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(公社)日本柔道整復師会「第46回関東学術大会埼玉大会」開催

トピック

2026年3月8日(日)、大宮ソニックシティにおいて、公益社団法人日本柔道整復師会「第46回関東学術大会埼玉大会」が開催された。

第46回関東学術大会埼玉大会
長尾淳彦会長

大会会長である公益社団法人日本柔道整復師会・長尾淳彦会長は〝本大会は今年度最後の学術大会となる。また来年度からのブロック編成の変更により、現編成における関東ブロックの学術大会としては今回が最後の開催になる。我々柔道整復師は、患者さんのためにどうしたらいいのかを考えながら日々研鑽を積むことが最も大切であり、学術大会をその原点に戻るきっかけとしていただきたい。少子高齢化や過疎化が加速する中で、柔道整復師がどういった役割を果たすかを国民に周知するために日本柔道整復師会は様々な活動を行っている。これまでにやってきたことに加えて、現場で活躍する会員の声も吸い上げながら新しい試みにも挑戦していきたい〟と挨拶。

大河原晃会長

大会実行委員長として、公益社団法人埼玉県柔道整復師会・大河原晃会長は〝本日は、長年柔道整復師の指導に尽力され、柔道整復師を深く理解してくださっている栗原整形外科の栗原友介先生を講師にお迎えしている。ぜひご期待いただきたい。また学術教育部による講演とワークショップも行われる。我々の業界ではエコーはまだまだ普及していない。機械は高価で習熟にも時間はかかるが、柔道整復師の大きな武器としてエコーを使っていただきたい。会員による研究発表も7題予定している。ぜひ最後までご参加いただきたい〟と述べた。

特別講演『腰のための正しい姿勢について』

医療法人社団宏友会 栗原整形外科院長 栗原友介氏

栗原友介氏

栗原氏は〝学術大会という場ではあるが、それほど学術的な話ではなく、私が普段考えていること、整形外科をやってきた35年間で柔道整復師の先生方とずっと一緒に仕事をする中で思っていることをお話させていただきたい〟と述べ、講演をスタート。

【要旨】

正しい姿勢とは腰の養生のため。怪我や病気の多くは治る。治療によって治っていると思われがちだが、人体には自然治癒力が備わっており、それを高めるものが養生だと考える。治療は体系化・学問化されており、医師や看護師、柔道整復師や理学療法士など多くの担い手が存在している。その一方で、養生は民間療法や健康法といった言説はあるものの、体系化・学問化は成立していない。私はこの、運動器における養生の体系化・学問化・実践というのは、まだ誰も行っていない未開拓の市場だと考えている。では誰が担い手となり、開拓していくのか。

私の運動器の養生は「痛いことを徹底的にやらない」の一言。最小限の痛みすらも与えない。これを守るために適切な外固定と適切な生活指導を行う。だがこの「痛いことを徹底的にやらない」の一言がなかなか的確に伝わらない。ギャップをどう埋めるかが課題だが、これこそが体系化の第一歩であり、マニュアル化も可能であると考えている。

首や肩、膝、足などの痛みは外固定により痛みを避けて過ごす生活指導もしやすい。大げさに感じるかもしれないが、当院では膝が痛いだけでも松葉杖を使わせている。これにより患者にも「痛いことを徹底的にやらない」というのがどういうことなのかがしっかり伝わる。患者も痛みで困っているなら大げさだろうがちゃんと使う。ただし腰については、外固定や適切な姿勢や生活指導ができるのか?腰の痛みに良い姿勢、楽な姿勢はあるのか?

厚生労働省の国民生活基礎調査によると、日本人の健康状況において自覚されている症状のトップが腰痛で国民病ともいわれている。起きて活動している限り、腰椎には常に荷重や衝撃、運動といったストレスが加わっている。腰椎を保護するものとして、筋力と腹圧の2つがある。筋力は支えとして腰椎を保護する一方で圧縮力やテコの作用などで腰椎に対してストレスともなる。一方、腹圧は腰を周囲から均等に支え、荷重も緩和するためストレスを生まない。そこで腹圧を利用した腰椎の保護について考える。

ボールの内圧がボールを固めるように、腹圧は腹腔を固めている。この固められた腹腔が体の支えと腰椎の保護につながる。ただし、空気は圧縮されるが水はほとんど圧縮されない。臓器は細胞内外の水分が大部分を占めているため、水を満たしているのに似た状態となっている。そのため、腹腔は取り巻く筋肉の収縮によるわずかな容積の変動で大きく腹圧を変えることができる。

腹腔は圧が高まると、広く面で接する骨盤・胸郭・腰椎を一体化して固定する。この圧は腰椎にかかる荷重も緩和し、腰椎を周囲から均等に保持して支える。つまり腹圧は、体幹を固めると同時に腰椎を保護するという役割を持つ。

では、どうすれば腹圧は上がるのか。下代と谷本は、直腸内圧計を装着して体幹トレーニングやスポーツ動作を行い、どの程度腹腔内圧が上がるのか実験した。その結果、体幹トレーニングではあまり上がらず、競技などの動作において瞬間的に高まるとわかった。つまり、腹腔内圧は意識的なトレーニングで上げることはできず、無意識の動きによって上昇することを意味している。

しかし、本当に意識的に腹圧を上げることはできないのだろうか。腹を膨らませる動作により腹圧は上がるか。実証するために、直腸内圧計を使って腹を膨らませつつ腹筋を収縮させて計測を行った。さらに外圧による違いを比較するため、腰痛ベルトやコルセット、さらしなどを巻いて腹を膨らませるなどの動作を行って計測した。その結果、腹を膨らませる動作と外圧で圧倒的に高い圧となることがわかり、意識的かつ持続的に著しく腹圧を上昇させることが可能だと明らかになった。さらに、幅広のベルトと血圧計を用いて体外から腹圧を測定したところ、骨盤前傾よりも骨盤後傾のほうが高い数値を示し、腹圧を上げやすいことがわかった。立位で無理なく骨盤を後傾するには股関節と膝を屈曲させる必要がある。これらをまとめると、腹を膨らませると腹圧が上がる、骨盤後傾(腰を曲げる)すると腹圧を上げやすい、膝を曲げるとさらに骨盤を後傾しやすい、ということになる。

ところがこの姿勢は一般的に良い姿勢とされる背筋を伸ばして胸を張るのとは真反対、いわゆる悪い姿勢になってしまう。姿勢の良し悪しという概念は、明治維新前後に洋式文化の流入とともに発生した。それ以前の浮世絵などを見ると、現代で言う悪い姿勢が当時の「自然体」だったことがわかる。多くのスポーツにおいて、構えの姿勢は自然体とよく似ている。しっかり身体を動かそうとすれば、自然に構えの姿勢になる。決して体に悪い姿勢ではなく、むしろとても良い。悪いとされるのは見た目だけの話なのだ。我々がすっかり忘れてしまったこの自然体の見直しは、現代の国民病の克服につながるかもしれない。

しかし、これは患者に指導するのは困難だ。それ以上に教える施術者の意識を改革することも難しい。自分たちが本気でこれが良いと信じて実践することは並大抵のことではない。腰の養生のためには、まず「姿勢の良し悪し」からの脱却が必要だ。

学術教育部講演

匠の技伝承プロジェクトの意義等について

公益社団法人日本柔道整復師会 学術教育部長 徳山健司氏

徳山健司氏

【要旨】

これまでの柔道整復術は、師匠から弟子へと教えられた技を受け継ぐ「伝統医療」の側面が強かった。しかし、これからの時代、それだけでは通用しない。アート(経験・伝統)からサイエンス(科学)へ、つまり科学的根拠に基づいた技術への転換が不可欠だ。

背景には、医療制度を取り巻く極めて厳しい現状がある。2021年に発刊された『理学療法ガイドライン第2版』には、厚生労働省から「ガイドラインのない治療法は報酬の対象になり得ない」という極めて強い姿勢が示され、2022年の診療報酬改定では費用対効果判定が導入され、当面の間は単価の高い治療等について検討することとなった、とある。柔道整復業界もいつこのような状況になるかわからない。

具体的な活動としては、①目的と対象の明確化、②作成チームの結成、③クリニカルクエスチョンの設定、④文献検索とエビデンスの収集、⑤エビデンスの評価、⑥推奨グレードの作成、⑦レビューと外部評価、⑧公開・教育、という流れになる。

例えば、現状では捻挫などの場合、温罨法や電療を行うには5日間の待機期間が必要とされているが、この制限には本当に必要なのか。そこで罨法や電療における待機期間の撤廃を論点として、検討専門委員会で議論を重ねている。近年の研究成果によれば、アイシングが必ずしも治癒を早めるわけではなく、むしろ血流を阻害して回復を遅らせるという報告も存在する。一方で軽微な筋損傷に対するアイシングは損傷後の再生を促進するという考え方も発表されている。こうした知見を整理して妥当性を検証し、柔道整復独自のガイドラインを構築することは急務である。

柔道整復術を後世に伝えていくため、全国の先生方一人ひとりの協力のもと、エビデンスに基づいたガイドラインを構築したい。

エコーを柔整師の手に

公益社団法人日本柔道整復師会 学術教育部部員 小野博道氏

小野博道氏

【要旨】

100年続いてきた柔道整復術を、さらに100年先へと繋ぐためには何が必要か。それは、先人たちが築き上げてきた技術を、客観的に見える形で証明することである。費用対効果や科学的根拠が求められる時代が到来している。しかし国や保険者、患者に対し、我々の技術の有効性を示すことは難しい。そこで、我々の技術を「見える化」するための最大の武器となるのがエコーだと考えている。

実際に、つい先日行われた柔道整復師国家試験では、エコー画像を見て損傷部位を評価する問題が出題された。これは、柔道整復師は超音波観察の知識をもっと深めてほしいという国からのメッセージとも取れる。学校教育でもエコー教育の導入が努力義務化され、若手の柔道整復師たちはエコーのある環境を求めている。しかしエコーの普及率は未だ12〜13%程度に留まっており、これを向上させることが我々の急務だ。

我々柔道整復師は問診・視診・触診により評価を行ってきた。エコーはいわば「見える触診」であり、エコーを導入することで、我々が行った評価や施術が正しいかどうかを客観的に確かめることができる。画像として共有することで患者が自分の状態や治癒過程を理解するのにも役立ち、これによりインフォームド・コンセントの質は劇的に向上する。我々の技術と患者の安全を担保するだけでなく、誤った評価を防ぎ、柔道整復師自身を守ることにも繋がる。

日整では現在、一つの外傷の受傷から治癒までの過程をエコーで追った症例を全国から集めてデータ化し、ガイドラインを作成する試みを進めている。自らの手で、柔道整復術の有効性を科学的に示していく。そのために、全国の先生方にはぜひエコーを手に取り、このプロジェクトにご協力いただきたい。

ワークショップ

細谷吉隆会長

最後に、閉会の辞として来年度の関東学術大会を担当する公益社団法人千葉県柔道整復師会・細谷吉隆会長が登壇し、〝特別講演の栗原先生、また各県を代表して今回発表された7名の先生方、非常に貴重な講演ありがとうございました。この貴重な研究発表を共有できることは今後の業務にもプラスになることと思う。またこの学術大会において、多くの会員が来場し交流を深められたことは、皆さんにとって大きな収穫となったと確認している。来年もより良い大会が開催できるよう、会員一同お待ちしております〟と締めくくった。

研究発表

  • スポーツ少年団における柔道整復師の継続的支援活動
    ―現場対応と予防の視点から―
    茨城県 髙野俊瑞会員
  • ドローイン呼吸法による体幹強化と姿勢改善指導で得られる効果についての検証栃木県 加藤芳昭会員
  • ドゲルバン病(狭窄性腱鞘炎)の一考察
    ドゲルバン狭窄性腱鞘炎における手技療法についてのアプローチ
    山梨県 福島常雄会員
  • 三果骨折の一症例千葉県 小谷清会員
  • 新鮮な膝蓋骨骨折に対する保存療法の一経験群馬県 橋本森会員
  • 橈骨遠位端骨折後の長母指伸筋腱断裂について ~対応と予防~神奈川県 鈴木崇之会員
  • 下腿疲労骨折に対する競技継続を考慮した段階的な固定による保存療法の取り組み埼玉県 松林章博会員
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