半数は脳出血、心筋梗塞、大動脈解離などの血管系の疾患が原因で、急激に具合が悪くなってドクターヘリが必要になることが多い。

具体的な症例として、夕方、自転車で野球の練習に向かう途中、軽トラックに轢かれてしまった10歳の少年のケースでは、救急隊到着まで20分、病院まで車で14.4キロ(32分)という状況だったが、患者を診て評価し、それから病院に搬送交渉をしていては間に合わなくなってしまうということでドクターヘリが要請された。この時、病院到着から手術開始まで3分だった。テレビ番組などでは医者の腕にフォーカスされがちだが、即座にドクターヘリを要請した救急隊員のファインプレーとも言える。現場の情報をできるだけ迅速に病院に伝えることが重要だがなかなか難しい。近年ではスマートフォンを活用することで時間との勝負に打ち勝とうとしている。

ドクターヘリは2001年に運用が開始され、現在全国に57機配備されている。開始当初は導入に2億円がかかり、さらにその費用を各都道府県が負担しなければならなかったためなかなか広まらなかった。そこで超党派の議員を中心として、ドクターヘリ特別法案が策定され、費用の一部を国が負担することになったことで普及が大きく進んだ。さらに、ドクターヘリを題材としたドラマ『コードブルー』が放送された。TVドラマ化されたことでドクターヘリの存在を効率的に周知することができ、たくさんの方に認知していただけるようになった。

私が高校2年生の頃、阪神淡路大震災が起こった。医師になってから知ったのは、阪神淡路大震災では6,400名以上が亡くなったが、そのうち500名は防ぎ得た死だったということ。当時はDMATもまだなく災害医療にあたれる医師がいなかったうえに、あちこちで火災が起こってしまったために消防は消火活動に奔走し、満足に患者を搬送することが出来なかったという。

そして2011年3月、東日本大震災が起きた。私も福島に向かい、ドクターヘリ本部を立ち上げて活動を行った。当時は全国に26機のドクターヘリがあったが、そのうちの15機が集まった。無線でやり取りしながら集まったヘリコプターに搬送指示を行うなかで、周囲が津波で流されて孤立する石巻市民病院を見つけた。ここに患者、スタッフ含め300人近い方が取り残されており、ドクターヘリを使って病院から離れた運動公園まで患者を運び、さらに大型のヘリで遠くまで搬送した。

このミッションは成功したが、戻ったら多方面からお叱りを受けた。ドクターヘリの災害時のルールなんて何も決まっていない中で思いつくままに活動したので怒られるのも当然だった。問題点として、情報共有がなかったこと、リアルタイムの位置情報が不明であったことなどがあった。その後、これらの経験をもとに位置情報を把握するシステムが導入され、日常的に使われるようになった。

2016年に熊本で地震が起こった際にもドクターヘリでの患者搬送システムの構築とその運用を行い、80人以上を空路で運んだ。能登地震では700名を超える患者を搬送した。

必ず起こると言われている巨大地震ではたくさんの人が亡くなり怪我をする可能性がある。そんな時に公助であるドクターヘリはどれだけ役に立てるのか。不適切な表現かもしれないが、所詮“蜘蛛の糸”なのではないかという感覚に陥りもした。公助だけではなく、自助・共助を支援することも必要。SNSでの情報発信もして、医療を知ってもらいたいと思う。柔道整復師の皆さんにはDMATの手が届かないところでお力添えいただけると非常に良い協力関係が築けるのではないかと感じている。

災害医療は誰か1人がやればうまくいくということはない。災害医療と日常の境目がどこにあるのかもわからないが、皆がそれぞれ自分でやれることをやって貢献していくべき。あなたはあなたの分野で、あなたがやるべきこと、やれることをじっくり焦らずやることが大切ではないか。

第2部「ロジダイジ ~業務調整員ってなに?~」

千葉県総合救急災害医療センター 理学療法士 伊崎田和歌氏

伊崎田和歌氏

おそらく皆さん「業務調整員って何?」と感じているでしょう。私は理学療法士として普段勤務しているが、リハビリ関連に関しても、災害時にどう対応していくかという組織化が進められている。ただ、この組織化や情報のやり取りなど、関係機関との連携が非常に難しい。実際の災害活動の中で、どういう人たちと協力してどのように活動していくかを考えてサポートをしていくのが業務調整員の役割だ。

私は能登地震の際に珠洲市に派遣された。その時も、避難所のことをどのように考えて関係機関とともに支えていくか、地域にどのように繋いでいくかということを、保健医療・福祉に関わる様々な職種や団体が集まって昼夜を問わず話し合い、一日でも早い復興に向けて活動していた。「DMATが偉い」「○○だから偉い」というわけではない。それぞれが発揮できるスキルや特技があり、それを活かして地元の方々を支えていきましょうという想いを合言葉に支援活動にあたっている。柔道整復師の方々にも加わっていただき、千葉で何かあった時に連携できる体制ができるといいのではと考えている。

DMATは災害時に派遣されるチームで、医師・看護師・業務調整員(ロジ)で構成される。DMATの活動要領には以下のように定義されている。

  • ロジスティクスとは、医療活動に関わる通信、移動手段、医薬品、生活手段等を確保することをいう。
  • DMAT活動に必要な連絡、調整、情報取集等の業務も含む。
  • DMATは、DMAT活動に関わる通信、移動手段、医薬品、生活手段等については、自ら確保しながら継続した活動を行うことを基本としている。

災害時に医療活動だけではなく、その活動期間中の医療従事者の生活を担う部分の調整を行うのが業務調整員だ。災害時は医療の需要が大きくなるのに、対応できる人や物などの資源が足りなくなることで、防ぎ得た災害死が発生してしまうことが危惧される。災害時の医療対応の原則として、CSCATTTがキーワードとなる。医療者は目の前の患者に目が向きがちだが、体制が確立されていることが重要。そこでCSCATTT〈Command&Control(指揮と連携), Safety(安全), Communication(情報伝達), Assessment(評価), Triage(トリアージ), Treatment(治療), Transport(搬送)〉を基本原則として活動を行う。

ロジ要員はなぜ必要か。被災地で支援活動を行うにあたり、現地の被害状況を知り、ニーズを把握したうえで、被災地に迷惑をかけることなく活動するため、ロジは自分たちの活動環境を整えるなど医療活動以外の全てを担う。特に情報管理を大切にしている。情報を制するものは災害を制す。情報収集と伝達は安全かつ有効な活動に必須であり、情報伝達の失敗は現場活動を誤った方向に導いたり災害対応機関を危険に晒してしまったりする可能性がある。せっかく支援の手があるのにそれがうまく届かないということにもなりかねない。そこで介入の優先度が高いのはどこだろうか、いつからいつまで誰が活動するのか、だれがリーダーシップを取って誰と連携し活動するのか、そしてそれらの情報をどう共有していくか。そういったことを考えなければならないが、これらは平時でもできることだと考えている。つまり組織力と平時からの備えが大切なのではないか。

千葉県では災害時、県庁に災害対策本部が設置される。ここに保健医療・福祉に関わる関係機関・団体が入る。さらに各地域にも災害対策本部が設置される。全体のことは保健医療福祉調整本部で、詳細は地域レベルの対策本部でまとめるという仕組みになっている。私自身も熊本地震が起こった際に避難所の調整や支援チームのマネジメントなどを行っていたが、突然地元の方が救護ボランティアの方を連れて来られたことがあった。情報を共有して連携している中で突然来られても避難所に繋ぐこともできず非常に困ってしまう。

千葉では、県及び18市が柔道整復師と災害協定を結んでいる。応急処置ができる柔道整復師は災害医療と相性がいい。医師や看護師らはより重症度の高い、重篤な患者への対応を行わざるを得ない中で、急性外傷の応急処置ができる柔道整復師に対応してもらえると患者も安心。日常的に一対一で患者に向き合っている柔道整復師だからこそ、コミュニケーションをとりながら手当てをすることで安心感を与え、痛みを除去することができるのではないか。

自分たちの地域は自分たちで守っていかなければならない。それはひとつの職種・団体だけですることではないと考えている。それぞれの強みとスキルを活かして自助・共助を行い、また公助の仕組みも構築していきたい。ぜひお力添えいただき、一緒にやっていきましょう。


災害医療の最前線で活躍される本村氏、伊崎田氏の講演は、災害時や救急医療現場における役割と連携の重要性を改めて認識させる機会となった。講演終了後の質疑応答では、制限時間一杯まで幅広い視点からの質問が相次ぎ、非常に密度の高い時間となった。

Visited 67 times, 62 visit(s) today