HOME トピック ☆ビッグインタビュー『伝統ある柔道整復師養成校の誇りと輝かしい未来へ繋ぐ使命を感じています!』

☆ビッグインタビュー『伝統ある柔道整復師養成校の誇りと輝かしい未来へ繋ぐ使命を感じています!』

トピック


学校法人 杏文学園 東京柔道整復専門学校
教務部課長補佐 雨谷 憲二 氏


人口減少が止まらない日本。我が国は一体どうなっていくのか?そんな中、人間の生命を守る医療は万全と言えるのだろうか…。
AIの進展が加速する中で、医療も同様に進化していくのは当然のことである。中でも、人に優しい手技治療は今後も多くの国民に支持されていくのは間違いない。東京柔道整復専門学校の雨谷憲二氏に今後の柔道整復師の在り方についてお聞きした。 

雨谷先生は今の柔整養成校の状況をどのように捉えていらっしゃいますか?

私が、本校に勤務するようになって18年になります。当時、各専門学校の学生募集が厳しくなり始め、また、接骨院も大規模な展開をし始めたころ、学生募集と就職担当として入職しました。年々、少子化と大学進学率の向上で、柔道整復養成校は厳しい時代だと感じています。特に感じることは、「柔道整復師」という資格が高校生に認知されていないということです。以前は、幼少期にスポーツや遊びでケガをし、近所の接骨院に通い、初めて柔道整復師という資格(職業)に触れました。その先生に憧れ、自身も柔道整復師を目指す、という構図がここ数年で大きく変わったことで、「認知」されにくい資格になったのでは、と考えています。スポーツや部活動でも、ケガをしないような取り組みや指導方法に力を入れ、また運動部への加入割合が減少しているとも聞きました。つまり、ケガで接骨院にいくという機会が大きく減少しているのです。この「認知」は、子供だけでなく、大人でも知らない資格といえます。実際、私も19年前までは、柔道整復師を知りませんでした。高校生の指導にあたる教員の方々も柔道整復師は何をする仕事なのか、知らない先生方も多いかと思います。接骨院に行かれたことがある方以外には、「認知」されにくい現状があります。そんな中、高校の先生に‘スポーツトレーナー‘になりたいと生徒がいったときに、医療系の資格を目指すよう指導される先生は多いかと思うのですが、どうすればその生徒の希望する進学先が提示できるか、具体的な方向が示せないこともあると思います。

私が勤務したころから、柔整養成校数はほとんど変動なく約100校あります。学校数は大きく変わらないのですが、国家試験受験者数(新卒)は大きく変わりました。当時100名以上の受験生がいた学校が全国で10校以上ありました。しかしここ数年は、2,3校しかなく、受験生が一桁という学校も少なくありません。学校の学生が少ないという状況で、募集を停止する学校がこれまで以上に出てくるということでしょう。

人口減少が止まりません。養成校並びに大学も受験生が減っていて定員に満たない学校も多いと聞きますが、それに対して打つべき対策がありましたら教えてください。

潜在的にこういう仕事に就きたいと思う人は、一定数いると思っていますが、それが「柔道整復師」と結びつかない点が大きいと思います。接骨院側もこの慢性的な人手不足に危機感を感じており、数年前から、資格を知ってもらうための地域でのボランティア活動、施術体験会、運動指導など行う企業が増えました。時間はかかりますが、接骨院は「何をするところ」を地域の方々に知ってもらい、体で困ったことがあったら相談できる場所であると理解してもらえれば、この職業に興味を持ってもらえると思います。

2月14日に開催された「THERAPIST EXPO 2026」に貴校は参加されていますが、どのような感触でしたか?

今回の「THERAPIST EXPO 2026」に参加し、学生は凄く勉強になったと思います。普段は、教員の授業が中心ですが、企業側の方との会話では、教科書には載っていない院独自の施術方法や考え方、何を大切にしているか等、学校では聞くことができないような話が聞け、それが自分にとって「合っているか」、「実際にやってみたいか」の判断材料になる機会と感じました。実際の教育現場では、保険診療を対象としたカリキュラムで進めていきますが、都内を中心とした多くの院では「自費診療」を取り入れています。昭和の時代の接骨院が懐かしいですが、現在、多くの接骨院は、自費診療に変わってきています。そのスタイルが「柔道整復師」だと思われてもいけないのですが、現実の柔道整復師の「職場」を理解することも学生にとっては重要だと考えます。今回は、1、2年が参加しておりますので、直接、就職に繋がらないケースも多いかと思いますが、期待するのは、この企業の取り組みが興味ある、頑張ろうというモチベーションの向上です。

柔道整復師の職域の拡大についてはどのように思いますか?既にやられていることがあれば教えてください。

昨年、授業時間外でのゼミという形で、各企業様の独自の施術を学生に体験させる「治療家体験」を計8回行いました。狙いは、現在多くの患者さんが通っている接骨院では、実際どのような施術(自費診療)が行われていて、なぜ人気があるのかを考えるきっかけを持ってもらいたいと思いました。「柔道整復師の学びをベースに」という部分は、各企業さんにお願いし、実施したことで、保険診療外での取り組みの「幅」は伝えることが出来たと思います。

今の生徒さん達と十数年前の生徒さん達とでは、考え方や行動に違いがありますか?

分かりやすいのは年齢層です。私が入職した当時、高校からの入学者は約半数でした。20代の方が多く、30代、40代の方も開業を目指し、入学してきました。様々な年齢層の学生が一つの教室で授業を受けている中、人それぞれ、授業に対する取り組み方に違いがあります。やはり、社会人経験をされ、貯金で学費を捻出し、将来は開業するという目標のある方は、真剣に授業を受けます。わからないことがあれば、先生を捕まえてわかるまで質問するとい光景が良く見られました。高校から入学した学生は、そのような真剣に学ぶ姿を見て、「専門学校はこのようなところなのか」と、気を引き締めた学生も多くいたと思います。今は、高校からの入学者の割合が8,9割にまで達し、高校の延長という印象が強く、昔と比べ、授業への取り組み方も違いがあります。若いエネルギーは、イベントなど楽しい行事には一体感が出て、素晴らしさを感じることもありますが、こと勉強となると不安な面が多いです。受け身での姿勢を感じ、出来るだけ苦労しないで資格を取りたいという印象を受けます。資格を取ることが出来れば、何も問題はないのですが、何のために学ぶのか?「資格を取るため」または「患者さんを見るため」では、ゴールが違い、学ぶ姿勢も変わってくると思います。年齢層が変わったことにより、このゴールが変わったのかな、と感じることはあります。

AIの進化と共に知識労働者はあまり必要がなくなっていくと言われています。柔道整復師は所謂手技ですから今後の需要は期待できるように考えていますが、雨谷先生はどのように捉えていらっしゃいますか?

私もそう思います。私が本校に勤務した当時、カリスマ的な施術をする先生方が多く、いろいろエピソードを聞いたことがあります。足腰が痛く、信頼している接骨院のベットで院長を待っている患者さんがいて、しばらく待っていると院長が近づいてくる足音が聞こえる。すると、痛かった足腰の痛みが徐々になくなってくる。不思議な話ですが、柔道整復師は「手当て」という大きな武器を持っていると思います。患者さんに対して、気持ちを込めて手当てを行えば、それは、患者さんに伝わり、安心感や癒しの効果につながる。逆に、他のことを考えながら手当てを行えば、効果は少なく、施術者としての信頼も生まれなくなるということを話される先生もいらしゃいました。AIの時代でもこの「手当て」は人間にしか成し得ない、また、本当の治療家しか持っていない強固な武器です。そう思うと、柔道整復師の仕事は素晴らしいなと実感します。

柔道整復師の方は地域貢献活動をされていらっしゃいますが、貴校では生徒さんにどのように地域貢献活動をすべきと指導されていますか?

柔道整復師は、地域に根差した医療従事者であるということは学生に伝えています。昔の接骨院は、地域の方々の体の具合を相談できる場所でした。病院も少なく、接骨院も町に1院しかないような時代、何か困ったら頼りになるのが接骨院の先生でした。しかし、最近は、個人院の数が極端に減った印象を受けます。接骨院の看板に「田中接骨院」のような個人名で看板を出している所を見かけることが減ったのを皆さんも感じることでしょう。多くは、○○駅前整骨院や場所に関連した看板だと思います。接骨院も会社組織となり、その院で研修を受け、主任、副院長と出世していく会社が今の接骨院の姿です。当然、院内での転勤もあり、同じ地域に何年も勤務するというのは、稀なことなのかもしれません。そうなると、その地域への愛着というのは、昔に比べ薄くなっても仕方ないことなのでしょう。この地域の方々にいつまでも元気にいてもらいたいという思いは、誰しも持ってはいますが、働き方が変わり、「地域」を意識することが減ってしまったということでしょうか。

―生徒さん達が社会に出てからのことですが、今の現実的な仕事に対して、学校ではこんな風だよと教えるのでしょうか?

就職したけど、マッサージばかりをしている。こんな職業は嫌だといって業界を去ってしまうという話をよく聞きます。柔道整復師という職業に憧れ、3年間高額な学費と時間を費やし、やっと手に入れた資格であるはずなのに、将来に希望を見いだせず、違う業界へ行くというのは、とても残念に思います。理念を持ち、開業し、患者さんが増えていくとスタッフも増えていく、さらには2院3院と増えていくと、同じ技量を持った施術者を増やしていく。10院、20院となると、同じ技量というのは人材面で苦しくなりますから、やりやすい施術方法をスタッフに研修するという流れになります。私は、柔道整復師の仕事のやりがいは、学校で学んだ勉強をベースに多くの臨床経験を積み、自分で考え施術し、患者さんに感謝されるということだと思います。「自分で考える」部分が柔整の醍醐味、しかし、企業の巨大化は、新入社員でも受け入れやすい施術方法へと大きくシフトしなければ院が運営できなくなります。私は、給与や待遇面だけではなく、このような全体の構造も踏まえ、学生には説明するよう心がけています。

―接骨院と整形外科の関係性についてはどのようにお考えですか?

整形外科に就職する学生は、毎年10名弱おります。柔道整復師に理解のある医師も多いですから求人を頂くと、学生の反応も良いです。多くは、先代の時代から柔整師がいた、または、どこかで柔整師と接点があったという医師からの求人のようです。骨折や脱臼の疑いがあれば、医師を頼らざるを得ませんので、地域の整形外科と連携をうまくとれるかも重要です。

貴校の学校教育について、今後の展望等をお聞かせください。

勿論この業界だけではないと思いますが、私が入職した頃から凄く変動しています。ずいぶん前から、接骨院の施術も自費診療へと大きく舵を切り、それに合わせ、施術内容や予約制を取り入れた勤務体制と変わりました。柔道整復師=整体という認識の方が増えているのは、柔道整復師の求められるものが変わってきたとも言えます。保険診療から派生して、柔道整復術の特徴を活かしながら、より多様なニーズや体の不調に適応できる取り組みが柔道整復師は可能だと思っています。数年前、卒業生の先生と話をする機会があり、「子供のロコモ」を初めて知りました。ロコモティブシンドローム(ロコモ)とは、運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態で、近年、このロコモが子供にも起こってきています。子供の頃の遊びや運動する環境が大きく変わり、走ったり、物を投げたり等の日常生活にも支障をきたしている子供が増えてきているそうです。その先生は、地域のこども達に、「体のカルテ」を作成し、栄養・柔軟性・運動機能を評価し、運動指導を行っています。将来、健康的な生活をするため、土台となる成長期に「柔道整復師」の技術がもっと広まれば良いと伺いました。また、近年「平均寿命と健康寿命」という言葉を聞く機会が増えました。急速に進む高齢化の中、健やかで心豊かに生活できる社会実現に向けた取り組みが喫緊の課題です。デイサービスなど以前から高齢者をサポートしてきましたが、運動器に精通した柔道整復師が、平均寿命までの約10年間、組織的な取り組みを行い、社会に貢献できれば、医療費の負担も減るのではと個人的には思っています。学校教育で、ケガの施術をしっかり習得するということは、その後の職域の幅にも繋がり、柔道整復師としてのやりがいも多く感じ取ることが出来ると思います。決して自費診療を否定するわけではなく、学生本人が望んでしっかり取り組んでもらえれば良いですが、「何となく働くではなく」ではなく、「何がしたいか」を考え、学校での3年間を過ごしてもらいたいと思います。

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