『公益社団法人日本柔道整復師会「匠の技 伝承」プロジェクト 2025年度第4回指導者養成講習会』が開催
2026年2月8日(日)、日本柔整会館(東京都台東区)において『公益社団法人日本柔道整復師会「匠の技 伝承」プロジェクト 2025年度第4回指導者養成講習会(フォローアップ講習会)』が開催された。


(公社)日本柔道整復師会・竹藤敏夫副会長は〝全国の「匠の技 伝承」プロジェクトの指導者の皆様には本当にお忙しい中、また全国的に降雪による悪天候の中ご参加いただき、誠にありがとうございます。本日の講習会はフォローアップということで、以前講習を行った鎖骨骨折および肋骨骨折の整復固定、エコーによる観察法を再確認していただくことを目的としている。鎖骨骨折、肋骨骨折は強い痛みを伴う症状を訴える患者さんが多くいらっしゃる怪我であり、固定法も大事なポイントになる。本日の講習で技術を再確認していただき、また各県の会員の先生方にフィードバックしていただきたい〟と挨拶。

徳山健司学術教育部長は〝いつも申し上げているが、この「匠の技 伝承」プロジェクトは全国どこでも同じ施術が行える、平準化した治療が行えるということを最大の目的としている。ひいては、先生方のお力によってこれを標準治療として確立させていただくものと強く認識している。先生方には指導者として、自県においてその裾野を広げるという非常に大きな役割を担っていただけると確信している。「匠の技 伝承」プロジェクトを足掛かりに、将来的には柔道整復術の有効性、エビデンスの構築、またガイドラインの作成に向けて進んでいかなければならない。本日も最後まで先生方のご協力お願い申し上げます〟と力強く述べた。
整復・固定施術技術実習

整復・固定施術技術実習として、山口登一郎講師より鎖骨骨折および肋骨骨折の整復・固定法について解説が行われた。
鎖骨骨折
鎖骨骨折は遠位骨片が上肢帯によって下方に転位する。整復は遠位骨片を後上方に牽引し、遠位骨片を近位骨片に合わせるということが1番重要だ。
衣服を脱着するにあたっては、脱ぐときは健側から、着るときは患側からとする。
1人でできる整復・固定法として、ベッドの上に円柱状に丸めたバスタオルを置き、脊柱を合わせるようにして背臥位で寝かせて整復する。これだけでほとんど整復される。
どの鎖骨骨折においても腋窩の管理が重要となる。固定にはクラビクルバンドを使用するが、クラビクルバンドだけでは腋窩を圧迫してしまうため、タオルを下敷きにする。クラビクルバンドは胸郭を開いた状態で装着する。肩甲骨がつくくらいが目安。少しずつ増締めをし、胸郭の拡大が足りないときはさらにバスタオルを1枚背中に挿入すると良い。その上から3裂包帯を8字帯で2巻巻き、整復位を保持する。腋窩を持ち上げるようにしながら巻くと徐々に理想的な整復位になってくる。骨片転位は1回ではなかなか整復位を保持することがないため、10日から2週間程度を目処に固定を行う。
血流を確認した後に三角巾で提肘を行う。三角巾を袋状にしたら、上腕軸を介して遠位骨片が上方へ引き上げられるように調整して末梢骨片の下降を防ぐ。
肋骨骨折
肋骨骨折の場合は、バストバンドだけでなくさらしを半分に割いたものを巻いて、その上からバストバンドを使用したほうが患部が安定する。医科から転院してきた肋骨骨折の患者の多くはバストバンドのみの固定だと思われるが、包帯やさらしを併用して固定した方が患者さんも楽で、痛みもかなり違う〟と説明した。


超音波観察装置取扱技術実習
超音波観察装置取扱技術実習では、小野博道講師、川戸典知講師により鎖骨骨折、肋骨骨折の観察法が解説された。

小野講師

鎖骨骨折
鎖骨は膜性骨化によって形成される非常に特殊な骨であり、軟骨性骨化から成る長管骨とは本質的に異なる。我々柔道整復師が鎖骨骨折を整復固定から治癒に至るまでの施術を行うにあたっては、発生学的・構造学的な特性を理解したうえで評価を行う必要がある。
鎖骨の特徴として骨膜が厚いため、骨形成能が非常に高い。特に小児の場合は仮骨形成が旺盛で、転位を伴う骨折であっても自然整復されることも多い。形状はS字状で、中央部は靭帯性支持もなく、筋の付着も少ない部分もあるため非常に骨折しやすい。
膜性骨化の場合、骨の周りに骨膜も含めて筋膜等が非常に厚く存在しているということをまずは認識しなければならない。そして下からは大胸筋や鎖骨下筋、三角筋、上からは僧帽筋や広頚筋、胸鎖乳突筋などに引っ張られるというストレスが加えられているという認識を持つこと。柔道整復の教科書には、遠位骨片は上肢の重さで下垂する、さらに大胸筋の作用によって短縮転位を起こし、胸鎖乳突筋の作用によって近位骨片は上方に転位すると書かれている。しかし胸鎖乳突筋に上方転位させるほどの筋力はない。なおかつ大胸筋にくっついているため、その筋力も踏まえると拮抗すると考えるべきであり、遠位骨片が転位していると理解できる。
また、鎖骨の外端部骨折は肩鎖関節の脱臼と若干似ているため鑑別に注意が必要だ。腫れ方が全く異なるためベテランの先生方は見間違えることはないと思われるが、特に経験の浅い先生は間違えないよう注意すること。
エコー観察では、鎖骨、肋骨ともに圧痛点の直上を走査して、骨皮質の連続性を確実に描出できるかどうかというところが最大のポイントとなる。
鎖骨のエコー描出では、肢位は座位、上肢は中間位とする。最初に鎖骨に対してプローブを垂直に当てて短軸で観察する。鎖骨のS字形状に注意しながら、外側から内側、内側から外側へプローブ走査する。次に、プローブを90度回転させて鎖骨と平行にし、長軸で観察する。ここもS字形状に合わせて走査をしていく。肩峰から鎖骨、鎖骨が半円状に描出され、胸鎖関節まで行って、また戻ってきて鎖骨の外端部までを描出する。できるだけ鎖骨が画面中央に来るように描出する。
肋骨骨折
肋骨骨折の症例では、バスケットをしていて相手選手と接触したことで受傷し、痛みに耐えながら1週間過ごしてから来られた患者さんがいた。1週間経っているため、エコー観察では骨折部の連続性が断たれている部分の周りに、ドーム状にしっかりと線維性の結合組織自体が集まっている状況が見受けられた。肋骨骨折は架橋するように、ドーム状に仮骨が形成される。そういった点をエコーで確認することで、今どの治癒過程にあるのか、いつバストバンドを外してもいいのかを判断する目安になる。肋骨骨折は治癒が早いため固定も早めに外れやすいが、膜性に痛みが飛んでしまうことがある。例えば、背部の肋骨骨折をしていたとしても、前胸部に痛みが出る可能性もある。そのため、肋骨骨折は圧痛、圧迫ストレス、呼吸、体動時痛などの所見は十分に取る必要があるということを、各会員に指導する際には留意していただきたい。
肋骨の描出は座位または臥位とし、上肢は挙上させておく。肋骨は呼吸によって動くため、教科書によっては呼吸を止めて観察するとしているものもあるが、再呼吸の際に痛みが伴うため浅い呼吸とするのが望ましい。また、高齢者は骨皮質が不整なことがあるため偽陽性に注意する。また、再圧痛点の同定は二次損傷等がないよう慎重に行うこと。プローブ走査は、まず肋骨に対して垂直にプローブを当てる短軸走査を行う。前後に走査して、再圧痛点を注視していく。続いて90度にプローブを回転させ、長軸走査を行う。胸膜の段差を肋骨と勘違いしてしまう恐れがあるため、必ずしっかりと長軸に合わせて観察すること。
また、肋骨骨折の場合は必ずしも1本だけ折れているとは限らない。1本折れていたらその上下の肋骨も同時に確認すべきだ。


総評
受講者の整復固定およびエコー観察実技を終え、山口氏は〝皆さん非常に良く出来ている。腋窩の管理もしっかり出来ていた。プロの仕事として、さらに見栄えも良くなるように心がけていただきたい〟と評価。
小野講師は〝せっかく左手が空いているのであれば、プローブを持っている右手に対して左手でガイドを作って、骨のラインに沿うようにすると良い。各県で指導される際にはどうやったら描出しやすいかというコツも含めてお伝えいただきたい。普段の業務でもエコーを積極的に使っていただき少しずつ慣れながら、エコーの普及をお願いしたい〟、川戸講師は〝鎖骨や肋骨はゲルを多めに使うと観察しやすいので、できるだけたっぷりゲルを付けて観察してみてほしい。頑張って実技の数をこなせば分かるようになってくると思う。どんどんエコーを使っていただきたい〟と評した。
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